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66. 緑内障寝るときに注意すること

緑内障の治療は眼圧を下げることが唯一エビデンスのある治療です。眼圧を下げるために主に目薬による治療がされていると思います。眼科受診して眼圧を測定しどの程度眼圧が下がっているかチェックしますよね。この緑内障診療において欠かせない眼圧の値は色んな事で変動します。

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このページの解説は以下のYouTubeでもしています

https://youtu.be/iBCoT_AfsWw

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例えば一日の中でも変動します、朝高くて夕方に低くなるといったのが最も多い日内眼圧変動パターンです。朝測るときと夕方で6ぐらい違うこともあります。また、季節によっても変わります。夏は低くて冬は高くなるといったように変わります。このような季節変動や日内変動は自分の力では変えられませんのでどうしようもないのですが、普段していることで知らずして眼圧が高くなっているようなことがあります。

今回は緑内障患者さんに知っていて頂きたい意外と知られていない睡眠による緑内障への影響を2つお話させて頂きます。


まず一つ目に知って頂きたい事です。緑内障は悪くなりやすい時間帯があります。それは朝でしょうか、それともお昼頃でしょうか、もしくは夕方疲れ目を自覚される方も多いと思いますが、夕方頃なのでしょうか。実は夜寝ている時なんです。

寝ている時に眼圧が高くなりやすいので緑内障は悪くなりやすいと言われています。何故夜に高くなるのかというと体位と関係があるんです。


眼科を受診して眼圧を測るときは椅子に座って、風のようなもので眼圧を測ったり、診察室で眼科医が直接測る場合がありますよね。
この座って測っている時が一番低い値なんです。眼圧は重力の影響を受けますので、座っていたり立っている時が一番低い眼圧なんです。そして少しずつ身体
を傾けて頭が下になっていくと、眼圧は上昇していくんです。一番高い時は逆立ちをしているときです。なので長時間逆立ちをするような事はとても危険です。なんと逆立ちをすることで眼圧が座っているときよりも倍近く上がってしまうことがあります。正常な方であっても逆立ちすれば同じように眼圧が上がりますし、緑内障の方は更にあがりやすいので注意が必要です。事実ヨガで逆立ちの姿勢をしていた方が緑内障を悪化させていたという報告もあるぐらいです。眼圧はこのように体位によって変動します。頭の位置が高いほど眼圧は下がりますし、逆に低いほど高くなるんです。この事からわかるように日中注意するときはいつかといいますと寝るときなんです。

だからと言ってからだを起こして寝るようにしてくださいというわけではありません。ただ寝るときの体位でもポイントがあります。身体が水平になることで眼圧があがってしまうのは仕方がないことなのですが、身体の向きによって上がり方が違います。皆さんは寝るときは仰向けですか?横向きですか?それともうつ伏せでしょうか?仰向け、うつむき、横向きの中で最も推奨したいのが仰向けでの寝かたです。

横向きとうつむきは眼圧が更に上がることがあるので注意が必要です。横向きの場合は下の方になっている目の方が上になっている方の目より眼圧が高くなります。例えば視野変化が右目の方が強いとします。その場合右目を下の方にして寝る習慣の方は右目の方が眼圧が高くなっている可能性があるので注意が必要です。どうしても横向きで寝る習慣がある方は視野変化がない方の目を下にした方がいい可能性があります。ですがやはり理想は仰向け(図4)で寝る事です。そして枕(図5)もあった方がいいです。時々枕をせずに寝られる方もおられますが、枕をして寝たときの方が少し角度がつくぶん眼圧があがりにくいんですね。無理に高い枕をする必要はありませんが、低い枕よりは少し高めの枕の方がいいかもしれません。仰向けで寝やすいようにオーダーメイドで枕を作ることもできますので、自分に合う枕を作られるのもおススメです。

このように寝ている時の姿勢や枕などに関してポイントがあります。

色々気にして寝れなくなると本末転倒ではありますが、どれか1つだけでもできることがあればやられてみるのがいいと思います。

この体位変換による眼圧の上昇はあまり注目されていないのですが、実は様々な論文で報告されています。座っている時の眼圧は低いのに、寝ているときの眼圧は大きく上昇していた、そのことが緑内障の視野に悪い影響があったとか、緑内障診療で用いるOCTという検査があるのですが、同じく起きている時と寝てるときの眼圧の差が大きいから悪くなっていたというような報告もされております。

ご存知の方もおられるかもしれませんが、前立腺癌のような泌尿器手術であったり卵巣腫瘍で婦人科での手術を行う場合最近だとダビィンチというロボット手術や内視鏡手術で身体に負担がかかりにくい低侵襲な手術を行うことがあります。そのような手術を行う場合ベットを15°~30°ほど傾けて頭が下になるポジションで手術を行う事があるんです。緑内障がある場合主治医の先生から眼科医にこの頭が下がるポジションで手術を行っても問題ないですかと聞かれます。

これは何故かと言いますと、今お話した通りの内容なんですね。身体が傾いて頭が下のポジションになると眼圧があがりますので緑内障への影響が考えられるからです。さきほど見ていただいた図のようにあがる方だとたった30°頭が下向きになるだけで普段の眼圧が15ぐらいで正常の方でもこの姿勢のために20、30と眼圧があがってしまうことがあるんですね。実際は20後半ぐらいの眼圧が数時間続いたところでほとんど悪さはしませんが、末期の緑内障の方はこれが時に問題になることがあるんです。

眼科医の判断で危険と判断されるとできるだけ身体を傾けずに手術を行う必要があるので手術の方法を変えることもあります。これは海外の論文で報告されていますが、緑内障の方が数時間頭が下になる姿勢で手術を行った所、術中に眼圧が上がっていたために手術後に見えなくなってしまったということがあったからなんです。それ以降緑内障がある方で頭を下にした姿勢で手術を行うようなことがある場合必ず手術前にチェックするようになっています。

たった数時間頭が下の姿勢を保っていたことで失明したなんて怖いですよね。なので姿勢一つとっても馬鹿にできないんです。


次に二つ目、就寝中に注意することというと睡眠時無呼吸症候群と言われている方も注意が必要です。睡眠時無呼吸症候群とはその名前のとおり睡眠中に無呼吸になることです。日中の居眠り運転が実は睡眠時無呼吸症候群が原因であったというニュースが以前ありました。この病気は無呼吸になることで必要な酸素を全身に行き届かなくなることが様々な臓器に障害を与えると言われています。目の場合視神経への循環障害が起きると言われています。事実睡眠時無呼吸の方は緑内障のリスクが10倍になると言われています。特に日本人に多い正常眼圧緑内障はリスクになりやすいと考えられています。それは緑内障の治療は眼圧下降が一番ではあるのですが、正常眼圧緑内障は循環障害による影響も考えられているからです。緑内障の治療が安定している方はあまり気にしなくていいかもしれませんが、普段眼圧が低いのに視野が進行している方はこのような循環障害の影響は考えられますので注意が必要です。以前から睡眠障害が言われている方は治療をした方がいいかもしれません。

以上睡眠中に言われていることをお話させていただきました。今回のお話をまとめますと

①睡眠中は立ったり座っているときより眼圧があがります。

②横向きやうつ伏せはできるだけ避けた方がいいです。

③特に横向きの姿勢の場合悪い方の目を下にするのはよくありません。

④枕もした方がいいです。

⑤睡眠時無呼吸症候群は特に正常眼圧緑内障の方には注意が必要です。

という五点です。眼圧測定は座って測ることがほとんどですが、この睡眠中の眼圧上昇は意外と知られていません。私は緑内障の中でもこの姿勢による眼圧変動の研究を大学時代してまいりました。患者さんで眼圧がこれだけ低いのになぜ緑内障が進行しているのだろうと思ったのがきっかけです。研究してみると座っているときは10とかの方でも寝ると20付近にまであがる方もおられました。1日のうちの3分の1は睡眠時間ですので、夜間眼圧の上昇が影響している可能性があります。このあたりはまだ研究段階ですが、睡眠中の姿勢は自分でもわからないことがありますので一度家族の方などにどのように寝ているのかみてもらうのもいいかもしれません。

今回は緑内障患者さんへの睡眠中に注意することに関してお話させていただきました。


(2022.4.14)