今回は納豆を食べる事による目への効果に関してお話させて頂きます。
日本は世界の中でも多くの発酵食品があります。味噌、醤油、酒、酢、みりんなど、日本料理に欠かせないものが多いです。発酵させることによって食材の保存性を高めるだけでなく、栄養を高める事ができます。
枯草菌の一種である納豆菌を使って蒸した大豆を発酵させて作る納豆も日本が誇る昔ながらの発酵食品の1つです。最近では免疫力アップを期待して食べる方も多いかもしれません。納豆には良質な植物性のタンパク質や鉄分、カルシウム、カリウム、食物繊維、ビタミンB2、B6といったB群、C、E,Kの中でK2、酵素の一種であるナットウキナーゼが含まれていて非常に栄養価が高い食品です。。
身体にもよい効果がある納豆ですが、眼病予防のためにも推奨しておりますし、実際このような目の病気になったら納豆をすすめさせて頂く場合もあるぐらいです。今回は納豆による目の効果に関してお話させて頂きます。
納豆が何故目にもよいのかというと納豆のねばねばした部分に含まれている「ナットウキナーゼ」という酵素によります。
ナットウキナーゼには血栓を溶かす作用や血栓を予防する効果があります。
血栓
とは血管内にできる血の塊です。脂質や糖の異常、高血圧などをきっかけに血管の内側、血管内皮細胞が損傷して血栓ができやすくなります。
心臓に血栓が詰まると心筋梗塞になりますし、脳に詰まると脳梗塞になます。どちらも命に関わるような重症な病気です。
目の場合はというと、命に関わるような事はありませんが、網膜の血管が閉塞して最悪失明に至るようなケースもあります。
このように「血栓」は人体にとってとても怖い存在です。
目に血栓ができて視力低下を引きこす病気にはどのようなものがあるのでしょうか。
網膜の中心部分には動脈と静脈が通っていて、そこから血管が枝分かれして網膜全体に行き届いています。中心の動脈
が詰まるのが網膜中心動脈閉塞症、枝分かれした動脈
が詰まるのが網膜動脈分枝閉塞症です。同じように、中心の静脈
が詰まるのが網膜中心静脈閉塞症、枝分かれした静脈
が詰まるのが網膜静脈分枝閉塞症です。
中でも網膜
の中心動脈が閉塞する網膜中心動脈閉塞症は失明の危険性が高い病気で眼科では代表的な緊急疾患の1つです。
詰まった血栓を溶かして流すために、目をぐりぐりマッサージしたり、薬を使って血栓を溶かす治療を行います。一刻も早く治療を行わないと網膜細胞が壊死して見えなくなってしまうので、治療を開始するまでの時間がとても大切だと考えられています。
その治療には「ウロキナーゼ」
という血栓を溶かす点滴を行うことがあります。
血栓の主成分は「フィブリン」という繊維状のタンパク質です。ウロキナーゼにはこのフィブリンを分解する作用があります。血栓を溶かす事によって血流を再開通することを目的に使用します。
実は納豆
に含まれるナットウキナーゼには体内でこのウロキナーゼを増やす作用があるんです。
血栓を溶かす薬剤は治療費が高いですし、身体の状態によっては使えない場合があります。しかし、納豆なら低価格で安全に血栓を防いでこのような失明のリスクとなる病気から予防できる可能性があります。
このように納豆を食べて血栓ができないようにするというのが1つ目の理由です。
もう1つはマウスによる実験の段階
なんですが、ナットウキナーゼには
新生血管という悪い血管を抑制する作用があると報告されています。網膜中心静脈閉塞症やその枝分かれの血管が詰まった網膜静脈分枝閉塞症は眼底出血や網膜が浮腫んで急激に視力が低下したり、視野欠損を引き起こす病気です。
網膜の血管に血栓ができて血液の循環が遮断されると、網膜細胞は壊死していきます。壊死した細胞から新しく生えた血管と書いて新生血管といいますが、機能しない病的な血管が網膜に生えてきます。非常にもろくて破れやすい特徴があって、目の中で大量出血する原因になります。放置すると、更に症状の重い血管新生緑内障という難治性の緑内障を引き起こす場合もあります。ナットウキナーゼにはこの新生血管を抑える効果があるのではないかと報告されています。
また網膜の血管に血栓ができて眼底出血を起こすと、視力に大切な黄斑が腫れる原因にもなります。これに対して硝子体注射という目に注射する治療法があります。2010年頃に広まった画期的な治療方法でこれらの病気に対する唯一の治療薬でもあります。ただし
①保険が効く治療であるものの治療費が高額です。3割の方で5万程度、1割の方でも1万5千円程度かかります。また
➁この薬は一度注射したらそれで終わりというわけではありません。薬が効いている期間が短くてだいたい2-3ヶ月おきの定期投与が必要です、また
➂長期間使い続けると効きにくくなる可能性があります。
硝子体注射は病状を食い止めることができますが、注射だけで治癒する事は中々難しいです。レーザー治療が必要な場合もありますし、それでも歪みや暗点のような視覚的後遺症を残す事が多いです。
このような病気にならないためにも納豆をすすめています。これも先程と同じでナットウキナーゼには、血栓の予防効果が知られているからです。
このようにナットウキナーゼには
①詰まった血栓を溶かす作用が期待できると
いうだけでなく動物実験段階の報告ですが
②悪い血管である新生血管を抑制する作用が報告されています。
そのため普段から血栓症の予防だけでなく、このように血管が閉塞してしまった方に対しても、納豆の効果に期待して食べてみることをおすすめしたりしています。
その他としてすでに、
①高脂血症、糖尿病、高血圧の治療中で血栓症のリスクが高い方や、または
➁片目がすでに静脈閉塞症でよい方の目を何としても守りたいという方
には特にいいかもしれません。
このような血栓による影響はもちろん目だけではありません。
血栓によって引き起こされる心血管の死亡率が世界的に劇的に増加しています。血栓症が原因となって引き起こす代表的な疾患は心筋梗塞や脳卒中です。国内における死亡率の1位は悪性腫瘍ですが、2位は心疾患、3位は脳卒中によるものです。世界的にも死亡率1位は心疾患、2位が脳卒中によるものです。そのため効果的に血栓を溶かす薬や栄養に関する研究に関心が高まっています。
その食品の1つに納豆に含まれているナットウキナーゼに注目されています。
納豆の効果は血栓の予防効果だけではありません。
①納豆菌は腸内まで到達します。悪玉菌を減らして腸内環境を整える効果があります。また
➁ビタミンK2は骨の形成を促進して骨粗しょう症の予防効果があります。また➂納豆のねばねば部分に含まれているムチンが、糖質にからみついて糖質が急に吸収されるのを防ぎます。そのため血糖値の上昇を抑える効果があります。
④大豆に含まれるレシチンが悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールとのバランスを調節する作用があります。
ビタミンA,D,E,Kは脂溶性のビタミンです。脂質と一緒に取ると効率よく体内に吸収されます。卵などと取ると体内への吸収率がいいです。
またナットウキナーゼは熱失活するので納豆は生で食べられるのがいいですね。
このように納豆は栄養が豊富で身体によいだけでなく、目の眼病予防のためにもオススメしています。ですが、注意点もあります。
①納豆に含まれるビタミンKが血液をサラサラにする効果があるワーファリンの働きを阻止しますので、この薬を飲んでいる間は内服してはいけません。ただしビタミンKが含まれていないナットウキナーゼのサプリメントなら問題ありません。
②食べすぎると腸内に納豆菌が増えすぎて腹痛や嘔吐の原因になります。1日1パックで充分です。
という2点です。納豆は独特な臭みがあって好き嫌いが分かれる食品ではありますが、苦手でなければ1日1食食べられてはどうでしょうか。今回の話しをまとめますと
①納豆には植物性タンパク質や鉄、ビタミンB群、E、K、ナットウキナーゼが含まれています
②ナットウキナーゼには血栓溶解作用があり、安全に血液をサラサラにする効果があります。
③心血管系の血栓抑制効果だけでなく、失明リスクが高い網膜の血管病変の予防効果も期待できます。
④免疫力向上、骨折の予防、悪玉菌を抑制する効果も報告されています。
⑤ワーファリンを内服中の方は注意してください。1日1パック程度で充分です。
という5点です。このように日本の代表する発酵食品である納豆には様々な健康効果が期待できます。私も1日1パック食べています。血栓ができるタイミングは夜間が多いので、夕方取ることを推奨されている方もみえますが、食べるタイミングはそこまでこだわらなくてもよいのではないかと思っています。このような食事に加えて、運動習慣を作るといったことも血栓を出来にくくするために大切です。よければ参考にしてください。今回は納豆による目の健康効果に関してお話させて頂きました。
(2023.2.15)