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102. 目にいい食べ物

今回は目によい食べ物に関してお話させて頂きます。健康的な食生活が身体にいいように、目にもきちんとした栄養をとることが大切です。目と食事ってあまり関係ないように思われるかもしれませんが、そんなことありません。きちんと科学的根拠がある目にとって必要な栄養素がある事が知られています。不足することで重症な眼疾患になるリスクも高まります。今回はどのような栄養素を摂るのがいいのか、また目にとって良い食品にはどのような物があるのかということに関してお話させていただきます。

まず一つ目がルテインとゼアキサンチンです。ルテインとゼアキサンチンはカロテノイドと言われれる天然色素の1種です。750種類程度確認されていますが、そのうちルテインとゼアキチンは人の水晶体と黄斑という視力にとても大切な部位に含まれていることが確認されています。特に黄斑部ではその量が多いです。黄斑の中心部にゼアキサンチンが多くてルテインは黄斑の周辺に多いことが知られています。ルテインだけが広く知れ渡っていますが、ルテイン、ゼアキサンチン共にどちらも大切です。

これらは天然のサングラスと言われていますが、強い抗酸化作用があって身体の老化の原因となる活性酸素から守ってくれます。事実これらを積極的に摂る事で白内障の発症リスクや加齢黄斑変性症のリスクを減らせたと報告されています。

ルテインとゼアキサンチンは加齢によって減少していくことが知られています。また体内で合成できないので積極的に摂取することが必要です。

国立眼科研究所によるAREADという研究によるとルテインを10mg、ゼアキサンチンを2mgとることで白内障や加齢黄斑変性症のリスクを減らせたと報告されています。

ルテイン、ゼアキサンチンはどの食品に含まれているのでしょうか。ルテインが多いのは緑黄色野菜です。ケール、ブロッコリー、ほうれん草などに多く含まれています。ゼアキサンチンはパプリカ、トウモロコシに多く含まれています。

ルテイン、ゼアキサンチンは脂溶性なので、ごま油のような脂質と一緒に摂ると効果的に体内に吸収されます。

両方をバランスよく摂ることが、白内障、黄斑変性の予防に効果的です。

これらを多く含んでいて目にもよいスーパーフードとされているものがあります。ずばり卵です。卵にはビタミンCと食物線維を除く全ての栄養素が含まれています。

また卵の卵黄部分に含まれているルテイン・ゼアキサンチンは植物(しょくぶつ)由来のものより3倍程度効率的に吸収することができると言われています。海外の報告

によると1日1個卵を5週間摂ることでルテインの血中濃度が26%、ゼアキサンチンの血中濃度が38%程度増加したという報告があります。卵をとりすぎるとコレステロールが気になる方もおられかもしれませんが、この研究では卵を摂ることで総コレステロール、LDLコレステロールの値は影響をうけなかったとされています。卵の効果は目だけではありません。他の報告だと1日1個の卵をとることで心疾患や脳卒中のリスクが低下したとも報告されています。卵に含まれる栄養価は鶏の飼育方法によって異なります。可能でしたら通常の卵よりはやや割り高になりますが、オメガ3強化卵をとるようにしてください。のちほどお話しますが、ルテイン、ゼアキサンチンだけでなく目に大切なDHA、EPAが大量に含まれているからです。

日々の食事に1日1個卵をとることがおススメです。

2つ目はビタミンAです。ビタミンAは視機能に深く関係があります。

ビタミンAの主成分であるレチノールはロドプシンという物質の合成に必要なものです。視細胞の機能に必要で薄暗いところで視力を保つ働きがあります。ビタミンAが不足すると暗順応障害が起きて薄暗いところでものが見にくくなります。これを夜盲症といいます。更にビタミンAが不足することで粘膜の形成や機能に問題となることがあります。目の場合、角膜と結膜の部分です。

眼球乾燥症といって深刻なドライアイになったり、角膜軟化症といって黒目が混濁して最悪失明の原因になります。

厚生労働省のビタミンA推奨量は700ー900マイクログラムです。ビタミンAが多い食品で代表的なものはにんじんです。にんじん80g程度で一日に必要なビタミンAを摂取できます。卵やほうれん草にも含まれています。

日本のような先進国は通常の食事を摂っていればビタミンAが不足することはまずありません。ですが、発展途上国では事実ビタミンA不足による失明が深刻な問題になっています。

このようにビタミンAは必要なものであるのは間違いありませんが、脂溶性のビタミンなので過剰にとりすぎると蓄積されて健康被害となる場合があります。野菜などから摂るビタミンAはβカロテン由来のものが多いです。足りない分だけビタミンAに変換されて調節されているので野菜由来のビタミンAで過剰になることは通常ありません

ですが、動物性食品のレバーやビタミンAを含んだサプリメントを摂取される方は摂りすぎないように気を付けてください。

3つ目は先程少しお話しましたが、DHA,EPAといった不飽和脂肪酸です。DHAはドコサヘキサエン酸、EPAはエイコサペンタエン酸というもので体内で合成できない身体に必要な必須脂肪酸です。

脂肪は大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれます。飽和脂肪酸は牛肉や豚肉といった動物性の油に含まれます。常温で溶ける事がないので摂りすぎると蓄積して動脈硬化や血栓ができる原因になります。一方で不飽和脂肪酸のDHAやEPAは常温で固まりにくく、体内では液体です。動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールや中性脂肪を減少させて、血管の炎症や血栓ができるのを防ぎます。

これが何故目によいのかというと理由が二つあって、①網膜や脳神経といった神経組織に大量に含まれているということと②もう一つはドライアイの症状改善のために必要とされている成分だからです。

DHAは網膜に大量に含まれていて抗炎症作用がありますが、減少することで加齢黄斑変性症になりやすくなることが指摘されています。積極的にとることで初期や進行期の加齢黄斑変性症に対して抑制効果があることが多く報告されています。

現在加齢黄斑変性症による失明率は日本は4位ですが、アメリカは1位です。

この理由として日本人は魚などからのDHAの摂取が多いとされています。

ですが、現在は食の欧米化により魚の摂取が減って肉類の摂取が多くなっているとされています。日本でも加齢黄斑変性症の有病率が上昇していることからも魚を意識して摂ることが大切です。


またDHA,EPAはドライアイを改善させる事が報告されています。涙は99%の水成分と1%の油で出来ています。油は涙の蒸発を防ぐ重要な役割があります。このわずか1%の油がないと涙がどれだけつくられてもどんどん蒸発してドライアイは改善しません。実はドライアイの原因は単に水が不足しているのではなくて、8割の方が油不足のドライアイであることが知られています。油は上瞼と下瞼にあるマイボーム腺という分泌腺から作られています。

DHAやEPAをとってマイボーム腺から出る油の質を改善させることがドライアイの治療に効果的だったという研究結果がたくさん出ています。普段目薬をさしてもすぐごろついて、乾きが気になるようなことないでしょうか。その場合油不足のドライアイかもしれないのでDHAやEPAを含んだω3脂肪酸をとることが効果的かもしれません。

厚生労働省の基準では、DHAとEPAを合わせた1日の目標摂取量は1gとされています。これは約90gの魚に相当します。鯖や鮭、ナッツ類に多く含まれています。年齢をとるとともにDHA、EPAの需要が高まります。40歳を過ぎたら毎日魚を食べるのがいいかもしれません。魚が苦手な方はDHA、EPAを含んだサプリメントをとられてみてはどうでしょうか。

今回の話をまとめますと

①ルテイン、ゼアキサンチンを多く含んだものをとるようにしてください。

②1日1 個の卵でルテイン、ゼアキサンチンの血中濃度が30%程度上昇したという報告があります。

③ビタミンAが不足すると夜盲症の原因になったり、深刻なドライアイになり黒目が濁る原因になります。

④DHA,EPAを多くとるようにしてください。不足するとドライアイが悪化する可能性があります。

⑤鯖や鮭、イワシのような魚やナッツにはDHA、EPAが多く含まれています。

という5点です。

このように目にとって必要な栄養素は色々あります。目の病気で網膜の病気は特に深刻です。一度発症してしまうと後遺症が残ることが多いからです。

加齢黄斑変性症は昔と違って眼内注射のような画期的な治療法ができました。非常に有効な治療法ではありますが、治療費も高いし、継続治療が必要な病気です。このような治療も大切ではありますが、食事のような自分でできる事を積極的に取り組む事も同じく大切だと思っています。

今回は目にとって必要な栄養素に関してお話させて頂きました。


(2022.11.8)