今回は目薬を使っても眼圧が下がらないときに見直して頂きたい事に関してお話させて頂きます。緑内障治療で大切なことは眼圧を下げることです。眼圧を下げることが唯一確立されたエビデンスがある治療として考えらえています。
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目薬を使う事が緑内障治療の中心です。日本人に多い正常眼圧緑内障はもとの眼圧から30%下降すれば8割の方は進行がほとんど停止するといわれています。もとの
眼圧から30%下げるということは、無治療での眼圧が20ぐらいの眼圧の方なら14ぐらいになりますし、16ぐらいの眼圧の方なら12ぐらいの眼圧を目指す事になります。
このように30%下降した眼圧を目指して治療を行うんですが実際は緑内障は慢性の進行性の病気であるので少しずつ進んでいくことが多いです。進むとしても進行の仕方がしっかり抑制されているのならいいと思いますが、眼圧がだいぶ低いにも関わらず視野の進行が早い方もおられます。その時に一度立ち止まって見直して頂きたいことに関してお話させて頂きます。
まず1つ目はその眼圧が本当に低い値なのかということです。これは検査した眼圧の値を疑って下さいというわけではありません。緑内障進行の危険因子の1つに眼圧変動幅が大きい事が挙げられています。眼圧は血圧と同じで常に一定の値ではありません。例えば眼圧
は一日の中でも6ぐらい変動することがあります。一番多いのは朝高くて夕方低くなるという日内眼圧変動パターンが多いです。中には朝低くて夕方高くなるという逆のパターンの方もみえます。また眼圧は季節によっても冬高くて夏低いといったように季節変動します。そのため毎回同じ時間にクリニックに行き眼圧を測るのではなくて午前中や午後などに分けて眼圧を測るのがいいと思います。診察は毎回夕方が多かったけど朝受診してみたら朝が高かったというようなこともあるんです。このように眼圧は一日の中でも変動するんですが、時々問題になるのは体位による眼圧変動です。眼圧
を測るときは通常座って眼圧を測られると思いますが、座って眼圧を測る時が一番低い値であるということを知っていなければなりません。
立っているときや座っている時が一番眼圧が低くて、身体が横向きになればなるほど眼圧が高くなり、逆立ちをするときが一番高くなります。なんと逆立ちをしているときは座っているときと比べると眼圧が2倍近く高くなります。
そのためヨガで長時間逆立ちのように頭が下になるような体位をとる事は危険と考えられています。実際は逆立ちするような方はほとんどないと思いますが、注意するときは寝ている時です。座っている時と寝ている時で眼圧が全然違うことがあります。座っている時眼圧が低くて眼圧が低くていいですねと言われている方でも寝ている時に一気に眼圧が高くなる方もおられます。座っているときは12ぐらいの眼圧でも寝る姿勢になると20近くになるということがあるんです。
緑内障は就寝中に悪くなると言われておりますので、眼圧が低いにも関わらず視野の進行が早い方は横向きでの姿勢で眼圧を測ってもらうのもいいかもしれません。もし横向きになって眼圧が高ければ枕を少し高くすることも有効です。また、横向きやうつ伏せで寝るよりは仰向け
の姿勢が眼圧が上がりにくいと言われていますのでそのような事を気をつけてもらうのもいいと思います。
次に循環障害に関してです。日本人に一番多い正常眼圧緑内障は眼圧が正常値であるにも関わらず緑内障になってしまう病気です。このため眼圧以外の要因として血液循環障害説があるのではないかという事が長年言われております。
視神経周辺の血液循環が悪いから視神経にダメージが起きているのではないかという考え方です。このように眼圧以外の要因も考えられているので内科的な病気あるの場合きちんと管理できているのかということはとても大切です。糖尿病、高血圧のような病気があれば動脈硬化のため循環障害が起きている可能性があります。逆に低血圧も問題になることがあります。高血圧の治療で血圧が低くなりすぎると血の巡りが悪くなって進行させる原因になる事があります。血圧を下げる薬が追加されていく中で知らないうちに血圧が下がりすぎている事があります。論文の報告では収縮期血圧107以下の血圧になると緑内障進行のリスクになるとも言われています。血圧が下がりすぎている方は内科の先生に相談されるのがいいかもしれません。
もとから血圧が低いかたは松樹皮エキスを含んだサプリメントや漢方をためされるのもいいと思います。このような生活習慣病以外にもタバコも血液循環を悪くして緑内障を悪くしますので喫煙されている方は注意するようにしてください。
最後にストレスになる生活をしていないでしょうか。ストレスは不眠とか肩こりや抑うつ状態など身体への影響もありますが、目にも影響があります。ストレスがあると何故いけないのかというと全身のリズムを整える自律神経の働きが乱れるからです。自律神経
には交換神経という緊張する神経と副交感神経というリラックスする神経がバランスよく働いています。このバランスがストレスで崩れて交感神経という緊張する方の神経がずっと働き続けていることがあります。そうなると全身の血管が収縮します。目の血管は全身の血管の中で最も細い血管なんです。
緊張し続けることで血の巡りが悪くなり、緑内障への影響が考えられています。これフラマー症候群といいますが、完璧主義、片頭痛がある方はそうでない人と比べると緑内障の方に多いと言われています。このような身体的ストレスを自覚していたら必ずしも緑内障になるというわけではないのですが、このようなストレスを自覚している人が緑内障の人に多いと言われています。
そのため過度なストレスは目にとってよくありません。
ストレスの中でも酸化ストレスというのがありまして、例えば睡眠時無呼吸症候群と緑内障の関係です。夜間睡眠時に一時的に呼吸が止まることで全身が低酸素状態になります。そうなると先ほどの緊張する神経、交換神経がずっと働き続けることになり視神経周辺の血管がぎゅっと収縮して血の巡りが悪くなってしまいます。
睡眠時無呼吸症候群の方は夜間寝ているときだけでなく日中もずっと緊張している状態が続くので血流障害が起きやすくなります。そのため正常眼圧緑内障に問題になるのではないかと言われてます。。
睡眠時無呼吸症候群の方は
CPAPという呼吸療法を行うことで全身の低酸素状態を改善させて交換神経が異常に働くことを和らげてくれます。CPAP後に視野進行の抑制を認めたという報告もあるのでCPAPを続けることが大切です。睡眠時無呼吸症候群はこのような低酸素からくるストレスですが、身体的なストレス同様に目にとってよくありません。
ストレスに対して適度な運動をするのが有効的であると考えられています。運動した後はリラックスできてこのような緊張が緩和できる可能性がありますので、よければ運動習慣をとり入れるようにしてください。今回のお話をまとめますと
①眼圧が低いのに視野進行が早い場合、眼圧が時間帯によって変動していたり体位によって変動している場合があります。
②横向きで眼圧が高くなっている場合枕を高くするなど注意した方がいい場合があります。
③循環障害説も言われているので高血圧や糖尿病の治療もきちんとした方が良いです。
④過度なストレスが循環障害を起こしている可能性があります。運動するなどしてリラックスするようにしてください。
という4点です。緑内障治療で現状唯一エビデンスがある治療は眼圧を下げる治療です。眼圧が12とか低めであるにも関わらず進行があったとしても更に下げれば進行が抑制されたという報告もあります。そのため何より優先しなくてはならないのは眼圧を下げることであるのは間違いありません。ただ正常眼圧緑内障は乳頭出血
のような視神経から出血することがありまして他の緑内障にない特徴があります。乳頭出血の原因は未だにはっきりしていませんが、原因の1つとして循環障害が起きているということも言われています。そのため眼圧以外の要因もきちんと管理することが大切なんですね
今回は眼圧が低いにも関わらず視野が進行しているときに知って頂きたいポイントに関してお話させて頂きました。
(2022.8.30)