私は長年緑内障専門施設の眼科に勤めていた事もあり多くの緑内障患者さんを診させて頂きました。ほとんどの患者さんはとても真面目に目薬をして頂いてきちんと通院していただいている方が多いです。中には自ら緑内障の勉強をされて目薬などの治療以外にこれがいいのではないかと調べられて、熱心に取り組まれている患者さんもおられます。今やネットで誰しも気軽に色々な情報を見ることができて学ぶことができますね。
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ただその中でそれは気にしなくていいですよとお話することもありますし、逆にこういう事は気をつけてくださいとお話させて頂くことがありましてよく聞かれる事を中心に5つお話させて頂きます。
まず1つ目です。私は重度の緑内障なので目をあまり使わないようにしています。目を使いすぎると緑内障が早く悪くなるような気がするんですがどうでしょうか。という内容です。これはとてもよく聞かれる質問です。
目を酷使しすぎると目にとってよくないと考えてしまい緑内障が更にわるくなってしまうというように思われるかもしれませんが、そのような事はありません。テレビなど普段どおりみたいものをみてもらってもいいですし長時間みたからといってそれが緑内障に悪くなるということもありません。中にはテレビやパソコンから出ているブルーライトを気にされている方もいますが、現状はブルーライトが目への悪影響があるというはっきりした医学的根拠はありません。子供に関しては光の有効成分までブロックしてしまうのでブルーライトカット眼鏡をするのはよくないと言われているぐらいです。注意することとすると夜間テレビ、スマホなどをみすぎるとブルーライトは覚醒させる作用があるので寝付きが悪くなる可能性があると言われております。夜寝付きが悪い方はブルーライトカットをした方がいいかもしれませんが現状はその程度だと思っていいただいていいかと思います。
2つ目にブルーベリーやルテインは私の目にも飲んだ方がいいのでしょうかという内容です。ブルーベリーはテレビなどで大きく宣伝されておりましてあらゆる目の病気に対して効果があると思ってしまうような内容です。事実眼科のサプリメントと言えば圧倒的にブルーベリーと回答される方が多いです。ただブルーベリーは実際ほとんど目に対する効果は期待できません。ブルーベリーに含まれているアントシアニンという成分これはロドプシンという夜間視力を上げるホルモンの働きを助ける作用があるものです。普通に食事が取れている方はほとんど問題ありませんし、ブルーベリーを飲むことで緑内障含めて黄斑症のような病気がある方に対する効果はあまり期待できません。一方ルテインは加齢黄斑変性症のような黄斑疾患がある方は特に飲んで頂きたいサプリメントです。そのような病気がないとしてもルテインは年齢とともに減少していきますので眼病予防のために飲まれるという意味では問題ないのですが、緑内障に関する効果はあまりないと考えられています。
緑内障に対するサプリメントだと現在は参天製薬から発売されているグラジェノックスというサプリメントがあります。松樹皮エキスというものが含まれておりまして神経保護と抗酸化ストレスが期待されているものです。緑内障の治療はやはり眼圧下降を第一に考えますが、以前から循環障害のように眼圧以外の要因も有るのではないかと言われています。そういった部分への一手としても期待されていますので使用されるならこのようなサプリメントが良いかと思います。
3つ目はアルコールってもう飲んじゃだめなんですかという質問です。これ以外と思われるかもしれませんが適度はアルコールは眼圧を下げることで知られています。なのでアルコールは適度な量、グラス1杯、缶ビール1缶程度ならいいですよとお話しております。これを言うとアルコールを飲む習慣が無い人にまで無理にお酒をすすめるわけでは決してありません。過剰に飲みすぎるのも当然いけないのですが、元々飲酒の機会がある方なら軽めなら問題ないと思います。ただし同じく嗜好品としてあげられる喫煙はダメです。視神経周辺の血液循環を悪くするという報告や眼圧が高くなるという報告があります。喫煙されている方はやはり禁煙をされる方がよいです。
4つ目緑内障の方は飲んでいけないという薬全部飲んでいません、風邪でもできるだけ漢方を飲んでいます。という内容です。緑内障で注意する薬に抗コリン薬という薬があります。これは緑内障の中でも隅角という水の出口が狭いタイプの緑内障、閉塞隅角緑内障という病型の緑内障には問題になる薬であって日本人に多い正常眼圧緑内障は問題にはなりません。これは何故かといいますと正常眼圧緑内障の方は隅角が広い緑内障の部類に入りまして、抗コリン薬を飲んでも眼圧があがる心配はないんです。
問題になるのは隅角が狭いタイプの緑内障の方であって、どのような方に多いかというと元々目がよかった方50歳以上の女性に多いです。きちんと眼科で隅角閉塞症の疑いであったり閉塞隅角緑内障と言われていない方は通常通り内服していただいて問題ありません。抗コリン薬は風邪薬だけなく胃薬であったり、アレルギー薬、精神病薬などに含まれておりまして医療用医薬品だけなくドラッグストアにも含まれている薬です。抗コリン薬は副交感神経という神経の動きをブロックします。そうなると瞳が開くことにより水の出口を塞いでしまう事があるんですね。水の出口が塞がれてしまうと眼圧がどんどん上がってしまいます。
隅角の広さが正常な方はいいのですが、元々隅角という水の出口が狭い方は薬によって更に狭くなり眼圧が上がるんですね。急性緑内障発作という状態にまでなってしまうと眼圧が2とか3とか少し上がるというレベルではなく40,50と爆発的に上昇する可能性があるので注意が必要なんです。抗コリン薬を飲んでいた人が慢性的に高い眼圧を放置していたということは時々あるのですが、ただ実際
は水の出口の隅角が空いている人がほとんどでこの隅角が空いていれば薬による影響は心配はいりません。自分が隅角が広いタイプなのか狭いタイプなのか簡単に見分ける方法としてもし近視の緑内障なら基本的には問題になることはないと思ってください。また隅角閉塞症と診断されていても白内障手術やレーザー治療または線維柱帯切除術といった緑内障手術をされている方は心配ありません。ただ稀に例外はありますから眼科の先生に診断してもらって確認した上での内服が確実です。
最後5つ目は私は高血圧だから眼圧が下がらないんでしょうか。という内容です。高血圧は緑内障のリスクファクターとしてあげられています。あまりに血圧が高いと動脈硬化が起こり視神経周辺の循環障害が起きるからよくないと考えられおります。ですが高血圧だからといって眼圧も高いというわけではありません。同じ圧力を示すものなので血圧が高ければ眼圧も高くなりそうと思われがちなのですが、日本人に多い正常眼圧緑内障という病気に関しては特に眼圧と血圧はほとんど関係がないと言われています。正常眼圧緑内障という病気が眼圧が高いのは血圧が高いからではなく、房水流出路といいまして目の中の水の出口をいいますが、この部分の水の流れが悪くて眼圧が高くなっていると考えられていまして血圧が原因ではありません。そのため緑内障治療において血圧を測るような事はまずないですよね。目薬を使って目の中の水の排出を促進させる薬であったり、または目の中で作られる水の量を減らす治療が中心になっております。
高血圧は緑内障のリスクファクターではありますが、眼圧が高い事の原因ではないんですね。これが最後5つ目です。
ここまでを一旦まとめますと
①緑内障だからといって目を使いすぎると悪くなるという事はありません。
②ブルーベリーは緑内障に有効な効果は期待できません。
➂適度な飲酒は眼圧を下げると言われています。(ただし喫煙はNG)
④抗コリン作用がある薬は閉塞隅角と診断されている緑内障の方のみ注意が必要で多くの方は開放隅角で心配いりません。
⑤高血圧=眼圧が高いわけではありません。
という5点です。緑内障=失明ととってしまって自分の行動をかなり制限する方がおられます。アルコールは飲んだらダメ、テレビの見過ぎもよくない、じゃあどうしているかと聞くと日中はできるだけ目を使わないように横になって目を閉じているという方もおられます。緑内障だからといって日常生活においてほとんど制限されるような事はありません。行動制限によるストレスはよくないだけでなく、ストレスが眼圧をあげる要因になっているとも言われています。個人的に推奨したいのは適度な運動です。運動は眼圧を下げる事で知られていますし、血流もよくなります。是非適度な運動を日常生活の一部に入れていただけらたらと思います。
(2022.3.3)