〒500-8847 岐阜県岐阜市金宝町1-11

ブログ BLOG

198.目のために知っておきたい腸内環境について

今回は目のために知っておきたい腸内環境に関してお話しいたします。

目は、言うまでもなく私たちがモノをみるための大切な臓器ではありますが、目の健康は目薬などで「目だけ」をケアすれば万全というわけではなく、腸を含めた全身の健康状態が大きく影響します。

今回の話は私の新刊になりますが、一生目が見える人のすごい習慣の78Pの内容となりますが、お持ちの方はそちらも併せてご覧ください。なければこちらの動画をみていただければと思います。

腸の環境がなぜ目の健康に関わるのか?と思われた方もいるかもしれません。

腸は口から入った食べ物の消化や栄養の吸収を行う重要な役割をしています。目に大切な栄養素というと代表的なものは緑黄色野菜や卵などに多く含まれているルテインのような抗酸化物質ですが、これらは腸で吸収されます。腸内環境が乱れていると、栄養素の吸収率が悪くなります。せっかくサプリメントなどでルテインを摂取しても十分に目に活用されないことがあります。

そして腸は、単に食べたものを消化して栄養を吸収するだけの場所ではありません。実は、脳に次ぐほどたくさんの神経細胞が集まっていて、「第二の脳」とも呼ばれています。免疫の機能やホルモンのような神経伝達物質を作ったり、さらには全身の炎症反応にまで関わる重要な役割もあります。腸内環境が悪化すると、栄養の吸収率が低下するだけでなく、有害物質が体内に広がることで全身の炎症リスクが高まります。結果



として目にも影響を及ぼす可能性が考えれていて、ドライアイ、ぶどう膜炎、加齢黄斑変性症、緑内障など目の病気が発生しやすくなる可能性が報告されています。

このように、目と腸は一見無関係に見えるかも知れませんが、実は非常に密な関係があります。

腸内環境を整えて全身の炎症レベルを下げるということは、これらの病気の予防にもつながり重要であると考えられています。

近年、目と腸との関連性についての研究が進んでいて、腸内環境の重要性がますます認識されるようになりました。今回は、腸内環境を整えるために知っておきたい生活習慣についてお話いたします。

腸内には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌という3種類の細菌が存在しています。

これらの菌たちがバランスよく存在する状態が「良い腸内環境」と言います。

腸内環境が乱れるとどうなるのでしょうか?

毎日の食生活が乱れていたり、ストレスがたまったりすると、腸内の善玉菌が減り、悪玉菌が増えるようになります。 こうなると



腸の粘膜(腸の壁)が弱くなり、体内には存在しないはずの有害な物質が漏れ出るようになります。 この現象を「リーキーガット」と呼ばれていますが、全身に炎症が広がる原因となります。 炎症が続くと、様々な目の不調につながります。

具体的にどのような影響があるのかというと

①栄養の吸収力が低下します。ルテインやゼアキサンチンは、腸内で胆汁酸と結合して吸収されます。腸内環境が乱れると、胆汁酸の分泌量が減少し、これらの栄養素の吸収率が低下してしまいます。

また

②炎症のリスクが増加します: リーキーガットによって腸から漏れ出した有害物質は、血液を介して全身に運ばれて、目の組織に炎症を引き起こします。腸



による影響が目に影響を与えるということを腸眼軸と言われたりしていますが、ドライアイ、ぶどう膜炎、加齢黄斑変性症、緑内障など、様々な目の病気の発症リスクを高める可能性が報告されています。

そして

③免疫機能の低下がします: 腸内細菌は、免疫細胞を活性化させる働きがあります。腸内環境が悪化すると、免疫力が低下し、結膜炎などの目の感染症やぶどう膜炎やドライアイなどの炎症性疾患のリスクが高まります。

また、

④神経伝達物質にも影響します: 腸内細菌は、セロトニンなどの神経伝達物質の合成にも関わっています。セロトニンとは、幸せホルモンと呼ばれていますが、緑内障



には視神経の保護作用があるのではないかと期待されています。腸内環境が乱れると、セロトニンの分泌量が減少し、視神経の機能低下に繋がる可能性があります。

次のような症状がある方は腸内環境がよくないかもしれません。

1つ目お腹の違和感を常に感じている

お腹が張ったり、ガスが溜まる、腹痛などの症状がある。

2つ目便通に異常を感じている

便秘が続いている、または下痢と便秘を繰り返していることないですか。

3つ目肌にトラブルがある

腸内環境と肌の状態は密接な関係があります。そのため吹き出物や肌のかゆみ・赤みなど、肌荒れが起こる場合があります。

4つ目疲労感や免疫力の低下を感じている

腸内環境は免疫力とも密接に関係しているため、風邪を引きやすくなったり、慢性的な疲労感が感じられることがあります。

5つ目気分がすぐれない日が多い

腸は「第二の脳」と呼ばれているように様々なホルモンの合成にかかわっています。セロトニンの分泌の低下は、視神経の機能低下だけではなく、ストレスや不安、うつ症状と関連していることがあります。

このうち2,3個以上当てはまってそれが持続しているということなら腸内環境の乱れが全身の健康に影響している可能性があります。1つの症状しかあてはまらないとしても、ずっとお腹が痛いとか症状が重く長引いている場合腸内環境が影響しているかもしれません。

腸内環境が悪くなる原因は食生活の乱れやストレス、運動不足、抗生物質の長期の内服などが関係していますが、そもそも加齢によって腸内細菌の種類や数が変化しますし、腸の動きも低下したり様々な要因が複合的に絡み合って悪くなりやすいです。

腸内環境をよくするために次の4つのことを意識してみてください。

一つ目、バランスの良い食事を心がけてください。具体的には発酵食品や食物繊維を取り入れることや水分を十分に取るようにしてください。発酵食品は、微生物の働きを利用して作られた食品で、特に日本では食文化においてヨーグルト、納豆、キムチ、味噌など様々な発酵食品があります。これらは、善玉菌を補うのに最適です。

また食物繊維も腸内環境を整えるために欠かせない栄養素です。食物繊維は、野菜や果物、豆類などに多く含まれている栄養素で、消化されにくいためそのまま大腸まで届きます。大腸に届いた食物繊維は、「善玉菌」のエサになって、短鎖脂肪酸と呼ばれる私たちの身体に非常に有用な物質が作られます。

私達の身体はこの善玉菌が作り出す短鎖脂肪酸によって生かされているといっても過言でないぐらい非常に重要なものです。目にとっても重要で、最近



の緑内障の研究では、短鎖脂肪酸の中でも特にブチル酸、酪酸が注目されています。酪酸は抗炎症作用や神経保護効果が期待されていて、眼圧の調節や視神経の保護に関与している可能性が報告されています。

次のような食材を積極的に摂ると腸内での酪酸の産生が期待されます。

ブロッコリー、ほうれん草、バナナといった果物や野菜、玄米、オートミール、全粒パンなど全粒穀物、また、近年行われた研究では、アーモンド



の摂取が大腸内に酪酸を有意に増加することが確認されています。これらは腸にいいだけでなく、目にも大切な栄養素を多く含んでいるので積極的に取りたい食材です。

また、水をこまめに飲むことも、腸の働きに大切です。日本の慶応大学と北里大学の研究によると腸内環境の維持に飲水が重要であることを報告しています。飲水不足が腸内環境を悪化させ、病原菌を排除する能力を低下させるということを発見しています。1日1.5リットル程度を目安に飲水するのがよいとされています。

このような食生活に加えて

2 適度な運動をしてください

毎日のウォーキングや軽いストレッチ、ヨガなどは、腸の蠕動運動を活性化します。いくつかの研究によれば、適度な運動は腸内環境を改善するだけでなく、先ほどの酪酸を産生する善玉菌の増加につながることが報告されています。 普段、エレベーターではなく階段を使ったり、短い距離なら歩くように運動するだけでも効果があります。運動は、血流を良くする効果もあり、全身の健康はもちろん、腸内の善玉菌も元気になります。目への酸素供給や栄養の吸収も促されるので、結果として目の健康に良い影響を与えます。

そして3つ目

3 十分な睡眠と規則正しい生活をしてください

睡眠不足は、自律神経のバランスを乱すので、腸の働きを悪くする原因になります。毎日7〜8時間の睡眠を確保するようにしてください。多くの研究では、7~8時間程度の睡眠が、免疫機能の維持や炎症の抑制、さらには善玉菌などの腸内細菌のバランスの維持に有利であると報告されています。

また、毎日同じ時間に起きて、決まった時間に食事を摂ることで、体内時計が整って、腸内の働きも安定します。

4つ目はストレスとの付き合い方です。

ストレスは腸内環境を乱す大きな原因です。趣味の時間を増やしたり軽い運動、深呼吸などでストレスを解消する習慣を取り入れるようにしてください。ストレスがなくなると、体全体の炎症も抑えられ、目の疲れや不調の改善にもつながります。

ここまで、腸内環境を整えるためのポイントをお話しましたが、腸内環境を整えることは、目の健康だけでなく、全身の健康にも様々な良い影響をもたらします。

腸内環境は、私たちが日々食べるものや生活習慣によって大きく左右されます。 腸内に住む善玉菌をしっかり育つことで、免疫力があがり、体内の炎症が抑えられ、脳や目にも良い影響があります。 目の健康は、目薬だけでは充分でないことがあるので、体全体のバランスが大切です。 腸内環境を整えることは、全身の健康にもつながります。できることから始めてみてはいかがでしょうか?

今回の話をまとめますと

毎日の食事にヨーグルトや納豆などの発酵食品を取り入れ、野菜や果物、玄米などの全粒穀物から十分な食物繊維を摂取すること。それに加えて、こまめな水分補給、適度な運動、規則正しい生活リズム、そしてストレス解消に努めることが、腸内環境を整えるための基本です。 これらは、腸内での善玉菌を活性化させ、体内の炎症を軽減するだけでなく、必要な栄養素をしっかり吸収させるためにも大切です。 結果として、ドライアイ、加齢黄斑変性症、ぶどう膜炎、緑内障の予防にもつながる可能性があります。

案件ではありませんが、眼科ではわかもと製薬から出されているオプティエイドEDというドライアイに着目したサプリメントがあります。

こちらはルテインやDHA、EPA、ビタミンCなどの目の健康に役立つ成分も入っていますが、乳酸菌が入っているのが大きな特徴となります。ドライアイなのに何故乳酸菌が入っている?と思いますよね。これはまさに腸内環境にアプローチしているからなのですが、ドライアイは、目の表面の炎症が原因の一つと考えられています。実際研究では、乳酸菌によって腸内環境を整えることで、涙腺の機能が正常化し、涙液の分泌量が増加する効果が報告されています。ドライアイというと目薬で何とかしようと思われる方が多いと思いますが、このような腸内環境との関連性にも注目されています。ドライアイに悩まれている方は試してみるのもいいかもしれません。

今回は腸内環境と目に関してお話しいたしました。

(2025.5.9)