〒500-8847 岐阜県岐阜市金宝町1-11

ブログ BLOG

100. 白内障手術後 絶対NGな行為とは

今回は白内障手術術後に絶対してはいけないNG行為に関してお話させて頂きます。

白内障手術は手術が無事に終わったら翌日以降何をしてもいいというわけではありません。術後の過ごし方はとても大切です。

手術前のオリエンテーションで術後してはいけない事を色々お話させて頂くんですが、不便だからという理由で手術翌日に眼帯をしながら運転をして受診された方もおられましたし、また自己判断で目薬をやめられて炎症がひどくなった方もおられました。

今回は白内障手術術後に絶対してはいけない事と、経過中にこのような症状があれば放置せずに教えてくださいという事を当院で実際に説明している内容を中心にお話させて頂きます。

白内障手術術後僕らが一番避けたい合併症は「術後の感染症」です。術後見え方が希望通りになっているか、これもとても大切なことではありますが、術後感染症が起きると程度がひどければせっかく入れた眼内レンズを取り出さないといけない場合がありますし、それだけでは済まずに最悪失明に至るような場合もあるので「術後眼内炎」は絶対にさけなければなりません。術後の感染症は手術して「2週間以内」に起きることがほとんどです。そのため術後2週間の期間は特に大切で、創部が安定する1カ月の間は色々な制限があります。

まず手術が終わった当日です。術後当日に意識して頂きたいことはたった2点です。家に帰ったらできるだけ①安静にして、夕飯を食べて少し休まれた後に②早めに就寝することです。この2点に集中していただきたいです。当日は入浴はしないで下さい。

料理していいですかと聞かれる事がありますが、当日はされないほうが良いです。予め作ったものを用意しておくか、レンジでチンできる簡単なものを用意されるようにしてください。術部への刺激になるので香辛料やコーヒーも当日は避けるようにしてください。もちろん、お酒やタバコも当日はやめてください。

テレビや新聞、本は少しの時間なら見ていただいてもよいと思います。

ですが、2時間3時間と見るのはすすめません。入れたばかりの眼内レンズは目の中でまだしっかり固定されていません。できるだけ安静にしてください。手術当日は痛みやごろつきがあると思いますが、目を圧迫したり触ったりしないようにしてください。

そして手術翌日です。翌日から必ずしないといけないことはずばり術後の点眼です。

術後の点眼は非常に重要です。2カ月程度きちんとやって頂く必要があります。目薬をきちっと守ればよほど術後問題になることはありません。

通常3本の目薬をされることになると思います。それぞれの目薬に意味があります。目薬をする上でのポイントは①ボトルが汚染されないように目薬をする前に手を洗っていただくこと。②ボトルの先がまつ毛や黒目に当たらないように気をつけてもらうこと。③一気にさしてはダメです。溢れてこぼれるだけです。必ずそれぞれ5分あけるようにすることです。

術後の目薬は多くて大変なんですが術後の感染、炎症を抑えるための重要なポイントになります。指示された通りにさすようにしてください。

時々点眼の目安となる時間から少し過ぎてしまったことを気にされる方がおられます。例えば12時にさす予定だったのに13時になってしまったというような感じです。その場合気づいたときにまずさすようにしてください。点眼の間隔も大切なんですが、優先することは指示されている回数をきちんとこなすことです。目安となる時間が過ぎてしまったから次の目薬の時間までスキップしようというように思わないで下さい。

また術後、誤って目に何か触れてしまった、ホコリなどが目に入ってしまったような事があればレボフロキサシン、モキシフロキサシンといった抗生剤の目薬なら指示された回数より多めにさして頂いて問題ありません。

術後から保護眼鏡をしていただくところが多いと思います。保護メガネの期間は1-2週間です。この期間何故保護眼鏡をしないといけないかというと「傷口がまだしっかり閉じていないから」です。外出されるときはもちろん、家にいるときや寝ているときも目をこすってしまうこともあるので就寝中もされるようにしてください。飼っているペットに目を触られてしまった、気を付けていたのに目をぶつけてしまったという事があります。

手術した傷口は翌日には軽く閉じてしっかり塞ぐのに1週間程度時間がかかります。

このように保護メガネをして眼を守るということは大切です、そしてもう一つ大事な事は「傷口を水で濡らさないないようにする」ということです。

日本の水は飲めるぐらい安全なんですが、滅菌水ではありません。塩素や不純物が含まれていて傷口を刺激して感染を起こす可能性があります。首から下のシャワー浴なら手術翌日から可能です。洗髪、洗顔は3日後、目に水が入らないようにしてもらえばして頂いて良いです。入浴は1週間後からにして下さい。同じ理由で目の周りのメイクも1週間は控えて下さい。

運転は法的には矯正視力0.7以上の視力が出ていれば問題ないんですが、1週間は辞めるようにしてください。特に多焦点眼内レンズを入れた方は、視力が改善していたとしても見え方や距離感に慣れるのに時間がかかります。また眼内レンズを近方合わせにされている方は術後運転のためにメガネを作り直さなければなりません。しっかりレンズの値が落ち着くのに2ヶ月くらいかかります。そのため半年間レンズ交換無料みたいな眼鏡屋さんで仮眼鏡を先に作っておいて、視力が安定してきたところで無料交換期間内にレンズを交換されるのが良いと思います。


運転するときは最初は明るい時間帯に短い距離から少しずつ慣らしていくようにしてください。


仕事は事務仕事なら翌日から保護メガネをして頂ければ問題ありません。ですが、作業環境が埃が舞うようなあまり清潔でない空間でなかったり、重い荷物を持たれるような仕事をされている方は2週間は休まれた方が良いです。草むしりや染髪も2週間控えるようにしてください。染髪に関しては白内障術後に限らず気をつけて頂きたいのですが、カラーリング剤はアルカリ製剤です。液体には酸性、中性、アルカリ性のものがあってアルカリ性剤は非常に強力です。刺激が凄く強くて目に入ると角膜という目の表面が混濁して治らなくなってしまうことがあります。万が一目に入ってしまった場合、先程は目に水をつけてはいけないとはいいましたが、この場合は例外です。即座に大量の水道水で洗わなくてはなりません。そしてすぐに眼科を受診してください。

筋トレ、水泳は1ヶ月はやめられたほうが良いです。強く力が入るとせっかく閉じた傷口が開くことがあるからです。1ヶ月まではこのように色んな制限があります。

その経過の中で途中このような症状があれば必ず教えて下さいということあります。それは今まで順調な経過だったのに、急に①充血、②眼脂、③目の痛み、④視力の低下を自覚したときです。次の診察を待たずに受診する必要があります。感染症を起こしている可能性があるからです。感染症は時間との勝負になります。時々次に指示された受診日が近かったのでそれまで我慢していたという方もみえますが、このような異常があればその日の内に受診または電話などで相談されるようにしてください。

今回の話をまとめますと、

①手術当日はとにかく安静にしてください。その日は普段されてることはせずに早めに寝ることを心掛けて下さい。

②翌日から点眼、保護メガネが必要です。

③傷口が塞ぐまで1週間前後かかります。そのため色んな制限があります。

④傷口を触らない、触らせない、水で濡らさらないように気を付けてください。

⑤今まで順調な経過だったのに、充血、目脂、目の痛み、視力低下を自覚したらその日の内に受診してください。

という5点です。国内の術後感染症は0.025%~0.05%程度とされていています。感染症は非常に稀ではありますが、術後の見え方を維持されるために術後1ヶ月は色々注意していただくことがあります。術後見えるようになることで色々気になってしまいます。家の中がこんなに汚かった、こんなに白髪があったなどです。色んなことに手を出したくなる気持ちも分かります。

ですが最初の1か月はこのような制限がありますので注意していただけたらと思います。今回は白内障手術術後にしてはいけないNGな行為に関してお話させて頂きました。


(2022.10.27)