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105. 白内障手術 後悔しないために

今回は白内障手術後に後悔しないために知っていただきたい事に関してお話させて頂きます。白内障手術が終わると多くの方は視機能が回復します。本当に手術をしてよかった、こんなに見えるのならもっと早くしておけばよかったというように満足される方が多いです。ですが中には手術がきちんと終わって手術自体は成功したとしても不満に思われることがあります。

白内障手術をして確かに視力は上がったんだけど手術前より不便になってしまったということがあるんです。また、手術後のゴロゴロした症状が不快だ、今まで見えていなかったのものや光のすじや影みたいなものが視界に見えるようになってしまったということもあります。

これらは白内障手術前にお話している事ではあるんですが、しっかり術後の見え方を理解していないとこんなはずではなかったと後悔の原因となる場合があります。

今回は白内障手術術後に後悔しないために知って頂きたいポイントに関してお話させていただきます。

白内障手術で後悔しないための重要なポイントはずばり「手術を即決しない」ことです。歳だからとか先生に言われからというような理由で手術をすぐに決めないようにしていただきたいです。白内障の多くは「加齢」が原因ですので60歳をすぎると少しずつ水晶体は混濁していきます。ですが白内障だからと必ず手術が必要というとそうではありません。白内障といっても手術を必要としない軽いものから色々あります。

眼鏡をして0.5、6ぐらいの視力しかない方であっても遠くも近くも見えて日常生活不便していませんと言われる方もおられます。0.7以上の視力は例えば運転免許更新に必要な視力ではありますが、既に運転免許も返納されていて遠方視力を必要としない、そして生活の中心がほとんど家であるといった場合手術をすぐにせずに経過を診ていく方がよい場合があります。もちろん眼科に行かずに放ったらかしにしてくださいと言っているわけではないんですが、安易に白内障と言われてすぐに白内障手術を決めると冒頭でもお話しましたが、「視力は上がったけど不便になった」というような事が実際にあります。

これはどういうことかと言うと「遠くは確かに見えるようになったけど、手術前より手元が見にくくなってしまった」という事で不満に繋がる場合があります。

これはもともと手元にピントが合っていた方が遠方合わせを希望された場合に起きます。

単焦点眼内レンズで遠方に合わせた場合、遠方は裸眼である程度見る事が可能ですが、眼内レンズ自体に調節力がありませんので手元を見る時は基本眼鏡が必要になります。

遠方の視力が上がれば必ず生活がしやすくなるかというとそうではありませんので注意が必要です。

通常視力検査は遠方視力を測っています。いくら遠方視力があがったとしても、必要としている距離、例えば読書に必要な手元30cmの距離であったりパソコンなどで必要な60cmの距離の裸眼視力が出ないと不満に繋がることがあります。家の中での生活がほとんどで、パソコンやスマホや本を読んだりという近方作業が中心の方でしたら手元を重視した見え方を選択された方が生活しやすいです。生活スタイルに合った裸眼で見たい距離を先生に伝えて術後の見え方をある程度シュミレーションしておくことが大切です。

このように術後に裸眼で見たい距離をしっかり伝える事も大切なんですが同じくらい大切なことは、白内障手術をすることで起きる可能性がある症状をきちんと理解しておくことです。

主に3つあって

1つ目、ゴロゴロするなどの目の違和感です。術後に最も言われる事です。白内障手術は小切開、低侵襲の手術ではありますが、わずかに切開しますしそれに伴って違和感がでる事が多いです。

もともとドライアイがある方は術後症状が悪化することがあります。手術中は目が乾かないようにお水がかかったり、消毒液を使って目洗いをすることで目の表面の角膜や結膜といった部分が一時的に荒れることがあります。また術後の目薬で異物感が増悪する場合があります。術後の目薬は基本3本使います。抗菌薬とステロイドと非ステロイドの目薬です。どれも大切な目薬なんですが、多くの目薬に塩化ベンザルコニウムという防腐剤が入っています。塩化ベンザルコニウムは殺菌力が強く、ボトルが汚染されないために多くの目薬に入っています。大切な成分ではありますが、作用が強いので角膜や結膜に傷をつける原因になってしまうことがあります。

このように術後の異物感は創口の影響であったり術後の目薬が関与している場合があります。

手術後はこのような創部の違和感を自覚する事があるんですが、注意して頂くことは気になったとしても創部は触っていけませんし、眼球を圧迫するようなこともしないでください。白内障手術術後から2週間の間は感染症の起きやすい期間になりますので注意が必要です。創部の違和感は数週から1ヶ月程度で落ち着いてくることがほとんどです。


2つ目は、新たな飛蚊症を自覚することがあります。飛蚊症というのは白い壁や青空をみると自分にしか見えないアメーバーみたいな透明なものであったり、黒い点状のようなものです。このようなものが術後見えるようになったのは手術の失敗ではないかと言われることがあります。

飛蚊症の原因は目の中の硝子体という部分の濁り

です。本来硝子体は無色透明であって、若いうちはほとんど濁っていないんですが年齢とともに硝子体の成分であるコラーゲンが変性します。これが硝子体の中で浮かんで飛蚊症を自覚するようになります。この飛蚊症は白内障手術前からあるんですが、白内障がある方は視界がぼんやりしか見えないので飛蚊症の存在に気づかないんですね。

白内障手術

をして濁った視界が取れる事によってこのような飛蚊症を自覚してしまうんです。白内障手術で飛蚊症が増えたわけではなくて、もともとあったものが術後見えるようになります。このような飛蚊症のほとんどは生理的な飛蚊症であって手術の失敗ではありません。多くの飛蚊症は問題ないものではありますが、中には白内障手術後に網膜剥離のような病的なものが起きる場合があります。特に-6D以上の強度近視の方は注意が必要です。術後網膜剥離が発症する可能性が1%程度ある事が報告されているからです。手術直後より半年、1年と術後少し経ったあとにおきやすい事が知られているので術後は必ず指示された通りに受診されるようにしてください。その中で今まで順調な経過だったのに急に飛蚊症を増えてきたような場合は次の受診を待たずにすぐに受診する必要があります。

3つ目は「視界に光が走ってみえる」という症状や「視界の外側に三日月状の影が見える」という症状です。これを異常光視症といいますが、白内障手術後に稀に起きる合併症として知られています。

人間の水晶体は直径10mm程度ありますが、人工レンズは6ミリ程度です。黒目

に入った光がレンズの端っこにあたって乱反射することで起きる現象です。

一般的に異常光視現象はハロー・グレアといった多焦点眼内レンズで起きる症状として知られていますが、それとは別の現象で単焦点眼内レンズでもこのような現象がおきることがあります。こちらに関しても基本的には一時的なことが多く、時間とともに落ち着いてきます。

このように白内障手術は色々知っておくべき事があります。白内障と言われるとすぐに病気だ治療しないといけないと思わる方もおられますが、一旦立ち止まってまず本当に見え方に困っているかどうかを考えて頂くのがよいかと思います。

今回のお話をまとめますと

①もともと手元のピントが合っていた方が遠方合わせの眼内レンズを選択すると遠方視力が上がっても手元が見にくくなる可能性があります。

②術後ゴロゴロするような異物感を自覚しますが、気になるからと言って目を触ったり圧迫しないようにしてください。

③術後の飛蚊症はもとからあったものです。濁った視界が改善することで自覚できるようになってしまいます。

④−6Dを超える強度近視の方は術後1%程度の割合で網膜剥離になる可能性があります。術後は指示された通りに経過観察されるようにしてください。

⑤単焦点眼内レンズでも術後に視界に光が走って見える現象であったり三日月状の影を自覚することがあります。

という5点です。白内障手術は視機能を回復することができる非常に満足度が高い手術ではありますが、色々知っておくポイントがあります。

裸眼視力があがれば満足度が上がるわけではありません。必要としている距離を必ず伝えること、そして術後起きる症状を理解しておくことが手術が成功する重要なポイントです。結局はカウンセリングをしっかりしてもらえる眼科がよいと思います。手術を受けるんじゃなかったということがないようにきちんと要望を伝えてもらえたらと思います。

今回は白内障手術後後悔しないためにということに関してお話させて頂きました。


(2022.12.2)