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113. 危険!将来白内障になってしまう人

今回は白内障になってしまう人の特徴に関してお話させて頂きます。

白内障は目の中のレンズの役割をしている水晶体が白く濁っていく病気です。主な原因は加齢です。年齢とともに水晶体の主成分であるタンパク質が変化して白く濁っていきます。早ければ40歳から発症して、80歳になるとほとんどの方が白内障を発症していると言われています。このように白内障の主な原因は加齢なんですが、進行具合は人によって違います。80台の方で白内障はあったとしても手術が不要な方もみえます。

今回は白内障になりやすい人の特徴に関してお話させていただきます。

1つ目が糖尿病がある方です。糖尿病によって白内障は健康な方より5倍早く進行すると言われています。慢性的な高血糖が水晶体に蓄積して濁りが生じやすくなります。糖尿病のコントロールがよくないと20ー30代と若い方でも発症することがあります。糖尿病による白内障はこのようにスピードが早く若い方でもなりやすいというのが1つの特徴ですが、もう1つ特徴があって、白内障の中でも後嚢下白内障という視力低下を最もきたしやすいタイプの白内障になりやすいことです。

白内障といっても視力が落ちやすいものから落ちにくいものまで色々あります。白内障

は白濁する部位によって皮質白内障、核白内障、後嚢下白内障と主に3タイプに分けられます。

一番多いのは加齢性の白内障で皮質白内障というものです。レンズの周りからゆっくり濁っていきます。かなり進行しないとレンズの中心まで濁ってこないので初期に視力が落ちることは通常ありません。

一方で後嚢下白内障は水晶体を包んでいる嚢という袋の後ろ側がすりガラス状に濁るタイプの白内障です。非常に進行が早くて2、3ヶ月前までみえていたのに一気に視力が落ちていくことがあります。

そのため加齢性の白内障と違い早期に手術を検討されることが多いです。ただその時に問題になるのが糖尿病の状態です。糖尿病の状態がよくないとすぐに手術ができません。糖尿病の方は経験があるかもしれませんが、白内障があって手術を希望されてもすぐに手術してもらえなかったということがあるかもしれません。糖尿病のコントロールが悪い状態だと手術ができない理由がいくつかあって1つ目が術後の炎症が悪化すること2つ目、視力に大切な黄斑部に障害が起きて術後黄斑浮腫が発症する可能性があること、3つ目、元々の糖尿病網膜症が白内障手術後に悪化することがあるからです。

白内障は目の手術だから糖尿病があってもすぐに手術できるよねと思って来られる患者さん多いです。糖尿病の状態が落ち着いていない場合、手術が問題なく終わったとしても今お話したようなことが起きた結果視力がしっかりでない可能性があります。糖尿病と眼科は非常に密接な関係があります。糖尿病と診断されたら今後必ず眼科の受診も必要になります。

2つ目、ステロイドを使用している方です。炎症を強く抑えてくれるステロイドはアトピー性皮膚炎、喘息やリウマチなど幅広い用途で使用されています。ステロイドによる白内障は先程の糖尿病の白内障と同じで視力低下に繋がりやすい「後嚢下白内障」になることが多いです。先程の糖尿病による白内障と同じでわずかな混濁でも見にくい、視力低下のスピードが早いというのが特徴です。ステロイドは白内障以外にも問題になりることがあります。長期間使うと眼圧が上がって放置しているとステロイドによる緑内障になることがあります。眼圧は10ー20までの値が正常値です。目薬を使っている方は特に注意が必要で、眼圧が30前後まであがっていることがあります。眼圧は30前後まであがっても自覚症状がありません。ステロイド使用されている方は必ず眼科でも定期検査受けるようにしてください。

3つ目アトピーの方です。アトピーの方は若い方でも白内障になります。アトピー性白内障といいますが、これには様々な原因が考えられていて、①かゆみを抑えるために、頭や目の近くを叩くといったような刺激を加える行為を日常的に続けてしまうことであったり②水晶体と皮膚は外胚葉という発生(はっせい)起源が同じで組織的に少し弱いということであったり③皮膚炎の症状を抑えるためにステロイドを使用することが多いからとされています。

アトピー性白内障もいままでお話した後嚢下白内障であったり嚢の前側が濁る前嚢下白内障というものが多いです。前嚢下白内障、後嚢下白内障、どちらも早い段階からレンズの中心から濁りが出てきます。そのため水晶体の周りから濁る加齢性白内障と違って視力低下が一気に進むという特徴もあります。アトピー性白内障はこのように①進行が早いということ、に加えて他にも特徴があって②レンズを支えるチン小帯が弱くなっていたり断裂していたりする場合があること。また③無症状でも網膜に穴が空いていることがあります。20ー30代と若くても定期的に眼科を受診されるようにしてください。

4つ目紫外線です。紫外線は日焼けやシミ、しわ、皮膚がんの原因になることが広く知られているように、強いエネルギーをもっています。紫外線を浴び過ぎると「活性酸素」が発生します。この活性酸素が水晶体にダメージを与えて、そのダメージが蓄積することで白内障になります。事実、世界保健機構、WHOから「白内障の原因の20%は紫外線である」と報告されています。これは紫外線が多い熱帯地域では白内障の有病率が非常に高くて白内障による失明率が高いことが判明しているからです。

屋外での活動時間が長い方は天気が良い日だけでなく曇りの日もサングラスやUVカットのコンタクトレンズをされるのがよいです。サングラスのみでは眼鏡の隙間から紫外線が入るので可能ならつばの広い帽子もされるようにしてください。合わせることによってさらに予防効果が期待できます。

5つ目、タバコを吸われている方は禁煙するようにしてください。タバコのパッケージをみると肺癌、心筋梗塞、脳卒中などの危険性を高めますとの警告表示がありますが、タバコは目にも害があります。その1つが白内障です。タバコを吸う人は3倍早く白内障が進むと言われています。タバコの本数が多いほどそのリスクが高くなります。タバコの煙を体内に取り込む事で大量の活性酸素が作られます。水晶体のタンパク質の構造を変化させて白内障を進行させます。タンパク質は一度変性すると元には戻りません。今回の事とは別ですがタバコは加齢黄斑変性症の原因にもなります。注射やレーザーによる治療が行われるんですが、治療しても中心暗点や変視症といった後遺症を残す事がほとんどです。禁煙した後に白内障の進行が大きく抑制されることもわかっています。できるだけ早めに禁煙するようにしてください。

白内障の主な原因は加齢ではありますが、このように他の要因もあって白内障が進行して若くして手術が必要になることがあります。糖尿病やステロイド内服中の方、アトピーの方は手術のタイミングが遅れないように定期的に受診されるようにしてください。今回の話をまとめますと

①白内障の主な原因は加齢ですが、程度が軽ければ80代でも手術が不要な方もいます。

②糖尿病の白内障は進行スピードが早く、視力が低下しやすい後嚢下白内障になりやすいです。

③ステロイドを内服している方も後嚢下白内障のリスクがあります。ステロイド緑内障にも注意が必要です。

④アトピー性皮膚炎がある方も後嚢下白内障になりやすいです。

⑤長い時間野外活動されている方はサングラスなどで紫外線を避けるようにしてください。

⑥喫煙は白内障を進めるだけでなく加齢黄斑変性症のリスクになります。

という6点です。通常の加齢性の白内障であれば急に進行しないので急いで手術をする必要はありませんし希望が出たところで手術を検討していただければいいかと思います。ただし糖尿病やステロイドやアトピーの白内障は進行が早くて、あっという間に成熟白内障といって難しいタイプの白内障にまで進行することがあるので注意が必要です。いざ手術をしようと思っても糖尿病の値が悪いからすぐにできませんとか、網膜の状態が悪いので手術をしても視力回復が望めませんと言われるような場合があります。そのため症状がなくても定期的に眼科を通院されるようにしてください。

今回は白内障が進んでしまう人の特徴に関してお話させて頂きました。


(2023.1.13)