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91. 強度近視 絶対にしてはいけない事

今回は強度近視の方が失明しないために知って頂きたいことに関してお話させて頂きます。強度近視というのは屈折の値が-6Dを越える近視を言います。

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このページの解説は以下のYouTubeでもしています

https://youtu.be/UpsLRK2ED_U

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コンタクトレンズをされている方ならそのパッケージをみていただけると自分の近視の値がわかると思います。0からー3までが弱度近視、ー3からー6までが中等度の近視、ー6を越えると強度近視、ー10を越えると最強度近視と分類されています。

強度近視は、眼球自体が大きくなっています。眼球は正常だと24ミリ程度の大きさなのですが、強度近視は眼球がラグビーボール状に引き伸ばされていまして26ミリ以上に達しています。眼球のそれぞれの組織が引き伸ばされて薄くなるのでそれに伴い様々な眼科疾患を合併しやすいことが知られています。代表的なものは白内障や網膜剥離や緑内障や黄斑症です。白内障は手術すれば治るのでまだいいのですが、その他の病気は放置してしまうと重症な視力障害を来す可能性があります。私自身も強めの近視であってこのような病気にならないために、またはなったとしても重症化を防ぐために気をつけていることがあります。今回は強度近視の方が目の病気で重症化しないために知っていただきたい3つのポイントに関してお話させて頂きます。

まず1つ目は定期的な眼科受診を行ってくださいということになります。目に自覚症状が無くて20代と若くてもまずは一度早めに受診されることをおすすめします。というのは特に強度近視の方は眼科受診をきっかけに重症な病気が見つかることが多いからです。例えば網膜に孔が開いていることが分かったりします。通常網膜裂孔は飛蚊症を自覚するタイミングで発覚することが多いんですが、強度近視の方はそのような前兆もなく孔が開いている事があるんですね。すなわち無症状だけどたまたま眼科に行って目の奥をみてもらったら網膜の孔が見つかることがあるんです。網膜の薄くなった部分がいつの間にか裂けていたということがあります。網膜裂孔はそのまま放置していると開いた孔から水が入って網膜剥離になります。網膜剥離になると手術が必要ですし、黄斑部というとても大事な部分にまで剥離が進むと後遺症を残すような場合もあります。もし早めに見つかればレーザー治療で網膜剥離にならないような処置を受けることが出来ます。レーザー治療までで済めば視覚的な後遺症を残す事はまずありません。これ眼科ではよくある話なんですが、片目に飛蚊症を自覚して眼科受診したら網膜裂孔がみつかってレーザー治療しました。そして無症状の反対の目も検査してみたら反対の目にも孔があったということはよくあるんですね。網膜裂孔の多くは飛蚊症を自覚するタイミングで発覚することが多いんですが、このように無症状でも網膜に孔が開いていることがあります。強度近視の方は多いので注意してください。

同じく緑内障も注意が必要です。緑内障の視野欠損は通常周辺からの障害が多いため初期中期は全く自覚症状がないどころか末期になっても気づきにくい特徴があります。ですが強度近視眼は中心からの障害が多いため早めに視力低下を自覚することがあるんです。そのためより一層早期発見が大切であると考えられています。

このような網膜裂孔であれ、緑内障であれ早めに分かってしまえば重症化しないことがほとんどです。今なんともないから眼科にいかなくてよいと思わないようにしてください。私自身の話をすると必ず年に一度目のチェックするようにしています。これは目に限った事ではありませんが、早めにわかれば後遺症を残すことがほとんど無いことを知っているからです。


2つ目に気をつけて頂きたいことは、目を触ったり、圧迫してマッサージを行う、または目をぶつけたりしないように気を付けて下さい。強度近視の網膜は薄くなっていて衝撃に弱いです。不要な刺激は出来るだけ避けた方がよいです。アトピー性皮膚炎がある方に何故網膜剥離が多いかというと、目の周りを頻回に擦ることでそれが網膜への刺激になっているからと考えられています。このような事から分かるように出来るだけ目の周りは触らない方がいいです。花粉症の時期に毎年目を擦っているなと自覚されている方は、飛散時期をチェックして下さい。飛散2週間前からの点眼でそう痒感をだいぶ軽減できます。痒くなってからだと中々目薬は効きにくいので早めに対応されるのがよいです。

そして3つ目レーシックやICL、または多焦点眼内レンズの白内障手術を受けて近視は治ったと思っている方です。このような手術を受けて屈折の値だけをみると強度近視から弱めの近視または正視といって遠方視力を改善することはできますが、眼球自体は強度近視の構造のままなんですね。裸眼でよく見えるようになった事で眼科受診をしないでいると先程話した網膜裂孔や緑内障のような病気が重症化するまで放置してしまっている可能性がありますし、実際そのような患者さんはたくさんおられます。このような病気が重症になるまで放置していると多焦点眼内レンズは最大の効果が発揮できないどころかかえって見にくくなる原因になることがあります。

多焦点眼内レンズは現状ほとんどのレンズが回折構造となっています。多焦点眼内レンズはすべての光を有効活用できません。光学的ロスといいますが、一部有効活用されない光があってだいたい10ー15%程眼内に入ってきません。残り90%弱の光を利用します。その光を更に遠方、中間、手元を4:2:2程度の割合に分光します。そのためコントラストが若干落ちてしまいます。一方で単焦点眼内レンズはこのような光学的ロスを考えなくていいですしもちろん分光することもないので、見たいポイントに関しては100%の力でみえるので最大のコントラスト感度が期待できます。多焦点眼内レンズは遠方から手元40cmまではだいたいはっきり見えるけど、単焦点眼内レンズほどのコントラスト感度は期待できません。手術をするときはよかったけど、その後に緑内障や網膜剥離が生じて何らか視機能障害が残ってしまう可能性がある事を考えるとできるだけコントラスト感度がよいものを予め選らんでおくべきだと思うからです。なので強度近視の方は安易に多焦点眼内レンズを選ばない方がよいかもしれません。


自分自身が白内障手術を行うのであれば、眼鏡無しになるような生活にもちろん憧れはあるのですが、人生100年時代において通常より眼疾患になるリスクが高い事を考えると単焦点眼内レンズのような出来るだけコントラストがいいものを選ぶと思います。

このあたりはリスクへの考え方なので価値観によって選択が異なってくると思います。あくまで私ならという事でお話させて頂きましたがよければ参考にしてください。今回の話をまとめますと

①強度近視の方は若いうちから定期検査を怠らないで下さい。

②無症状の網膜裂孔や緑内障が発覚する事があります。

③目を擦ったりぶつけたりしないようにしてください。

④レーシックや白内障手術をした後も注意が必要です。

⑤安易に多焦点眼内レンズを選ばない方がよいかもしれません。

という5点です。

強度近視であることで必ずしも将来病的なものが発症するわけではありません。実際は強度近視で失明するような事もほとんどないです。ですが、強度近視であることで病的なリスクがあがる事は間違いありません。

繰り返しになりますが早期発見がとても大事です。無症状のうちから眼科受診されるようにしてください。理想的には強度近視にならないことが一番です。お子さまをお持ちの方でしたら早めに近視の状態であることがわかれば、低濃度アトロピンや二時間以上の屋外活動、オルソケラトロジーといったものでだいぶ抑制できます。ゲーム機なども極力渡さないようにしてもらえたらと思います。

今回は強度近視の方が失明しないためのポイントに関してお話させて頂きました。


(2022.9.20)