今回はサプリメントより効果があるかもしれない、ある食材に関してお話させて頂きます。
ゴジベリーという食材はご存知でしょうか。ゴジベリーとは杏仁豆腐の上にちょんと乗っている赤い果実の事です。別名クコの実ともいいます。ゴジベリーは中国では2000年以上にわたって昔から目の薬として使われているものです。あまり見かけない食材かもしれませんが、眼科ではスーパーフードとして知られている食材の1つです。今回は最近報告されたサプリメントより効果があるかもしれないゴジベリーの効能などに関してお話させていただきます。
ゴジベリー、別名クコの実は中国では歴史のある薬用食材として知られているものです。
クコの実は栄養がとても豊富です。ビタミンA、ビタミンB1、B2、ビタミンC、E、K消化器系の働きを促進するベタイン、ポリフェノール、銅、鉄、亜鉛、マグネシウムのようなミネラル成分など非常に豊富な栄養素が含まれています。
なぜ眼科でスーパーフードの1つとして知られているかというと大量のゼアキサンチンが含まれいてるからです。目の中にはルテイン、ゼアキサンチンという2つの天然の色素が含まれています。水晶体と網膜の黄斑部という視力にとても大切な部分に存在しています。どちらも強力な抗酸化作用があって、老化の原因となる活性酸素や紫外線から目を守る役目があります。そのため天然のサングラスと言われたりしています。
事実これらが充分にないと白内障や加齢黄斑変性症のリスクになる事が報告されています。
ルテイン、ゼアキサンチンは植物は合成できますが、人や動物は体内で合成できません。また加齢と共に減少することが知られているので積極的に食事から摂取する必要があります。
ルテインやゼアキサンチンはどのような食材に含まれているのかというと、ほうれん草のような緑色の野菜や、卵の卵黄部分やトウモロコシ、果物に多く含まれています。
その中で
①クコの実は大量のゼアキサンチンが含まれていて、ゼアキンサンチンの量が全ての食材の中で最も多いことが知られています。
➁また体内に非常に吸収されやすい形で存在しているのも特徴です。
このような特徴があるのでゴジベリーは目の黄斑部を保護するための貴重な食材として知られていて、主に加齢黄斑変性症に対する研究で使用されています。
2021年12月
にNutrientsに掲載されたカリフォルニア大学からの報告です。この報告ではルテインとゼアキサンチンを含んだサプリメントよりもゴジベリーを一定量食べていた人の方が黄斑部の色素濃度が上昇したという報告がされました。黄斑部の色素はルテインやゼアキサンチンで構成されている部分です。この色素の部分が黄斑部を保護するので色素濃度があがるという結果は非常に重要です。
27人の健康な参加者をランダムに分けて、片方をゴジベリーのみを摂取している人、残りをサプリメントのみを摂取している人に分けました。週に5日間、13人にゴジベリー28gを90日間摂取してもらって残りの14人の方にルテインを6mg、ゼアキサンチンを4mg入ったサプリメントを飲んでもらいました。90日後に黄斑部の色素濃度を評価したところサプリメントのみの人は黄斑部の色素濃度はほとんど変化しませんでしたが、ゴジベリーを食べていた人は黄斑部の色素濃度が有意に増加したという結果になりました。
これは以前に中国で行われた研究と同様だったとされています。
このことからゴジベリーには健常者の黄斑部を保護する効果であったり、すでに加齢黄斑変性症を患っている方に対しても期待できる貴重な食材である可能性が考えられています。
90日間のサプリメントの内服で色素濃度があまり上昇しなかったのは意外な結果でしたが、この理由として
1つはこの実験で使用されたサプリメントは市販のもので充分に含有量が含まれていなかった可能性があるということと、
2つめにバイオアベイラビリティといいますが、サプリメントと食材の生体利用率の違いを指摘しています。
過去の報告では市販でのサプリメントは実際含まれている量が成分表示に記載されているものより少なかったという報告があります。市販のものは安く買えるメリットがありますが、①成分表示通りの量が入っていないものがあったり、②純度が低いものの可能性があるので注意が必要です。
サプリメントは市販のものでもたくさんありますが、購入される場合はAREADSという大規模な研究があったんですが、その研究結果に沿ったものがよいですね。
具体的には ルテイン、 ゼアキサンチン ビタミンC、ビタミンE、亜鉛、銅が含まれているものがよいです。これらを含んだものが中期以降の加齢黄斑変性症の方に対して25%の進行抑制効果があったという結果が出ているからです。
やや割高になりますが、眼科などで販売されているものでサンテルタックスだとか、プリザービジョン2とかがよいです。これらはこの実験内容を非常に意識した成分なので安心して摂取することができます。
ですが、サプリメントを中心に栄養を摂るのではなく、基本は食事から栄養を摂るようにしてください。生体利用率は食事から摂った方がよいからです。例えばルテイン、ゼアキサンチンが多い食品は卵黄やトウモロコシ、キウイフルーツ、オレンジ、ピーマンやほうれん草などの緑色の野菜です。
ルテイン、ゼアキサンチンは脂溶性なので卵と一緒に摂ったりや油などで炒めると効率的にとることができます。
その中でクコの実はあまり見かけない食材ではありますが、
①ほうれん草よりもゼアキサンチンなどのカロテノイドの生体利用率が高いという報告であったり
②黄斑部の色素濃度を上げる効果や、動物実験の段階ではありますがドライアイを改善させる可能性もあり目にとってよいデータが出てきています。
全身的にもビタミンAや、B群、C,Eなど多くのビタミンを摂ることができます。
また、クコの実に含まれるベタインには様々な効果があります。脂肪肝を予防する効果であったり、血糖値の急激な上昇を抑える働きであったりコレステロール値の上昇を抑制する働きがあります。そのため糖尿病や動脈硬化の予防にも効果があります。
このようにゴジベリーは栄養が豊富な食材であるためスーパーフードとされています。
乾燥したクコの実をそのまま食べてもいいですし、お茶にしたり、鍋などに入れて一緒に食べてもよいと思います。
ただし、これからゴジベリーを食べてみようと思われた方は注意することもあります。
1つ目はワーファリンという血液をさらさらにする薬を内服している方です。ゴジベリーに含まれているビタミンKがワーファリンの作用を弱めます。内服中の方は医師に相談してからにしてください。
2つ目はクコの実はナス科の食材なのでナスやピーマンなどにアレルギーがある方は要注意です。何らか食材にアレルギーがある方は少量から摂られるのがよいと思います。
クコの実はサプリメントより安価で効果も期待できる可能性があります。今後研究が進んでクコの実がもっと推奨される時がくるかもしれません。
今回の話をまとめますと
①クコの実はゼアキサンチンの量が全ての食品の中で含有量が一番多いです。
②生体利用率が高い形で存在しています。
③毎日28g程度の量を3カ月とることで黄斑部の色素濃度が上昇したと報告されました。
④市販のサプリメントは純度が低いものであったり、成分表示通りの量が含まれていないものもあります。栄養は食事からの摂取が基本です。
⑤その他にドライアイの改善に効果があるといった報告や全身的にも免疫力をあげるなど様々な効果が期待できます。
という5点です。ゴジベリーは白内障や加齢黄斑変性症の進行の予防に期待できる貴重な食材です。初期の加齢黄斑変性症はドルーゼンといった沈着物が少しずつ網膜上に出てきますが、黄斑浮腫といってある程度進行した状態にならない限り治療法がないんですよね。黄斑部に障害がでると眼内注射による治療法はあるんですが、治療費が保険が効いても数万しますし、後遺症を残す事が多いです。。そのため早めに眼科受診して初期病変がないか確認すること、初期病変を進行させないためにゴジベリーに含まれるゼアキサンチンのようなカロテノイドが豊富な食事を意識して摂取することが大切だと考えられています。よければ参考にしてください。
今回はサプリメントより目の保護効果があるかもしれないゴジベリーに関してお話させて頂きました。
(2023.1.30)