〒500-8847 岐阜県岐阜市金宝町1-11

ブログ BLOG

139. 酪酸菌をとると目こうなります!

今回は酪酸が増える事による目への健康効果に関してお話いたします。近年腸内環境が話題になっています。それは腸内環境をよくするとお通じがよくなるとか、単に腸自体によい影響があるのではなくて、肝臓、腎臓、筋肉といった遠く離れた臓器にまでよい影響を与えることが分かってきたからです。

腸は食べ物を消化、吸収するだけの臓器ではありません。

①免疫を調節する作用があります。

花粉症のようなアレルギー疾患や関節リウマチのような自己免疫疾患にも関係があるとされてますし、また、

➁ビタミンやアミノ酸を作ります。

ビタミンBやビタミンKであったり、タンパク質の構成要素となっているアミノ酸も腸内にいる善玉菌から作られます。また

➂薬の代謝を行います。

薬の吸収はまず腸で行われてから血中に移動します。

そのため薬の効果の発現の仕方であったりまたは副作用の出方も腸内環境が関与しているという証拠も多くなってきています。

このように腸には人の身体が正常に機能するための重要な生理学的機能があるんですが、その役割を担っているのが腸内細菌という腸内にいる菌の働きによります。人の腸内には100兆個以上の菌が住んでいます。重さにすると1.5kg程度重さです。信じられないほど多く菌と共生しているんですが、それらの菌が食物繊維を発酵させて産み出す短鎖脂肪酸という有機物が人の身体の健康維持のために非常に重要な役割があることが明らかになっています。

中でも注目を浴びているのが酪酸菌です。酪酸菌とは腸内にいる善玉菌の1つで、名前の通り「酪酸」という物質を産み出す細菌です。酪酸には免疫を調節する役割など、他の短鎖脂肪酸にはない特徴があります。

今回は酪酸菌を増やすと目を含めてどのような健康効果があるかということに関してお話いたします。

腸内にいる善玉菌の代表的なものは乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌です。

腸内細菌の凄さは菌自体にあるわけではなくて菌が作り出す「短鎖脂肪酸」というものによります。

乳酸菌は乳酸を作りますし、ビフィズス菌は乳酸と酢酸を作ります。酪酸菌は酪酸を作りますし、乳酸菌が作り出した乳酸から酪酸を作る事もできます。


このうち特に酪酸に注目されているのは酪酸は腸内での主要なエネルギー源であるだけでなく、体内で取り込まれて全身の免疫系に作用する事が明らかになったからです。


具体的には制御性T細胞といいますが免疫を調節する細胞を増やして、免疫の過剰反応、すなわち免疫の暴走が起こらないようにする働きがあります。

最近の研究では酪酸菌から酪酸を増やす事で

①クローン病や潰瘍性大腸炎、大腸癌の抑制

のような腸自体にメリットがあることが報告されていますしそれ以外に

➁花粉症のようなアレルギーの改善

③糖尿病の予防、

加齢に伴い筋肉の量が減っていくことをサルコペニアといいますが、

④サルコペニアの予防、

⑤インフルエンザ、新型コロナの重症化予防など

腸以外にもさまざまなよい作用をもたらすことがわかってきました。

筋肉量の減少や糖尿病の発症はもちろん運動不足であったり、エネルギーの過剰摂取といった生活習慣の乱れとも大きく関わっているんですが、腸で作られた酪酸は血流にのってインスリンの分泌に関わっていたり、筋肉の分解を抑える作用があると報告がされています。

酪酸に対して目への効能も報告されています。

2つあって、1つがぶどう膜炎という病気、もう1つがドライアイに関してです。

ぶどう膜炎とは目の中で炎症を起こす病気です。国内でのぶどう膜炎の主な原因としてサルコイドーシス、原田病、ベーチェット病が多く、3大ぶどう膜炎と言われています。これらは自己免疫疾患といいますが、本来自分の組織を攻撃しない免疫細胞が何かをきっかけに異常に活性化してしまって目の正常組織を攻撃してしまうという病気です。

①国内での報告

では原田病やベーチェット病を発症している患者さんと正常な方の便を調べたところ酪酸を作り出す菌が大幅に減少していた。というような報告がされています。マウスによる動物実験でも腸内環境の悪化とぶどう膜炎症状の関係がいくつか報告されています。ぶどう膜炎はT細胞という本来身体を守るべき細胞が異常に活性化してしまって、サイトカインという炎症を起こす信号を体内で増やして正常組織を攻撃します。酪酸にはこのT細胞の働きを抑制させる働きが考えられているため、腸内細菌叢とぶどう膜炎の関連性が考えられています。


通常ぶどう膜炎の治療に対してステロイドや免疫を抑制させる治療、または生物学的製剤というものが使われることがあるんですが、その治療に対してステロイドの副作用、目の場合白内障、緑内障がありますし、全身的には糖尿病や骨粗鬆症、感染症だったり、治療がうまくいかない場合があります。

そのような事もあり今後新たな治療法として腸内細菌叢の働きに注目されています。


ドライアイに関しては動物実験になりますが、

②マウスによる研究では目の炎症を抑えてドライアイを改善させる作用もあると報告されています。

ドライアイは単純に涙の水成分が少ないというだけでなく、分泌腺に炎症を伴っていることが知られています。

腸で作られた酪酸は目の表面にも酪酸を受け取る受容体が存在して、涙腺や杯細胞といった分泌腺に起きている炎症を押さえて改善させる作用があるのではないかと考えられています。


このように目に対しても酪酸による影響が少しずつ明らかになっています。


酪酸はなんといっても腸の主要なエネルギー源であり、腸内を弱酸性に保って腸内の環境を整える作用があります。不足することで腸の粘膜が破壊されてリーキガット、腸漏れといいますが、腸内の有害な毒素が血管系に広がって全身にまわる原因になります。実際、腸内毒素が関節リウマチ、多発性硬化症といった自己免疫疾患だけでなく、直腸がん、糖尿病、脂肪肝、目の場合先ほどのドライアイ、ぶどう膜炎だけでなく、糖尿病網膜症

加齢黄斑変性症

や緑内障

のような眼疾患との関係性も報告されています。

そのため腸内環境を整える事が大切です。

酪酸菌を増やすには

①プロバイオティクス

といいますが、酪酸菌自体をとるのかそれとも 

➁プレバイオティクス

といいますが自前の酪酸菌に良いエサを与えて元気にさせて増やすかという2通りあります。

乳酸菌はヨーグルト、チーズ、納豆、キムチなどの発酵食品に多く含まれていますが、酪酸菌が多く含まれている食品はぬか漬けや臭豆腐(しゅうどうふ)です。それ以外に酪酸菌を多く含む食品はあまりありません。整腸剤みたいなもので酪酸菌を増やすということもいいんですが、まずは自分のからだのなかにいる自前の酪酸菌を増やす事という事が大切です。

酪酸菌のよいエサとして有効なのが食物繊維を多く含んだ食事です。食物繊維には水に溶ける性質のである水溶性食物繊維と水に溶けない性質である不溶性食物繊維があります。このうち酪酸菌のエサになるのが水溶性食物繊維です。食物繊維というと野菜だ!と言われ方が多いかもしれませんが、レタス、キャベツ、ほうれん草などは不溶性の食物繊維が多いです。水溶性食物繊維はワカメ、玄米、アーモンドなどにも含まれています。

海外の報告

ではアーモンドを摂取すると排便回数が多くなり、大腸内の酪酸も大幅に増加したというような報告されています。


アーモンドは腸内細菌のよい餌になる食物繊維を含んでいるだけでなくて、目にとっても必要な栄養素を多く含んでいるのでおすすめです。

オレイン酸のような不飽和脂肪酸やマグネシウム・亜鉛などのミネラルや、ビタミンEも多く含まれています。ビタミンEは脂溶性のビタミンで網膜に多く含まれています。25粒で1日の摂取量(約7mg)を摂取できると言われるほど豊富に含んでいます。

おすすめの量は1日25粒程度です。アーモンドは腸活にもいいし、目にもいいので毎日の食事に少しずつ取り入れたらよいかなと思います。

今回の話をまとめますと

①腸は食べ物を消化吸収するだけでなく、免疫系を調節したりビタミンを合成したり様々な人体への影響を与えます。

②腸内環境は腸内にいる善玉菌が作り出す短鎖脂肪酸によって影響を与えます

③酪酸は過剰な免疫反応を抑える作用があります。

④目の場合ぶどう膜炎やドライアイのような炎症性の眼疾患への関与が報告されています

⑤酪酸は酪酸菌にとってよい食事を与えることで増えます。アーモンドはビタミンEや不飽和脂肪酸が多くオススメです。

という5点です。このように腸内環境次第で全身の炎症を誘導したり、抑制したりすることが少しずつ明らかになってきています。実際潰瘍性大腸炎などの腸の疾患に関しては健康な方の便を移植する治療がとても有効のようです。まだ国内では保険適用となっている治療法ではありませんが、今後研究がすすみ便移植が有効だとされる日がやってくるかもしれません。

今回お話した酪酸菌のような善玉菌は、食物繊維の多い食事を与えたり、運動することによって体内で増えます。また高脂肪食や、飲酒、ストレスで減るとされています。酪酸を増やす食生活に変えるとお通じがよくなったり、アレルギー症状がよくなったり、気分がよくなったり何らか症状が緩和される可能性があります。私は以前ビオスリーみたいなものをとっていた時がありましたが、今は腸活にも目にもいいのでアーモンドを食べるようにしています。よければ参考にしてください。

今回は目にとってもよい酪酸に関してお話させて頂きました。


(2023.12.26)