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93. 医者が飲まない目を悪くする飲み物

今回は眼科医の私が気を付けている飲み物または飲まないようにしている飲み物に関してお話させて頂きます。

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このページの解説は以下のYouTubeでもしています

https://youtu.be/yELnizTAWcc

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普段何気なく飲んでいる飲み物、実は体に悪いかもしれないことはご存知でしょうか?テレビのCMや広告で飲み物の宣伝をみていると、これを飲めば眠気が覚めてスッキリしていいんだ、ゼロカロリー凄いと思わせる内容のもの見かけた事
あると思います。宣伝されているものが必ずしも悪いわけではありませんが、少ない量であれば問題無くても、飲み過ぎてしまうと健康に影響が出てしまう事もあります。過剰に飲むことが習慣化してしまうと知らぬ間に中毒症状を起こして救急搬送されてしまうような事もあるんです。


今回は眼科医目線で悪影響を及ぼす可能性のある飲み物を紹介します。

まず1つ目はコーヒーです。コーヒーと緑内障の関係は多数の論文で報告されています。国内での報告だとコーヒーを飲むことによる緑内障への影響はあまりないう報告もあります。一方で最近の海外の論文

だとコーヒーが緑内障に影響する可能性が報告されています。コーヒーが好きな方も多いと思いますし、飲んではいけないものとするのは現実的ではないと思っていますが、取りすぎると問題になることがあります。

1日2杯程度の量でしたら問題ありませんが、3杯以上は飲まない方がいい可能性あります。カフェインは交換神経という興奮する神経を刺激します。そのため眠気覚ましに使われる方も多いと思います。

カフェインを過剰に接種すると心拍数が増加したり、不眠症の原因になったりひどいと落ち込みやすくなり精神的な症状まで影響する場合があります。過剰なカフェインによる眼科的な問題点は2つあります。1つは血管を収縮させる事で眼血流を低下させる可能性があることです。緑内障の方には注意が必要です。緑内障は高めの眼圧が視神経に影響を与えて視野障害をきたす病気です。そのため何より眼圧を下げる治療が最優先されます。しかし日本人を含めたアジア人は眼圧が正常だけど緑内障になる病気のため血流障害などが関与している可能性が以前から言われています。そのため眼内の血流障害に影響を及ぼす可能性があることはできるだけ注意しなければなりません。

そしてもう1つ、海外の論文で

コーヒーを過剰に飲むことで落屑緑内障になる可能性も指摘されています。落屑緑内障とは目の中の隅角という水の出口に眼内の老廃物が貯まることで眼圧上昇をきたし緑内障になってしまう病気です。正常眼圧緑内障と違い眼圧の値が高いので、進行速度が早いタイプの緑内障になります。この報告でも3杯以上のコーヒーを飲み続けることでリスクになると言われています。また興味深いことにコーヒー以外のカフェインが含まれたもの、紅茶やチョコレート、栄養ドリンクは問題なかったと報告しております。コーヒーを飲むとホモシステインというアミノ酸の濃度が上がることが理由としてあげられているようです。高ホモシステイン血症は組織障害を起こすことで知られています。眼内の組織にも障害を与えることで落屑緑内障への関与があるのではないかと考えられています。

そのような報告からも完全にコーヒーをやめる必要はありませんが、1日コーヒー3杯以上摂るのは注意したほうがようそうです。

そして2つ目は人工甘味料が入っている飲み物でカロリー0と書かれている飲み物です。代表的な人工甘味料はアスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロールというものがあります。ダイエット中にカロリーゼロの飲み物などを飲まれた事はないでしょうか?炭酸も含まれていて空腹感をごまかしたりできますよね。しかしカロリーゼロだからどれだけのんでもいいわけではありません。実はこのようなダイエット清涼飲料水で糖尿病のリスクが高くなったりメタボリックシンドロームになる可能性が高まる報告がたくさん出ています。人工甘味料でカロリーゼロなのになぜ糖尿病やメタボになるの?って思いますよね。実際人工甘味料は強い甘みを感じますが、血糖値の上昇も上がりませんしカロリーはゼロです。実はこの血糖値が上がらないことが悪影響を与えると報告されています。

通常人は甘みを感じると血糖値が上昇するんですが、人工甘味料の場合は甘みを感じているにも関わらず血糖値が上昇せずエネルギーも産生されません。この一連の流れに脳が混乱します。甘みを感じたら血糖値が上がるはずなのに上がってこない、それならもっと食べないといけないんじゃないかということで過食を促す司令を出すんですね。それが摂食行動につながりメタボの原因になると考えられています。

また最近の報告で人工甘味料で腸内細菌叢が変化している可能性が指摘されています。腸内環境が悪くなるとインスリンという血糖を下げるホルモンの分泌が悪くなります。本来食事を取って血糖値が上昇するとインスリンが分泌されて血糖値を下げます。ところがインスリンの分泌が悪い身体に慣れてしまうと食事を取っているのにインスリンの分泌がされないために高血糖の状態が続き糖尿病になりやすくなるんです。

糖尿病になってしまえば眼科の場合糖尿病網膜症になる可能性が出てきます。中途失明一位の緑内障に続いて第二位は糖尿病網膜症です。日本人に多い緑内障は中途失明一位ではありますが、一般的には早期発見しきちんと通院できれば失明する事はほとんどない病気です。一方で糖尿病網膜症は緑内障と違って目薬で治療するのではなくてレーザーであったり注射であったり治療費がかかるだけでなく難治性の場合があります。低カロリーなものが必ずしもいいというわけでは決してありません。安易にゼロカロリーの清涼飲料水を常用することは避けるようにしてください。

最後はエナジードリンクです。エナジードリンクの成分のほとんどは大量のカフェインと糖でできております。これを飲むとスッキリして頭が冴えるとして習慣化して飲まれている方もおられます。これはカフェインによる興奮作用と一気に血糖値が上がるからです。カフェインには依存性があります。コーヒーにもカフェインが含まれいてエナジードリンクよりも含有量は多いのですが、多くの方は温かいコーヒーを飲まれていると思いますので一気に飲むような事は通常ないですよね。一方でエナジードリンクは一気に飲まれることが多く、急激なカフェインの血中濃度の上昇が問題になることがあります。切れ味の良さに習慣化し集中力が切れる度に飲む事などを繰り返した結果命に関わることもあるようです。エナジードリンクとお酒を同時摂取するとカフェインがアルコールの鎮静効果を抑えてしまうため、結果的にアルコールの過剰摂取となるため注意する必要があることも指摘されています。

眼科の場合2014年の研究

で正常者にエナジードリンクを飲んで目の周りの視神経周辺の血流を評価した論文がでています。それによると正常者でも血管収縮作用が確認されて、視神経周辺の血中酸素濃度が10%弱低下したと報告されています。そのため緑内障の方には注意する必要があると言われています。カフェインの半減期は4時間程度あり、長く効果が続きます。このような事を知った上で時々眠気覚ましに飲む程度ならいいと思いますが、常用するのはさけられた方がいいと思います。

今回のお話をまとめますと

①コーヒーには多量のカフェインが含まれています。3杯以上になると血管収縮作用により緑内障の方には問題になる場合がありますし、落屑緑内障の原因になる事もあります。

②人工甘味料は甘いのにカロリーゼロで血糖値をあげないことが脳を混乱させて過食行動に繋がる可能性があります。また腸内細菌叢を変化させる事で血糖値を下げるインスリンの分泌が悪くなり糖尿病のリスクになる可能性があります。

③エナジードリンクは大量のカフェインと糖が含まれています。一気飲みすることでカフェイン中毒になる可能性があります。血管収縮作用により視神経周囲の血管の酸素飽和度が低下した報告があり緑内障の方は注意が必要です。

という3点です。知らずしてこのような飲み物を飲んで習慣化してしまうと、身体に害となる可能性があります。じゃあ何を飲んだらいいのかというとオススメしたいのは温かいお茶であったり水です。お茶にもカフェインが含まれていますが、コーヒーと比べると量が少ないので問題になることはほとんどありません。緑茶にはポリフェノールの1種であるフラボノイドが含まれています。視神経の保護効果が言われているので代わりに飲まれるのもいいと思います。

今回は眼科医の私が絶対飲まない飲み物に関してお話させて頂きました。


(2022.9.28)