〒500-8847 岐阜県岐阜市金宝町1-11

ブログ BLOG

120. ほうれん草+? 底知れぬ結果に‼

今回はほうれん草にあるモノを加えることによる目への凄い効果に関してお話させて頂きます。濃い緑色の野菜が豊富な食事は眼病予防のために推奨されています。それは濃い緑色の野菜には水晶体や網膜の黄斑部を保護すると考えられているカロテノイドの一種であるルテインが多く含まれているからです。

ルテインやゼアキサンチンは水晶体や網膜に含まれる唯一のカロテノイドです。

強い抗酸化作用があって、老化の原因となる活性酸素から目を守る役目があります。

多くの研究でルテインやゼアキサンチンをしっかり摂ることで白内障や加齢黄斑変性症の進行抑制、予防効果がある事が報告されています。

今回はルテインを効率よく摂るために是非知っていただきたいポイントに関してお話させていただきます。

目にとって大切な栄養素であることが明らかになっているルテインですが、多くの方は摂取量が不足していることが報告されています。ルテインは多くの研究で1日に6mg程度とることが推奨されていますが、米国における栄養調査によると1日あたり平均摂取量は1-2mg程度しか摂れていない方がほとんどのようです。

ルテインは加齢によって減少しますし、また体内で合成できません。そのため食事から積極的に摂取する必要があります。

ルテインが多く含まれている食事にはどのようなものがあるんでしょうか。

冒頭でもお話した通り、ルテインは濃い緑色の野菜に多いです。ケールやほうれん草、小松菜、また卵の卵黄部分にも含まれています。

特に多いとされているのはケールやほうれん草などの濃い緑色の野菜です。

ルテインの量はケールが断トツです。100g当たり21mgも含まれています。その他に小松菜は7.5mg、ほうれん草は4.5mg程度含まれています。一方で卵は100gあたりたった0.6mg程度しか含んでいません。1個あたりだと0.3mgです。

卵はルテインとゼアキサンチンを両方含んでいる数少ない貴重な食材の1つなのですが、ルテインの含有量はほうれん草やその他の濃い緑色の野菜と比べるとはるかに少ない量です。

そのためルテインをたくさん取ろうとした場合、濃い緑色の野菜を中心に摂ればいいと思われるかもしれませんが、実はルテインの量が多ければ体内への吸収率が高いわけではないんです。

興味深いことに卵は野菜やサプリメントからのルテインよりも2倍程度体内への吸収力が高いことが報告されています。


ある報告

では健康な成人男性にそれぞれ同じ量のルテインのサプリメントとほうれん草のみとオムレツにした卵のみを食べた人をランダムに振り分けて、それぞれ10日間食べてもらいました。黄斑部の色素の濃度は、吸収されたルテインの血中濃度に関連するんですが、

定期的

に採血をして評価したところ卵のみを食べていた人の方がほうれん草やルテインのサプリメントを取っている人より2倍程度ルテインの血中濃度が高かったという結果が報告されました。

この理由としてルテインは脂溶性であって、卵はコレステロールやトリグリセリド、リン脂質といった天然の脂質を多く含んでいるため効率的に体内で吸収できるからではないかと考えられています。なお、ほうれん草とルテインのサプリメントは大きな差が無かったという結果になりました。

卵を単独で摂るだけでもこれだけの効果があるんですが、それだけでありません。濃い緑色の野菜に卵を追加することで野菜由来のルテインの吸収率が上昇することが他の研究

で言われています。

サラダ単独

で食べた人と同じ量のサラダに卵を1個半又は3個追加した人で比べたところルテインの血中濃度が3-8倍程度高まった事が報告されました。卵を追加することで野菜由来のルテインの吸収率が促進されたんですね。

野菜と一緒に卵を摂ることのメリットはルテインの血中濃度を上げるだけではありません。野菜由来のその他の栄養素、ビタミンAの元となるαカロテン、βカロテンであったり強い抗酸化作用があるリコピンであったりビタミンEの吸収率もあげます。

ビタミンAの主成分であるレチノールは夜間視力をあげるための重要なビタミンです。角膜、結膜といった粘膜の形成のための大切なビタミンです。

ビタミンEは抗酸化作用と抗炎症作用があります。脂溶性のビタミンで網膜の細胞膜を保護するための大切なビタミンです。加齢黄斑変性症に対する大規模な研究でAREADSというのがあります。この研究ではルテイン、ゼアキサンチンといったカロテノイドに加えて、ビタミンEも一定量摂ることが大切だと報告されています。全身的には心疾患系や特定の種類の癌の予防効果もあるとされる脂溶性のビタミンです。

このように卵には

①卵自体にルテインの血中濃度を高める効果があって更に

②野菜由来のルテインやその他の脂溶性の栄養素の吸収力を上げる

ダブルの効果が期待できます。

卵は完全栄養食といわれていますが、含まれていない栄養素もあります。ビタミンCと食物繊維です。これらの栄養素を補うという点でも野菜と一緒にとることで栄養バランスがよくなります。

卵にアレルギーがある方でしたらその代わりにアボカドのような他の脂質と一緒に野菜を摂るのもよいとされています。

卵は脂質が多いというと卵に含まれているコレステロールを気にされる方もおられるかもしれません。卵はコレステロールの値が高いことは事実です。このことから一昔前は「卵は1日1個まで」と言われていた事があったようですが、最近報告されているものはやや違ってきています。ほとんどの研究では「食事からとるコレステロールは血液中のコレステロールに影響を与えない」と報告されています。体内のコレステロールの量は肝臓で常に一定になるように調整されていて食事由来の影響は小さいことが分かってきています。卵を毎日食べてもコレステロールの値は変化しなかった、また心疾患系の発症リスクと関係なかった、糖尿病発症リスクも関係なかったという報告もあります。

卵に含まれているカロテノイドは熱変性に強いです。医師や栄養士の方から卵の摂取を制限されている方は注意が必要ですが、好きな調理方法で野菜に卵を追加してみてはどうでしょうか。

今回の話をまとめますと

①ルテインの含有量が高ければ吸収力が高いわけではありません。

②ルテインは脂溶性のため脂質と一緒に摂ることで効率的に吸収されます。

③卵、ほうれん草、ルテインのサプリメントをそれぞれ単独でとった人を比較したところ卵のみをとった人の方がルテインの血中濃度が2倍程度高かったと報告されました。

④野菜に卵を加えることで野菜のみで取っていた人よりルテインの血中濃度が3−8倍程度上昇しました。

⑤卵は野菜由来のルテインだけでなくその他の脂溶性の栄養素の吸収率もあげます。

という5点です。

目にとってルテインは必要な成分です。年齢や喫煙や紫外線などによって低下していくことが知られています。また加齢黄斑変性症の患者さんにおいてルテインの摂取量や血中濃度が低い人ほど発症リスクと相関しているとも考えられています。ルテインは体内で合成できないので積極的に食事から補わなければなりませんが、含有量が多ければ体内への吸収が多くなるわけではありません。それは今お話した通り、ルテインは脂溶性なので脂質と一緒に摂ることで吸収力が高まるからです。

卵はビタミンCと食物繊維を除いた全ての栄養素が含まれていて、目にとってもスーパーフードとされている食材です。野菜と一緒に摂るようにしてください。

今回は濃い緑色の野菜に卵を加えたら効果が高まりますということに関してお話させて頂きました。


(2023.1.24)