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64. OCTってどんな検査

OCTという検査は眼科に受診される多くの方は受けられた事があると思います。目の奥の眼底検査において眼科ではかかすことのできない検査で今やOCTがない眼科はほとんどありません。

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このページの解説は以下のYouTubeでもしています

https://youtu.be/q1VQA9jEkzU

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視野検査のように自覚検査で時間がかかるような検査ではなく、ほんの数秒であらゆる目の情報を大量に得ることが可能です。2000年代から使用されるようになったOCTは網膜の形状解析に使用されることがメインでしたが、今や緑内障の経過観察においてもOCTは必要ですし、OCTAといって網膜の血液の循環状態まで把握することが可能になっております。まずは今回OCTという機械はどのようなものなのかということから簡単にお話させて頂きます。

OCTとは光干渉断層検査optical conherence tomographyといいまして光を使って目の奥の網膜の画像診断をするもので、眼科特有の検査です。名前にCTとついているので時々放射線の被爆を受けるのではないかと心配される方もおられます。一度OCTという検査で詳しく検査しましょうと話すと先生、実はお腹のCT検査を受けたばかりでこれ以上被爆するのはちょっと…と言われるような事がありますし、OCTという検査を新人の看護師さんに依頼したところCT室まで患者さんを連れて行きOCTという検査はないそうです。と誤解されたこともありました。OCTは内科で使うような頭やお腹を撮影するCT検査とは全く別物です。機械からX線が出ているような事はもちろんありません。近赤外線光の光で目には害がない無侵襲の検査で当然被爆などしませんし眼に接触するようなこともなく安心して受けて頂ける検査です。

目に入った光は目の奥の網膜の層に対して反射して反射の強さであったり、反射する時間のずれであったりそのような情報を読み解いて網膜の画像を作成します。この光の性質を使って色々なことが分析出来ます。眼底のあらゆる部位に対して撮影できるのですが、撮影箇所は主に二か所で黄斑という視力に大切な部位と視神経という部分です。

機械を覗くと赤い指標がみえます。その指標が真正面にある場合は黄斑という部位を撮影しているときです。

なので赤い指標が真正面にあるときは黄斑部をとっているんだなと思ってください。視神経の場合は赤いラインが右目なら左に動き左目なら右に動きます。光っている部位を注視させて視神経を撮影します。これは黄斑と視神経が15°程度離れているので、少し目を動かさないと視神経の撮影ができないんですね。これは豆知識なのですが知っておくと真正面をとっているときは黄斑をとっているんだと感じることができますし、赤い点灯部位が右や左に移動したときは視神経を撮っているだなと感じると思います。

検査自体は一瞬で終わります。

撮った画像をみると網膜はバームクーヘンのように層状に構成されております。大きく拡大されていますが実際網膜は平均0.3mm程度の非常に薄い膜です。網膜をOCTでとるとこのようにどの層に異常があるのか即座に把握することができます。


黄斑という部位は正常だと中央部分が少しくぼんで、その他は平らな構造をしています。すべて平らではなく中央が少しくぼんでいるこれが正常な形なのですが、糖尿病だとか加齢黄斑変性症という病気だとこの構造がみだれます。

黄斑部の構造が乱れている場合は視力が出ません。特に糖尿病や加齢黄斑変性症のような病気は黄斑という視力に大事な部分が水ぶくれを起こし視力が低下します。

そのような場合は硝子体注射という目の中に注射をするのですが、まだ水ぶくれがあるから注射をする治療の根拠にもなります。肉眼的にここまで詳細に見るのはやはり難しいのですが、OCTという検査だと即座にここまでわかることができるのでとても便利です。



このようにOCTでは特に黄斑という部位の撮影が主にされます。

また緑内障でもこの黄斑という部位はとります。

緑内障で黄斑部を撮影する理由は2つあります。

1つは緑内障の進行程度をみるために撮影します。網膜は10層でできているのですが、緑内障で痛む部位というのが決まっています。網膜全体がダメージを受けるというわけではありません。網膜の再表面が障害をうけて薄くなっていきます。この部分の厚さはOCTで測ることが可能です。

なので極端な話、緑内障の治療をされている方でOCTでこの部位が安定していれば緑内障は大きな進行はないと言えますが、減少傾向(図7)にあるなら進行している可能性があります。今のOCTでは何μm減ったということまで評価できます。これを統計処理して緑内障の進行程度を評価する事ができます。


もう1つは点眼による合併症が生じていないか確認するためです。ラタノプロスト、タプロス、トラバタンズ、ルミガン、最近だとエイベリスといった薬がありますが、このようなプロスタグランジン製剤の薬を使っている場合です。眼科医からはこの目薬が皮膚に付着して残ってしまうと黒ずむからお風呂入る前とか洗顔前にしてくださいねと言われている1日1回タイプの目薬です。このような目薬を使っていると薬の影響で黄斑部が変形することが極まれにあります。特に白内障手術術後は注意が必要で、薬物の影響を受けやすくなると言われております。点眼の作用が黄斑部に影響がでていないかチェックする事が2つ目の理由です。

このようにOCTはとてもあらゆる眼科疾患において適切な治療を行うために重要ではあるのですが、万能ではありません。

OCTという検査は大量の正常な方のデータベースがありそれに基づいて画像の結果を判断しております。

なので緑ならあなたが正常である確率が高い、黄色なら少し怪しい、赤なら異常である確率が高いというように判定されます。

OCTは正常者を大量に集めてそれに沿って判定していますので単純に赤ならとても悪いという意味ではありません。

極端な事を言いますと赤でも正常な場合もあります。

OCTは正常者を大量に集めているのですが以下のような特徴があります。

1つ目に15歳以上の正常者を対象にしている、

2つ目に屈折の値が±6D以内である、

3つ目に乱視度数が2D以内であること、

4つ目に白内障を除いた病的疾患がないこと、

この4つをクリアされている方が集められたデータがデータの元となっております。

なのでこれ以外の方はエラーになる可能性があります。

特に近視が−6D以上の方だとOCTにはそのデータがないので誤った判定をされる事があります。例えば-6D以上の強度近視の患者さんにOCTをとると実際は正常なのに赤い部分が多く出る場合があります。

赤い部分は単に正常からどの程度離れているという意味であって必ずしも異常をさしているわけではない事もあります。実際は様々なデータと合わせて評価するのでOCTだけで診断しているわけではありません。

緑内障中心にお話させて頂きましたが、緑内障の場合は視野検査が最も参考になります。中期以降の緑内障はOCTでは正確な評価がしにくくなるんですね。OCTだけで視野を予測する機械ができつつありますが、現在の視野検査に完全に代用できるのはまだ先になりそうです。

今回のお話をまとめますと

①OCTは網膜疾患、緑内障疾患を即座に画像解析するものです。

②検査の光は害がなく、安全に受けていただけるものです。

③正常の方のデータベースをもとに評価されます。

④強めの近視の方はエラーが出やすいため赤い部位が必ずしも異常でない場合があります。

という4点です。今はアンギオグラフィという血流の評価ができるOCTAというものがあります。今までは網膜の血液循環を評価するには点滴して造影剤を身体に流して循環状態を撮影するという方法をとっておりました。ほとんどの方は問題がないのですがまれに造影剤にアレルギーを起こされる方もおられたんですが、現在は完全に代用まではいっていないのですがそこまでの検査をしなくても目の奥の血液の循環状態を把握することが可能です。いつもうけているOCTという検査がどのようなものなのか少しでも知っていただけましたら幸いです。今回はOCTという検査に関してお話させて頂きました。


(2022/3/31)