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103. 白内障手術 避ける方法

今回は白内障手術を避けるためにはということに関してお話させて頂きます。現在白内障手術は国内で年間150万件ほどされている手術です。術後視機能が回復する方が多いので本当に手術してよかった、もっと早く手術をしておけばよかったと言われる方が多いです。その一方で様々な理由で白内障手術を生涯受けたくないと言われる方が多いのもまた事実です。

今回は白内障をあまり進行させずにできるだけ自分の水晶体を大切にしたいと考えている方に知っていただきたい生活上のポイントに関してお話させていただきます。

白内障の最も大きな原因は加齢です。50歳で50%、80歳以上になると100%発症すると言われています。白内障は加齢現象なので完全に防ぐ事はできません。ですが、白内障の進行具合は人それぞれ違います。80台の方で白内障があったとしても程度が軽くて手術を必要としない方もみえます。逆に50代と若くても白内障手術が必要な方もみえます。なぜこのような差があるのかというと年齢以外にも糖尿病や低栄養、外傷、紫外線、ステロイドのような内服薬を使っているかということで白内障の進み方が違うからです。

まず1つ目に注意していただきたいことは外出時にサングラスをして紫外線を避けることです。紫外線は日焼けやシミ、しわ、皮膚がんの原因になることが広く知られているように、強いエネルギーをもっています。紫外線を浴び過ぎると「活性酸素」が発症します。この活性酸素が水晶体にダメージを与えて、そのダメージが蓄積することで白内障になります。事実、世界保健機構、WHOから「白内障の原因の20%は紫外線である」と報告されています。これは紫外線が多い熱帯地域では白内障の有病率が非常に高くて白内障による失明率が高いことが判明しているからです。

特に屋外での活動時間が長い方は天気が良い日だけでなく曇りの日もサングラスやUVカットのコンタクトレンズをされるのがよいです。サングラスのみでは眼鏡の隙間から紫外線が入るので可能ならつばの広い帽子もされるようにしてください。合わせることによってさらに予防効果が期待できます。


よく誤解されている事としてサングラスを選ぶときどれぐらいレンズが濃いものを選べば良いでしょうかと聞かれます。サングラスは色が濃いほどUVカット効果が高まるわけではありません。UVカット率を見るようにしてください。暗いところにいると瞳が開くということから分かるように、色が濃くてそしてUVカットの効果がないレンズを選ぶと瞳が開いて多くの紫外線を浴びる原因になります。通常眼鏡屋さんで売られているサングラスは99%UVカットのものになっていますので、迷ったら眼鏡屋さんで買われるのが確実だと思います。

2つ目、アルコールを飲みすぎないことです。アルコールを飲みすぎるとアルコールの分解過程で活性酸素が作られて、水晶体のタンパク質が凝集

し白内障につながる可能性が指摘されています。ただし最近の論文で同じアルコールでも赤ワインは白内障の進行を抑えると報告されています。1日1杯の赤ワインを飲んでいる人は飲んでいない人と比べて白内障手術を受けた割合が14%低く抑えられたとされています。赤ワインには強力な抗酸化作用があるレスベラトロールという天然ポリフェノールが多く含まれているからではないかと考えられています。

アルコールの適量に関してですが、厚生労働省の示す指標では、節度ある適度な飲酒は「1日平均純アルコールにして約20g」とされています。赤ワインなら200ml程度の量になります。もちろん無理に赤ワインを毎日飲んで下さいというわけではありませんが、飲酒の習慣がある方はお酒を選ばれる際に参考にされてもいいかもしれません。


3つ目、タバコを吸われている方は禁煙するようにしてください。タバコのパッケージをみると肺癌、心筋梗塞、脳卒中などの危険性を高めますとの警告表示がありますが、タバコは目にも害があります。その1つが白内障です。タバコを吸う人は3倍早く白内障が進むと言われています。タバコの本数が多いほどそのリスクが高くなります。タバコの煙を体内に取り込む事で大量の活性酸素が作られます。水晶体のタンパク質の構造を変化させて白内障を進行させます。タンパク質は一度変性すると元には戻りません。今回の事とは別ですがタバコは加齢黄斑変性症の原因にもなります。注射やレーザーによる治療が行われるんですが、治療しても中心暗点や変視症といった後遺症を残す事がほとんどです。禁煙した後に白内障の進行が大きく抑制されることもわかっています。できるだけ早めに禁煙するようにしてください。

4つ目糖分の取りすぎに注意してください。糖尿病の方は特に注意が必要です。白内障が正常の方より5倍早く進行します。水晶体の成分のタンパク質が変性する原因は主に2つあって先程お話した紫外線やタバコといった酸化ストレスともう1つは食事などによる糖化ストレスがあります。過剰な糖分は水晶体のタンパク質と結合して糖化反応が起きます。これを終末糖化産物AGEsといいますが、白内障だけでなく体内のコラーゲン繊維と結合し動脈硬化、骨粗しょう症、腎疾患、アルツハイマー認知症のような加齢と関係がある様々な疾患を引き起こします。

糖尿病でないとしてもこの糖化反応は慢性的な高血糖で起きますので注意が必要です。糖化を予防するにはやはり食生活が重要です。①お菓子や清涼飲料水の取りすぎに注意する ②一気に食べたり飲んだりしないようにする ③低GI食品を取る ④間食を避ける といった事に気を付けてみてください。糖尿病は白内障になるだけでなく、糖尿病網膜症の原因になります。糖尿病を評価する指標にHbA1cというものがあります。この値が7.0以上であった場合5年程度で糖尿病網膜症が発症すると言われています。糖尿病網膜症は中途失明2位の病気です。糖尿病の方は特に注意するようにしてください。


5つ目抗酸化物質をとるようにしてください。抗酸化物質とはルテインやゼアキサンチン、ビタミンC,Eを含んでいるものです。ルテイン、ゼアキサンチンはカロテノイドと呼ばれる天然色素の1種で非常に強い抗酸化力があり、天然のサングラスと言われています。白内障の原因となる酸化ストレスから目を守ってくれます。ルテイン、ゼアキサンチンは水晶体だけでなく黄斑部にも多く含まれている事がわかっています。これらは体内で合成できないので食事やサプリなどから摂る必要があって、これらを積極的に取ることで白内障の中でも核白内障であったり加齢黄斑変性症のリスクが低下することが報告されています。

ルテインが多く含まれているものはケール、ブロッコリー、ほうれん草です。ゼアキサンチンは卵黄、トウモロコシ、パプリカに含まれています。

ビタミンCとEは抗酸化ビタミンと言われています。アスコルビン酸として知られているビタミンCはコラーゲン合成のために必要なもので肌のハリに深く関わっている事が知られていますが、抗酸化作用があり白内障進行抑制効果があることも分かっています。オレンジ、パパイヤ、イチゴなどの果実やブロッコリーに含まれています。ビタミンEのトコフェロールにも強力な抗酸化作用があることが知られています。アーモンドやピーナッツ、緑黄色野菜に含まれています。

ルテイン、ゼアキサンチン、ビタミンC,Eをバランスよく摂ることが目の健康維持のため重要とされています。これらを含んだ複合サプリメントがありますので、足りないなと感じられている方は飲んでいただくのもいいと思います。今回の話をまとめますと

①屋外での活動が多い方はサングラスやつば付きの帽子をされるようにしてください。

②アルコールの過剰飲酒は白内障のリスクになります。1日1杯程度の赤ワインは白内障の予防になるかもしれません。

③タバコの煙が体内に入ると大量の活性酸素が作られます。

④慢性的な高血糖が白内障を進めます。糖化の高い食事を避けるようにしてください。

⑤抗酸化作用が強いルテインやゼアキサンチン、ビタミンC,Eが含まれているものを摂るようにしてください。

という5点です。白内障は加齢現象であるため完全に避ける事はやはり不可能です。先程のお話にはあげませんでしたが、初期の白内障にはピレノキシンという白内障予防の点眼も白内障進行抑制に期待できます。タンパク質の変性を抑えて白内障の進行を遅らせます。このような目薬やきちんとした生活習慣を送れている方は年齢に対して白内障があまりないなと実感することがあります。水晶体はタンパク質でできているので一度変性すると元には戻りません。そのため若い時から生活習慣が大切ですし、まだ視力がよくて白内障はあるけど手術の必要がないと言われいる方は特に参考にしていただけたらと思います。

今回は白内障手術を避けるためにはということに関してお話させていただきました。


(2022.11.16)