健康な人でもなりうるストレスとか睡眠不足とかステロイドの内服薬が原因でなってしまう目の病気があります。
中心性漿液性脈絡網膜症という病気があり、名前だけ聞くとなんか難しいそうな病気だな、私には関係なさそうと思われるかもしれません。
この病気になると見ようとしているものが見にくい中心暗点という症状であったり、色がくすんで見える色覚異常、物が歪んで見える変視症、または字が小さく見えるといった小視症といった症状など非常に不快な視覚症状が出現します。
例えるならある日外に出たら道や建物がうねってみえたり、近くにいる人が遠くにいるようにみえてしまったりするわけです。視力は落ちない事が多いのですが、見え方が極端に悪くなり日常生活に支障を来すことがあります。
実際私の職場の人でもこの病気になられた方がいますし、有名人やスポーツ選手でこの病気になられて治療したとテレビ等で聞いたことがあります。
目の奥の網膜の中心にある黄斑という視覚に非常に重要な部位があるのですが、この部位に網膜剥離と言って水ぶくれを生じる疾患です。この中心性漿液性脈絡網膜症は簡単に言うと網膜剥離の1種なんですね。
20~50歳の働き盛りの男性に多く見られ、片目だけに発症することが多いです。この病気は、網膜の外側にある網膜色素上皮細胞の異常や脈絡膜という部位の機能が低下して、血液の成分が漏れ出してしまうことで発症します。この脈絡膜の機能が低下する原因は不明で、ストレスが関わっていると考えられています。
このストレスが原因ではないかと言われたきっかけは少し昔になりますが、1940年代の第二次世界大戦の最中に視覚異常を訴える軍人が非常に多かったことに注目され、戦闘によるストレスが関係があったのではないかと言われたのがきっかけのようです。
その他円形脱毛症や自律神経失調症、十二指腸潰瘍のようなストレスをかかえる疾患に合併しやすいとも言われてます。ストレスを受けると体内のホルモンでカテコールアミンというホルモンが上昇しこれは交感神経という神経の働きを活性化させます。それがどうやらこの病気を発症する原因になると言われています。
ところで性格にはA型気質、B型気質というものがあります。
A型気質は責任感が強く、完璧主義でストレスをためやすい人の事をいい、B型気質はそれに比べてマイペースで少しズボラな人をいいます。この病気は特にA型気質の人が多いといいます。
A型気質の人はB型気質の人に比べて交感神経が活性化しているため先程のカテコールアミンが多く分泌されるからではないかと論文等で報告されてます。A型気質が決して悪いわけではないと思うのですが、仕事でのストレスをうまく発散できない人、夜中あまり寝れず睡眠不足になる人などは注意が必要です。
また、ステロイドという薬の副作用が原因で発症することも知られています。これは先程お話ししたカテコールアミンというホルモンとは別にコルチゾールというホルモンが上昇するためと言われています。ステロイドの飲み薬だけでなく、塗り薬、吸引薬、注射などでも引き起こす可能性もあるため、注意する必要があります。
ステロイドの内服薬は膠原病のような身体の病気のためにどうしても辞めれない方が多いので、中々この目の病気のコントロールが難しいんですね。眼科以外の科と連携することが必要になってきます。
妊娠中でもおこりえます。これも妊娠中はACTHというホルモンが上昇する結果コルチゾールの分泌が高まるからと言われています。
ただほとんどの場合、3〜6ヶ月で経過を観察しているうちに自然と回復するんですが、慢性化したり再発を繰り返したりする場合には、治療が必要となったり、視力が改善しなかったりする場合もあります。
診断としては蛍光眼底検査といいまして、造影剤を使った点滴をして目の血流の状態を把握します。すると目の奥から造影剤が漏れてくる部位が確認できます。自然治癒が多いのですが、黄斑の水ぶくれが長期に及ぶと、水がひいた後にも視細胞の機能が回復しないことがあるため、光凝固といって目の中の漏れてい部位にレーザーでの治療をしたりします。内服薬としては循環改善剤やビタミン剤などの内服を処方する事が多いです。
中心性漿液性脈絡網膜症の原因はこのようにストレスのような精神的な関与が悪影響を与えているといわれているため、この病気の治療や予防には、本当は時間をとって、ゆっくり身体と心を休めるのが一番だともいえます。十分な休養は、心身のリフレッシュとともに、網膜色素上皮バリア機能の改善が期待できます。
ストレスでなる病気はよく知られているものだと胃潰瘍だとか蕁麻疹とかあとうつ病、耳だと突発性難聴とかあります。目に関しても実はこういった病気があるんですね。私も仕事上どのようなお仕事されているか、夜しっかり寝れているかなど生活背景をしっかり聞いているのですが実際この病気になられる人は凄く責任感が強く、仕事でも重要なポジションをされている方が多い印象があります。この病気は再発することがあります。いくら眼の病気が治ったとしても、ストレスをうまくコントロールできないと再発するんですね。また再発しても自覚症状がない場合があるためしっかり眼科に通院されることをおすすめいたします。
(2021.6.6)