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159.目の血管をつるピカにする食材

今回は目の血管の老化を防ぐための食事に関してお話しいたします。

血管の老化が引き起こすトラブルはさまざまあります。心筋梗塞や脳梗塞などが代表的な病気です。現在の日本人の死因の第1位は「悪性新生物」ですが、第2位は「心疾患」、そして第三位が脳卒中です。心臓病と脳卒中が半数以上占めており、この2つの疾患は、いずれも動脈硬化が原因です。動脈硬化



とはその名前の通り動脈が硬くなることです。血管が硬くなって、血管内にコレステロールなどの脂肪物質が溜まると、血液の流れが減少、または遮断されます。そうなるとその先の臓器に充分に酸素供給が出来なくなります。脳への血流が途絶えると脳梗塞になりますし、心臓への血流が途絶えると心筋梗塞といった重篤な病気の引き金になります。

目にも動脈硬化が関係する病気があります。ただ、目の場合血管が細くなってたとえ詰まったとしても心臓病や脳卒中と違って命を落としたり痛みを伴う事はありません。その変わり目の場合血流が途絶えるととそのまま見えなくなってしまう、すなわち失明する場合があります。命を失うのも視力を失うのもどれも嫌ですよね。以前



にこのような研究がされています。2000人のアメリカ人を対象とした調査ですが、あなたが考える最悪な状態って何ですか?という事に関してアンケートをとった調査です。癌になる事ですか?心筋梗塞になることですか?認知症になることですか?それとも目が見えなくなることですか?皆さんはどうでしょうか。結果




はこのような感じです。心疾患や癌、認知症などあらゆる病気より失いたくない健康の1位が失明でした。多くの方が目に関して健康意識をもたれているんだなと感じました。

日本人の失明率で多い緑内障は通常きちんと治療すれば失明するような病気ではありませんし、日本のような先進国では白内障で失明することもありません。しかし血管トラブルによる目の病気は最悪失明となる場合があります。動脈硬化は加齢だけでなく食生活も大きく関係しています。

今回は目の血管の狭窄を防ぐために知っておきたい食生活に関してお話しいたします。

目の血管の病気ってあまりイメージがわかない方が多いと思います。目の病気といえば白内障、緑内障、黄斑変性症またはドライアイ、結膜炎などだと思います。しかし、血管が詰まると致命傷となる目の病気があります。代表的なのが網膜中心動脈閉塞症



という目の病気です。眼科の代表的な緊急疾患の1つで、網膜全体が強い虚血状態になります。遅くとも1-2時間以内に血流を再開通する治療しないと不可逆的変化をおこし失明に近い状態になります。その他にも網膜静脈閉塞症とか糖尿病網膜症とか、これらも動脈硬化によっておきる目の病気です。

ところで私達眼科医は目をみてどれだけ動脈硬化が進んでいるのか、この方は血圧が高くなっているんじゃないかということを診ることができます。通常血圧の評価は血圧を測って評価されると思いますが、私たちの場合は目の奥、眼底



をみて判断しています。目は全身の血管を唯一観察できる部分で、動脈硬化の程度を判定できます。なので僕らは目をみて、血圧高くないですか?と話たりしています。血圧測っていないのに何故分かったんですか?と聞かれるような事がありますね。

目の血管が細くなるとこんな所見が確認されます。

①動脈が



細くなったり ➁交叉現象といって静脈が横切る前後の部分で動脈の細さが違ったり

➂太さが不均一になったり ④動脈の中央が輝いてみえたり

このような所見はすべて動脈硬化を疑う所見です。所見が重なれば重なるほど先程話した網膜中心動脈閉塞症などの血管による目の病気の確率が高くなります。目の血管の状態は、目だけの状態を表しているわけではありません。目の血管の状態は全身の血管の状態をあらわしています。実際



目の血管の動脈硬化が強い人ほど心疾患のリスクと関連しているというような報告もされています。動脈硬化は徐々に進行していくんですが、症状の出方は0か100




である事が多いです。目の場合動脈硬化が進むと少しずつ見にくくなるということはないです。血管が詰まると即座に見えなくなります。

動脈硬化が強く疑われる方、これは放っておくとよくないと思う方に実際こういうものを食べてくださいとお話しています。実際すすめている食品、目にもいいし血管にもいいですよという食品をいくつか紹介いたします。

1つ目、ブロッコリーです。ブロッコリーというと2026年度から国の指定野菜に仲間入りになる野菜で非常に栄養価が高いです。個人的にも好きで毎朝食べています。野菜の中では高タンパクで低脂質、低カロリーで筋トレされている方はよく摂られているのではないでしょうか。緑黄色野菜はルテインという目にとって大切な栄養素が多く含まれていて目の健康にも欠かせない野菜です。

ブロッコリーのようなアブラナ科の野菜は動脈硬化や心臓病、脳卒中の予防に効果的とされる報告がいくつかされています。最近



の研究だと毎日45gブロッコリーを食べると血管の石灰化が47%抑制されたと報告されています。

アブラナ科の野菜に豊富に含まれているスルフォラファンという栄養素やビタミンKが、動脈硬化の抑制に関与していると考えられています。私たちが食べる食品には 2 種類のビタミン K K1とK2と 含まれていてどちらのビタミンKも動脈硬化の抑制によいとされています。ビタミン K1 は主にブロッコリーのような緑黄色野菜や海藻、緑茶に含まれていて、ビタミン K2 は肉、卵、チーズ、納豆などの発酵食品に含まれています。ビタミンK2が特に多く含まれていておすすめな食材

2つ目 納豆です。納豆



などの発酵食品をよく食べている人は、心臓病による死亡リスクが低いことが日本人を対象とした研究でも明らかになっています。

納豆に主に含まれる酵素にナットウキナーゼという血栓を溶かす酵素があります。血栓とは血管の中に出来た塊で血流の流れが少なくなったり閉塞する原因になります。

最近



日本の筑波大学の研究で納豆を食べるとどのような機序で動脈硬化が抑えらるのかというメカニズムが調査されました。マウスによる研究ではありますが、その結果は

①納豆を摂取して納豆菌によって腸内環境がよくなってそれが影響しているという事と、➁納豆に多く含まれるビタミンK2に動脈硬化抑制効果が高いと報告されています。

腸内の環境と動脈硬化って一見何も関係ないように思いますが、腸内の環境がよくなると善玉菌が腸内で有益な物質を作り出して、それが血液を通じて全身に回るので様々なメリットがあります。

腸内環境が良くなることでサイトカインといいますが、動脈硬化を促すシグナルが減少したことが明らかにされています。

納豆を含めた大豆には、不足しがちなタンパク質もしっかりとれるのでオススメです。血管



はタンパク質で出来ていて、タンパク質の不足が血管の弾力性の低下と関係があります。納豆だと1パックあたり8gタンパク質がふくまれています。1日に必要のタンパク質はだいたい60g程度なので1日に必要量の7分の1程度取れます。よいタンパク質を取る事が大切で、魚もよいたんぱく源になります。

そのためお勧めの食材

3つ目は魚で、脂ののった魚です。サーモンや、イワシ、サバ、サンマ、マグロなどの脂肪の多い魚は、タンパク質も摂れるし良い油をふくんでいます。魚にはEPAやDHAといったオメガ 3 脂肪酸が豊富に含まれていて、アテローム性動脈硬化のリスクを軽減し、中性脂肪を減少させて血液をサラサラにする作用があります

特にDHA



は網膜の重要な構成成分で網膜の機能維持のために大切な脂です。

DHAやEPAは必須脂肪酸といいます。身体に必要な脂なのですが、体内で合成することができないので積極的に食事から摂取する必要があって主な供給源がこのような魚です。目の場合不足すると黄斑変性やドライアイとの関係が指摘されています。

できれば脂肪の多い魚を少なくとも週に 2 回食べることを推奨しています。

DHAやEPAのような脂は極めて酸化されやすい特徴があります。酸化されると機能を失います。酸化を抑えるビタミンEなどを同時に摂ることも大切です。そのためオススメ

4つ目、ナッツです。ナッツにはビタミンEが多く、亜鉛のようなミネラル、身体に必要な不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。研究によると、クルミ、ピスタチオ、ピーナッツ、アーモンドなどのナッツ類を毎日、または少なくとも週に4日、一掴み食べる人は心臓病の発生率が低いことがわかっています。ナッツは善玉コレステロール(HDL)を上げ、悪玉コレステロール(LDL)を下げます。ナッツは目にもおススメです。ナッツに多いビタミンEは脂溶性のビタミンです。網膜に多く含まれていて、網膜の主な構成成分であるDHAが変性しないように保護しています。またナッツの中でもピスタチオはルテインが他のナッツより何倍も多く含まれています。ピスタチオの緑色の部分にルテインが多く含まれています。ナッツを食べる時は無塩・無添加のものを食べるようにしてください。

毎日一掴みのナッツを食べると、心臓病のリスクが半分に減ります。 

5つ目 緑茶です。植物には酸化や紫外線から自分自身を守るために強い抗酸化作用があるポリフェノールを自ら作り出しています。特に緑茶に含まれるポリフェノールのカテキン、緑茶の渋味成分ですが、カテキンに強い抗酸化力があります。カテキンは、抗炎症作用、抗酸化作用に加えて、血管の内皮機能、血管の内側の機能を促進して、コレステロールを改善させることで、心血管疾患の発症リスクを低下させます。緑茶は目にとってもいいです。緑茶



に含まれるカテキンにBDNFという神経栄養因子を増やすという報告もされています。神経栄養因子とは神経を保護したり、再生促進作用が期待できるというものです。特に緑内障は神経がダメージを受ける病気なので、神経栄養因子がよい影響を与えるのではないかと期待されています。

このように野菜、果物、ナッツ、豆類などの植物ベースの食品を多く含む食事は血管にだけでなく目にもよい食材です。これらの食品は地中海式の食事の主な成分であって理想的な食事と考えられています。できるだけ意識して日々の食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。

今回の話をまとめますと

①動脈硬化による機能障害は不可逆的変化、後遺症を残す事が多いです。

②ブロッコリーはビタミンK1やスルフォラファンという栄養素を含んでいて、抗動脈効果作用があります

③納豆はビタミンK2や納豆菌による腸内環境の改善が血管に良い影響を与えます。

④魚にはDHA、EPAといった体に必要な脂を多く含まれています。

⑤ナッツにはビタミンEや不飽和脂肪酸を多く含んでいます

⑥緑茶に含まれるカテキンは強い抗酸化作用があって、神経栄養因子を増やすとされています。

という6点です。

このように血管によい食事は目にもよい影響があります。血管の病気は凄く細くならない限り症状が出ません。なので、多くの方は別に何も症状出てないし、普段通り好きなもの食べたらいいじゃんと思われるかもしれません。

そこでおすすめしたいのは自分がどの程度動脈硬化進んでいるか、気になる方は眼科の先生に聞いてみるのもいいと思います。動脈硬化



が強くなっている自分の眼底写真をみる事が食事の改善や内科受診のきっかけになるかもしれないからです。

今回は目の血管の老化を防ぐための食生活に関してお話いたしました。

(2024.3.29)