今回は市販のかゆみ止めの目薬を眼科医が買うならどれにするのかという事に関してお話させて頂きます。毎年3月頃から5月末頃まではスギやヒノキの花粉の時期になります。眼科にも目の痒みなどで多くの患者さんが受診されます。来られた患者さんの中で
「市販の目薬で一番高いのを買ったけど全然効かない」とか場合によっては
「かかりつけの内科でついでに花粉症の目薬をもらったけど全然効かない」と
言われる方も結構おられます。
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出来るだけ眼科受診して症状に合った目薬を処方してもらうようにしていただきたいのですが、どうしても受診が難しい方も多いと思います。市販の目薬は高ければ効果が高いというわけではありません。選ぶ上でポイントがあります。
今回は眼科医がオススメする花粉症の目薬に関してお話させて頂きます。
市販の目薬も数百円のものから3000円近くするものまで色々ありますよね。この主な違いは有効成分とされるものがどれだけ入っているかということによります。有効成分とは①抗炎症作用、②充血を取る、③角膜保護作用、④ビタミン含有、⑤抗アレルギー作用、⑥抗ヒスタミン作用、⑦疲れ目に効くといった成分のことです。
市販薬は誰にも安全に使えるというものが原則なので、有効成分といっても医療用医薬品よりも効果が弱いものや医療用にはない成分であるものがほとんどです。
これは効きそうだというパッケージの印象であったり有効成分最大濃度配合という記載をみて買われる方が多い印象があります。市販の目薬が全てだめというわけではありません。中にはオススメしたい目薬もあるぐらいです。
その中で点眼薬を購入する上でまず気をつけて頂きたいことは、充血をとる成分が含まれていないものを選ぶようにしてください。
充血を取る成分とは塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリンのように塩酸〇〇と書かれているものです。充血すると血管が広がるんですが、これらは強制的に広がった血管を収縮させて薬が効いている間だけ充血が改善するというものです。充血の原因を改善させているわけではないので効果が切れるとまた充血します。
このような目薬を繰り返し使用する結果リバウンドといいますが、更に充血が悪くなります。
血管収縮剤は花粉を洗い流すために必要な涙の量が少なくなりますし、また眼血流も悪くなるのでまずこの成分が入っていないものを選ぶようにしてください。
アレルギー点眼薬で大切なことは抗アレルギー作用と抗ヒスタミン作用の両方が入っているものを選ぶことです。市販の中には抗アレルギー作用しか入っていないものがあります。
抗アレルギー作用のみの目薬は痒みなどの目の症状が出る前に使用するにはいいんですが、すでに発症している状態だと効果がほとんどありません。一方で抗ヒスタミン作用は痒みを引き起こす主な原因であるヒスタミンをブロックします。そのため目の痒みがすでにある場合抗ヒスタミン作用も入っているものを選ぶようにしてください。
医療用医薬品
には抗ヒスタミン作用があるものは4種類ありますが、市販の目薬には2種類しかありません。
1つが①クロルフェニラミンマイレン酸、もう1つが②ケトチフェンフマル酸塩というものです。
オススメしたいのはケトチフェンフマル酸塩が入っているものです。医療用医薬品で処方する目薬にザジテンという目薬があります。その主成分がケトチフェンフマル酸塩です。効果効能が実証されているので、その成分が入っているものがよいと思います。
もう1つのクロルフェニラミンマイレン酸は医療用医薬品にはありません。
どうせ使うのなら医療用医薬品に含まれているものと同じものを使った方がいいと思います。
市販の目薬だとアイリスAGガードかジキナAL点眼薬というものになります。この目薬はスイッチOTC医薬品といいますが、先程の医療用医薬品のザジテンという目薬に含まれている成分と同じもので同じ濃度になります。どちらでもよいと思いますが、目薬はできるだけ刺激成分が入っているものを避けることが基本です。
ジキナAL点眼薬はメントールやカンフルといったすっきりする成分、清涼剤が含まれていないのでどちらかというとそちらがよいと思います。
注意点はどちらの目薬もコンタクトレンズを使用したままでは使えません。必ずコンタクトレンズをとってから使用するようにしてください。
ではコンタクトレンズをしている方にはどの目薬がよいのかというと市販のものではオススメできるものは残念ながらありません。
コンタクトの上からさせるという目薬は売られているんですが、コンタクトをしてもさせるように有効成分の濃度が薄くなっています。効果が不十分な事が多いです。
目の痒みなどアレルギー症状がある場合原則はコンタクトレンズをやめる事が1番いいです。これは
①花粉を洗い流すための涙成分がコンタクトレンズの方に奪われてしまう。ということや
②コンタクトレンズは異物なので、結膜炎を起こしている状態だと更に粘膜を刺激して悪化させるからです。
結膜炎をおこしている状態だと基本はメガネをしていただきたいです。
①メガネはコンタクトと違って涙の量を奪う事がないですし
②眼鏡自体が花粉が目に入るのをブロックすることができるからです。
しかし実際は仕事などの関係でコンタクトレンズをしたいという方も多いです。コンタクトレンズを装着した上でしっかり有効成分を眼表面に届ける効果があるものはたった1つしかありません。市販では販売されていませんが、医療用医薬品のアレジオンやアレジオンLXというものになります。コンタクトレンズをしたままでもさせるとてもよい目薬です。副作用がほとんどないので、眼科でなくても内科や耳鼻科でも処方される場合があります。どうしてもコンタクトレンズをしたいという方は市販薬のものよりこのような目薬がよいと思います。
ただしこれらの目薬はアレルギー症状が軽度から中等度の場合は効きますが、結膜炎の症状が強いと充分に効果を発揮しない場合があります。アレジオンやもう1つパタノールという目薬は副作用がほとんどなくてとてもいい目薬ではありますが、即効性という点でみると少し弱いんですね。
症状が酷いと弱めのステロイドの目薬が必要になる場合があります。ステロイドは切れ味がよく即効性があります。ステロイドの目薬は市販では売られていないので、どの目薬をさしても中々よくならないなと感じた場合は早めに眼科に受診されるのがよいですね。
目薬を使う上でポイントは2つあって1つ目は目に入った花粉を洗い流した上で使用されるのがよいです。いくら痒み止めの目薬をしてもアレルギーの原因となっている花粉を洗い流さないと薬の効果が充分に発揮しないからです。ただし目を水道水で洗い流すのはやめて下さい。水道水には塩素が含まれていて、目の表面を傷つける原因になります。目洗い用の目薬が市販薬でもあります。参天製薬のソフトサンティアやウェルウォッシュアイというものです。余計な添加物が含まれていないので、目洗い用としていいです。2つ目のポイントは目薬を冷やす事です。冷やす事で炎症を取る効果が高まります。出来るだけ冷蔵庫で保管してください。そのため順番として
①目洗い用の目薬を冷やしてまず目についた花粉を洗い流す
②医療用医薬品ザジテンのスイッチOTC医薬品であるジキナAL点眼薬を使ってみる(冷やして使用してもよい)
③コンタクトを外してメガネで頑張ってみる
これらを1週間程度使って効果がなければ無理に使い続けず眼科に行って症状に合った目薬を処方してもらうという順番がよいと思います。もちろん最初から眼科にいくのがいいんですが、仕事などの都合で行けない方は参考にしてください、
最近はこのように医療用医薬品と同一成分が同じ濃度で入っているものが出てきて便利になりました。アレグラのようなアレルギーの内服薬もドラックストアで購入できますよね。アレルギーを抑える強さとしてはやや弱めの薬ではありますが、医療用医薬品と同じものが使えるということは病院に行けない緊急な状態ではよいと思います。症状がひどければ目薬を使用した上で内服薬を使うことで効果が高まる事が多いです。今回の話をまとめますと
①アレルギーの目薬を購入される場合抗アレルギー作用と抗ヒスタミン作用の両方が入っているものを選んで下さい。
②市販薬で抗ヒスタミン作用が含まれているものはクロルフェニラミンマイレン酸とケトチフェンフマル酸塩のどちらかです。
③医療用医薬品ザジテンのスイッチOTC医薬品であるケトチフェンフマル酸塩がオススメです。(アイリスAGガードまたはジキナAL点眼液)
④まず目洗い用の目薬で目を洗ってからさすのがよいです。
⑤目薬は冷やすと効果が高まります。
⑥1週間を目処に使って改善がなければ眼科受診してください。
という6点です。スギからヒノキと5月末まで花粉は飛びます。市販の目薬だけでなく医療用医薬品の目薬ともにいえることは症状が悪い時だけでなく落ち着いているときも花粉飛散時期は使い続ける事です。また目薬以外に花粉が目に入らないようにつるつるしたナイロン製の素材の服を着たり、つば付きの帽子をしたり、庇付きのメガネをしたり、症状がひどいときは冷たいタオルで目を冷やしてみるということもいいと思います。薬に加えて出来るだけ花粉が目に入らないようにすることが大切ですが、その中で今回はオススメの市販の目薬に関してお話させて頂きました。
(2023.5.16)