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162.これ続けると眼瞼下垂になります

今回は眼瞼下垂になってしまう人に関してお話しいたします。眼瞼下垂とはその名前の通り、まぶた



が垂れ下がって見にくくなる病気です。目を開けようとしてもなんか目があけにくい、まぶたが重い、黒目の上がすこしまぶたで隠れている、ということないでしょうか。

「眼瞼下垂」の主な原因は加齢ではありますが、老人性のものだけでなく、普段の生活習慣が影響するものや場合によっては命に関わるような病的なものまで、様々あります。

色々ある中で、今回は眼瞼下垂を引き起こす生活習慣に関してお話しいたします。

まず自分が眼瞼下垂かどうか簡単にチェックする方法として次のことをしてみてください。

  1. 鏡の前にたって目をつぶって下さい
  2. おでこの力を使わないために指3本程度で眉毛を押さえてください
  3. ゆっくり目をあけてください
  4. 開けた状態を鏡でみてください、黒目の部分にまぶたがかかっていませんか。

少しでもかかっていたら眼瞼下垂の可能性があります。黒目の中心、瞳孔という部分にまでかかると重度になります。

眼瞼下垂症は見た目だけの問題ではありません。①視界が狭くなって見にくくなります。視界をなんとか確保しようとして、眉毛を吊り上げて眼を見開いたり、常に顎をあげながら物を見るようになります。それが➁眼精疲労や頭痛、肩こりの原因にもなります。ひどいと③吐き気、不眠症といった自律神経系の異常に繋がる場合もあります。まぶたが眼球にのし掛かると目を圧迫して④乱視が強くなることもあります。そのため白内障手術を予定している方は白内障手術前に眼瞼下垂症を先に手術する場合がありますね。

これは眼瞼下垂による乱視の影響を取り除いてからでないと、目の中に入れるレンズの度数が正確に決めれない場合があるからです。

子供の場合だと先天性の眼瞼下垂というのがあって、うまれつき眼瞼下垂の方もいます。まぶたで目が隠れたままだと視機能が発達せず⑤弱視といって視力の発達が止まってしまうような場合もあります。大人の場合瞼が下がっているだけで⑥頭の病気や神経系に異常がみつかることもあります。

このような事があるので、眼瞼下垂というと見た目だけの問題と思われがちなんですが、このような色々な症状につながっていたり命にかかわるような病気が発覚することがあるので眼科としてはあなどれない疾患の1つです。

瞼が下がっているということは、瞼の筋肉が弱くなっているはずだと思われて、眼の回りの筋肉を押して筋肉を鍛えようとしている方もいますし、たるんでくるので痩せたらよくなるんじゃないかと考えれているかたもみえますね。

ですが、そのような方法では残念ながらよくなることはないです。

それは眼瞼下垂の原因は筋肉の働きの低下や、脂肪によって瞼が下がっているわけではないからです。

まぶたはまぶたをあげなさいという①神経が働いて、➁筋肉が収縮することによって➂瞼がもちあがりますが、もう少しまぶたが上がる仕組みを説明すると



まぶたを上げる主な筋肉を上眼瞼挙筋といますがその筋肉は途中から腱膜という薄い膜になって、その膜が瞼を持ち上げる瞼板という部分に付着しています。上眼瞼挙筋という筋肉が収縮すると、その筋肉の先の薄い膜が瞼板を引っ張って瞼を持ち上げています。すなわち神経→筋肉→腱膜→腱板という順で力が伝わっています。

このどこかに異常があると瞼があがらないんですが、このうち




眼瞼下垂の原因として最も多いのが、挙筋腱膜という腱膜の異常です。挙筋腱膜が瞼板から剥がれてしまったり薄くなったりしています。するとどれだけ筋肉が一生懸命頑張っても腱膜に力が伝わらないので瞼は持ち上がりません。このタイプの眼瞼下垂を腱膜性眼瞼下垂といいますが眼瞼下垂の一番多いタイプになります。

腱膜は繊維状の膜です。筋肉ではないのでトレーニングなどで鍛えることはできません。よく例えられるのが「伸びきったゴム」です、伸びきったゴムはどうやっても元通りのゴムに戻りませんよね。

そのためまぶたの上を強くマッサージしても、腱膜の機能が改善する事がないのでよくなりません。よくなるどころか悪化する可能性もあるので強くもんだりするような事はしないでください。眼瞼下垂を悪化させないためのポイントの1つめは、まぶたが下がってきたなと思ってもマッサージをしないでください。

まぶたをマッサージしたり、意図的に過剰に動かしても、緩んだり・断絶した挙筋腱膜は決して戻りません。過度のマッサージは逆に症状を悪化させる可能性があります。よくしてやろうとしていた事が悪化の原因になります。

そのため2つ目に避けたい事は強く擦ることです。花粉症やアトピーの方はまぶたを強く擦ることがありますよね。物理的な刺激が一番良くないため注意してください。メイクのクレンジングのも優しく落とすようにしてください。

また、紫外線も刺激になります。日差しが強い日は日焼け止めを塗るなどして日焼け対策を行ってください 。花粉症の方は目薬を早めに処方してもらってください。痒みの症状がひどい状態になってからでは目薬の効果は限定的です。点眼以外の方法として、痒みのコントロールには冷たいタオルなどで冷やすことも有効です。目薬も冷やして使うと抗炎症効果が高まるので冷蔵庫での保管がおススメです。中々目薬をさしても痒みが治まらない方は参考にしてください。

注意したい事、3つ目はハードコンタクトレンズです。ソフトは影響しにくいと言われていますが、長年、20年、30年とハードコンタクトレンズをしていると眼瞼下垂の原因になることがあります。日本の報告によるとハードコンタクトレンズをしている人はしていない人と比べて眼瞼下垂のリスクが20倍高いという報告がされています。人は1日2万回程度瞬きをしています。ハードコンタクトレンズは素材が硬いですよね。硬い異物を挿入した状態で一日に何千回も瞬きをすることが瞼の裏に影響し腱膜を薄く伸ばして機能を弱める原因になります。ハードコンタクトレンズはソフトにない特徴があって、①強い近視や遠視、乱視にも度数の設定が広いのに対してソフトコンタクトには希望した度数が狭いです。そのため近視、遠視、乱視の程度によってはハードしか選択肢がないという方もみえますし

➁一般的にハードの方が見え方が鮮明なのでハードの見え方に慣れている方はソフトの見え方がぼやっとして見にくいと感じる事があります。

そのためすんなりハードをやめる事ができないことがあるので中々難しいのですが、少し瞼下がってきたなと思ったら、度があればソフト変更するか、または眼鏡にするか、ハードをやめれないならコンタクトレンズの装用時間を極力短くするようにアドバイスしています。軽い眼瞼下垂ならソフトに変更することで戻る場合もあります。

4つ目に注意したいことはマスカラでまつ毛を盛ったり、つけまつ毛やエクステをしている方です。つけまつ毛などをしている状態は瞼におもりが乗っている状態です。重いエクステは、瞼にとって余計な重みでしかありません。必要以上の負担が継続的にかかるとやはり腱膜を伸ばす原因になります。マスカラやアイプチは女性の方が若い時からされているので、若くても眼瞼下垂症になる事があるので注意が必要です。

5つ目、糖尿病です。糖尿病による神経障害によって、まぶたが下がったまま上げにくくなることがあります。糖尿病になると細かい血管から障害を受けるようになります。

血流が悪くることで瞼をあげる神経にダメージを与えて機能しなくなります。眼瞼下垂の原因になるだけでなく、目を動かす神経を麻痺させて複視といいますが、物がだぶってみえるようになる場合もあります。眼瞼下垂症が軽度なら、血糖値を改善させることで良くなることがありますが、改善が見られないようであれば、手術が必要になる場合があります。糖尿病の治療中の方は気を付けてください。

その他に脳動脈瘤や脳腫瘍といった頭の病気や重症筋無力症のような神経の病気が原因になっている場合があります。この場合眼瞼下垂以外の症状を伴っている事が多いです。脳動脈瘤や脳腫瘍といった頭の病気なら、物が二重にみえる、黒目




の大きさが左右で違うといった症状が出ることがあります。重症筋無力症は朝よりも夕方になるにつれて症状が悪くなる「日内変動」があるのが特徴です。眼瞼下垂以外にこのような症状があれば、それはもはや加齢による眼瞼下垂ではありません。

神経の病気の可能性があるのでMRIなどの検査が必要となる場合があります。年だから仕方ないと放置していたのが、実はこのような病気だったと発覚することがあります。徐々に瞼が下がってきたという場合、加齢性の病気の可能性が高いですが、急に瞼が下がった、ものがダブって見えるなど眼瞼下垂以外の症状があれば脳動脈瘤のような危険なサインの場合もあります。

心当たりがある方は自己判断せずに早めに受診されるのもいいかもしません。

糖尿病や頭の問題は神経に原因があるで糖尿病なら糖尿病のコントロールが重要ですし、頭の病気の影響なら脳外科に受診していただく必要があります。

では通常の腱膜が弱くなった一番多いタイプの加齢性の眼瞼下垂はというと、薬や注射では治せないので根本的には手術以外方法がありません。

手術で弱くなった膜をしっかり固定させて瞼の動きが正しくなるようします。ご高齢の方は、腱膜以外に皮膚のたるみがまぶたを開けにくくしている事があるのでたるんだ皮膚を切除する場合もあります。

眼瞼下垂症と診断されれば保険診療での手術が可能です。これも見た目だけの問題と思われがちなので、瞼の手術というと美容診療で治療費が高いんでしょうかと言われ事がありますが眼瞼下垂症は病気なので保険での治療が可能です。二重幅もしっかり作りたいなど美容的な要望まで言われると保険での対応できませんと言われる場合がありますが、機能的に治すということなら保険での対応が可能です。まずは眼科受診していただいて、ご相談されるのがよいかなと思います。

今回の話をまとめますと

①眼瞼下垂の原因で最も多いのが腱膜の異常による腱膜性の眼瞼下垂です。

➁腱膜は膜状の組織です。マッサージしても回復することがありません。

➂物理的な刺激に弱いです。強く押したり、擦ったりしないようにしてください。

④ハードコンタクト、エクステなどによって若くから眼瞼下垂の原因になることがあります。

⑤糖尿病や頭の病気が眼瞼下垂の原因になっている場合があるので注意してください。

という5点です。

外来ではこの眼瞼下垂症で悩んでいる方、結構みえます。眠くないのに眠くみられるとか、写真とるときに目を開けているのにもっと目を開けてくださいと言われてしまったとか、せっかく白内障手術して見やすくなったのに、今度はまぶたが下がってきたので見にくくなった。といわれることもあります。

歳のせいかなと思っても、自己判断しないようにしてください。

頭の病気が原因であったりしますし、中には緑内障による視野欠損の影響だったという事が分かる事あります。

そのため眼科に行っていただいてまずご相談していただくのがいいかなと思います。

今回は眼瞼下垂症になりやすい人の特徴に関してお話いたしました。

(2024.4.2)