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164.緑内障目薬 毎日さすとこうなります

今回は緑内障目薬をさし続けるとどうなるのかということについてお話しいたします。緑内障とは、眼圧によって、視神経が障害されて、視野が狭くなる病気です。その緑内障治療は基本目薬による点眼療法を行います。糖尿病や高血圧の治療と同じように診断を受けたら一生涯続けなければなりません。
1度させば1週間効いている目薬みたいなのがあれば点眼回数も少なくていいのですが、現状は最大で効く目薬でも24時間なので、毎日目薬をしないといけません。
その日々の点眼の習慣の中で目薬さし続けて目を悪くしないのでしょうか、使い続けて効きにくくなることないでしょうかなど色々聞かれることがあります。
今回はよく外来で聞かれる緑内障目薬に関してお話しいたします。

まず一つ目、目薬をさしつづけて目を悪くしないかということです。
緑内障の目薬は長期にわたってさし続けなければなりません。 何年も、時には何十年も、若いときに診断を受けた方ほど使用期間は長くなります。 その上1本だけでなく他の目薬と合わせて3本くらい併用していることも珍しくありません。そのため薬による目への影響を心配する方もみえますが、目薬を使い続けることで、負担になって見えなくなってしまうということはないので安心してください。
しかし緑内障治療のように長期にわたって使う方に知っておきたい副作用が二つあります。一つ目が防腐剤による目の影響です。緑内障目薬の8割に塩化ベンザルコニウムという防腐剤が入っています。塩化ベンザルコニウムは逆性せっけんとして知られていますが、殺菌作用があります。点眼容器が汚染されないための大切な成分です。
なくてはならないものなのではありますが、目の黒目の部分に影響して目の表目を傷つけることがあります。これがゴロゴロした異物感や視力低下に繋がる場合があります。
もちろんやめれば改善しますが、異物感や見にくさを感じているなら、防腐剤が入っていない目薬に変更することもできる事を知っていて下さい。
もう1つは全身への影響です。目薬は目のみにしか影響しないと考えがちですが、さした目薬が鼻の方に流れて全身に吸収されて全身的な症状が出る場合があります。例えばチモプトールやミケランといったβ遮断薬という部類の目薬には不整脈や喘息などの咳症状、頭痛を誘発することやアイファガンという目薬は眠くなる事があります。目薬で目だけでなく身体の調子が悪くなるという事もあるので注意してください。

2つ目、私の目薬きいていますかという質問です。
緑内障の治療の基本は、眼圧を下げる事ですがもう少し詳しく説明するとその目にとって高くなってしまった眼圧を適切な程度まで下げることです。
そのため人それぞれ目標となる眼圧の値が違います。眼圧の正常値は10-21の範囲ですが、目薬をさして18ぐらいの眼圧でもよい方もみえますし、12、13と低めでも不十分な方がみえますね。
1つの治療方針として無治療の眼圧から20ー30%下げる事が大切とされています。これは大規模な研究で30%の眼圧下降が得られたら8割緑内障は止まるという報告がされているからです。
実際は30%という数値は目標値なので、全員30%下がないといけないというわけではありません。ここまで下げなくても緑内障止まる方もいますし、やはり30%ぐらいしっかり下げないと止まらない方もいます。
このように目標となる眼圧は個人差があるものの、緑内障を長期間治療する上で①自分にとって目標となる眼圧はだいたいいくつで、②どの程度薬で眼圧が下がっているのか知っておく事は大切だと思います。自分の無治療時の眼圧って覚えていますか?今の眼圧は言えても無治療時の眼圧ってそういえばいくつだっけと言われる方多いですね。
元の眼圧が20ぐらいだった。目薬をさしたら15にさがったということならだいぶ下がって効いているということになります。逆に元の眼圧が15ぐらいで、目薬をさしても15ぐらいいうことならあまり効いていないということになります。私のとこだと、眼圧下降が得られているかはっきりしない場合、あえて目薬を一時的にやめて無治療眼圧からはかり直す事があります。効いていたと思っていた目薬が実は効いていなかったということがあるからです。
眼圧が下がってしっかり効いているという方から聞かれる質問は次です。

3つ目、ではその目薬さし続けると効かなくなることありますか?という質問です。
これは基本そのような事はないと考えて頂いていいと思います。治療が初期の段階では目薬が変わる事があります。これは薬には効きやすい方、効きにくい方がいるからです。緑内障の目薬はたくさん種類がありますが、目薬のタイプは大きく2つに分かれます。房水というお水の①産生を抑制するものと➁排出を促すものです。
緑内障の目薬はこのどちらかに別れます。例えばプロスタグランジン製剤というお水の排出を促す目薬、キサラタンとかタプロス、トラバタンズがこの部類に入ります。第一選択としてよく使われる目薬ですが、ノンレスポンダーといって効きにくい方がいます。その方にチモプトールのようなβブロッカー、お水の産生を抑制するものに変えるとすとんと下がることがあります。そのためラタノプロストからβブロッカー、お水の排出を促すタイプからお水ができるのを抑えるものにかえましょうということはあります。緑内障点眼はその人にとって効きやすい方、効きにくい方がいるので最初の段階で目薬が変わる事はよくあります。ですが治療効果があった点眼が効きにくくなるという心配はしなくて大丈夫です。安心して使ってほしいのですが、中にはこういう方もいると思います。

4つ目、効いていると判断された目薬を同じようにさしている、それなのに眼圧上がってきたのは何故?という質問です。これは様々なケースが考えられます。まず1つが眼圧は季節変動や日内変動します。測る季節や時間帯によって眼圧は血圧のように変わるという事を知っていて下さい。一般的に冬高くなって、夏低い傾向にありますし、朝高くて夕方低くなる傾向があります。正常の方でも眼圧は測定する時間、季節によって3~6mmHg変動します。これは房水産生は昼に多く、夜に少なくなるため変動しますし、夏に比べて冬に眼圧が上がる傾向にあるのは、寒さによって交感神経系が高まるのでお水の流れの抵抗が高くなるからです。
このように眼圧は常に一定の値を示すわけではありません。
季節や時間帯によって変わることがありますし、年齢とともにお水の排出路隅角という部分の機能の低下や水晶体というレンズが悪さして同じくお水の排出に影響する場合があります。
加齢によってできた目の老廃物がお水の流れに影響を与える場合があります。目の中にできる老廃物を落屑物質といいますが、このような老廃物がお水の排出路を詰まらせて眼圧に影響をあたえる場合があります。
人の身体は年齢とともに骨とか筋肉とか萎縮していきますが、萎縮しない臓器が目にあります。水晶体というレンズです。水晶体は年齢と共に混濁します。これを白内障といいますが、水晶体の加齢現象は濁りだけではありません、水晶体の細胞は生きている限り分裂・増殖を続けるので加齢に伴って成長して大きくなって重くなっていきます。そして大きくなるだけでなく目の前側に移動していきます。水晶体のすぐ前方、隣り合わせにある部分は何でしょうか。お水





の排出路、隅角です。大きくなって




前方に移動した水晶体がお水の排出路を狭くして眼圧が上昇する原因になります。これが閉塞隅角緑内障という緑内障の病態です。閉塞型の緑内障の原因はレンズなので、診断された方の治療は水晶体の摘出、すなわち白内障手術が第一選択となります。不運にも水晶体の影響でお水の排出が完全に閉じてしまうと、急性緑内障発作という一晩で失明に近い状態にまで悪くなることがあります。その前に白内障手術を行うというのがポイントです。
経過の中で眼圧が高くなったという場合目薬が効きにくくなったというよりはこのように眼圧を上げている要因を色々検討していくことになります。プロスタグランジン製剤のラタノプロストが効きにくくなったから、同じ系統のタプロスに変えましょうという事は薬のアレルギーでもない限り通常しません。例外はルミガンです。他のキサラタン、タプロス、トラバタンズより眼圧下降効果が強いからです。これは




ルミガン以外のプロスタグランジン製剤 キサラタンとかはFP受容体に結合するのに対して、ルミガンはFP受容体だけでなくプロスタマイド受容体というもう一つ他の受容体にも薬理作用を表すからと考えらえれています。
そのため眼圧が他のプロスタグランジン製剤より眼圧は下がる傾向にありますが、その半面充血や瞼が黒くなったり、瞼が少しくぼんだり副作用の発症頻度が高いのでファーストチョイスで使う目薬ではないかなと思います。他の薬では眼圧が下がらない場合の切り札として使われる事があります。

5つ目、目薬きちんと使えていますか?目薬してすぐぱちぱちしている事ないですよね?10回も瞬きすると薬の効果はほとんど出ません。これはまばたき運動によって目薬の成分が鼻の方に流れていくからです。お薬はのめば終わりなので、目薬と違ってある意味楽なんですが、薬を最大に効かすために正しい目薬のさし方を知っておく必要があります。1つ目、点眼前に手洗いをしてください 二つ目仰向けになってください、三つ目、下瞼を下に引いてください。4つ目目薬の先が黒目、まぶた、まつげに触れないようにしてください。5つ目、目薬は黒目に当てる必要がありません。目の表面のどこかに当たればよいです。6つ目 目薬は1滴で溢れる量が入っています。1滴のみ点眼してください。そして瞬きをしないでください。7つ目2つ以上目薬をさす場合、必ず5分あけてください。連続でさすと先に入れた目薬が流れてしまうので注意してくださいという7点です。
この中で特に大切なのが目薬直後に瞬きをしないことです。
目薬がきちんとしっかりさせているかどうかは緑内障の進行と明らかに関係あります。ある報告ではしっかりさせている人とさせていない人で比べると4倍近く緑内障の進行が違うという報告もあるぐらいです。
このように緑内障の目薬は長期間必要になるので、目薬による特徴などを知っていただいて上手にお付き合いいただけたらとおもいます。
今回の話は2024/4/30に出版予定である、【緑内障に効くたった二つの習慣】に詳しく書いてます。目薬ことなど詳しく知りたい方はよければ読んでもらえると嬉しいです。概要欄からご予約可能です。
今回の話をまとめますと
①緑内障の目薬は防腐剤が入っています。黒目が荒れることがあり、見にくさや異物感の原因になっている場合があります。
②薬が効いているかどうかは無治療の状態からどの程度眼圧が下がっているかによります
③目薬が途中で効きにくくなるということは通常ありません。
④季節や1日の中でも眼圧が変わることがあります。年齢による影響もうけます。
⑤正しく目薬がさせている人とさせていない人では4倍緑内障の進行スピードが違います
という5点です。
緑内障は国内での中途失明原因1位の眼疾患です。きちんと治療すれば失明することないのに、何故中々失明率が下がらないのか、それは治療を途中で中断してしまう人が多いからと言われています。緑内障の視野欠損は①周辺から欠けていくことが多い、そして②その周辺のかけた部分もよい方の目が補ってしまうという特徴があるので末期になるまで症状を自覚することがありません。治療開始から2年後には半分の方が自己中断するという驚きの国内のデータも出ています。目薬の色々な特徴を知っていただいてモチベーションに繋げていただけたらとおもいます。
今回は緑内障の目薬を使い続けるとどうなるのかという事に関してお話いたしました。

(2024.4.17)