今回は目薬を使っても眼圧が下がらないときに見直して頂きたい事に関してお話させて頂きます。緑内障の治療で唯一エビデンスがある治療は眼圧を下げることです。治療の中心は目薬です。目薬を使って眼圧を下げることが緑内障診療の中心になります。
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目薬による治療を行うんですが、正しく目薬をさせている人とさせていない人で眼圧の下がり方に差がでる事で知られています。当たり前のことなんですが目薬は目の表面に当たらないと効果は出ません。眼圧がさがっていないのは目薬が効いていないのではなくて、正しく目薬を使えていないから下がっていなかったということをよく経験します。目薬をきちんと使えている人と使えていない人で緑内障の視野進行は6倍違ったという報告もあるぐらいです。
今回は緑内障目薬の正しい使い方に関してお話させて頂きます。
冒頭でお話した通り目薬は内服薬のように飲めば終わりというのものとは違い正しくささないと効果がでません。良く経験することとして、どの目薬を処方しても中々眼圧が下がらない方がおられるんですね。目薬をきちんとさせていますかと聞くと患者さんははい、しっかりさせていますというようにお話されます。
もちろん薬への反応は人それぞれ違いますので効く効かないはあるんですが、効いていないとなるとやはりもう1剤、さらにもう1剤と目薬を追加することになります。
それでもほとんど眼圧が下がらない事があるんです。
目薬を最大量使って眼圧がほとんど下がらない場合、手術も検討しなくてはなりません。ただ少し目薬の使い方が怪しい方に実際に目の前で目薬をさしてもらうと全く目に入っていないということが分かったりします。そのため試しにご家族の方に協力して頂いてご本人の変わりに目薬をさしてもらうと驚くほど眼圧が下がることがあるんです。そのため眼圧が下がらないのは目薬が効いていないのではなくてしっかりさせていない事が実は問題だったということが発覚することがあるんです。
充分に眼圧が下がっていればもちろん手術をする必要もなくなります。
眼科医はきちんと目薬ができているか確認する1つの判断材料として目をみて判断するんです。緑内障の目薬は本数が多くなればなるほど充血であったりまぶたが黒くなったりまつげが伸びたり色々な症状が出やすいのですが、中にはたくさんの目薬が処方されているにも関わらず充血もなくて目が綺麗だけど目の周りの皮膚だけが黒ずんでいる場合があります。この場合目薬が効いていないのではなくて、本当にきちんと目薬ができているんだろうかと疑う1つの判断材料になります。ご高齢で緑内障が悪い人ほどこの傾向は強いです。緑内障が悪いと目薬の先が見えません。そのためうまくさせないことが多いんです。
それでは目薬はどのようにしてさせばいいのでしょうか。
まず1つ目のポイントです。目薬を最も効かせるには眼の表面に薬が留まっていないと効果は出ません。目薬をさした後にパチパチと瞬きをする方がおられますが、すぐに瞬きをしてはいけません。瞬きをすると目薬の成分がすぐに涙点という涙の出口を通って鼻の方に流れてしまい目の表面にとどまる事ができないからです。目薬
をしたあとは軽く目をつぶって1分ほどは閉眼しているようにしてください。その間は目頭
をしばらく押さえておくのが良いです。そうすることでできるだけ薬の成分を眼表面のみに留まらすことができます。目薬は鼻に吸収された後に全身に流れていくのですが、まれに全身への症状が出る目薬があります。不整脈や喘息のような症状がまれに出ることがあるので全身への症状が出ないようにするためにも目薬をしたあとに目頭は押さえた方がいいです。
そして2つ目のポイントは1滴以上
目薬をささない事です。どの目薬も1滴しか入らないようにできています。1滴で溢れる量が入っているんです。2滴させば更に効果が高まるということはありません。2滴さしても溢れるだけなんです。患者さんの中には異様に目薬がなくなるのが早い方がみえます。多くの目薬は正しく使えば1ヶ月前後でなくなるんですが、1週間もたずになくなる方もおられます。どうしてもうまくさせない、または多くさした方が効果があると考えられている方もおられるようですがそのような事はありません。ドライアイのような目薬なら溢れた分は拭けばいいのでまだいいんですが、緑内障の目薬でラタノプロストのような皮膚についたままにすると色素沈着を起こす目薬があります。そのような事にならないためにも目薬は一滴でさすようにしてください。
基本的な目薬のさし方
は下瞼だけ軽く引いてアッカンベーしてさす方法です。よく
目薬は黒目に当てる必要があると思われている方もおられますが、黒目を狙うのは危険です。点眼ボトルが誤って黒目に当たると傷ができて問題になることがあります。下瞼、結膜嚢という部分があるんですが、下瞼を引いた部分に目薬が入れば目全体に薬の成分が行き届きます。
げんこつ法
という方法で握りこぶしを作ってその上から目薬をする方法もよいと思います。それでも難しいという方は点眼補助具を購入されるのもいいかもしれません。どの方法でも注意することは目薬前に手を洗うことそして、目薬がまつ毛に触れると菌がついてしまう可能性があるのでまつ毛には触れないようにしてください。
3つ目のポイントは目薬の順番です。2つの以上の目薬を使われている場合です。目薬を何種類もさす場合どの目薬からさせばいいのかなと思われる事があると思います。
目薬はキサラタン、アイファガンのように水溶性のもの、エイゾプトやアゾルガのように振って使用する懸濁液のものやチモプトールXEのようなゲル状のものがあります。懸濁液のものやゲル状のものは目の表面に長く残りやすい特徴があります。目薬が目の中に残っている状態で更に目薬をさしても後にさすのが溢れるだけです。ゲル状の目薬が最も目の表面に留まりますので最初に水溶性のもの、次に懸濁液の目薬、最後にゲル状の目薬をさすようにしてください。
そして各目薬の間はそれぞれ5分程あけるようにしてください。
例えばキサラタンとアイファガン、緑内障の目薬でも同じ水溶性の目薬を2つ使っている場合どちらを先にさしたらよいのでしょうか。この場合はどちらを先にさしても大きな違いはありませんので5分あけてもらえばどちらが先でも良いです。
水溶性のキサラタン、懸濁液のアゾルガならキサラタンを先にさして5分あけてアゾルガをさすのが良いです。
最後4つ目のポイントは用法用量を守ってくださいということです。例えばキサラタンという目薬は1日1回です。1回させば24時間効いています。1日2回さすということはやめてください。本来の目薬の効果が発揮せず、眼圧がむしろ下がらない原因になってしまいます。点眼回数は守るようにしてください。
今回は目薬の使い方に関して色々お話させて頂きました今回のお話をまとめますと
①目薬は1滴で溢れる量がすでに入っています。
②目薬が入ったらパチパチせず1分間閉眼するようにしてください。
③目薬は黒目に当てる必要ありません。下瞼を引いたりげんこつ法がおススメです。
④複数の目薬をしている場合水溶性→懸濁液→ゲル状点眼の順番がよいです。
⑤用法用量を守ってください。
という5点です。目薬もこのようにポイントがいくつかあります。冒頭でもお話した通り目薬をきちんと使うことでどの目薬を使っても眼圧25、6だった方が15付近まで低下するというような事も僕らはよく経験します。薬物がきちんと使用できているかどうかは大きく緑内障の予後に影響しています。どの目薬をさしても眼圧がなかなか下がらないという方は一度目薬のさし方を見直してみるのもいいかもしれません。今回は目薬の正しい使い方に関してポイントをお話させて頂きました。
(2022.9.8)