今回はバナナを食べると目にどのような影響があるのかということに関してお話させて頂きます。目によい食材といえば、ルテインが多く含まれているブロッコリー、ほうれん草のような緑色の野菜や、卵であったり、ビタミンCが多いオレンジのような柑橘系のフルーツやキウイフルーツであったり、ビタミンEが多いナッツなどです。
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これらは抗酸化作用があって、身体だけでなく目にとってもとても大切な栄養素です。事実白内障や加齢黄斑変性症の予防や進行抑制に効果があるという事が色んな論文で報告されています。
一方でバナナはというとこのような成分は多く含まれていませんが、その他の目にとって大切な栄養素を多く含んでいて目のためにもオススメしています。
今回はバナナに含まれている栄養素はどのような点で目によいのかということに関してお話させて頂きます。
バナナは色々なところで売られていますよね、低GI食品で1本あたりのカロリーは90キロカロリー程度と低カロリーです。バナナが目にもよいとされているのは主に4点あります。
①1つはマグネシウムが他の食材と比べて多く含まれていること
②ビタミンB群が多いこと
③食物繊維やオリゴ糖、レジスタントスターチといった腸内環境がよくなる栄養素を多く含んでいること
④トリプトファンを含んでいる事
の4点です。これらは実は全て目とも関係してきます。
マグネシウムというとあまり聞きなれないミネラルかもしませんが
マグネシウムは体が適切に機能するためになくてはならない必須ミネラルです。何故マグネシウムが身体にとって必要なミネラルかというと
①目を含めた体の中にある300種類以上ある酵素の働きを助ける作用があります。
②電解質のバランスを整える作用があります。
③神経系の機能を正常に保つ作用があります。
④骨や歯の健康維持のために大切です。
マグネシウムは体内で行われるほとんどすべての代謝の働きに欠かせないミネラルで、食事からの摂取が必要です。
目の場合どこにマグネシウムが含まれているんでしょうか?
Mg
は目の角膜、前房、水晶体、硝子体、網膜に存在します。すなわち眼球のすべての部分にマグネシウムが含まれています。
Mg
が欠乏すると眼はどうなるのか、白内障、緑内障、糖尿病性網膜症などいくつかの眼疾患との関連性が報告されています。
例えば、水晶体は白く混濁しないように水晶体の中には酵素が含まれています。
還元型グルタチオンや、スーパーオキシドジスムターゼやカタラーゼという活性酸素を分解する酵素があります。
先程、酵素の働きを助けるのがマグネシウムとお話しましたが、マグネシウムが少ないと、これらの酵素がうまく働きません。水晶体はクリスタリンというタンパク質が密になって出来ているんですが、他の組織の細胞と違って代謝して新しく生まれ変わる事ができません。
すなわち1度変性して混濁してしまうと元の透明に戻ることができません。なので水晶体の構造が変化しないように守るシステムが必要なんですが、その1つがグルタチオンなどの酵素です。これらの酵素がうまく働かないと光刺激などによって水晶体は混濁して白内障になってしまいます。マグネシウムはこれらの酵素の補酵素といいますが、酵素がしっかり働くための重要な役割があります。
またマグネシウムは電解質を調節する役割があります。
白内障
になると、カルシウムが水晶体の外から水晶体の中に流れて白く混濁させる事が知られています。これもマグネシウム
が不足することで、電解質のバランスが保てなくなってカルシウムの流入が多くなるからと報告されています。
このようにマグネシウムの欠乏は白内障と関係があります。
また緑内障との関係も報告されています。マグネシウムは血管を拡張させて循環を改善させる作用があります。マグネシウム
を飲むことで眼血流が回復して視野が少し改善したという報告もあるぐらいです。
障害を受けた神経細胞が回復して視野が完全に回復するというわけではもちろんないんですが、眼血流を改善することによって視野にもよい影響があるのではないかと考えらています。
日本人に多い正常眼圧緑内障は眼圧以外の要因も考えられているので、正常な目の血流を維持することは大切です。
また
糖尿病の患者さんや、糖尿病網膜症がある方はマグネシウムの血中濃度が低いことで知らています。マグネシウムが少ないことが糖尿病の血糖コントロールを悪化させるだけではなく、糖尿病網膜症、神経症、腎症の危険因子であると報告されています。それはマグネシウムは身体の中にある唯一血糖値を下げるホルモン インスリンの働きを助ける作用があるからです。マグネシウムをしっかりとることで糖尿病の罹患率が34%低下したという報告もあります。
このように、マグネシウムは目にとっても大切なミネラルなんですがバナナ1本で30mg程度含まれていて他の食材と比べて多いです。
多くの方はだいたい1日あたり50ー100mg程度マグネシウムが不足しているとされています。バナナ1本でだいぶ補う事ができますよね。
2本食べて補うということでもいいと思いますし、その他に多く含んでいる食材としてかぼちゃの種やアーモンド、アボカド、イチジク、黒豆、ヨーグルト、タークチョコレートなどから摂られるのもよいと思います。ヨーグルトにバナナを混ぜるなどでもいいですね。
マグネシウムは摂り過ぎても過剰分は尿中に排泄されるので通常の食事で過剰症になることはありません。
しかし、通常の食事以外に加えてサプリメントなどからマグネシウムを取られている方は注意が必要で、下痢などを起こすことがありますので注意して下さい。
マグネシウムが多く含まれている、これがバナナの1つ目の特徴です。
2つ目はバナナはビタミンB群が多く含まれています。ビタミンBも目の健康を維持するために不可欠な水溶性のビタミンです。ある研究
ではビタミンB群をしっかり取ることで加齢黄斑変性症のリスクを35-40%低下させたというような事も報告されているぐらいです。これは
ビタミンBが十分にないと体内でホモシステインの濃度が上昇するからとされています。体内でホモシステインの濃度が上昇すると血管内皮細胞という血管の内側の壁を攻撃して炎症を起こして、目の小さな血管に影響を及ぼすと考えられています。ホモシステインの量
はビタミンB6とB9のようなビタミンB群が調節しています。そのようなビタミンB群が多いのもバナナの特徴です。
3つ目はバナナには食物繊維、オリゴ糖、レジスタントスターチといった腸によい成分が豊富に含まれています。
これらは人の消化酵素では分解されず、そのまま大腸まで届いて、腸内にいる善玉菌のエサとなって、短鎖脂肪酸というものを増やします。代表的な短鎖脂肪酸には酪酸、酢酸、プロピオン酸というものがあるんですが、これらは
①腸が活動するための主要なエネルギー源
になりますし、腸自体に必要なものというわけではなく、血液などによって全身に運ばれることが分かっています。そのため
➁全身の免疫系の調節を行ったり
➂身体に必要なビタミンやアミノ酸を合成したり
④病原菌から身体を守ったり
さまざまな影響を人体に及ぼすことが分かっています。
不足すると糖尿病や肥満症、自己免疫疾患などが発症したり、逆に腸内環境を改善することでこれらの疾患を改善したという報告がされています。
目の場合はというと特にぶどう膜炎やドライアイへの関与が報告されています。ぶどう膜炎にはベーチェット病や原田病という病気がありますが、2021年に報告された内容にはぶどう膜炎を起こしている患者さんと正常の方の便を調べたところ短鎖脂肪酸の1つである酪酸が減っていたと報告されました。酪酸には炎症にブレーキをかける制御系T細胞というものを増えすと考えられていて、免疫を調節する大切な役割があるとされています。
このような短鎖脂肪酸を増やすにはプロバイオテクスといいますが、ヨーグルトなどを食べて善玉菌自体を摂取して腸内で短鎖脂肪酸を増やすのか、またはプレバイオティクスといいますが、バナナに含まれる食物繊維のような腸内細菌の餌となるものを与えて善玉菌を増やすしかありません。
バナナ自体には善玉菌は含まれていませんが、食物繊維など善玉菌の餌となる栄養素をたくさん含んでいます。腸内環境のメリットは目だけでなくその他の臓器にも大きなメリットがあり、身体を健康に保つためにもとても有効です。
最後4つ目はバナナにはトリプトファンが多く含まれています。トリプトファンはセロトニンという幸せホルモンを作るための材料になりますし、作られたセロトニンはメラトニンいう眠りを促すホルモンを合成します。そのためバナナを摂るとリラックス効果が高まり睡眠の質を高める可能性があります。
睡眠やストレスとよく関係がある眼疾患は緑内障です。不眠症の症状がある人や日中に眠気を感じることの多い人はリスクが高いと考えられています。それはストレスが溜まることによって自律神経のバランスが乱れて、交感神経の働きが優位になるからです。視神経の周りの血管を収縮させて血流を悪くする可能性があります。緑内障の第一の治療は眼圧を下げる事なんですが、正常眼圧緑内障はストレスとも関係が深いとされています。バナナには心を落ち着かせるホルモン、セロトニンの材料となるトリプトファンとその合成に必要なビタミンB6が含まれています。バナナが心を落ち着かせて、熟睡のカギになるかもしれません。
このようにバナナにはマグネシウムやビタミンB群が多く、食物繊維、オリゴ糖、レジスタントスターチという善玉菌の餌となる物質や気分を落ち着かせるトリプトファンなど目にもよい成分を多く含んでいます。朝食に何かと一緒に食べるのもいいと思いますし、間食で砂糖を多く含んだ甘い食べ物を食べるぐらいならバナナがよいですね。今回の話をまとめますと
①バナナにはマグネシウムが1本あたり30mg程度含まれています。
➁マグネシウムは白内障を予防する酵素であったり、カルシウムなどの電解質を調節する大切な役割があります。
➂視神経の周りの血管を拡張させて、眼血流を改善させる作用もあります。
④糖尿病や糖尿病網膜症の患者さんはマグネシウムが足りていなくてそのことがインスリンの働きを悪くしていると報告されています。
⑤ビタミンB群が多く、身体に必要なホルモンを作ったり調節したりしています。
⑥食物繊維、オリゴ糖、レジスタントスターチといった、腸内環境をよくする物質を多く含んでいます。
という6点です。バナナはルテインのようなカロテノイドは多く含んでいませんが、眼のためによい成分が多く含まれているのでおススメです。栄養の補給はサプリメントなどではなく食事からの摂取が基本です。良ければ参考にしてください。
今回はバナナに含まれている栄養素に対する目への効果に関してお話させていただきました。
(2023.6.15)