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60. コロナワクチンによる目への影響

新型コロナワクチンに対する問い合わせ結構あります。私は緑内障ですが私の目にはワクチン接種をしても問題ないでしょうか。白内障手術を控えていますがワクチン接種をしても問題ないでしょうか。というような内容です。

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このページの解説は以下のYouTubeでもしています

https://youtu.be/FGPK_6NeRRc

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現在各製薬会社の添付文章を確認しても禁忌事項として緑内障を含めて何らか眼科的疾患の有無がワクチン接種を控えて下さいとの記載はないのでしてはいけないということはありません。ですが厚生省の副反応の報告や文献での症例報告をみていると極めてまれではありますが若干の目に対する報告をされておりますので眼科的合併症がまったくないわけではなさそうです。実際私も外来でみている患者さんでこれはコロナワクチンによる副症状ではないのかと感じた事がありまして今回はコロナワクチンに対する目への副反応についてお話させて頂きます。

全身的な副反応は注射した部分の痛み、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉や関節の痛み、寒気などです。私自身もワクチンは3回ともファイザー社のワクチンを接種しましたが、3回目の翌日は発熱症状がでました。

体の中で一生懸命に免疫を作ろうとする中での反応で、接種したワクチンに対して戦いを始めるわけで様々な症状が出ます。副反応が起こる可能性があるのですが、現状はリスクよりも利益が上回ると考えられているため国策として積極的なワクチン接種がすすめられております

その中で厚生省が報告している多い眼科的副反応は順に視力障害、眼瞼浮腫 眼瞼腫脹 眼の充血、眼痛、眼掻痒症でした。眼瞼浮腫や眼の充血、眼掻痒症は体内でアレルギー反応が起きている中で発熱のような随伴症状の一つなのであまり大きな心配がないのではないかと思います。気になるのは視力障害が多いということです。詳細に関しては報告されておりませんので何が起こりどの程度の視力低下が起きたかが不明であることです。視力障害が一時的なものでありその後回復しているのであれば問題ないと思いますが、事実失明症例もでているようです。そうなると重症な疾患が発生してしまった可能性があります。

ただワクチン接種が確実にその疾患を起こしてしまったということと因果関係を結びつけるのは中々難しいです。本当にワクチンによる影響ももちろん考えられますが、偶然その疾患がワクチン接種と同時期に起きてしまったということも考えられるからです。これに関しては厚生省の報告書にも注意書きとして予防接種との因果関係が不明な事象も含めていると記載がかいてあります。

ですが報告されているものに関しては注意しなければならないと思いますので、報告されているものはどのようなものなのか、どのような事に気を付けなければならないのかという事に関してお話させて頂きます。

大きく注意が必要なのは3つの疾患です。

現在症例報告されていることから1つ目は血栓症はまず注意が必要と思われます。

眼科的疾患だと網膜静脈閉塞症と網膜動脈閉塞症という数名ずつ報告されております。

網膜静脈閉塞症という病気は名前の通り網膜の静脈がつまり眼底出血を引き起こす病気です。発症すると出血が起きた部位に対して視野が欠けます。それだけでなく黄斑部という視力にとても大事な部分にまで出血が広がると極端に視力低下を起こし、ものが歪んで見えたり、色覚異常を起こす病気です。本来は高血圧や糖尿病のような慢性疾患がある方になりやすい病気です。

もう一つの網膜動脈閉塞症はこれは眼科の中でも緊急疾患に含まれる病気でして深刻な疾患の1つです。網膜の動脈に血栓が詰まると、網膜に必要な酸素が届かない事で一気に視力障害を起こします。有効な治療法があまりなく、数時間放置するだけで視力が回復しなくなります。急に見にくくなった事を自覚された方はすぐに眼科受診するようにしてください。

mRNAタイプのワクチンはこのような血栓症を起こす可能性が低いと言われているものの報告例がありますので注意が必要です。過去に網膜静脈閉塞症を起こした方や、片方がすでに網膜動脈閉塞症で失明されている方は注意が必要かもしれません。

2つ目は脱髄疾患です。脱髄疾患とは難しい言葉なのですが端的にいいますと神経の病気をいいます。目の場合だと視力にとても大切な視神経という部分であったり目を動かす筋肉には動眼神経や滑車神経、外転神経といったような神経がつながっています。

その神経に炎症を起こすと視神経なら視神経炎といって視力ががくっと落ちますし、眼球運動痛といって目を動かすときに目の奥の痛みを自覚します。

一方で目を動かす神経が麻痺するものが二重にみえたりする複視といった症状や目の位置が異なる斜視という状態を引き起こす事があります。目を動かす神経には3本の神経があるのですが、この内のどれかが麻痺すると目の動きのバランスが悪くなります。

国内でも症例報告として目を動かす神経の麻痺による斜視の報告はされておりますので、急にものが二重にみえたりするような事がありましたら注意が必要です。症状がある場合は早めに眼科を受診するようにしてください。

最後3つ目はぶどう膜炎という病気の発症です。私も特に既往歴がない患者さんでワクチン接種数日後に目の中に突然炎症がでてきて見にくくなった方を診たことがありました。ぶどう膜炎という病気は目の中に炎症を起こす病気です。軽いものはステロイドの点眼で直ることが多いのですが、放置しておくと視力低下の原因になりますし重症なものは点滴が必要なものまであります。

身体の免疫が異常に活性化することで目の中にまで炎症を起こす事があるんですね。先ほどもあげましたが副反応報告で多い眼の充血はどのようなものをさしているかははっきりしませんが、ぶどう膜炎は充血しますから単に充血しているだけでなく見にくさも伴っている場合であったり充血が長引いている場合はぶどう膜炎を発症している可能性が考えられますので注意が必要です。

以上お話させて頂いた血栓症、脱髄疾患、ぶどう膜炎に関して簡単に説明させて頂きました。

その他にも副反応報告がされているものがあるのですが、本当にワクチン接種と関係があるのか不明でしたので報告例が少ないもので因果関係がはっきりしないものは割愛しました。今後もワクチンによる新たな副反応が明らかになる場合がありますのでその場合はまた報告いたします。

冒頭の話に戻りますが、緑内障患者さんに対してですが、現状は報告をみると緑内障になったという報告は出ているのですが、緑内障のタイプも色々ありましてどのタイプの緑内障になったのか不明です。例えばぶどう膜炎には緑内障の中でも続発緑内障というタイプの緑内障を引き起こす事があります。これは私の推測ではありますが、ぶどう膜炎を発症した方が眼圧も高くなってしまって緑内障になったのかなと考えています。日本人に多い正常眼圧緑内障だとか原発開放隅角緑内障にワクチン接種でなってしまったとは考えにくいです。

報告の中では高眼圧といいますが眼圧が高くなったとか、緑内障発作が起きてしまったというような緑内障を悪化させるような要因の報告はありません。そのため緑内障に関しては大きな心配がないと思っています。

白内障手術に関してですが、医学的根拠はありませんが念のために手術日より2週間以上前にされるのがいいと思います。このあたりは明確なガイドラインがありませんのでどこの医院も探りながら決めているというのが現状です。発熱のような全身症状が長引くことが事がありますし、注射をした部位に対して痛みが残ると腕があがらず術後の目薬がしずらくなることがあるので早めに接種しておくことがいいと考えています。

結論として現状は目への影響は大きな問題がないと考えますが、少なからずこのような副反応の報告がされているのでワクチン接種をされる方で目に不調を感じた場合はすぐに眼科受診するようにしてください。

今回の話をまとめますと

①ワクチン接種による副反応での多くの眼症状は眼瞼腫脹やかゆみのような全身症状に伴うものです。

②注意するものとして血栓症、脱髄疾患のような神経症、ぶどう膜炎という目の炎症疾患があります。

➂高眼圧や緑内障発作のような報告は出ていません

④白内障手術のような何らか手術を控えている方は余裕をもった接種が望ましいです。

という4点です。ワクチンによる副反応は非常にまれではありますがこのように様々なものが報告されております。異常を感じたら経過をみるのではなく網膜動脈閉塞症のように重症なものが含まれておりますので早めに受診するようにしてください。今回はコロナワクチンでの副反応に関するお話をさせて頂きました。


(2022/2/22)