今回は目の健康寿命を延ばすために避けたい朝食に関してお話いたします。目に良い栄養素といえば緑黄色野菜に含まれるルテインや魚に含まれるDHA、EPAといった不飽和脂肪酸、果物や野菜に含まれるビタミンBや、C、亜鉛などのミネラルです。このようなビタミンや抗酸化物質を含む食事をとることは目のみに関わらず心臓や脳といった全身的な健康にも大きなメリットがあります。
では、目にとってよくない食事はというと身体にとっても悪い食事です。目だけに悪い食事というのはありません。
これをとると、すぐにみえなくなるといった食品はありませんが、長期的にみると、身体にも悪いし、それが目にも影響を及ぼすことがあります。特に1日のはじまりにとる朝食はとても大切なんですが、朝忙しくてパンのみとかおにぎりのみになっていることないでしょうか。
今回はこのような朝食をとり続けることは目にとってよくないですよということと、このような朝食がおすすめですということに関してお話いたします。
目にとっても体にとっても長期的にみると特によくない食事は砂糖を多く含んでいる食事です。砂糖が引き起こす健康問題は世界的に取り上げられています。
糖分の大量摂取による、目の代表的な病気は2型糖尿病網膜症
です。日本人の中途失明原因3位の眼疾患です。血液中の糖分が多すぎると、増えすぎた糖はタンパク質と結合して炎症を起こす性質があります。血管はタンパク質で出来ているので増えすぎた糖は網膜の小さな血管に炎症を起こして傷つけたり、詰まらせてたりします。
糖尿病による問題は糖尿病網膜症だけではありません。糖尿病網膜症のなれのはては新生血管緑内障という非常に難治性の緑内障を合併しますし、糖尿病性の白内障や、糖尿病性の神経症といって目の場合、二重にみえる複視など、いくつか致命的な眼の問題を引き起こすことがあります。
でもそれって糖尿病の方だけの問題でしょ、私は糖尿病でないから関係ないと思われている方もいるかもしれませんが糖尿病の方だけに問題なわけではありません。
例えばある報告によると加齢黄斑変性症との関連も指摘されています。
加齢黄斑変性症
とは視覚でとても大切な部分である黄斑という部分に炎症がおきる病気です。
私たちはこのよう
にみていると思います。
どこも同じようにみえているような感覚があると思いますが、実はこうみて
います。
黄斑
は網膜の中で最も視覚機能が敏感な部分で、黄斑部で私達はものをみています。常にピントが黄斑に合うように、目を上下左右に動かしてものをみています。黄斑部に障害が起きるとものがかすんでみえたり、ひどくなると歪んでみえたり非常にやっかりな後遺症を残します。
その黄斑に障害が起きる代表的な病気が加齢黄斑変性症なんですが、
数年前に行われたある研究
では、食事調査が行われ、参加者全員に加齢黄斑変性症の有無が検査されました。 その結果は、血糖値が高い食品で構成された食事をとっている人は、少ない方と比べると進行性黄斑変性症の発症と関連があったという報告もされています。
逆に高血糖の食事
から低血糖の食事に切り替えると、加齢黄斑変性症の活動性が止まったというような報告もされています。黄斑変性症の予防のためにルテインをとろうということは広がってきています。サプリメントなどからルテインを積極的にとることも大切ですが、糖質の多い食事を避ける事も同時に重要です。
このような食品と目への健康被害は様々な報告がされていますが、すべての糖質が有害というわけではありません。糖質は人の主要なエネルギー源であって野菜や果物、穀物からの糖質に問題があるのではなく、精製された糖に問題があります。
小麦粉や砂糖といった精製された糖は食物繊維などが取り除かれているので体内ですぐに吸収されて、血糖値の急上昇を引き起こします。私たちの体は、糖分を迅速に処理し、繰り返しの血糖値の急上昇に対応できるように設計されていません。人は常に食料が手に入ると限らず飢餓と直面してきた歴史があります。飢えから生き抜くために、血糖値をあげるホルモンは成長ホルモン、アドレナリン、ノルアドレナリン、グルカゴン、コルチゾールなどたくさん備わっているわけですが、血糖値を下げるホルモンはたった1つインスリンしかありません。
膵臓を無理に働かせてインスリンをどばどばっと出して血糖値の上昇を押さえます。
果物や野菜、穀物に含まれる糖質は、複合糖質として知られています。複合糖質は時間の経過とともに体内で自然に分解されて吸収されます。
朝にこのような精製されていない炭水化物、つまり果物や野菜、大麦などの食品をとると、身体の糖の吸収を遅らせて、昼食時の血糖の急上昇を抑えるだけでなく、食物繊維やその他ビタミン、ミネラルをしっかりとることができます
では逆に、どのような朝食に気を付けたらいいのかというと
まず1つ目、パンケーキやワッフル、などの菓子パンです。これらは精製された小麦粉と砂糖からできています。パンケーキは焼く際に焦げ目がつきますよね。メイラード反応と言われていますが、糖はタンパク質と結合して加熱されるとこのような糖化反応を起こします。体はタンパク質でできています。体の7割は水分ですが、血管、骨、臓器、皮膚など残り3割はタンパク質です。目もタンパク質でできています。
目のレンズ、水晶体も水晶という名前がついている通り元々は透明なんですが、糖と結合して体温で熱が加わる
とまるでパンケーキと同じような糖化反応をおこして白内障になります。パンケーキ
と同じように茶色く変化していますね。白内障手術の中央値はだいたい70歳前後なんですが、50代、60代前半に白内障
がある方は体内の糖化反応が進んでいて心疾患のリスクと関係しているという報告もされています。まだ若いのに白内障、白内障の原因がはっきりしていないといった場合、体内で糖化反応がすすんでいる可能性があります。
2つ目は同じパンですが食パンです。食パンは朝食で一般的なので食べている方も多いのではないでしょうか?しかし食パンもパンケーキと同じで精製された小麦粉からできているので必要なビタミン、ミネラルがほとんど含まれていません。血糖値の上昇の速度を示す値にグリセミックインデックス GI値というものがあります。数が大きいほど血糖値が急に上昇するんですが、食パンのGI値は90程度 普通のミルクチョコレートなどのお菓子と同等の値です。朝食をパンだけにしないようにして下さい。パンが好きな方は全粒粉のパンがおススメです。GI値は半分程度の50ぐらいになります。食物繊維が多く腸内にもよい影響を与えます
3つ目、朝食用のシリアルです。
シリアルとは、トウモロコシ、オーツ麦、小麦、大麦、ライ麦、などを加工したものです。パッケージを見るとなんとなく健康的な感じがしますし、忙しい朝に愛用する方が多いのではないでしょうか。
なかでも、人気があるのが「グラノーラ」です。穀物を加工したものに、蜂蜜や砂糖、メープルシロップなどがミックスされています。そこにドライフルーツを混ぜたものが人気のようです。朝食用に買われている方も多いと思われます。
ミネラルや食物繊維たっぷりというイメージが先行していますが、市販している製品を見てみると、1食あたり30グラム程度、角砂糖にすると約8個分の糖質が含まれています。中には糖質オフと書いてあっても結構糖質を含んでいることがあります。シリアルに限ったことではありませんが、栄養成分表をチェックする習慣を作ってもらうと日々とっている食事に意外に砂糖が入っているなということが発覚することも多いと思います。是非チェックする癖を作ってみてください。
4つ目、炭酸飲料、スポーツドリンク、野菜や果物、ヨーグルトのジュースです。特に野菜や果物のジュースは健康上のメリットがあるように思いますが、生の野菜やフルーツと比べて食物繊維が取り除かれていますし、砂糖をたっぷり含んでいるものもあります。フルーツジュースや野菜ジュースは果物、野菜の代わりにはなりません。果物は果糖が多いんですが、食物繊維の作用でゆっくり吸収されるので適量を食べる分には健康上のメリットがもちろんあります。スポーツドリンクや炭酸飲料水になると更に砂糖の含有量は多くなります。消化の過程がなく一気に吸収されるので一気に血糖値が上昇します。パンやシリアルは飲み物ほど急に血糖値をあげないので、まずやめるべきものがこのような甘い飲料水です。
5つ目、ソース、ドレッシング、調味料です。これらにも大量の砂糖が含まれています。ケチャップとバーベキューソースには両方とも驚くほど多量の砂糖が添加されています。可能であれば、砂糖が添加されていないブランドを探してください。
長期的に健康な視力を維持するために、このような精製された砂糖の摂取量を減らす事が大切ですが、糖質が全て悪いわけではありません。私たちの体は天然の糖を利用して健康を維持し、最適な機能を保っています。しかし、精製された砂糖は別の話です。
砂糖の摂取量の増加は、糖尿病、がん、心血管疾患などの健康問題の原因になります。
では朝に何がおススメかというとずばり卵です。私は朝に、温野菜に卵、鮭を一緒に食べています。卵を何故すすめるのかというと、タンパク質の優良性を示すアミノ酸スコア100点満点で、良質なタンパク質をとれますし、目に大切なルテインとゼアキサンチンを両方含んでいる貴重な食材だからです。
ルテインが多い代表的な食事はブロッコリーやほうれん草など緑色の野菜に多く含まれています。卵は野菜に含まれているルテインよりは少ないんですが、生体利用率が非常に高いことで知られています。ルテインは脂溶性で油に馴染みやすい性質があります。
卵は天然の脂質が多いのでルテインだけでなくほかの脂溶性の栄養素の吸収を助けます。事実野菜と一緒に卵をとると野菜由来のカロテノイドの吸収力が2-8倍高まったという報告もされています。
トマトに含まれるリコピン、パプリカのゼアキサンチン、人参に含まれるβカロテンなど、カロテノイドは全て脂溶性だからです。
目にいいだけでなくタンパク質も多く含んでいます。筋肉を維持して、加齢による筋肉量の減少をサルコペニアといいますが、サルコペニアのリスクを下げるのにも役立ちます。
多くの方に、早い段階でこのような食事を含めた目を守る方法を知って頂けたらと思います。ほとんどの場合、目が悪くなってから意識される方が多いんですが、視力は一度落ちると回復させる事は簡単ではないからです。
目の健康のためだけでなく身体の健康状態の改善にもつながるので参考にしてもらえたらと思います。
今回の話をまとめますと
①精製された炭水化物の摂取を控え、食物繊維を含んだものを摂取してください。
➁糖質の過剰摂取は、糖尿病網膜症、白内障、黄斑変性症と関係が報告されていて、低糖質に変えることで抑制効果があったと報告されています
➂白いパンはお菓子と同等のGI値です
④フルーツジュースや野菜ジュースは野菜や果物の変わりになりません
⑤朝食に卵がおすすめです
という5点です。
健康的な朝食は、目にとって多くのメリットがあるだけでなく、記憶力と集中力の向上、心臓病、糖尿病、メタボ発症やうつ病のリスクの減少に関連しています。一日の初めにとる食事をおそろかにすると空腹感をコントロールできなくなって、昼食時に食べ過ぎたり、間食に不健康なスナックを食べたりする可能性が高くなります。
最近このような糖化現象は眼科でも問題視されていて、糖化を抑えるサプリメントが開発されています。参天製薬さんのサンテウェルビジョン(商品の画像お願いします!)というサプリメントです。ヒシエキスというものが含まれていて糖化反応を抑える成分を含みながら、ルテインも20mg、1日に6mg摂ればいいと言われていますが、20mgしっかりとることができるサプリメントで目のためにおススメです。ヒシエキスの糖化を抑える作用によってしわなどの老化現象にも効果があったとされているので美容にもよいと思います。よければ参考にしてください。
(2024.1.17)