今回はこれを食べる事があったら気をつけて下さいという内容に関してお話させて頂きます。患者さんからよく聞かれることで目のサプリメントって何がいいんでしょうか？またはこういったものを食べているんですが目にとっていいんでしょうか？というように聞かれます。

目に良いとされるサプリメントってドラッグストアにいくとたくさん売られていますよね。そのためどれを選んだらいいんだろう？と悩まれている方も多いようです。眼科としては是非推奨したいサプリメントはあるんですが、市販のもので購入される時は注意した方がいいものが中にはあります。安易に格安で高用量なんて書かれているものを選ぶと身体にとって逆によくないものもあります。

今回は目に良いとされるサプリメントを購入するときの注意点に関してお話させて頂きます。

目に良いサプリメントというとブルーベリーやルテインと言われる方が多いと思います。まずブルーベリーに関してですが、ブルーベリーがよいとされるのはアントシアニンという物質が含まれているからです。アントシアニン

は夜間視力を上げるために必要なロドプシンという物質を合成するのに必要なものです。偏りがない食生活をしていればあまり不足することはないんですが、不足していると夜間はっきり見えなくなる可能性があります。夜間運転中に見にくいといったことを自覚されている方なら試されるのもいいかもしれません

ただし、ブルーベリーを食べることで近視、乱視が治ったり、白内障や黄斑症、緑内障といった病気にも効くというわけではありません。糖尿病の方の目の病気で糖尿病網膜症という病気があります。国内では中途失明率2位の病気です。網膜症のためと思ってブルーベリージャムを毎日食べていると言われている方もおられました。ブルーべリーだけなら低カロリーであまり悪影響はないと思いますが、ジャムになると一気に高カロリーになります。糖尿病網膜症は治療の大前提として血糖コントールが非常に大切なんですが、目に良いと思ってしていた事がかえって悪影響を及ぼす可能性があるので注意するようにしてください。

眼科医として是非内服していただきサプリメントはルテイン、ゼアキサンチンを含んでいるものです。ルテインやゼアキサンチンはカロテノイドの1種です。カロテノイドというのは動物、植物に存在する赤色、橙赤色、黄色のような天然色素の総称です。750種類以上確認されていますが、人の組織には実はほとんど含まれていません。ただその中でもルテインとゼアキサンチンは眼の中の水晶体と黄斑部という視力の要となる部位に含まれていて非常に大切な役割をしていることが確認されています。

ルテイン、ゼアキサンチンが何故大切かというと強力な抗酸化作用、抗炎症作用があるからです。目の老化を引き起こす「活性酸素」を除去して目を守る役目をしています。ルテインやゼアキサンチンは40歳以降加齢とともに減少していきます。また体内で作る事ができないので食事での摂取が必要です。

推奨量はルテインでしたら10mg、ゼアキサンチンだと2mgです。

ルテインが多く含まれているもので代表的なものがほうれん草、ブロッコリー、ケールです。トウモロコシ、卵黄、パプリカにはゼアキサンチンが多く含まれています。これらを積極的に摂られているんでしたらいいんですが、ほうれん草だけなら必要量を摂るには1日200g程度必要です。食事だけで補うのは中々難しくて、事実海外での報告だときちんと必要量を摂取できている人は男性で１％程度女性で5％程度しかいないといわれています。食事だけでは不足していると思われた方は、サプリメントを使用されるのがいいです。実際ルテインが目に良いというのはかなり広がっているので外来でも既に飲まれている方も多いです。ですがサプリメントを買う際に注意して頂きたいことが3点あります。１つはそのルテイン、天然のものでしょうか？売られているルテインには天然のルテイン、フリー体ルテインと言いますがマリーゴールドから抽出されたものと石油などの油から抽出された人工のルテイン、エステル体ルテインがあります。天然のルテインはマリーゴールドが原料となっているものです。体内に存在するものと同じ形になっています。精製に時間がかかるので金額はどうしてもやや高めになりますが、副作用が基本的にはないため安心して飲むことができます。一方で合成されたルテインはこのように精製されていなくて、脂肪酸というものがくっついています。身体の中で分解されてから吸収されるので、どの程度ルテインが体内に吸収されているか分かりません。また品質の面でも問題があります。天然ものと違って副作用の報告もあります。胸焼けや嘔吐を起こす可能性があります。安いルテインはこの合成のルテインが多くて、コスト面では確かにいいんですが、身体に悪影響を及ぼすものがあるので注意してください。天然のルテインかどうか確認する方法としてマリーゴールドを含んでいるものなら天然である可能性が高いです。成分にマリーゴールドが含まれているか、エステル体ルテインと書かれていないかを確認してみるようにしてください。

２つ目に注意して頂きたいことはゼアキサンチンも含まれているものを選んでください。ルテインという名前が知れ渡っているのでルテインのみとりあえず含まれているものを購入されている方が多いんですが、ゼアキサンチンが含まれている事もとても重要です。網膜

の黄斑部たった直径2mmの範囲にルテインとゼアキサンチンが大量に含まれています。黄斑部の中でもルテインが多い部分と、ゼアキサンチンが多い部分があるんです。ルテインが多い部分は黄斑の周辺部に多いです。一方でゼアキサンチンは黄斑の中心部に多いです。黄斑部の中心部は視力に大切な部分です。中心部に障害が起きると視力ががくっと落ちますので注意が必要です。そのためルテインだけでなく、ゼアキサンチンが含まれているものも摂るようにしてください。

３つ目、ルテイン、ゼアキサンチンだけでなく、複合型サプリメントを摂るようにしてください。ルテインが注目されるようになったのはアメリカで発表されたAREADSという研究がはじまりです。日本人の中途失明率一位の眼疾患は緑内障ですが、アメリカでは加齢黄斑変性症が中途失明率1位なんです。そのためアメリカでは何とか加齢黄斑変性症を抑える事ができないかということで力を入れた取り組みが行われまして、約4000人の大規模な研究が行われました。その研究結果でルテイン、ゼアキサンチンを含んだものを摂る事がとても大事であり、その上でビタミンC,E、ミネラル成分である亜鉛、銅も一定量摂るように推奨されております。

これらビタミン群と亜鉛や銅というミネラル成分にも同じく抗酸化作用があります。どうせサプリメントを摂られるのならこのような研究データに沿った複合型サプリメントがよいです。ここまで考えられている市販薬は中々ありません。オススメできるものが２つあります。１つが参天製薬のルタックスというもの、もう１つがボシュロム社からのプリザービジョン２というものです。どちらもこのAREADSの研究結果を非常に意識した成分となっています。当然ですが天然ルテインですし、ゼアキサンチンも含まれていますし、ビタミン群、ミネラルも含まれています。眼科に行けば販売されているところが多いです。サプリメントの購入を考えておられるのならこのような物がよいと思います。

サプリを購入する上でコストも非常に重要です。ただ安易に安くて含有されているルテインの量が多ければそれでいいと思って購入してしまうと、そのルテインは人工のもので、含有量が多いことがかえって身体に悪影響となっている場合もあるので注意が必要です。

今回の話をまとめますと

①ブルーベリーにはアントシアニンが含まれていて夜間視力を向上させる可能性があります。

②糖尿病がある方はブルーベリーを含んだ高カロリーな食事を摂取することで糖尿病のコントロールが悪くなる可能性があります。

③ルテインを内服するなら天然ルテインを内服するようにしてください。

④ルテインだけでなくゼアキサンチンに加えて、ビタミンC,E、亜鉛、銅も含んでいるものがよいです。

⑤合成ルテインを過剰に飲むことで胸焼けや嘔吐などの副症状を起こす可能性があります

という５点です。

ルテイン、ゼアキサンチンは水晶体や黄斑に多量に含まれています。加齢や喫煙、紫外線などによって減少することで白内障になりやすくなったり、加齢黄斑変性症になりやすくなります。白内障ならまだいいと思われるかもしれません。手術によって治るからです。ただ加齢黄斑変性症の場合は深刻です。黄斑部という視力にとても大切な部分が変化して極端に視機能が落ちます。視力が落ちるだけでなく、見たい中心部分が見にくくなる中心暗点や歪んで見える変視症といった症状を合併してしまいます。注射やレーザーのような治療法はあるんですが、後遺症が残ってしまうことが多いです。日本では今後高齢化と食生活の欧米化によって加齢黄斑変性症が今後増加すると言われています。

自覚症状が全くないのに目の中には既に初期の病変がある場合があります。まずは４０歳以降目に異常がないかを眼科受診しチェックするようにしてください。今回はサプリメントを摂る上での注意点に関してお話させて頂きました。


(2022.10.25)