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76. 飛蚊症 治すために

今回は飛蚊症の治療方法に関してお話させていただきます。飛蚊症とは自分の目にしか見えない浮遊物が見えてしまう現象です。

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このページの解説は以下のYouTubeでもしています

https://youtu.be/og3oH-iBKnc

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白色の透明なものであったり、黒のように色がついているものもありますし、形も糸状のものからアメーバ状のものなど様々な種類があります。青空や白い壁を見ているときに特に症状を自覚しやすいです。多くは加齢とともに自覚しやすくなるのですが、中には若くて自覚されている方もおられます。飛蚊症の多くは加齢現象でして、生理的なものなので経過をみるしかないのですが、そうは言ってもどうしても気になって治療したいなと思うことありますよね。今回は飛蚊症の治療方法にはどのようなものがあるのかということに関してお話させて頂きます。

飛蚊症には大きく分けて2種類あります。生理的な飛蚊症、もう一つは病的な飛蚊症です。

生理的な飛蚊症は多くは加齢によって生じる現象であって治療が必要なものではありません。硝子体という目の中のゼリー状のものが年齢とともに変性

していくことで自覚します。硝子体は99%の水成分とコラーゲンのような繊維物質を1%含んでいています。この中の繊維物質が年齢とともに変性していきまして、目の中でぷかぷかと浮いてしまってこれが網膜に影として映ることで飛蚊症を自覚します。これが生理的な飛蚊症の原因です。

ただ中には硝子体のわずかな濁りが生まれながら残っていることがありまして、若くして飛蚊症を自覚している方もおられます。

また近視の方は眼球が大きく、硝子体の成分が早く変化しやすいということもあり早くから飛蚊症を自覚することがあります。

そのため10代、20代と若いうちから飛蚊症を自覚している方も中にはおられます。

いずれにしろ生理的な現象ですので、急激に飛蚊症の量が増えることさえなければ心配されなくてよいことがほどんどです。

ただ50−60代になると一気に飛蚊症が増えることがあります。これは後部硝子体剥離

という現象のために起きることが多いです。後部硝子体剥離とは本来硝子体は網膜とくっついているのですがそれが網膜から離れていく現象をいいます。剥がれるときに一部硝子体の成分の残骸

を残すことがあり、これが飛蚊症の原因になります。やや専門的なことになりますが、眼科ではワイスリング
と言ったりしますが、視神経の部分から硝子体が剥がれるとかなり大きい塊ができることがあります。大きな飛蚊症が視界にかかってかなりうっとうしくてストレスになる場合があります。

このように50−60代に急な飛蚊症を自覚することがあります。後部硝子体剥離は誰でも生じる現象であり、今まで目はよくて何もなかった方でもこのような飛蚊症を自覚してびっくりされて眼科受診される方が多いです。実際は病的なものではない事が多いので治療の必要はありませんが、中には網膜裂孔のような病的なものが発症している可能性があるので必ず自己判断せず眼科を受診して問題ないことを確認してください。加齢によるものと診断を受けた場合は有効な治療法がありませんので、経過をみていただくしかないです。

このような生理的な飛蚊症に対して自費診療ですがレーザー治療や硝子体手術で治療することがあります。

患者さんもネットなどで調べられて飛蚊症に対するレーザー治療に関して興味があるんですがどうでしょうか?と聞かれることがありますが、私自身はどちらもあまりおすすめしていません。例えばレーザー治療の場合誤って網膜に穴があく可能性があります。見えている飛蚊症は黄斑部

という視力にとても大事な部分に浮遊していることが多いです。飛蚊症の原因は先程もお話した通り、硝子体という水の中に繊維状のものがプカプカと浮いているんですね。動いているものに対してレーザー治療

を行うので誤ってレーザーが黄斑部に当たった、または黄斑近くの網膜に当たるという恐ろしい合併症が考えられます。また水晶体というレンズのあたりに浮いていたら水晶体に誤って当たってしまって白内障になることもあります。実際はほとんどないと思いますが、私の場合はやはりみえている飛蚊症ということは黄斑付近にある飛蚊症であるということ、固定されているものでなく動いているものにレーザーするということを考えるとリスクが伴う治療だなと考えています。綺麗に塊の部分

に当たったとしても飛蚊症がなくなるわけでなく砕けたものが目の中に残るんですね。

大きな飛蚊症が無くなったとしても別のタイプの飛蚊症が結局残るためリスクに合った治療ではないなと今のところ考えています。

硝子体手術となるともっと大掛かりです。自覚的な改善はそれなりにあるかもしれませんが、手術に伴う合併症、白内障であったり網膜裂孔、眼内炎という感染症などの可能性があります。治療されてうまくいく方もおられると思いますが、個人的にはリスクの方がやはり高いと考えておりまして患者さんに聞かれてもあまり勧めていません。

やはり基本的には生理的な飛蚊症であれば辛抱強く経過をみることを勧めています。後部硝子体剥離がすすみ硝子体が網膜からどんどん離れていくと、影が薄まりほとんど気にならなくなってきます。

だいたい1−2年ほど経過みてもらうとあのときは飛蚊症でだいぶ精神的にまいってましたが今はほとんど気にならないです。と言われる方が実際は多いです。点眼や内服などで飛蚊症が薄くなるのであればいいのですが、現状は中々有効な治療法はありません。

一方で今度は病的な飛蚊症、この場合は手術で飛蚊症が改善することがあります。病的な飛蚊症とは硝子体出血やぶどう膜炎のようなものです。硝子体出血は糖尿病や高血圧が原因となって目の中で出血する病気です。ぶどう膜炎は目の中に炎症が起きてしまっている状態です。これらの飛蚊症の原因は先程お話した加齢による硝子体の組織の変性物資ではありません。
目の中

の出血成分や炎症細胞が飛蚊症の原因なのでこれに関しては治療すれば改善が可能です。点眼や内服薬または目の中に注射をする場合があります。それでも改善しなければ硝子体手術といった手術を行うことがあります。出血成分や炎症物質が無くなって原因が改善されれば飛蚊症は軽快することが多いです。このように飛蚊症は生理的なものと病的なもので治療方法が全く異なってきます。今回の話をまとめますと

①近視の方は若くして飛蚊症を自覚しすることがあります。

②生理的飛蚊症は50、60代で起きる後部硝子体剥離をきっかけに自覚されることが多いです。

③生理的飛蚊症に対する有効な治療法はありません。

④時間の経過とともに症状が改善していくことが多いです。根気よく経過をみることが大切です。

⑤出血、ぶどう膜炎の様な病的なものは治療で改善することがあります。

という5点です。多くの方が悩まれているのは生理的な飛蚊症だと思います。生理的な飛蚊症に有効な治療はないのですが、飛蚊症の症状がある場合は必ず眼科を受診して眼底検査を受けて頂くようにしてください。近視が強い方であれば飛蚊症をきっかけに網膜に穴があいていたなど病気が発覚することがあります。近視の方に多いのは片目に異常がみつかったタイミングで反対の目にも異常が見つかるということはよくあります。例えば右目の飛蚊症で受診したところ右目の網膜に穴が空いていた。自覚症状がない左目もついでに検査をしたら左眼も網膜に穴があいているということがあるんですね。片目の異常で眼科受診した際に反対の目の異常も見つかる。これ実は眼科では非常によく経験することなんです。飛蚊症を自覚されているなら一度まず眼科を受診して検査してもらうことをおすすめします。今回は飛蚊症の治療方法に関してお話させて頂きました。

(2022.8.20)