今回は何故眼科医は1dayコンタクトレンズを勧める事が多いのかということに関してお話させて頂きます。
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コンタクトレンズを使用されている方は多いと思いますが、ソフトコンタクトレンズの1dayのような使い捨てタイプのコンタクトレンズであったり、2weekタイプ、もしくは1monthタイプのように保存液が必要なタイプがあります。多くの方は1day、もしくは経済的な理由で2weekのものを選ばれる方が多いと思います。私はコンタクトレンズをつけるならできるだけ1dayタイプを推奨しておりますが、1dayタイプを推奨している理由に関してお話させて頂きます。
コンタクトレンズで1dayタイプが最も清潔であり、そのため目の表面や瞼への障害が少ないのはもちろんなのですが、1dayのよさはただそれだけではありません。1番の理由は1dayタイプのコンタクトレンズは重症な角膜の感染症になりづらいことです。one day も2weekも同じコンタクトレンズであるにも関わらず何故1dayの方が重症な感染症になりにくいのでしょうか。
目の表面の角膜という部位に感染症を引き起こす菌は色々あるのですが、一番多いのは白目や瞼周囲の皮膚にいる菌が付着して感染症を起こすことが多いです。少々の菌が目に付着しても通常は涙で洗い流してしまうので感染してしまうことはまずないのですが、コンタクトをしたまま寝てしまって翌日に目の感染症を起こす方がとても多いです。就寝中は涙の分泌量が少なくなり、特に冬は乾燥する時期なのでばい菌にとって感染を起こしやすい状態になっているので注意が必要です。コンタクトレンズをしたまま寝ることは本当に危険なので注意してください。
それでも感染症を起こしてしまった場合弱い菌なら医薬品の抗生剤に良好に反応してくれるのですが、反応しない嫌な菌があります。これが私達眼科医を悩ます厄介な菌なんです。1つは緑膿菌、もう1つアカントアメーバという菌です。緑膿菌、アカントアメーバという菌は、主にコンタクトレンズを不潔に扱うことによって繁殖して重症な感染症を引き起こす怖い菌として知られています。
何故怖いのかといいますと、角膜という部位を混濁させて極端に視力低下を引き起こすだけでなく、これらの菌は様々な薬に対しても効かないんです。
治療の介がなくひどいと重篤な視力障害が後遺症として残ってしまうことがあるんです。通常はどちらも弱毒菌で感染することはあまりないんですが、不潔なコンタクトレンズを使用されることによってこの菌が繁殖して量が多くなることよってに感染します。これらの菌はどこで繁殖するかというとコンタクトレンズケースの中の不潔になった洗浄液の中で繁殖することが知られています。現在使われている多くの洗浄液はマルチパーパスソリューションと言って保存、洗浄、消毒全ての作用があるものが含まれているのですが、殺菌効果は元々弱くこのような緑膿菌やアカントアメーバに対する殺菌作用は残念ながらありません。洗浄液は本来ポピドンヨードが入っているものはこれら難治性の菌に対しても効果があるのですが現状はオフテクスという会社が出しているクリアデューという名前の洗浄液しかありません。
眼科学会としても推奨されているのはこのようなポピドンヨード含有の洗浄液を使用しコンタクトレンズをこすり洗いしていただく事です。こすって洗うというのはなんだか面倒くさいなと思われるかもしれませんが、私達も例えば目の手術をする際はポピドンヨードを皮膚や目の周囲をこすって汚れを除去することを心がけていますしこれは術後の感染症を防ぐために今なおとても大事なこととして知られております。どれだけよい抗生剤がでてもこのヨード製剤は現在尚殺菌作用が優れておりまして更にこすり洗いはとても大切なんです。
目の表面の角膜にはバリアがあるのですがその部位に少しずつ傷ができることで感染を引き起こしてしまいます。
バイ菌感染は、1DAYタイプが最も低く、2week、1monthと期間が長いものであるほど感染症の可能性が高くなります。学会等の報告だと、1DAYに比べて2weekは6-7倍、1monthタイプは10倍近くこの角膜感染症のリスクが高くなるというデータがでております。
この重症な緑膿菌やアメーバという菌も1dayタイプのものより2week, 1monthタイプになるほど原因菌としての可能性が高くなってしまうんですね。
1DAYコンタクトレンズは保存液を使ってコンタクトケースに保存することがないので緑膿菌やアカントアメーバーによる感染症を起こす可能性がほとんどなく圧倒的に有利なんです。
ただ中には何故か1dayですら緑膿菌に感染する方もおられます。話を聞くともったいないから水につけて2日間連続で使ったというような不適切使用をしていた事が発覚することが多々ありましてこれは1DAYであっても全く意味がありません。
緑膿菌は通常の抗生剤では効かないですしアカントアメーバは特殊な治療をしないといけません。緑膿菌を疑った場合は通常とは別の抗生剤を使用します。点眼に加えて、抗生剤を直接眼球の白目の部分に注射したりして治療をしたり点滴入院になったりします。緑膿菌に感染すると無治療だとたった1日で炎症が広まってあっという間に見えなくなってしまうんですね。目の中に膿を残す前房蓄膿といった状態や、角膜もどんどん破壊されていくので治療が遅れると角膜に穴があいて角膜移植が必要になる可能性もあります。事実緑膿菌感染症の約1%には角膜移植が必要になったというデータが出ております。そこまでにならなかったとしてもある程度の範囲の混濁を残してしまうというのがこの病気の怖さなんですね。アカントアメーバは更に厄介です。緑膿菌以上に薬に効きにくく角膜創破といって角膜を削ってアメーバを何度も除去しながらその上で特殊な薬を使うことになります。これらの菌はコンタクトレンズトラブルで重症化しやすい2大菌といわれてまして、決して珍しい菌ではありません。コンタクトレンズを使用して目に痛みや充血がある場合はこの菌かもしれません。早急な治療が必要ですので、休みの日でもやっている眼科はありますので必ず受診するようにして下さい。
今回の動画をまとめますと
①2weekや1monthのコンタクトレンズを使用する場合はポピドンヨード含有の洗浄液で毎日のこすり洗いを意識してください。
②緑膿菌やアカントアメーバは不潔になった保存液から感染します、この点使い捨ての保存液を介さないので1dayは圧倒的に有利になります。
➂コンタクトレンズを使用して寝ることは絶対に避けてください。
という3点です。コンタクトレンズはきちんと使用すれば問題ないことがほとんどですが、多くの感染症になってしまった方はつけっぱなしで寝て翌日目が痛くてあけれなくなったという方がほとんどです。友人の家に泊まりに行き保存液を忘れたから1日ぐらいいいだろうと思ってそのままつけっぱなしで寝た、保存液がないから水につけていたという必ず何かしら不適切なイベントがあり感染症になる方が多いです。若い方が角膜感染症をおこして重症な場合は深刻な後遺症を残しますので何度も心が痛い思いをしてきました。
結局のところどのコンタクトレンズを使うにしろ適切に使用することはとても大切ですが、目の安全のためにできるだけ1dayコンタクトレンズを使用していただきたいと思います。
今回はコンタクトレンズで1dayを多くの眼科医がすすめる理由に関してお話しさせて頂きました。
(2022.2.18)