今回はきちんとコンタクトレンズを使わないとどうなるのかということに関してお話させて頂きます。コンタクトレンズを毎日使われている方は多いと思います。一昔前は眼科受診しないと購入できなかったのですが、今やネットや激安店などで簡単に買えてしまいます。ネットなどで気軽に買えるという事自体は非常に便利です。ですが、眼科に行かなくても買えるから、眼科での定期検査が一切不要ですというわけでは決してありません。きちんと眼科で定期検査していないと自覚症状がなくても深刻な状態になっている事もあります。
今回は毎日コンタクトレンズを使う方に必ず知っていただきたい注意点に関してお話させていただきます。
コンタクトレンズは透析器や人工呼吸器などと同様の高度管理医療機器としての位置づけです。正しく使えている方でしたらいいんですが、中には聞いてびっくりするような使い方をしている方が多いためトラブルが後を絶ちません。
次のような事をしている方いないでしょうか。
①ワンデイコンタクトを2.3日以上連続してつけている
②コンタクトをつけたまま寝ている
③眼鏡を持っていない そのためいつも装用時間が12時間超えている
④ネットなどから正規に流通していないコンタクトレンズを買っている
⑤自分のつけたコンタクトレンズを友達に貸している
これらは厳禁です。
コンタクトトラブルでよく問題になるのが感染症です。不適切なコンタクトレンズの使用によって、角膜という黒目の表面に細菌が付着して感染症を起こします。
ひどいと視覚的に後遺症を残して、事実角膜移植といって移植が必要になるケースもあります。このような感染症も問題ですが、同じくらい大切なことは目に大切な細胞、角膜内皮細胞
が減る事があることです。
角膜内皮細胞が減ると透明な角膜が濁っていきます。たくさん減ってしまうと①将来白内障手術が出来なくなってしまったり ②失明に近い状態にまでなって角膜移植が必要になることがあります。
角膜内皮細胞は非常に大切な細胞ですが、どのような細胞なんでしょうか。
角膜は5層
でできています。最表面から角膜上皮細胞、角膜実質細胞があって、一番内側に角膜内皮細胞があります。角膜内皮細胞
は角膜全体に栄養を与えて代謝を促して、角膜の透明性を維持するために必要不可欠な細胞です。この細胞が機能しているので角膜は透明性を維持しています。角膜上皮細胞がないと透明性が維持できなくなって、ぶよぶよに膨れ上がってやがて角膜は白濁(はくだく)してしまいます。これを水疱性角膜症といいますが、ここまでいくと角膜はもはや再生しないので角膜移植しかありません。
この非常に大切な角膜内皮細胞ですが、正常な方は1mm2あたり3000個前後あります。
コンタクトレンズを長期間不適切に使用すると、角膜が酸素不足になって死滅していきます。一度死滅した角膜内皮細胞は再生しません。
3000→2500→2000と徐々に減っていき、20代と若くても2000以下になっている方もおられます。2000以下というとかなりすくない数です。
コンタクトレンズで何故角膜内皮細胞が減るかというと「酸素が不足するから」です。角膜内皮細胞は空気中から酸素をもらっています。
そのためソフトコンタクトレンズを購入される場合、出来るだけ酸素透過性がよい素材を選ぶようにしてください。今はシリコンハイドロゲルという素材が主流です。そちらを選ぶようにしてください。主にコンタクトの素材にはHEMAというものとシリコンハイドロゲルというものがあります。一昔前までHEMAという素材でした。HEMAはシリコンハイドロゲルより酸素透過性がよくありません。ネットなどで知らずして安いからという理由でHEMA素材のコンタクトレンズを長期間使用して、慢性的な結膜炎になっている方がまだまだおられます。酸素透過性のよいシリコンハイドロゲルを選ぶようにしてください。
問題なのはネットで買うカラーコンタクトレンズです。女性の方で目が盛れないから市販のカラコンはしたくないですと言われる方非常に多いです。多くのカラコンは酸素透過性がよくないHEMAで出来ているものがほとんどですが、ネットのものはその上に色素がレンズの表面にプリントされいます。露出している凸凹したカラー部分が瞬きの度に瞼にふれて炎症を起こすことがあります。中にはカラー部分がレンズ内に埋め込んであると記載があっても再表面に露出しているものがあるのでネットのものは注意が必要です。
サンドイッチ方式といってレンズ内に埋め込まれているものなら色素流出の可能性が少ないのでまだいいのですが、
ネットなどで購入するカラコンは綿棒などでこすったらすぐに色素がとれてしまう事があって、その素材がチタンやアルミニウムのような金属でできていて目に炎症を起こす原因になることがあります。
そのため絶対にネットなどで購入しないようにしてください。
おしゃれとして見た目的にはいいのかもしれませんが、このようなコンタクトは目にとって害でしかないです。
カラーコンタクトレンズを購入される時は
国の認可を得た高度管理医療機器承認番号の記載のあるワンデイのものを選ぶようにして下さい。
コンタクトレンズを付けて寝るのも絶対いけません。寝ているときはまぶたを閉じてているので角膜への酸素の量が減るんですが、コンタクトをつけたまま寝ると極端に酸素不足になります。
①黒目の周りが充血している
②コンタクトを取った直後目がしばらく痛い
このような症状がある方は慢性的に目の酸素不足になっている可能性があります。
白目から黒目に向かって血管が伸びてきている状態を角膜パンヌスと僕らは言いますが、強い酸欠状態のサインです。先ほどもお話しましたが、カラーコンタクトは酸素透過性が悪いHEMAで出来ているので、このようになっている方が多いです。カラコンの方は装用時間をできるだけ短くするようにしてください。
角膜内皮細胞が減っているかどうか眼科に行かないとチェックできません。少なくなる前に定期的に検査することが大切です。3ヶ月に一度眼科で診察を受けるようにしてください。
今回の話をまとめますと
①不適切にコンタクトレンズを使うと角膜内皮細胞が減ることがあります。
②角膜内皮細胞は黒目の透明性を維持するために必要な細胞です。
③角膜内皮細胞が少なくなると将来白内障手術が出来無いことがあります。
④黒目の周りが充血している方や取った直後に痛みがある方は注意が必要です。
⑤カラコンは酸素透過性が低い素材(HEMA)でできています。通常のソフトより注意が必要です。
⑥三ヶ月に一度眼科受診して定期チェックを受けるようにしてください。
という6点です。
コンタクトレンズを長期間つけて何らかトラブルがあると目脂や充血、痛みなどの症状があります。これらは自覚症状があるので、眼科受診して目薬をさして、一時的にコンタクトレンズを中止したらまず改善します。しかし角膜内皮細胞はある程度減っても自覚症状がありません。角膜内皮細胞は再生しない細胞です。すなわち減ってからコンタクトをやめても元に戻る事がないんです。
そんな事言われても「まだ見えているしなんともない」「長時間つけても今までなんともなかったから大丈夫」と思うと思いますが、検査してみるとびっくりするぐらい角膜内皮細胞が減っていることがあります。
少なくなった細胞を増やす事は出来ません。
コンタクトレンズを毎日つけるのではなく休みの日は眼鏡にしてみる、家に着いたらすぐとるなど、装用時間を短くするようにしてください。このままだと将来白内障手術できないかもしれませんと言われないように気を付けて下さいね。
今回はコンタクトレンズを毎日している方に知っていただきたい気を付ける事に関してお話させていただきました。
(2023.1.20)