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134.緑内障 絶対やめたい生活習慣

今回は緑内障で失明しないための10個のポイントに関してお話させて頂きます。緑内障は日本において中途失明原因1位の眼疾患です。きちんと治療すれば失明することがほとんどない病気なのですが、治療が遅れて受診される方が未だに多いため緑内障の失明率が中々下がらないとされています。

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このページの解説は以下のYouTubeでもしています

https://youtu.be/f2aXeUy–AM

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緑内障はサイレントキラーと言われています。

①発症しても痛みもありませんし、

眼圧の正常値は21までですが、30、40と

②高い眼圧でも何ら自覚症状がありません。また、発症しても

③初期中期では全く視覚的な症状もありません。

このように大変厄介な特徴があります。

偶然発見されないと、緑内障は末期になるまで放置されてしまう恐れがあります。緑内障で失明しないためのポイントや注意したい生活習慣は色々あります。今回は緑内障を悪化させないために知っておきたいポイントを10個お話させていただきます。

緑内障で失明しないためのポイント、まず1つ目は前視野緑内障の状態から治療を開始することです。緑内障には段階があります。初期、中期、末期と段階がありますが、初期よりも前の段階があります。これを前視野緑内障といいます。前視野緑内障とは、視神経には緑内障の障害があるんだけど、視野障害が全く出ていない、緑内障の非常に初期の段階です。緑内障は視神経の病気ですが、視神経に障害がおきたら同時に視野欠損がおきるわけではありません。視神経に障害が起きて数年遅れて視野障害がでてきます。

通常前視野緑内障を無治療で放置すると平均して5,6年程度で視野障害が出てくると言われています。無治療で放置すれば5,6年で変化が出てくるんですが、その期間に治療を開始しておけば視野障害が出てくるのを遅らせることができます。遅れるどころかそのまま全く視野変化が出ない方もおられるぐらいです。自覚症状が全くない方でも40歳以降必ず検診を受けてください。今はOCTという優れた機械があります。この検査を受けると前視野緑内障なのか、そうでないのか即座に分かります。家族歴がある方、近視が強い方でしたら20代と若くても早めに眼科受診されるのがよいと思います。

2つ目、薬に気を付けてください。ステロイドには注意が必要です。ステロイドは薬の影響で眼圧上昇の原因になることがあります。若い方ほどステロイドの感受性が高いので注意です。30,40と高くなることがあります。

ステロイドには軟膏、経口薬、注射や目薬がありますがどれも注意が必要です。アレルギーの結膜炎やぶどう膜炎の診断で何本も目薬をもらっていて、定期検査が長引いている事はないですか?眼圧は40ぐらいまで上がっても自覚症状が出ません。ステロイドの薬を使われている方は基本的には一カ月に一度は眼圧のチェックをされた方がよいと思います。

3つ目は運動をするようにしてください。緑内障の第一の原因は眼圧です。ですが、

①眼圧が十分に低いのに進行する方もおられますし

②乳頭出血といいますが、緑内障に特徴的な出血を起こす事があります。

そのため、眼圧以外の要因、例えば血液の循環障害の可能性も考えられています。

特に①やせ型で②冷え性で、③頭痛持ちで、④血圧が100を切っている方いないでしょうか?このような方をフラマー体質といいますが、自律神経の働きが不十分でそれに伴う血管運動の障害がおきやすい、すなわち血の巡りが悪いタイプと考えられています。

このような方には循環改善作用があるピクノジェノールが配合されたグラジェノックスや当帰芍薬散のような漢方薬を処方させていただりしていますが、運動もして頂くようにお話しています。週に3回程度有酸素運動を30分程度されるのがよいですね。運動する事で血液の循環も良くなりますし、運動後は少し眼圧が下がります。高負荷の筋トレもよいと思います。私もしています。ただし、呼吸を止めるような行為はしないようにしてください。息を堪えると胸腔内圧があがって、眼圧が上がる原因になります。またヨガなどで逆立ちのような姿勢には気を付けてください。眼圧は重力の影響を受けるので逆立ちすると倍近く眼圧があがります。

4つ目ネクタイをきつく締めすぎないようにしてください。ネクタイをされる方は男性がほとんどだと思いますが、普段からネクタイを締めすぎていることないですか?2003年に行われた研究

で20名の健常者と20名の緑内障患者の両方でネクタイをややキツメにすると眼圧がどの程度上昇するのかという研究がされました。結果からすると正常の方も緑内障の方も2㎜Hg程度も眼圧が上がったと報告されています。ただ中には4も上がった方がいたそうです。ネクタイで何故眼圧があがるのかというと、首が絞められることによって、頸静脈の圧があがるからと考えられています。目の中には絶えず循環している房水というお水があります。このお水は隅角という出口から出ていき、いくつかの経路を通って最終的に頸静脈に流れていきます。頚静脈が圧迫されると、お水が流れていかないので、眼圧が上がります。2も上がれば長期的には緑内障に影響がでてきます。ネクタイに限らず、頸は締めないようにしてください。

5つ目寝るときはうつ伏せで寝ないようにしてください。眼球を枕に圧迫させると眼圧が上がる原因になります。緑内障は夜進行すると言われています。これは眼圧は体位によって変わるからです。眼圧は立っているときや座っている時が一番低くて、逆立ちが一番高くなります。寝るときの姿勢は仰向けが一番よく、枕も低いものより少し高めの方がよい場合があります。寝れなくなっては意味がありませんが、やれる範囲で変更できることは変えてみてください。

6つ目睡眠とつながりますが、睡眠時無呼吸症候群ではないでしょうか?睡眠時無呼吸症候群とはその名前の通りですが、睡眠中に無呼吸になる状態のことを言います。無呼吸状態があると、血液中の酸素濃度が低下し低酸素状態になって、酸化ストレスが視神経に障害を与えるとされています。論文によると睡眠時無呼吸症候群の方は10倍も緑内障のリスクになりやすいとされています。睡眠時無呼吸症候群の主な症状は①いびきや夜間息苦しくなって何度も起きたり、➁起きたときに頭痛がしたり、➂昼間も眠くなるような症状があるときです。低酸素による影響はもちろん緑内障だけではありません。脳卒中、心筋梗塞のような命に係わる病気とも関係があります。CPAPのような適切な治療を行うことで緑内障の進行が抑制されたとの報告もあります。心あたりがある方は一度呼吸器や睡眠を専門にされているクリニックに受診されるようにしてください。

7つ目、目をぶつけないようにしてください。緑内障には外傷性の緑内障があります。野球ボールやサッカーボールが目に当たった。またはボクシングなどをしている場合注意が必要です。目への衝撃でお水の出口の隅角の構造が変形して眼圧があがる原因になることがあります。

90%以上の目の外傷は保護メガネをすることで防ぐことができることが知られています。注意一秒、怪我一生という言葉がありますが、ほんのわずか注意が散漫してしまった結果、目に大きな後遺症を残すことがあります。

かっこ悪いかもしれませんが、球技のように目への障害の可能性があるスポーツをされている方はできるだけ保護眼鏡をされることおススメします。

8つ目 健康的な食事をするようにしてください。目を健康に保つにはバランスのよい食事をすることが基本です。

果物と野菜には抗酸化ビタミン、ビタミンエースと言われたりしていますが、ビタミンA,C,E、抗酸化物質であるルテイン、ゼアキサンチンの優れた供給源です。酸化ストレスから目を守る作用があります。

また、鮭、マグロ、カツオ、サンマ、イワシなどの魚にはω3脂肪酸が豊富に含まれています。ω3脂肪酸のDHAは網膜や視神経など神経組織に豊富に含まれていて大切な栄養素ですし、EPAは血液をさらさらにする効果があります。ω3脂肪酸

を多くとると8%眼圧が下がるという報告もあるぐらいです。これらは緑内障だけでなく黄斑疾患やドライアイの予防にも関係しています。ドーナッツのような甘い食べ物をできるだけ避けて身体にもよいものを意識して摂るようにしたいですね。


9つ目 糖尿病、高血圧に気を付けてください。糖尿病で血糖値が高い状態がが続くと、網膜の細い血管が傷ついて血流が悪くなります。さらに悪くなると血管が詰まって、網膜が壊死していきます。難治性の緑内障に新生血管緑内障がありますが、糖尿病のコントロールが悪くなるとなってしまう緑内障です。薬物治療に抵抗性があって非常に厄介な緑内障です。そのため糖尿病も注意が必要です。

高血圧も動脈硬化を起こすので注意が必要ですが、降圧薬の過剰内服による低血圧も同じように注意が必要です。内服薬を飲み過ぎて血圧が100を切っている事ないですか?血圧も低すぎると循環障害を起こして視神経に障害を起こして緑内障進行の原因になる事があるので治療中の方も注意するようにしてください。


最後10個目は、フロスなどを使って歯をきちんと磨くようにしてください。最近の研究

では、歯周病による緑内障への影響も報告されています。まだ充分にメカニズムが分かっていませんが、口腔内の不衛生な環境によってできた炎症物質が血液などによって視神経に炎症を起こしたり、お水の出口の細かい構造にも影響しているのではないかと考えられています。口腔内の環境は目以外にも糖尿病、脳梗塞、アルツハイマー型認知症など様々な影響が報告されています。歯周病はほとんど症状もなくどんどん進んでいくので、歯科医院で定期検査もきちんと受けるようにしてください。私も3ヶ月に一回は歯医者さんにいっています

長くなりましたが

今回の話をまとめますと

①緑内障を早めにみつけて治療を中断しないようにしてください。

➁ステロイドの薬、ネクタイを強く締める事、うつ伏せで寝る事に注意してください。

➂抗酸化作用がある食事や魚などに含まれるω3脂肪酸を含んだ食事が緑内障によいとされています。

④やせ型、冷え性、低血圧の方は運動習慣を取り入れましょう。

⑤高血圧の治療中の方は低血圧に気を付けましょう。また歯をキレイに保ちましょう。

という5点です。

このように色々注意したいことはあるんですが、結局一番大切なことはきちんと通院する事です。そんな事当たり前だと思われるかもしれませんが、それができない方が非常に多いんです。緑内障治療で問題になっているのが治療の自己中断です。緑内障の治療が開始して3カ月後には3割の方がドロップアウトされて2年以上継続通院できている人は6割程度しかいないことが分かっています。緑内障の診断をうけたけど仕事などを理由に通院をしなくなった、その後に見にくくなってから受診されてすでに末期の緑内障だったということが非常によくあります。疑いの方も含めて必ず受診を継続されるようにしてくださいね。

その上で今回は緑内障を悪化させないために知っておきたいポイントに関してお話させて頂きました。


(2023.6.27)