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90. 絶対買ってはいけない目薬

今回は眼科医の私がささない目薬に関してお話させて頂きます。薬局に行くとたくさん目薬が販売されていますよね。充血がとれるもの、ドライアイにきくもの、抗菌剤が入っているもの、花粉症にきくものなど色々あります。何か目に症状があった時、市販の目薬を購入された事はないでしょうか?

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このページの解説は以下のYouTubeでもしています

https://youtu.be/vBDT64rqf9M

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私自身は目薬を薬局で購入することはほとんどありませんが、どうしても必要で購入を検討するときは必ず成分を見るようにしています。眼科医になってから充血をとる目薬の成分であったり、ものもらいに効く目薬に入っているものを知ってから、これは知らずしてさすと市販の目薬でかえって悪くなる事があるんじゃないのかというように思ったからです。

もちろん市販の目薬を使われて症状が改善された方もおられると思います。

一方で眼科にこられる患者さんで充血があって市販の目薬を使っていたけど治らないから来ましたという患者さんもたくさんみえます。市販の目薬はすべて悪いものだとは思っていません、むしろ推奨したい目薬もあるぐらいです。今回は私が絶対ささない目薬と困った時はこれをさしますということに関してお話させていただきます。

まず1つ目は充血をとる!と書いてある目薬です。目薬の成分には塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドロゾリンという塩酸○○とついているものです。これらは血管収縮剤というものです。このような目薬をさすと確かに目が白くなります。目の白目の血管が拡張して充血しているわけですが、この成分は血管を無理矢理収縮させます。そうすることで薬が効いている間は充血をとることができます。

ただ残念ながら充血している原因を治療できているわけではありません。

充血の原因は色々あって花粉症のようなアレルギーであったり、細菌感染であったり、場合によってはぶどう膜炎といって強い炎症が目の中で起きていることがあります。

ぶどう膜炎の場合は早期にきちんとした治療を行わないと視覚的な後遺症を残すこともあります。このように原因を治療しない限り根本から治ったとはいえません。このような血管収縮剤は治療する薬ではなく、一時的に無理矢理充血を引かして治ったようにみせている成分なんです。薬が切れたら元通り充血するどころか、リバウンドといってかえって悪くなります。実はこの血管収縮剤、医療用医薬品にはほとんど使われていません。充血をとる目薬で一時的によくなって、薬が切れたらまたさすということを繰り返した結果、結局よくならないので眼科受診されるような方はたくさんみえます。人と会う用事があって充血があるとみっともないというように一時的に使用されるのならいいですが、長期間使うのはよくありあません。2,3日使っても改善なければ眼科受診されるようにしてください。

2つ目、ものもらいに聞く!抗菌薬含有というものです。市販の目薬の抗菌薬にはどの目薬にもスルファメトキサゾールという成分しか含まれていません。濃度も4%でどの目薬もだいたいこの濃度です。この成分は抗菌薬として非常に弱くて、医療用医薬品には含まれていません。

感染症には、はやり目といってアデノウィルスのようなウィルス性のものであったり、ブドウ球菌のような細菌感染症、またはカビのような真菌感染症があります。このうち抗菌薬は細菌に対する作用しかないので、細菌感染症にしかきかないんですね。夏場に多いアデノウィルスのようなウィルス性の結膜炎にはききません。アデノウィルスだった場合適切な治療が遅れると目の表面、角膜という部分に後遺症を残して視力低下を起こすことがあります。ものもらいだとしても医療用の抗生剤の薬を使わないと治療が遅れて瞼にしこりを残す原因であったり、切開が必要になることもあるので注意が必要です。先程と同じように2、3日たっても改善ない場合できるだけ早め眼科受診されるようにしてください。

次に3つ目防腐剤が入っているものです。これは医療用医薬品にも8割方入っていますが、塩化ベンザルコニウムという防腐剤が入っているものです。この成分が入っているので目薬は開封後にだいたい30日前後使用することができます。目薬が汚染されないように防腐剤としての効果が強いのですが、その反面目の表面への作用も強くて角膜を傷つける原因になっていることがあります。表層角膜炎といって防腐剤による角膜炎を起こしていることがあります。角膜に傷がついて感染症を起こすようなこともあります。

できるだけ防腐剤が入っていない目薬が目に優しくてよいです。防腐剤が入っていない目薬でおすすめしたいのはソフトサンティアという市販の目薬です。涙の成分が入っていまして、一番の特徴は防腐剤が入っておりません。ドライアイで乾燥感が強くてゴロゴロするようなことがあればまず使って頂いていいと思います。

また市販の目薬でヨードが入った目薬が2022年9月から発売されます。参天製薬から発売されるサンヨードというポピドンヨードが入った目薬です。

ヨード製剤はとても有能で僕らは白内障手術前の目洗いなどに使用する薬です。抗菌力も強くてその上、耐性といって効きにくくなることもありません。抗生剤の目薬は細菌にしか効きませんが、ヨード製剤は細菌感染はもちろんのこと先ほどのアデノウィルスのようなウィルス感染、カビのような真菌感染症にも効きます。実は医療用医薬品の目薬で効きにくい感染症に対しても効果があったりします。例えばアデノウィルスは通常抗菌薬には反応しませんが、ヨード製剤は優れた効果が期待できます。医療用医薬品として処方できたらいいのにと思っているぐらいです。

市販薬にはソフトサンティア、サンヨードのように優れた目薬があります。

乾き目を自覚したらソフトサンティア、感染症の可能性があればサンヨード、自分なら市販の点眼で真っ先に使うなと思います。コンタクトレンズトラブルなどで多い緑濃菌、アカントアメーバーもこのサンヨード効きます。ただしヨードアレルギーがある方は使えませんし、自己判断はさけてほしいですが、どうしてもという場合まずこの目薬を使ってみるのもいいかもしれません。注意することはソフトサンティアは第三類医薬品に分類され誰でも購入することができますが、サンヨードの方は要指導医薬品であり薬剤師の先生がいないと処方されませんのでご注意ください。要指導医薬品は今までヒアレインSしかありませんでしたが、この度2つ目の目薬が登場しました。

ただ原則は眼科医に相談してから使用していただきたいものですので、使用される前にご相談頂けたらと思います。今回のお話をまとめますと

①充血をとる成分には血管収縮剤が含まれていまして、一時的に充血を取るだけで病気の根本を治しているわけではありません。

②ものもらいに効く目薬にはスルファメトキサゾールしか含まれておらず、医療用医薬品には含まれていません。

③防腐剤がないものを選ぶようにしてください。

④市販の目薬でおすすめしたいのはソフトサンティアとサンヨードという目薬です。

という4点です。ソフトサンティアは防腐剤がないドライアイの目薬としてとてもよい目薬です。眼科の先生でも市販で買うならソフトサンティア薦める先生は多くいらっしゃると思います。抗菌作用の目薬は今までお話した通り作用が弱く、効きにくいのであまりおすすめしておりませんでしたが、サンヨードの登場によってやや状況が異なってきました。イソジンは昔からうがい薬などで使われてきた薬ですが、安価でありながら効果が強く、耐性がないもので今でも重宝されております。ただしヨードは適切な濃度でないと効果がでないどころか害になります。今回の話を聞いてうがい薬もヨードだからとって自己判断で目につけるような事はやめてくださいね。どんな病気であれ基本的には眼科受診し適切な診断を受けて頂きたいのですが、やむを得ない事情があれば二三日限定で使用されるのもいいかもしれません。今回は眼科医が絶対に買わない目薬、買う目薬に関してお話させて頂きました。


(2022.9.17)