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158.白内障手術前これ知ってて!

今回は白内障手術後にあれ、なんか見にくいな、思っていた感じとちょっと違ったなと感じないために知っておきたい事に関してお話いたします。白内障手術は術後満足される方が多い手術です。やってよかった、もっと早くやればよかったというような言葉を言われる事が多いです。

その一方で、術後ちょっと思っていた感じと違った、もう少しこうだったらよかったのになと感じるような場合があると思います。例えば、片目の手術が終わったあとに
①単焦点眼内レンズで手元合わせにした。確かに手元はみえるけど遠くは思った以上に見えないなとか逆もありますね

➁遠方に合わせにしたけど、思った以上に手元がみえないとか

保険で主に使う眼内レンズが単焦点眼内レンズですが、術後眼鏡が必要になるという説明は聞いていたものの、これなら手術しない方がまだよかったなんてこともあります。多焦点眼内レンズの場合もあります。
➂多焦点眼内レンズ特有の異常光視症ハローグレアといいますが、実際夜運転したら結構ぎらつきがキツイなとか
④なんとなくすっきりした見え方ではない

といったような感想をもたれる場合があります。実は自分の父親も自分のクリニックで白内障手術を行ってとにかく眼鏡をしたくないという希望があったのでパンオプティクスという三焦点タイプの眼内レンズを入れたんですが、十分に説明したにも関わらず、ハローグレアに慣れるのに少し苦労していました。このように片目手術が終わった時にあれっ、少し思っていたのと違ったと感じたときに知っておいてほしい事があります。

今回はこれから白内障手術を受ける方に知っておいてほしい方法に関してお話しいたします。

今回お話ししたい内容はモノビジョンと、モノビジョンの一種であるミックス&マッチという方法に関してです。

モノビジョンとは左右で度を少しずらす方法です。左と右で意図的に度数に少し左右差をつけて両眼視で見え方を広げる方法です。例えば、右目を遠くに合わせて左を手元に合わせたりします。

そんな左右度数変えてもいいの?と思われる方もいるかもしれませんが、満足度を高めるよい方法として知られています。眼科医が白内障手術を受けるとしても3割近くの人がモノビジョンを希望するという報告もあるぐらいです。

手術前から計画的に行うこともありますし、片目終わったのちに計画することもあります。

単焦点眼内レンズで片目手術終えたあとに、思っていたほど遠くが見えない、または近くがみえないといった場合に有効です。もう片目、これから手術する方の目を少し遠くに合わせたり少し近くに合わせたりすることで両眼視での見え方が広がって、単焦点眼内レンズでもほとんど眼鏡がいらなくなったという方もいます。

当院では片目の手術が終わったあとに、もう片目の術後の見え方を体感してもらうために、FEST法というものをしています。これは手術した眼内レンズが入った自分の目を使って、もう片目の度数を決定するという方法です。術眼が-2.0D



という軽い近視になった場合、眼鏡を使って少し手元が見やすくなった状態-2.5Dになった状態、または少し遠くが見える状態-1.5D




更にもう少し遠くが見える-1.0D




の状態を体験してもらって、これから手術する方の目の眼内レンズ度数の落としどころを決めていく方法です。

反対の目がまだ何とか1.0近く矯正できる状態ならコンタクトレンズをしてもらう場合もあります。例えば両眼とも-6Dぐらいの強度近視で片目手術終えて-2.0D程度の軽い近視にした、けど遠くの見え方に物足りなさを感じているといった場合、手術していない方の目にコンタクトレンズを使って遠方を見える状態にします。すると片目は手元で、もう片目は遠くにみえる状態になりますよね。適応できれば、もう片目を遠くに合わせて手術を行います。

適応しやすい方、しにくい方がいるので全員によいというわけではありませんが、術後の見え方に物足りなさを感じた場合事前にモノビジョンを経験してもらって納得した上で度数を決めることがあります。

もう一つ、ミックス&マッチとは簡単に言うと、片目ずつで違うタイプの眼内レンズを入れることを言います。

例えば



片目をビビティという焦点深度拡張型の眼内レンズ、もう片目にパンオプティクスという三焦点タイプの眼内レンズを入れるといった手法です。

現在眼内レンズは大きく分けて3つのタイプがあります。

1つ目、単焦点眼内レンズ 一般的に保険で使う眼内レンズです。見え方の鮮明さは全てのレンズの中でもっともいいんですが、ピントが合う箇所は限られるので基本眼鏡が必要になります。なので、できるだけ眼鏡をしたくないという方には

2つ目、多焦点眼内レンズがいい場合があります。主流は遠中近、幅広く焦点が合う3焦点眼内レンズです。遠方から40cm程度まで連続して焦点が合います。データ的には9割の方が眼鏡から卒業することができます。眼鏡なしを希望する方にはこのタイプのレンズの使用が現状一番いいのですが、夜間運転する方は注意が必要です。ハローグレアというものがほぼ必発だからです。夜間の運転をしない、あまり神経質な性格ではない人には向いているといえます。そういった副作用に注目してできたレンズが

3つ目、焦点深度拡張型眼内レンズです。ビビティやシンフォニーがこの部類に入ります。最近だとハローグレアが少ないので、ビビティが人気です。ハローグレアが単焦点と同等でほとんどない、コントラストも非常によいです。ただし、近くの見え方はパンオプティクスのような3焦点眼内レンズより劣るので、本やスマホを使うときによっては老眼鏡やフォントを大きくした方がいい場合があるということを知っておく必要があります。

このようにレンズは3タイプあって、それぞれ良いところと不十分な部分があります。

ハローグレアもなく、コントラストもよい、遠くも近くも見えるというようなレンズがあればそれを両眼入れたらいいわけですが、現状そのようなレンズがありません。

そのためモノビジョンのような更に満足度をあげる方法などが検討されていますが、モノビジョンの一種にミックス&マッチという方法があって、これはお互いのレンズの長所をいかしながら、マイナスの部分を補う事を目的にした手法です。先ほどのビビティーパンオプティクスの場合、パンオプティクスはハローグレアが少なからず出ます。私の父も思っていた以上に出て悩んでいました。その時父に提案したのが、①1カ月程度で脳が慣れる事がほとんどなのでまず様子をみること、➁慣れなかったらミックス&マッチをしようという事でした。当時ビビティがまだなかったので今ならビビティですが、その時はハローグレアが少ないアクティブフォーカスというレンズをすすめていました。あえてすぐに手術行わず少し経過をみていたら慣れたとのことで、結局両眼ともパンオプティクスにしましたが、別のレンズでも良かったかなと思ってます。

ただ術後少し待ってもどうしても気になるという方はミックス&マッチも候補になります。白内障手術をできるだけ満足して受けて頂くために基本は次のことをすすめています。

  1. まず片目ずつ手術を受ける事です。最近両眼同時で白内障手術行うクリニックが増えています。ちなみに当院でも両眼同時手術は行っています。これは①遠方の方であったり、➁仕事があってなかなか休めない方、➂常に来院時に家族の付き添いが必要でご高齢で術後あまり通院できないという方には両眼1度の手術の方がメリットがあるからです。そのメリットの一方で、思っていた見え方と違った!となった場合、対応が中々難しくなります。レンズを取り出して、入れ替える手段もあるわけですが、やはりリスクがあって安易にできる事ではないので、レンズがズレて視力が出ていないといったような医学的な理由がない限り基本的には避けた方がいいです。

そのためまとまった日にちが取れて確実に見え方を確認しながら手術を受けるために片目ずつを推奨しています。

片目手術が終わったあとに思った通り近くみえていますか、遠くみえていますか、ハローグレアはどうですか、なんか見にくいと思ったことないですか、というような確認をしています。見え方に満足している場合は反対の眼も同じレンズで同じ度数を入れたらいいと思いますが、もしそうでなければ少し左右で度数をずらしたり、またはレンズを変えたりすることがよい場合があります。そのレンズを入れて見にくいのに、これから手術する方の目に同じレンズをいれても同じような結果になるかもしれません。

ではどっちの目から手術したらいいのかということですが、私としては基本は

➁ 利き目でない方の目から手術をすすめています。利き手があるように目にも効き目というものがあります。

医学的には効き目を優位眼、効き目でない方を非優位眼といいます。

普段両目で見ているので気付かないと思いますが、脳には左右どちらかの目の情報を優位に認識するという特徴があります。

自分の目がどちらが効き目か分かりますか?もし分からなければ、目の前



にわっかをつくってその穴から何かものをみてください。片目ずつとじてみて両眼みていた時と比べてください。するとどちらかの目




は両目でみていたときと同じようにみえて、もう片目は少しずれると思います。白内障がかなり進んでいる状態だと効き目がどちらか分かりにくくなりますが、ズレない方が優位眼でズレる方が非優位眼です。人はほとんど効き目でものをみています。非効き目は効き目をサポートしています。

非優位眼にパンオプティクスをいれてハロー・グレアが気になるような場合に、優位眼にビビティを入れる。するとパンオプティクスのハローグレアが軽減するという報告もされています。これは優位眼の情報を優先的に脳が認識するからです。

パンオプティクスの遠近の見え方を確保しながら、ビビティーの良い部分をいかすという手法です。論文的にも、癖がある多焦点眼内レンズは非優位眼から手術するという報告が多いですね。

ハロー・グレアの出方は術前にどの程度感じるのか予想できないので、ます非優位眼から手術して気になるようなら優位眼で癖の少ないタイプのレンズに変更するというのも良い戦略だと思っています。

実際両眼同じ多焦点眼内レンズいれるより、片目にハローグレアが少ないタイプのレンズ、今はないですがアクティブフォーカスのようなレンズをいれると遠近の感覚を失わずにハローグレアが少なくなるといった報告もされています。

非優位眼から手術をするというのが二つ目のポイントです。

最後三つ目のポイントこれも意外と大事なんですが、片目が終わったあとに満足していないということなら

➂急いでもう片目を手術をせずに様子をみることです。

当たり前な事かもしれませんが、これもとても大事です。基本片目ずつ手術のスケジュール組んでいると思いますが、術後の見え方に納得がいっていないならまずは保留にして経過をみるようにしましょう。

中には術後のドライアイや炎症が見え方に影響している場合もありますし、レンズによっては固定するまでに3カ月程度必要なものもあります。多焦点のハロー・グレアも慣れていくことが多いです。1ヶ月程度様子見て、日常生活で何に困っているかじっくり考えて頂いて、近くが見えにくいなら単焦点でもう少し近くに合わせるとか、ハロー・グレアで悩んでいるならもう片目はそれが少ないタイプのレンズをいれるということが良い結果に繋がる場合があります。

今回の話をまとめますと

  1. 片目手術終わった後に物足りなさを感じている場合ミニモノビジョンで少しずらす事が有効となる場合があります。
  2. 片目ずつ違うレンズを入れて、それぞれのレンズの良い部分を生かす方法もあります。
  3. 慎重に見え方を確認したい方は片目ずつの手術がよいでしょう
  4. あれ、思っていた感じと違うなとなった場合、もう片目の手術の日にちを延期するのも手です。

という4点です。このように必ずしも両目同じレンズで術後同じ度数が1番よいわけではありません。これは先程もいいましたが、両目でものをみているわけですが、目には優位眼があって、優位眼の情報を優先的に脳が判断しているからです。ただ必ず全員がずらしたり、レンズを別々にした方がいいわけではありません。

白内障以外に病気があったり、常に右左の見え方を確認するような神経質な方は揃えたほうがよいと思います。

適応になりやすいかなりにくいかたがいるので担当の先生とご相談していただけたらと思います。今回は白内障手術後に見にくいなと思ったときに知っていてほしいことに関してお話いたしました。

(2024.3.29)