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65.白内障手術で認知症予防?!

白内障手術の目的は濁ったレンズを除去して綺麗なレンズに入れ替える事で視力の回復を期待する手術です。白内障手術をすることで単に視力が回復するだけでなく近視や乱視を治せたりしますし、現在は多焦点眼内レンズのように老眼治療も兼ねるような事ができまして単に視覚的な改善だけでなくこのような+αの付加価値がついた手術になっております。

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このページの解説は以下のYouTubeでもしています

https://youtu.be/fNhqsc8CrjU

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白内障手術は視機能を改善することがもちろん一番の目的なのですが、白内障を治療することで様々な全身的なメリットが有ることも報告されております。白内障になると単に見にくくなるだけなくて見にくくなる事で全身的に悪い影響をきたすことがあるんですね。そのような悪影響を白内障手術により改善できる可能性があるんです。今回は白内障手術によりどのような全身的なメリットがあるのかということを主に報告されているものを中心に4つお話させていただきます。

その4つとは、①認知症への予防効果、②睡眠障害の改善、③夜間高血圧を下げる

④怪我のリスクを減らす、という4点です。白内障手術をすると単に視覚的な改善だけではなくこのような全身的な効果が期待できます。眼の手術なのに何故このような全身的な影響があるのかそれぞれ説明させていただきます。

まず1つ目、認知機能の改善に関してです。

人は視覚、聴覚、味覚、臭覚、触覚の五感で物事を判断しているのですが、その内視覚はどの程度を占めているかご存知でしょうか。様々な文献で報告されていますが、8割近く視覚が占めていると言われています。この事から分かるように視機能が落ちてしまうとあらゆる判断能力ががくっと低下してしまうんです。白内障になるとはっきりした画像が写りませんので常にピンぼけした画像で生活を送ることになります。その事が脳への刺激が減ってしまうんです。脳は使われないとどんどん衰退していき認知症がすすんでいく原因になると言われています。特に問題なのは両目とも白内障の方です。片目のみの白内障の場合はもう片目が見えているため認知機能に関しては問題にならない事が多いです。両目ともに白内障がある方はとりあえず片目だけでも手術をしておいた方がいいかもしれません。

眼科医はよく経験するのですが、認知症だと思われていた方が白内障手術を受けた後に見えるようになっておじいちゃんもしくはおばあちゃんが今までできなかった身の回りのことができるようになってびっくりしてます。と家族の方から報告受ける事があります。年齢的に高齢な場合認知症になっても年だから仕方ないと思われていたようですが、認知機能低下の原因が目であった事もこのようにあるんですね。このように視覚機能が回復するだけで認知機能が回復する場合があります。ですが進行した認知症の方には残念ながら効果がありません。それは認知症は神経の病気でありますので、重度の認知症に対しては大きな効果が期待できないんですね。軽度の認知機能の低下の方なら白内障手術によりある程度認知機能が回復することがありますので、認知症になる前に早めに白内障手術を検討されることはいいことだと思います。

次に二つ目睡眠機能の改善です。これは睡眠に関係するホルモンと関係があります。メラトニンというホルモンです。メラトニンとは眠りホルモンです。この眠りホルモンが分泌されるほど眠くなります。この眠りホルモンは目から入ってくる光によって分泌の量が調節されておりまして、日中はこのホルモンが少なくて夜に増加するという分泌のリズムがあります。白内障がない方は目の中にしっかり光が届くので眠りホルモンの分泌が正しくされるのですが、白内障が進むと目の中に入る光の量が減ります。そのためホルモンの分泌のバランスが悪くなり、寝付きが悪くなったり、眠りが浅くなったりします。質の悪い睡眠は日常生活にも影響を及ぼします。ですが白内障手術を行い濁ったレンズが除去されて綺麗な人工レンズに置き換わると入ってくる光の量が正常に戻るので眠りホルモンのバランスが改善されるんですね。

白内障手術により睡眠時間が改善された、それが幸福感の上昇にも繋がったというような報告もあるぐらい睡眠はとても大事なんです。経験あると思いますが、しっかり眠れないときは朝から体調がよくない事がありますよね。それが毎日続くと様々な身体への悪影響の原因になるんです。

元の睡眠リズムに戻ると日々のリズムが戻りアクティブな生活が送れるようになることが幸福感につながるようです。白内障手術でこのように睡眠時間が改善されることがあるんです。

次の三つ目は夜間高血圧の改善です。

通常血圧は日中よりも夜間の方がリラックスできているので就寝中は血圧は下がります。ですが寝ていてリラックスしているにも関わらず血圧が下がらず高い血圧が続くことがあるんです。これを夜間高血圧といいます。この原因は色々あるのですが自律神経のバランスが乱れている事が1つの原因として考えられています。先程の白内障による睡眠障害と関係があるのですが、寝不足になるとストレスホルモンをうまくコントロールできません。また眠りが浅く寝ているにも関わらず緊張していて完全にリラックスすることができなくなるんですね。この事が本来血圧が下がるはずなのに下がらず高い血圧が持続することの原因になるんです。夜間高血圧は脳卒中であったり心臓疾患への病気の原因になるので注意が必要です。特に脳梗塞は発症しやすい時間帯がありまして日中よりも夜間に多いんですね。夜に多い理由としてこの夜間高血圧が1つの原因と考えられていまして、夜間高血圧を下げることが大切であると言われています。

白内障手術術後、睡眠状態が改善された、夜きちんと寝れることにより夜間高血圧が改善されることに繋がったとも言われています。そのような夜間高血圧の改善が3つ目です。

そして最後怪我のリスクが下がるということです。交通事故の場合、何らか視覚的障害がある方はなにもない方よりも3倍近く発症していると言われています。

白内障が進むと視力が落ちて一瞬の判断力が落ちますし、運転中対向車のライトが眩しくて視界が悪くなります。これは羞明感といいますが白内障に特徴的な症状です。また信号機が二重三重にみえたりする複視といった症状が出現し運転が難しくなります。このような状態が交通事故のリスクを高めていると考えられていますが、白内障手術を受けることで交通事故のリスクが減るというような研究も出ております。

普段外出が好きな方は、転倒に注意が必要です。両眼に白内障がある方は2倍近く転倒のリスクがあると言われています。仮に転倒したとしても軽い怪我程度で済めばいいのですが、骨折して入院が必要になってしまったとなると大変ですし、ご高齢の方は入院することで一気に認知症が進む事があるので注意が必要です。


以上4点白内障手術で得られる効果に関してお話させていただきました。視覚機能が回復することでこのように様々なメリットがあるんですね。今回のお話をまとめますと

①白内障手術をすることで認知症の予防につながります。重度の認知症になってからでは改善しないので早めに手術しておいた方がいい場合があります。

②目の中に入ってくる光の量が正常に戻る事で睡眠障害が改善される可能性があります。

③夜間高血圧を改善させる可能性があります。

④交通事故のような怪我のリスクを下げます。

という4点です。白内障手術は単に視機能を回復させるだけはなくこのように認知症や睡眠、高血圧のような内分泌系の改善が期待できます。人間の判断能力の内8割は視覚と言われていますので、視力が悪いだけでこのように脳機能への障害が起きたり、目への光の刺激が無いことで睡眠障害を起こすことがあるんですね。

ご家族の方で最近元気なくて億劫になっているなとか、寝付きが悪くなっていることを自覚されている方は視力低下がもしかしたら原因かもしれません。

ご高齢になると何らか慢性疾患であったり身体の機能の衰えのため手術を先延ばしにする方がおられますが、白内障の症状によって生活に不自由を感じたら、少しでも早く手術を受けることをおすすめします。