結膜炎はバイ菌によるものや花粉などのアレルギーによるものなど原因は様々です。その中で今回は淋菌やクラミジアっていう細菌なんですが、いわゆる性感染症(STD)による結膜炎の話です。
性感染症というと性器に感染が起きるのに何故目に感染症を引き起こすのかと思われるかもしれませんが、目に関しては粘膜が露出してますので、菌が接触することで感染します。すなわち、不衛生な状態の手で目を擦ったりして感染しますので、性感染症が起きた場合は頻回の手指消毒を心掛けて出来るだけ目を触らないようにする事が大切です。
この結膜炎ですが、他の結膜炎と少し違った特徴があります。両眼ともまぶたが腫れ、充血し特に淋菌感染症の方はクリーム状のどろーっとしたいかにもバイ菌に今感染してますというような目脂が出ます。別の言い方で膿が漏れる程出る目ということで淋菌性結膜炎を膿漏眼(ろうしがん)という言い方をする場合があります。アデノウィルス結膜炎も目脂が多く出るため一見似ているんですが、明らかに目脂の性状が異なりとにかく凄い量の目脂が出るんですね。男の人には大概激痛を伴う尿道痛を合併してますので、もしかしておしっこするところが痛くないですか?最近夜のお店行ったりされましたか?と聞くと大概当たります。もしくは目も症状あるけど、尿道が痛すぎるということで既に泌尿器科に受診されて診断がついている場合もあるくらいです。潜伏期間といいまして、無症状の期間がだいたいどちらも1週間程度あります。
ですから1週間前ぐらいにそういったことなかったですか?と思い出してもらうことになること思います。
この結膜炎を診る事は実は眼科医の中でも稀なんです。様々な菌に対して効きがいい目薬ニューキノロン系の抗生剤の目薬があるんですけど、それにも抵抗するので違うセフェム系の抗生剤の目薬を出したり、内服薬も飲んでもらい治療していきます。経験豊富の眼科医でも診たことがなく別の結膜炎と診断したなんてこともあったようです。
実は昔淋菌が大流行した時期があったんですが、ニューキノロン系の薬剤でほぼ絶滅したんですね、ところが少し残っていた淋菌がニューキノロン系に耐性をつけより強くなって薬剤耐性淋菌として強くなって生き延びたわけです。ニューキノロン系に効かない菌ってよほどなんですよ、それ程優れている抗生剤なんですが優れている抗生剤であるがゆえ医療会でも多用されてしまってるんですね。淋菌だけでなく耐性がつく細菌が現れないといいなと思ってます。
これらのウイルスが目に入らないようにするためには、やはり基本的な事なんですがウイルスが手に付着した状態で目に触れないということや、しっかりと石鹸と流水で洗い流すということが重要です。この菌市販の抗生剤の点眼はもちろんですが、とにかく薬が効かないのでやっかいな性感染症です。治療が遅れると淋菌性結膜炎の場合角膜潰瘍もしくはせん孔といって角膜がえぐれてやがて穴があくこともあり最悪失明に至るケースもあります。また、クラミジア結膜炎は慢性の経過をたどり、瘢痕形成する場合がありドライアイを合併するだけでなく角膜障害のために著しい視力低下をきたすこともあります。淋菌と症状と似ていますが、クラミジアの方が症状は軽いです。特に男性の場合は淋病は排尿痛が激しく、膿(うみ)も黄色かかっていて粘りがあります。クラミジアが尿道から前立腺や精巣まで入り込み、前立腺炎や精巣上体炎(精巣が痛み赤く腫れる)になることもあります。女性の場合は卵管炎や骨盤内炎症性疾患(PID)、肝周囲炎などを引き起こします。特に注意しないといけないのは淋菌に感染したまま出産すると、産道を経て赤ちゃんの目に感染することがあります。感染した場合大人と同じように重症な視覚障害を残す場合がありますので、必ず妊婦健診を受けましょう。
淋菌性尿道炎やクラミジア性尿道炎のようなものを合併している場合は尿検査や膣内ぬぐい検査で判定しますが、目の場合は血液検査や目の分泌物を培養したりすることによって診断を確定させます。
このような菌を予防するには性感染症によって起こるものなので、避妊具などを仕様に性感染症から守るということももちろん大切なんですが、基本はこういった状態に関わらず日常から目を触らないような習慣を作ることが大切です。このような結膜炎であれ、ものもらいといった感染症の元凶は目を擦ることによって発症する事がほとんどです。なので私自身も目を触りたくなることは多々あるのですが、目の周りにゴミがついたなどどうしてもという場合は手指消毒をした上で、最小限の範囲のみ触るようにしてます。
ところで淋菌ってなぜ淋って書くんでしょうか?一説によるとこの病気にかかると誰も相手してくれなくなり淋しくなるなどと言われるようになったみたいです。なるほどと思いました。今回もは通常の結膜炎と違った性感染症による結膜炎に関する事の話でした。結膜炎は自分だけがなるならまだしも、お風呂やバスタオルを共有することにより周りの家族、場合によってはパートナーにも感染をうつす場合があるので注意が必要です。性感染症でなる目の病気は実は梅毒とかHIVも問題になる事がありますが、それはまた別の機会でお話できたらと思います。
(2021.6.19)