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9. 白内障手術の進歩

今回は白内障手術に関してお話させていただきたいと思います。白内障手術は年々受けられる方が増えており、白内障なにそれ、知らないと言われる方はほとんどいないのではないでしょうか。国内ではだいたい1年で百数十万人の方が手術を受けられており、年々増えております。早い人だと40台からされる方もいらっしゃいます。白内障は皆さん誰しもがなりますし、ある程度年齢をとられると必ず皆さんなられます。逆にならない人はいません。

白内障というのは、簡単にいいますと人の目のには水晶体という元々透明のレンズがあるのですが、それが年を重ねるごとに白く濁っていく状態をいいます。進行の仕方はそれぞれで、紫外線をよく浴びる工事現場など外仕事が多いといった生活環境に起因されるものであったりアトピー、糖尿病のような基礎疾患がある方、又はボクシング等で過去に目を殴られたなど外傷の既往がある方は通常より早く白内障になりやすいと言われております。

白内障になれば視力が下がるだけでなく、物が二重、三重になるといった複視という症状が表れ日常生活に差し支える状況になります。例えば月が2つ、3つに見える、信号が2つみえるなどです。視界がぼやけてみえ、少しずつ視力が下がっていきやがて運転免許更新のための最低視力0.7を切るか切らないかまで下がり、ようやく手術を決心されるようになる方も多いです。白内障の進行は老眼の進行と同じですので、遠方も近くも見にくくなって困って手術のご相談を受けることもあります。2000年までは白内障手術がまだ大がかりだったということもあり入院して行っておりました。大きく切開して、術後は縫合して手術を終えるといった手術でした。1.0あった視力が徐々に下がり、0.1ぐらいになってからようやく手術をしましょうかといった時代もあったようです。現在は安全に短時間で手術が行えるようになり、1.0を切ることがあれば日帰りで手術をされる方が多くいます。それにまだ1.0見えていて白内障の症状がわずかでも最近だと屈折矯正手術の意味もかねて手術される方もいらっしゃいます。すなわち元から近視が強く今までは眼鏡やコンタクトでなんとかなってきたけど、老眼も入ってきて遠くも近くも見にくい、眼鏡すればなんとか1.0見えるんだけど、もう少し見え方を楽にしたいなという場合などです。レーシックのような矯正手術の意味合いも込めて手術されることも多くなってきました。そうする事で、例えば-8ぐらいの近視を正視といって眼鏡なしで遠方をしっかり見えるように出来たりするわけです。

白内障手術を簡単に説明しますと、濁ったレンズを取って、きれいな人工のレンズに置き換えるということです。これに関しては昔も今も変わりません。ただ、現在は機械の進歩で昔みたいにがばっと大きく切開することなく小切開で手術を行えるようになりました。ここまでくるのに白内障手術は歴史的には長く、昔はカウチング法といって、濁ったレンズを太い針金で角膜を貫いてつつき眼球内に落とすという聞くだけでぞっとするような手術からはじまりました。


(このように太い針金を角膜を貫通させて水晶体を硝子体内に落とすという荒業です。)
人工レンズがまだない時代です。濁ったレンズが視界から無くなれば明るくなりますが、当然レンズがないと基本的には強度の遠視の状態になってどこにもピントが合わなくなります。じゃあ昔の人はどうしてたかというとその代わり分厚い眼鏡をして当時の人は対応していたんですね。無麻酔で抗生剤などもない時代ですから術後感染症や眼の中の硝子体に残存した水晶体から発生する炎症などがすごかったのではないかと予想しています。事実術後の成績はすごく悪かったようです。今だと、白内障手術はすごく進化して、大学病院でもクリニックでも同じレベルの機械で同じ質の手術を受けることができます。先ほど申し上げたカウチング法から強膜といって白目を大きく切開して眼内レンズを入れる方法に改良され、そして現在は小切開手術で2.5mmくらいの小さな切開だけいれて、手術を行います。傷口は自己閉鎖といいまして縫ったりする必要もなく非常に低侵襲で安全に手術を行う事が出来ます。手術時間もだいたい10分前後で終わることが多く、多くの人が白内障手術は短時間で出来、簡単な手術だからあなたもやった方がいいと言わて来られる方が多いです。僕たち眼科医からしますとその短時間の間に非常に繊細な作業が凝縮されており簡単な手術だと思われていることに少しがっかりしたりするのですが、そういったことは置いといていずれにしろどこへいっても日本ならクリニックでも大学病院でも質の高い手術を受けられることは間違いないと思いますし、手術に対しての抵抗が少なくなっていることはいいことだと思っています。では皆さんが手術を受ける際にどこに注意が必要かというと一つは入れるレンズにあると思います。実は眼内レンズには非常にバリエーションがあります。それを次回のブログでお話させて頂きたいと思います。

(2021.3.9)