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128. 目が猛烈に悪くなる前兆

今回は絶対に放置してはいけない目の症状に関してお話させて頂きます。

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このページの解説は以下のYouTubeでもしています

https://youtu.be/hyArCJSsAaU

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目に深刻な症状があったとしても受診が遅れる方、結構おられます。これは、

①見にくくなったとしても目の場合、心臓や脳の病気と違って痛みもなければ麻痺のような症状がないという事であったり

②片目が見えなくなってももう片目が見えていれば何とか我慢できてしまう

というような理由が考えられています。

熱や風邪のような症状の場合、2,3日安静にしていたら治ること多いですよね。

そのような事から片目の視界が突然欠けたり、二重にみえるような異常な症状があってもいつか治るだろうと思われて受診が遅れる方が多いです。

ですが、目にも脳梗塞や心筋梗塞などの病気と同じように緊急な状態があって、治療が遅れると助からない場合があります。

今回はこのような症状を放置すると失明するどころか場合によっては命に関わる場合もありますということに関してお話させて頂きます。

1つ目は黒内障という症状です。白内障や緑内障という言葉は聞かれた事があると思いますが、白や緑と違って黒、黒内障という症状があります。一過性黒内障といったりします。

これは「片目が 一時的に 見えなくなる」という症状です。

この病気は目に流れ込む血管に血栓

といいますが血の塊が詰まって一時的に目への血流が遮断されることによって起きます。

目に酸素や栄養を送る血管、網膜中心動脈という血管が詰まると、目全体に血液が届かないので片目だけ見えなくなってしまいます。

ただし



血栓が詰まって見えなくなったとしても、運良く血栓がすぐに溶けて流れてしまえば症状は元通り改善します。このように一時的に真っ暗になるということから一過性黒内障という名前がついているんですが、自然に改善したからといって受診を放置してはいけません。

この一過性黒内障の怖いところは

①血流が再開通すればいいんですが、再開通しなければそのまま見えなくなってしまいます。網膜は神経細胞の塊なので一度破壊されると回復することはありません。すなわち失明してしまうことがあるということと

目だけでなく

②脳梗塞の前兆でもあるという点です。


一過性黒内障の最も多い原因は首の血管の頸動脈という部分のアテローム性動脈硬化

というものによる事が多いです。

アテローム性動脈硬化というのはどろどろになった脂肪が血管にこべりついてプラークという塊ができて、血液の通り道が狭くなることをいいます。その塊が一部剝れてその先にある目の動脈を塞ぐことによって視力低下がおきます。

頸の血管

は目へ行く経路と脳に行く経路の2つの経路に分かれます。

頸の血管

にこべりついた塊が目に飛べば、今お話したように目が見えなくなってしまいます。

また運悪く脳の方

に飛んでしまうと、脳梗塞のような神経症状がでます。

このような症状を経験したことはないでしょうか。

①テレビをみていたら急に片方の目だけ視界が真っ暗になって10分ぐらい見えなくなった。その後放置していたら自然に見えるようになった、このような目の症状に加えて

②呂律が回らない、言葉が出てこない、片側の手足や顔が麻痺して上手く動かない、痺れや感覚麻痺があるといった神経症状が数分間続いたけど自然に治った

このように

目がみえなくなったり、神経症状が出ている状態をまとめて一過性脳虚血発作と言いますが、頸動脈がすでにだいぶ細くなっていていつ脳梗塞になってもおかしくない状態です。一刻も早く病院で治療を受ける必要があります。

神経症状がなく目だけの場合、

見えなくなったということで先ず眼科に受診される方がほとんどなんですが、眼球自体に問題があるわけではないので直ちに大きな病院への受診をお願いすることになります。

直ぐに受診する必要がある理由は今後近い内に「一過性すなわち一時的な症状で終わらず、完全に血管が詰まって後遺症を残す可能性が非常に高いから」です。

MRIやCT、超音波などの検査をして血液をサラサラにする薬であったり、血管にステントを入れて狭くなった部分を広げたりする治療が必要になります。


このような病気になりやすい人は

①高血圧、高脂血症、糖尿病など基礎疾患がある方

②ステロイドを内服している方

③心房細動のような不整脈がある方

④喫煙習慣や過度の飲酒をされる方。

⑤内臓肥満型の肥満の方です。

必ず内科の定期受診を忘れないようにしてください。

この黒内障が1つ目の見逃してはいけない目の症状です。両眼同時ということはまずありません。急に片目だけ一時的に見えなくなるというのがポイントです。

2つ目はものが二重に見える、まぶたが片側だけ下がる、片目だけ黒目の大きさが広がるという症状が急に出てきた場合です。

これはくも膜下出血という脳出血の前兆である場合があります。くも膜下出血というと脳の病気ですが、これが何故目の症状と関係があるのと思われたかもしれません。くも膜下出血の最も多い原因は、脳の血管

の一部がコブ状に膨らむ脳動脈瘤というものが裂けて出血することによります。高血圧や動脈硬化などによって頭の血管に『コブ』ができるとされています。このコブは必ず破裂するわけではありませんが、大きくなると血管の壁が引き延ばされて薄くなって血液の流れに耐えれなくなると破裂することがあります。破裂するとくも膜下出血という脳出血を起こします。くも膜下出血は脳卒中の中でも最も予後が悪いです。50%程度の方が死亡して、治療がうまくいって助かっても重大な後遺症を残す可能性が高い恐ろしい病気です。

脳動脈瘤が破裂するとバットでなぐられたような激しい頭痛を感じます。しかし破裂していない状態だとそのような症状はありません。基本は無症状です。そのため脳ドックなどの検査で偶然見つかる事が多い病気です。

しかし、コブが急に大きくなると症状が出ることがあります。その症状は頭痛などではなくて目なんですね。

頭の血管のコブは出来やすい場所があって、その場所には動眼神経という目の神経が近くにいます。コブ

が大きくなると目の神経を圧迫して目の症状が出ることがあります。。

動眼神経が麻痺すると

①目を動く筋肉が正常に動かなくなって複視といいますが二重に見える症状がでたり

②瞼をあげる筋肉が動かなくなって瞼が下がったり

➂黒目の大きさを調節する筋肉が麻痺して黒目が大きくなったままになったり様々な症状が出ます。

これも先ほどと同じで目に異常があるから眼科だと思われて眼科に受診される方が多いんですが、眼球自体に問題があるわけではありません。頭の中にできた脳動脈瘤、コブが大きくなって動眼神経を圧迫する事によって起きる症状です

これも先ほどと同じですぐに入院施設のある大きな病院に受診していただくようにしています。コイル塞栓術といって、脳動脈瘤が破裂しないように柔らかい金属製のコイルをコブの中に流し込んで破裂を防ぐ治療を行ったりします。

このようにその目の症状は実は命に関わる見逃してはいけないサインである事があります。

自分が今すぐ受診すべきかどうか重要なポイントは「その症状が急かどうか」ということです。

今まで普通に見えていたにも関わらず、突然視力が下がった、目の前が突然真っ暗にみえなくなってしまった、突然物が二重にみえるようになった。このような急な症状は緊急性が高いことが多いです。

まずは眼科に受診されるようにしてください。

今回の話をまとめますと

①片目が一時的に見えなくなるという症状を一過性黒内障といいます

➁頸の血管が閉塞している可能性があります。

➂脳梗塞の前兆であるためすぐに内科受診が必要です。

④物が二重に見えたり、片方だけ瞼が落ちたり、片方だけ黒目が大きくなっている場合脳の血管のコブが大きくなった可能性があります。

⑤破裂するとくも膜下出血になる可能性があります。

⑥急に起きた事は緊急性が高い事が多いです

という6点です。

このように目の病気だと思っていたら実は脳梗塞やくも膜下出血の前兆だったということがあります。これらは治療までの時間を急ぎます。実際に血管が詰まってしまえば治療が適応となるリミットタイムがあるからです。目の血管が完全に詰まってしまうと遅くとも2時間以内に血栓を溶かす薬をいれないと細胞が壊死してしまって回復しなくなってしまいます。脳に血栓が詰まって脳梗塞になると遅くとも5時間以内の治療が必要です。そのため夜間発症した場合、今日は遅いし明日朝一で病院に行こうでは遅いんですね。夜間でもすぐに病院に行かなければなりません。心配だったら大きな病院の救急病院に電話して指示を仰ぐのがよいと思います。

今回は放置してはいけない目の症状に関してお話させて頂きました。


(2023.4.24)