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83. 緑内障 眼圧5下げる方法

今回はあることをする事で眼圧が25%、値にすると眼圧の数値が5程度下がったという報告がありましてそれに関するお話をさせて頂きます。緑内障の治療の中心は目薬を使って眼圧を下げる事ですが、薬物治療をした上でマインドフルネスによる瞑想をすることで眼圧が更に下がるという報告があります。

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このページの解説は以下のYouTubeでもしています

https://youtu.be/krTvjOlUiYA

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マインドフルネス瞑想とは呼吸法を主座とした瞑想を行うことなんですが、これを行うと眼圧が平均して5程度下がったということなんですね。瞑想なんかで眼圧が下がるってなんかうさん臭い話で本当に効果があるのかなと思われるかもしれません。私も視力トレーニングで近視が治るといったようなものやこうすれば緑内障が回復するというのはあまり当てにならないと思っていますが、こちらの報告は2019年にJournal of glaucoma

,2021年に AJO

といった眼科の一流の雑誌でも報告されております。今回はそのマインドフルネス瞑想による緑内障への効果に関するお話をさせていただきます。

マインドフルネスと緑内障の関係はストレスによる緑内障への影響が注目にされることではじまったインドでの研究です。マインドフルネスとはただ目の前の事に集中する状態をいいます。この心の状態をマインドフルネスといい、呼吸法を意識しながら行う瞑想をマインドフルネス瞑想といいます。

ただ無心でいて何も考えないというのではなくて自分の呼吸を観察して行う方法です。静かな場所で目をつぶり大きく息を吸ってゆっくり吐くという動作を行います。呼吸に意識を向けて途中で他事が思い浮かんできたらそっと呼吸に意識を戻してそして呼吸を続けるという行為です。

このマインドフルネス瞑想を

緑内障治療中の患者さん90人集めて45人ずつランダムに分けて片方のグループには点眼に加えてマインドフルネスによる瞑想を実践し、残りの45人は点眼のみをしたという人達と比べました。マインドフルネス瞑想

を21日間毎日1時間実践したところ何もしなかった人と比べると眼圧が平均して25%下がった、値にすると5程度下がったという結果が報告されたんですね。何故このような瞑想をするだけで眼圧が下がるのか不思議ですよね。

このようなマインドフルネス瞑想を行う事で副交感神経というリラックスする神経を活性化することができます。これを継続的に行う事で従来から緑内障患者さんには悪影響ではないかと考えられているホルモンが減少し逆に緑内障にとって必要であると考えられているホルモンが上昇するという結果になったんです。

悪化するホルモンと考えられているものは2つあり、1つ目はコルチゾールというものです。ステロイド性のストレスホルモンと言われたりしています。人間はストレスを自覚するとストレス性のホルモンが多く分泌されることが知られています。特に緑内障患者さんは、緑内障を患うとすぐに失明と直結される方もおられます。視覚的障害に対する不安からストレス状態が続いていてホルモンの分泌が多いといわれています。コルチゾールはこのようなストレスホルモンで、ステロイドの一種です。ステロイドは優れた抗炎症作用があるのですが、その反面長期間使い続けると目の場合眼圧が上がったりするリスクがあることで知られています。ぶどう膜炎のように目の中に強い炎症を起こす病気がある場合リンデロンのような強いステロイドの目薬を使い治療しますが、若い人ほど眼圧が上がりやすいため長期間使う場合注意が必要です。そのような眼圧が上がる要因として考えられているステロイド性のホルモンがコルチゾールというものなのです。

身体の中の副腎皮質という腎臓にくっついている部位から分泌されるホルモンで血糖値を調節するために本来は必要なホルモンです。このホルモンがストレスによって上昇することは以前から知られていまして、分泌量が多くなると緑内障患者さんの場合このホルモンに対して強く反応しやすく眼圧があがる可能性が指摘されております。瞑想を行った方々はストレスが軽減する結果このホルモンが減少しその事が眼圧を低下させているのではないかという可能性に関して報告されております。

2つ目にカテコラミンという物質も低下している事が分かりました。カテコラミンというものは交感神経という緊張する神経が働くことにより体内に放出されるホルモンです。先程のコルチゾールと同様に副腎皮質という部位から放出されるホルモンで血管を収縮させたりして血圧を調節するホルモンです。これも量が多くなると目の場合緊張を促す事で眼圧が上があります。人には交換神経という緊張を促す神経と副交感神経というリラックスする神経がバランスよく働いています。交換神経が働きすぎる事でカテコラミンが放出されて、眼圧があがるだけでなく、血管が収縮して視神経周辺の血液循環が悪くしている可能性があります。

これら

コルチゾール、カテコラミンどちらも眼圧上昇の可能性があり緑内障には過剰に多いとよくないと考えられているんですが、これらがマインドフルネスによる瞑想を行うことで値が低下し眼圧が下がっているのではないかと考えられています。マインドフルネス瞑想を行うことは眼圧を下げるだけではありません。全身への効果も報告されておりまして、うつ病、睡眠の質の改善、糖尿病、高血圧のような慢性疾患に対する効能も報告されております。このようなマインドフルネス瞑想を行う事で眼圧が25%下がるというのは私の中では衝撃でした。25%前後の眼圧下降というとかなり下がってますよね。日々のストレスがこれほど眼圧上昇に関与しているのかなと思いました。だからといって緑内障の患者さんに毎日1時間瞑想してくださいなんてとても言えませんが、少し仕事で疲れたときがあればマインドフルネスの瞑想を行うこともいいかもしれません。瞑想のアプリなどもありますので、試してみる価値があるかもしれませんね。ただ注意点として瞑想をすれば緑内障点眼が不要になるというわけでは決してありません。緑内障点眼は必ず併用する必要があります。興味がある方は今の治療の+αとして日々の習慣に5分程度でもしてもらうのがいいかもしれないです。この研究はインドで行われた21日と短期間での研究であり参加者も合計90人と少ないです。長期的なデータがないため一時的に眼圧が下がっただけかもしれませんし、インドという民族性によるものの可能性もあります。またマインドフルネス瞑想を行うことで緑内障の視野進行がどの程度抑制されるのかというような事はまだわかっていません。

ただ以前よりストレスによる緑内障の影響は様々な報告がされております。喫煙や睡眠時無呼吸症候群などによる酸化ストレス、完璧主義のようなストレスを抱えやすい神経質の方は緑内障の方に多いなど言われています。何らかストレスを自覚されている方はマインドフルネスを取り入れてみてはいいかもしれません。

今回のお話をまとめますと

①マインドフルネス瞑想とは呼吸法を意識して目の前の事に注目する瞑想です。

②マインドフルネスによる瞑想を行うことで眼圧が5程度下がる報告がされました。

③ストレスが軽減することで眼圧が上がる要因となるコルチゾールやカテコラミンが減少することが考えられています。

④マインドフルネスによる瞑想はうつ病などの精神疾患、睡眠障害、心疾患など様々な疾患に対してメリットがある可能性があります。

という4点です。マインドフルネスによる瞑想は眼圧が下がるだけでなく様々な身体的なメリットがありそうです。眼圧が下がったという報告ではありますが、これが緑内障の治療として有効かどうかは別問題でまだ長期的な検討が必要です。治療としてもっとも優先されるのは点眼治療やレーザー治療で、マインドフルネスを取り入れれば目薬をしなくてもよいですよというような話では残念ながらありません。もちろん緑内障診療ガイドラインにも瞑想を取り入れるような記載はありません。ですが、このようなマインドフルネスを取り入れたり、運動習慣を取り入れてストレスと上手に付き合う方法として有効だと思います。今回はマインドフルネスという呼吸法を取り入れて瞑想することで眼圧が下がったという報告に関してお話させて頂きました。


(2022.9.1)