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106. 緑内障 食べていいもの 食べていけないもの

今回は緑内障が既にある方や緑内障を予防したい方におすすめしたい食生活に関してお話させて頂きます。目にとって大切な栄養素は色々あります。積極的にとることで重症な眼疾患の予防や進行抑制効果があることが知られています。例えばルテインやゼアキサンチンは抗酸化作用があって、水晶体や網膜から光による酸化ストレスを防ぎます。白内障や加齢黄斑変性症の発症や進行抑制効果があることで知られています。ビタミンAが不足する事でドライアイや夜盲症の原因になります。ビタミンBは代謝に関する重要なビタミンです。ビタミンB1は視神経に大切なビタミンでビタミンB12は末梢神経の代謝をサポートして眼精疲労を改善する効果があります。その他にも目に大切な栄養素が色々言われていますが緑内障に対する食事も様々な研究がされています。

今回は緑内障の方に意識して頂きたい食事と避けてほしい食事に関してお話させて頂きます。

日本人に多い緑内障は正常眼圧緑内障です。眼圧は正常値なのに緑内障になる病気です。眼圧以外によく検討されるのは循環障害説です。視神経に栄養を与えている視神経周囲の血流が悪くて視神経に障害を与えていると考えられています。そのため目の血管を拡張させて眼血流を改善させる可能性がある食事に関して注目されています。

1つ目はケールやルッコラ、ほうれん草といった濃い緑色の野菜です。ケールは多くの栄養素が含まれている食べ物です。ルテインの含有量が非常に多くその他にビタミンAの元となるβカロテンやビタミンC、E、カルシウムなどを豊富に含んでいてスーパーフードとされている食品です。目に対して特にルテインの含有量が多いので加齢黄斑変性症の予防のためによく推奨される食品ではあるんですが、緑内障には違う成分が注目されています。濃い緑色の野菜

に含まれている「硝酸塩」に注目されています。

硝酸塩は元々土壌に含まれている成分で植物(しょくぶつ)の成長に欠かせない物質です。濃い緑色の野菜には硝酸塩が多く含まれていて、硝酸塩は体内で一酸化窒素に変換されます。一酸化窒素は血管を拡張させる作用があるのでその事に注目してハーバード大学で研究が行われました。

2016年に発表された内容によると、食事からの硝酸塩が多いほど緑内障を発症しにくいことが報告されました。

25年以上にわたって元々緑内障がない10万人以上の男女を追跡調査してその食事内容を分析した結果です。濃い緑色の野菜を食べて240mg以上の硝酸塩、ほうれん草だと60g相当の量になるんですが摂取した人は最も摂取が少ない人と比べると緑内障の発症リスクが21%低かったと報告されました。発症リスクが低いだけでなくなんと視野検査において中心付近の視野欠損が発症するリスクも48%程度低かったという結果になりました。

この研究では残念ながら既に緑内障がある方への有効性に関しては報告されていませんが、野菜由来の硝酸塩は人体への問題がなく、緑色の野菜をとることが緑内障の予防に有効となる可能性が指摘されています。緑色の野菜は目の場合加齢黄斑変性症に対しての効果が多く報告されていますが緑内障にも効果的である可能性があります。


2つ目は魚に含まれているDHAやEPAといったω3脂肪酸を含んだものです。DHAはドコサヘキサエン酸、EPAはエイコサペンタ塩酸と言われるもので、身体になくてはならない必須脂肪酸です。DHAは脳や目の網膜細胞に多く含まれています。EPAは悪玉コレステロールと言われるLDLや中性脂肪を減らして、血液をさらさらにする効果があります。これらを多く摂ることで視神経周辺の血流障害を改善できる可能性があります。目の血管は身体の臓器のなかで最も細い血管です。視神経の周りの血液循環を改善させることが緑内障治療に有効ではないかと考えれています。

2017年

に米国で3865名の方に対してDHAやEPAの摂取量と緑内障の罹患率を調べた栄養調査が行われました。その結果DHAやEPAの摂取量が多い人と少ない人で比べると多く摂っている人が緑内障のリスクが低いことが報告されました。

DHAやEPAを積極的に摂ることで加齢黄斑変性症や糖尿病網膜症に対する効果やドライアイ改善に対する報告も多くされています。目だけでなく、心疾患や認知症の予防効果もあります。

厚生労働省の基準ではDHAとEPAを合わせた1日の目標摂取量は1gとされており、これは約90gの魚に相当します。鮭やイワシやサンマなどの脂が乗った魚に多く含まれています。1日1匹の魚を摂られてはどうでしょうか。

3つ目は飲み物に関してです。飲み物の場合は毎日少なくとも1日1杯の温かいお茶を飲む事がよいかもしれません。2018年に報告された研究

では1678人の方に対してカフェイン入とカフェイン抜きのコーヒーと温かいお茶、アイスティーまたはソフトドリンクの消費量を調べて緑内障の有病率を評価しました。カフェイン入りの温かいお茶を毎日飲む人は緑内障のリスクが74%低いことが報告されました。その他のアイスティやカフェイン入り、抜きのコーヒー、ソフトドリンクには有効な効果を認めませんでした。同じく2018年にハーバード大学で報告されたものでは温かいお茶を1日1杯飲むことで18%緑内障へのリスクを減らしたとされました。これらは淹れたてのお茶に含まれているフラボノイドに抗炎症作用、抗酸化作用があって視神経への保護につながっているからではないかと考えられています。またフラボノイドは血管を拡張させる作用があるので視神経への血流を改善させて酸素の供給を促がしているからではないかとも考えられています。

緑内障の予防には濃い緑色の野菜や魚、温かいお茶にヒントがあるかもしれません。

では逆に緑内障の方が注意した方がよい食べ物にはどのようなものがあるのでしょうか。

最近の研究でよく言われているのは終末糖化産物、AGESと緑内障の関係です。AGEsとは食事などで過剰に摂取した糖と身体を構成しているタンパク質が結びついてできる老化産物で強い毒性をもっています。AGEs血管、骨、臓器、細胞など身体の様々なタンパク質の成分とベタベタとくっついていて炎症を起こします。全身的には動脈硬化、骨粗鬆症、アルツハイマー型認知症、癌などの発症に関与していて、目の場合は白内障、加齢黄斑変性症との関係が明らかになっていますが緑内障への関与があることも分かってきています。AGESが高いほど緑内障の視野障害と関係していたという報告もあります。AGESは2通りの仕組みで体内に蓄積します。1つ目はAGEsが多い食品を食べることです。AGESは焼き目のついた食品に多いです。トンカツ、唐揚げ、ステーキ、焼き鳥などです。焼いたり揚げたりするものに多いです。その中でもポテトチップスやフライドポテトは非常にAGE値が大きいので注意が必要です。

➁2つ目は高血糖が持続しない食品をとることです。AGESは

急激に血糖値が上がる時にできやすいことがわかっています。そのためGI値が高い食品のとり過ぎに注意してくださいす。白米、パスタ、うどんといった精製された炭水化物や清涼飲料水です。主食を未精製のもの、玄米であったり、全粒粉(ぜんりゅうふん)やライ麦で出来たパンに変えるといった事や低GI食品を中心にとられるのもよいと思います。飲み物は可能なら甘くない飲み物、水やお茶に変えらるのがよいと思います。すぐに食生活を変えるのはなかなか難しいと思いますが、出来る範囲で少しずつ変えてみてはいかがでしょうか。

今回の話をまとめますと

①緑色の野菜に含まれる硝酸塩を多く摂取している人は20%緑内障のリスクが低下しました。

②ω3脂肪酸を含んだDHAやEPAを多く摂取している人は摂取量が少ない人より緑内障の罹患率が低下しました。

③1日1杯温かいお茶を飲んでいる人は飲んでいない人と比べて緑内障の罹患率は低下しました。

④終末糖化産物AGESが蓄積されている人ほど緑内障が悪化していたという報告があります。

⑤唐揚げ、フライドポテトのようなAGEが高い食品や精製された炭水化物、清涼飲料水の摂りすぎに注意してください

という5点です。


緑内障は早期発見が大切で、目薬を中心とした治療を続ける事が何より優先されることであるのは間違いありません。

ですが、日本人に多い緑内障は正常眼圧緑内障で眼圧が正常であるにも関わらず発症してしまう緑内障です。中には充分に眼圧が低いのに進行していく方もみえます。そのため眼圧以外の要因、緑内障とストレス、緑内障と運動、またはタバコ、アルコール、様々な研究がされています。その中で今回は論文で報告されている食事に関してお話させていただきました。


(2022.12.6)