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86. Panoptixという3焦点眼内レンズ

今回は選定療養として使用できる唯一の3焦点眼内レンズPanoptixという眼内レンズに関してお話させて頂きます。panoptixという眼内レンズはアルコンという会社の眼内レンズで選定療養で認められている唯一の3焦点眼内レンズです。

多焦点眼内レンズの歴史は1980年代からあるわけですが、国内では2007年より認可されるようになりました。当時は多焦点眼内レンズといっても2焦点タイプの眼内レンズで遠方と手元もしくは遠方と中間にピントが合うというものでした。そのために遠方と手元という組み合わせなら中間が見にくく、遠方と中間なら手元の距離が見にくい場合がありましてその距離を補うために眼鏡が必要でした。すべての距離を裸眼で補うとなるとわざと異なるタイプの多焦点眼内レンズを入れる方法であったり同じ眼内レンズで加入度数が違うモノビジョンを併用する方法で眼内レンズを入れるなどの工夫が必要だったんですね。

従来の多焦点眼内レンズはこのように距離に対する問題だけでなく、ハローグレアやコントラスト感度の低下も起きやすく不満に思われる方もおられました。

この距離とハローグレアのような光学的合併症を軽減する眼内レンズが開発されましてそれが3焦点眼内レンズでまず海外で登場したのがFine visionという眼内レンズです。

国内では2014年に発売されました。このレンズで遠方から手元までの良好な視力が獲得できるようになったのですが、国内未承認眼内レンズであり自由診療でしか使用することができなかったんですね。そのため金額的に高価なレンズであるといった欠点がありました。ですが、2019年9月からpanoptixという3焦点タイプの眼内レンズが選定療養という国が認めた形でかつ自由診療より安く3焦点タイプの眼内レンズを選ぶことができるようになりました。

海外のものを含めると3焦点タイプの眼内レンズは色々あるのですが、今回はこのpanoptixの眼内レンズを他の眼内レンズとの特徴を比較しながらお話させて頂きます。

3焦点タイプの眼内レンズの多くはFine visionという眼内レンズの構造が基本構造となっております。3焦点というと名前の通り焦点が3つあります。手元40㌢、中間80㌢、そして遠方という見え方の3点です。ですが、中間距離が80㌢というのがやや長いという課題がありました。といいますのは通常中間距離は腕ぐらいの長さをさしまして距離にして60㌢程度です。ですのでこの80㌢は中間距離としてやや長いという欠点があったんです。

中間距離としての60㌢というのは結構大事な距離として考えられておりまして例えば車のメーターやサイドミラーを確認するのに必要な距離であったりパソコンをするのにも適度な距離として考えられています。

少しむずかしい話になりますが、回折構造には原則がありまして、40㌢を手元距離にするなら中間距離は80㌢の倍で設定するという回折ルールがあります。ですので多くの3焦点タイプはこの距離の設定になっております。

一方でパンオプティックスはこのやや長い中間距離に注目して中間距離を60㌢にすることができるようになりました。これが1番の特徴です。手元40㌢、中間60㌢、そして更に中間の120㌢、そして遠方と4焦点とあるのですが、中間距離の120㌢
は不要と考えられていてその部位はそのまま遠方に再分配する独自のEnlighten テクノロジーという技術を使っているのが最大の特徴です。手元40㌢〜遠方までしっかり見えるようにしたというレンズです。

事実臨床データ

を見ますと手元40㌢〜遠方にかけて視力は0.8以上の良好の視力が獲得できています。メガネなしになった方が90%前後おられるようになったというデータも出ており、メガネから卒業できる可能性があります。多焦点眼内レンズで常に評価される光学的ロス、眼内で有効活用されない光は3焦点眼内レンズなら15%程ありますが、panoptixはこの独自のレンズ形状のために12%まで減らし多くの光を有効活用するデザインとなっております。

そして2つ目の特徴は回折構造が4.5mm

という程いい大きさであるということです。この大きさにより日中から夜間にかけて黒目の大きさに左右されず快適に見えるようになっています。特に夜間ですが、日中に比べて瞳が少し開きます。この回折構造が小さいと特に夜間は光のエネルギー配分が異なってしまい遠方重視になってしまうんですね。そうなると夜は手元がみにくくなるような現象があるのですがPanoptixはそのような事がなく日中から夜間にかけて同じように見ることができます。


ハロー・グレアのような異常光視症

はやはりあるのですが、他のタイプの多焦点眼内レンズと比べると少なめ、コントラストの低下も懸念されるのですが正常範囲内であるというデータがでております。この異常光視症現象やコントラスト感度の低下が少ないというのも特徴です。ハローグレアは臨床的にいくつかパターンがあるのですが、他の3焦点と比べると少ない印象があります。


このような特徴があるのがpanoptixという眼内レンズの特徴ですがやはり注意することもあります。

1つ目はハロー・グレア、コントラスト感度の低下です。少ないと言われても症状はでますのでそれをどのように受け止めるかというのはその方次第です。特に注意しなければならないのは白内障がまだほとんどなくコントラストがまだあまり落ちていないけど老眼治療の意味合いを兼ねて手術を受ける方や特に夜間の運転をする方は避けたほうがいいです。ハローグレア、コントラスト感度の低下のような多焦点眼内レンズ特有の症状がその人にとってどの程度出るか予め予想できないので注意が必要です。

2つ目は緑内障や黄斑疾患のような眼疾患がある方は基本的には適応になりません。

ドライアイがある方も注意が必要です。角膜疾患があるとハローグレアの自覚は強く出やすいです。しっかりドライアイを治療してから手術を受ける必要があります。

ここまでpanoptixの特徴をお話させて頂きましたので一旦まとめますと

①panoptixの最大の特徴は中間距離が60cmに設定されている事です。

②ハローグレアは他の3焦点タイプと比べると弱めです。コントラスト感度の低下も正常範囲内です。(ですが結果として合わない方もいます。)

➂経過中に乱視のズレが起きる事もあまりありません。

④ドライアイのような眼疾患も含めて眼疾患がない方が適応です。

という4点です。panoptixは近くを見るときなど限定的に眼鏡を使用する可能性がありますが、なしにする可能性が高く、大きな光学的合併症も心配しなくてよさそうなレンズです。事実アメリカのFDA,日本でいう厚労省なのですがそちらの調査によるとpanoptixを入れた99%以上の方がもう一度手術をするとしてもこのレンズを入れたいというデータがでています。そこから分かるように満足度はとても高いのは間違いなさそうです。

ただ日本人によるデータだと40%近くの方がハローグレアのような異常光視症の自覚があること、40㎝という近方視力に不満足をもたれている方がおられ30%近くの方が限定的に眼鏡を使用しているというデータもでております。

40㌢という近方距離は欧米人に合わせた距離であるのでやや日本人サイズには遠いと考えられております。

また手術をしたときは大丈夫だったけどその後に眼疾患が起きてしまったのように将来的な眼疾患の可能性も考えておかなければなりません。

3焦点眼内レンズを予定されている方はこのような合併症をきちんと知っておく事が満足度につながるようです。よければご参考ください。


(2022.9.12)