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94. 危険!〇〇すると眼瞼下垂に!

今回は眼瞼下垂になりやすい人についてお話させていただきます。眼瞼下垂

とは上まぶたが十分に上がらず、下がってくる状態の事をいいます。瞼が下がって黒目にまでかかってくると見にくくなって、上方の視界が狭く感じるようになります。

視覚的な問題だけではありません。なんとか目をあけようとしますが、思った程瞼があがらないのでおでこや眉間、肩にまで余計な力が入ってしまって、肩凝り、頭痛のような身体的症状やおでこに深いシワができる原因になる事があります。

また眠くもないのに眠たそうな見た目になるので見た目的な問題も出てきてしまいます。

まぶたを上げるときは眼瞼挙筋

という筋肉とその筋肉の先にある挙筋腱膜という膜、そしてその膜が瞼板というところにくっついていて眼瞼挙筋が収縮したりすることでまぶたを上げたり閉じたりしています。加齢による眼瞼下垂の原因はこのどこにあるかというと挙筋腱膜

という膜が問題になっている事が多いです。その膜の部分が弱くなったり場合によっては腱板から外れていることによって十分に機能しなくなる事が原因です。これを腱膜性眼瞼下垂といいますが、加齢性の眼瞼下垂でもっとも多いタイプです。

吊り上げる筋肉自体は正常であることが多いんですが、接着している膜が弱く伸びきってしまっていたり、または外れたりしているので瞼が十分にあがりません。

よく目の瞬き運動や目のマッサージをするなどして瞼の筋肉を鍛えていますと言われる方もおられますが、筋肉自体は正常である事が多いので一時的に改善することもあるかもしれませんが、改善しないことが多いと思います。挙筋腱膜という膜に問題があるので自力での回復が難しいんですね。この部分は非常に薄くて弱い部分なんです。内服薬や注射のような事でよくなればいいんですが、ある程度すすむと手術以外に治療方法はありません。

この挙筋腱膜という部位は加齢と共に弱くなっていくことが多いんですが、年齢だけが原因ではない場合があります。実は日頃何気なくしている習慣が瞼を下げている原因になっているいうこともあるので注意が必要です。

今回は眼瞼下垂になりやすい人の特徴と瞼を下げる意外な病気に関してお話させていただきます。

50歳以降の眼瞼下垂の原因は冒頭でもお話しましたが、挙筋腱膜という瞼をあげる筋肉の先にある膜が弱くなっていることが多いです。一番多いのは加齢性のものです。人は1日に2万回瞬きをしていますが、日々の伸びたり縮んだりという瞬きの動作で少しずつこの膜が弱くなってしまいます。ただ年齢だけが原因でない場合もあります。

例えばハードコンタクトレンズをしている方です。ハードコンタクトレンズをしている人が全員なるわけではありませんが、20年、30年長年しているとなりやすくなると言われています。コンタクトを出し入れしたりするときに瞼を上方に引っ張ったりする動作であったり、ハードは素材が固いので日々のまばたきの動作によって瞼に負担になっていると考えられています。一方でソフトコンタクトレンズは素材が柔らかいので一般的に瞼への影響はハード程ははないと言われています。ハードコンタクトレンズをしている人はしていない人より20倍近く瞼が下がりやすいという研究データもあるので注意が必要です。少し瞼が落ちてきたなと思ったらソフトコンタクトレンズに変更することで眼瞼下垂が改善したという報告もあります。ハードコンタクトレンズはソフトより光学的に見え方がよいということと度数の幅がソフトより広く設定されているので、強めの近視や乱視がある方はハードしか使えないという方も多いんですが、長年ハードコンタクトレンズをされている方は眼鏡への変更だったり何らか対策が必要かもしれません。


2つ目、目のかゆみなどで頻回にまぶたをさわる方も注意が必要です。コンタクトレンズの話と同じですが、瞼への慢性的な刺激によって挙筋腱膜が弱くなりやすいです。アトピー性皮膚炎や花粉症の方はまぶたを強く擦ることで眼瞼下垂になる可能性が高くなります。毎年花粉症で瞼を擦ることを自覚されている方は花粉飛散時期を確認するようにしてください。飛散2週間前からの目薬で目の痒みをだいぶ軽減できます。痒くなってから目薬をしても効果がでるのに時間がかかります。

そして3つ目あまり知られていませんが女性の方はマツエクやアイプチ、アイラインのような事でも眼瞼下垂の原因になります。これは若い方でもなる場合がありますので注意が必要です。マツエクは自然な状態の目まつげにとっては余計な重みでしかありません。これはマツエクに限った事ではありません、つけまつげやマスカラにも言えることです。最近だとマスク生活が当たり前になって目元にフォーカスさることが多くなって少し派手にされる方も多いようです。目元を大きく美しく見せる行為だと思いますが、マツエクの本数が多ければそれだけ重いものを目につけていることになります。

左右で目の開き方に差がある、二重幅が広くなってきた、最近肩凝りがひどいなど何らか自覚症状が現れたときには注意が必要かもしれないですね。マツエクを全くしてはいけないというわけではありませんが、何らか症状がある方はもう少し軽いものに変更されることがいいかもしれません。


まぶたを上げる筋肉やその膜は薄くて非常に弱いんです。瞼への刺激をできるだけ少なくすることが大切です。

自分が眼瞼下垂か簡単に自己診断する方法として、まず鏡にたいして顔をまっすぐに向けて目を軽く閉じます。そして目をあけてまぶたが黒目の中心、瞳孔にかかっているようだったら眼瞼下垂の可能性があります。

薬などでは治らないので治療をするとなると手術が必要です。手術で弱くなった膜をしっかり固定させて瞼の動きが正しくなるようします。

眼瞼下垂は保険で手術できるんでしょうか?と聞かれること多いですが、眼瞼下垂症と診断されれば保険診療での手術が可能です。

このように聞かれるのは瞼の手術と言うと美容の分野に入るんではないかと思われている方が多いからだと思いますが、眼瞼下垂は病気です。見た目的な問題だけでなく黒目にかかれば見にくくなりますし、それだけでなく肩凝り、頭痛のような症状を引き起こします。

保険診療の場合は機能を回復することが治療の目的になります。すなわち弱くなった筋肉の膜をしっかり瞼板に固定させてまぶたの動きを正常に戻すという事を目的としています。二重幅など見た目の部分まで気にされるということですと、本来保険で適応とされる状態であったとしても自由診療の対象となる場合があります。

このように眼瞼下垂症は主に加齢によって挙筋腱膜という瞼を挙げる筋肉の膜の部分が弱くなることが原因ですが、これとは別に意外なことで瞼が下がる事があるので注意が必要です。

眼瞼下垂の原因が実は頭の病気だったという事もあるんです。瞼が下がってきただけでなく、物が二重に見える、黒目の大きさが違う

というような事があればその眼瞼下垂はもはや加齢によるものでない可能性が高いです。脳動脈瘤といった病気や脳腫瘍が見つかる場合があります。どちらも命に関わるような危険な病気です。瞼を上げる神経は動眼神経という神経が働いています。この神経が動脈瘤や腫瘍で圧迫される事で瞼が下げっていたなんて事もあります。動眼神経が麻痺すると瞼が下がるだけでなく、目の動きが悪くなって二重にみえる複視といった症状や黒目が大きくなったりするんです。年だから仕方ないと放置していると危険な場合があるので、今お話した内容に心当たりがある方は自己判断せずに早めに受診されるのもいいかもしません。今回のお話をまとめますと

①加齢性の眼瞼下垂は眼瞼挙筋の先にある挙筋腱膜という膜が弱くなることが原因です。

②筋肉トレーニングであったり、内服薬のようなものでは中々改善しません。

③ハードコンタクトレンズや瞼を擦ったり、マツエクのような瞼を刺激する行為によって悪くなりやすいです。

④眼瞼下垂の原因が必ずしも加齢によるものではありません。頭の病気が原因になっている可能性があります。

という4点です。眼瞼下垂で悩まれている方は多いです。どんどん瞼が下がってくることで視界が狭くなるんですよね。そうなると顎を挙げないと真っ直ぐ見えなくなるので写真撮影の時に顎引いてくださいと言われることがあってはっとしましたと言われる患者さんもおられます。瞼のことは形成外科、眼科、または皮膚科どこ行ったらいいのと悩まれる方も多いんですが、可能でしたら眼瞼下垂症かどうかまずは眼科受診していただきたいと思っています。瞼のせいで見にくいと思っていたら実は白内障であったりまたは緑内障があって上方の視野障害が原因だったなんて事もよく経験します。今回のお話で思い当たるような事があればまずは気軽にご相談頂けたらと思います。今回は眼瞼下垂に関してお話させていただきました。


(2022.10.3)