今回は白内障手術術後に作る眼鏡に関してお話しいたします。白内障手術で術後の過ごし方を説明している時によく聞かれるのが、眼鏡に関するご相談です。
“眼鏡はいつ頃作ったらいいのですか?”
“眼鏡には遠近両用や老眼鏡など色々ありますが、どのような眼鏡がいいのでしょうか?”
“私は網膜に病気あるけど術後何か特別な眼鏡をしないといけないのでしょうか?”
白内障手術を検討されている方なら一度は術後の眼鏡に関してどうしたらいいのかなと思ったことがあるのではないでしょうか。
単焦点眼内レンズを選ばれた方なら基本的に眼鏡が必要になるので、眼鏡の選び方をきちんと知っておいた方がよいです。今回は白内障手術術後の眼鏡のポイントに関してお話しいたします。
白内障手術は濁ったレンズを人工のレンズに取替えて、視力を回復させます。新しいレンズに変われば遠くも近くも昔のようにみえるかな?術後は眼鏡がいらなくなるのかな?と期待される方もみえますが、残念ながら単焦点眼内レンズを選ばれる多くの方は、その後の生活にメガネが必要になります。
これは天然の水晶体
と人工のレンズは機能が違うからです。天然の水晶体は伸びたり縮んだりしてピントを合わせています。水晶体の伸びたり縮んだりという動きが見える幅をつくっているわけですが、人工
のレンズは伸びたり縮んだりしません。ピントが合う範囲が限定的なため術後は眼鏡が必要になります。
眼鏡作成でのポイントは
- 眼鏡を作る時期いつなのか
- どのような眼鏡を買えばいいのか、ということになります。
まず手術後眼鏡をいつ作ったらいいのかということに関してですが、手術の創口の影響で乱視の程度が変わりますし、目の中に入れたレンズ
がしっかり目の中で固定するのに2カ月程度時間がかかります。急いで眼鏡を作っても度が変わる可能性があるので、クリニックによってはしっかり安定するまでは眼鏡は待ってくださいねと言われることもあるかと思います。
ですが、術後2ヶ月も眼鏡がないと不便ですよね。
手元にピントを合わせている方は車の運転のときは眼鏡をしないと遠くがはっきりみえませんし、逆に遠く合わせにしている方は手元が見えません。
今まで使っていた眼鏡はもう使えませんかと聞かれることも多いですが、手術前後で度数があまり変わらない方は今まで使っていた眼鏡である程度見えるかもしれないのですが、多くの方は以前の眼鏡では合わなくなります。
私のおすすめとしては、とりあえずの眼鏡を術後1週間程度で作ることです。
手術してまだ1週間しかたっていないのに術後すぐ眼鏡をしても度が変わって使えなくなるのではないですか?と聞かれることもありますが、眼鏡屋さんによっては半年や1年の間はレンズの無償交換してもらえるところがあるので、まずなんとなく合う眼鏡を作っておく、そして保障の間でレンズを変えるという事がよいと思います。現在白内障手術は小切開で低侵襲なので、術後1週間もすればその後極端に度が変わることはあまりないです。とりあえずの眼鏡で作ったものでそのまま過ごせてしまう方もいます。
次に、100均の老眼鏡でもいいですか?100均のものだと目を悪くしますか?という質問です。これは困らなければそれでいいですし、100均のものをしているからといって目を悪くするということはないですが、注意点があります。市販の老眼鏡は左右の度が全く同じです、また乱視の度数も入っていません。通常左右全く同じ度数の方はいませんし、わずかに差がある方がほとんどです。乱視がある方は乱視入りにした方がくっきり見えるはずです。市販のもので見にくさを感じている場合は無理せず眼鏡屋さんできちんとあっているものを作ってもらった方がよいです。
老眼鏡は便利ではありますが、注意点があります。本を読むときだけ老眼鏡を使う、値札を見るときだけ使うといったように使用が限られているなら老眼鏡でいいと思います。ただし、パソコンを使ったり書類を書いたり、何でもかんでも老眼鏡だけでやり繰りするのはおすすめしません。パソコンや、本を読んだりという距離はそれぞれ違います。老眼鏡はピントが合う距離が限られています。老眼鏡でパソコンをするとなるとだいぶ画面に近づかないと見えないはずです。
個人的には累進眼鏡といいますが、老眼鏡というよりは遠近や中近、近々など幅広い部分にピントが合うレンズをおススメしています。遠近両用レンズとは、1本で遠くから近くが見えるレンズのことです。手術前から使われている方も多いのではないでしょうか。
レンズ
の上部分と下部分で良く見えるところが違うレンズが入っていて視線を上下に動かすことで、遠くも近くも見ることができます。そのため、1本のメガネで遠くも近くもはっきり見ることができます。じゃあ遠近が1本あればそれでいいのでは?と思う方もいるかもしれませんが、遠近両用レンズ
は構造上左右にどうしても歪みが発生する部分ができて手元の視野ほど狭くなる性質があります。また
近くの見え方を重視がするほど揺れや歪みも強くなります。
白内障手術で使用する単焦点眼内レンズは調節力がゼロになります。近方にもきちんとピントが合うように設定すると近用度数が強めの遠近が必要になります。
しっかり近くも見たいといきなり高加入タイプを選んでしまうと、歪みが強くてかけられないから使えないとなることがあります。これが遠近両用の眼鏡を作ったのにかけれなかった方でよくあるパターンとなります。
遠近両用
のレンズで知っておきたいことは色々種類があることです。同じ度数であってもレンズのグレードによって歪み具合が全然違います。このタイプ
は歪みが強くて合わなかったけど、歪みが少ないタイプにしたら大丈夫だったということがよくあります。
やはり歪みが少ないレンズほど値段が高くなる傾向にありますが、体験すると同じ度の眼鏡でも全然見え方が違うとわかってもらえると思います。遠近両用は1種類だけではないということを知っていてください。
ただし、いいレンズをいれたとしても遠近にもやはり限界があります。遠近両用レンズのメインはあくまでも「遠く」なので、長時間、近くを見るようなお仕事には向かない場合があります。
2週間程度使っても慣れない場合は、度数を変更してもらうか、または通常の遠方用の単焦点に変更してもらって中近との二つ持ちでもよいと思います。個人的には中近との二つもちが便利なのでおススメです。
遠近両用メガネはよく耳にするとが多いと思いますが、中近という眼鏡があるのをご存知ですか?
中近両用
メガネはそのままですか、中間距離と近方が見やすいメガネです。具体的には中間距離4m前後から手元30〜40cmの視野が広くて、遠近
と違って歪みが少ないのが特徴です。室内用眼鏡ともいわれています。なんとか遠近1本でやり過ごそうとするより、遠方用と中近と二つもって外出時は遠近で室内は中近でと使い分けると快適になると思います。
眼鏡を色々かえたけど、見にくさを感じている場合、眼鏡の度数が問題でない場合があります。
白内障手術後に複視といいますが、『モノが二重に見えるようになってしまった』と感じる場合もあります。モノが二重に見えるというと通常多くの方は乱視のせいじゃないのかといわれる方もいると思いますが、二重にみえるのは乱視だけではなく斜視
が原因の場合もあります。白内障の手術で斜視になってしまったというのはではなく、元から斜視があって、白内障が強いまま放置していると長期間斜視の症状が感じにくくなることがあります。手術で白内障が取れて見え方がよくなると、かえって斜視の症状が出てしまうケースが時々あります。
検査してみると、メガネの度はあっている、けど左右それぞれの目線が一致していない、すなわち斜視の影響が見にくさの原因になっている場合があります。
その場合、斜視を補正するプリズム眼鏡というものがありますが、プリズム眼鏡をすると見え方がスッキリすることがあります。
眼科では
ものがだぶってみえる複視を単眼複視と両眼複視と二つに分けます。片目ではダブってみえるけど、もう片目ではだぶっていない、このように片目だけでみてダブりを感じるものを単眼複視といいます。主に乱視などが影響しています。一方で片目ずつでは大丈夫だけど両目でみるとダブってみえる症状を両眼複視といいますが、この場合は斜視が関係している場合があります。まれに頭の中の動脈瘤など頭に病気がある場合もあるため、両眼でだぶりを感じたときは片目ずつで感じるか両目でみて感じるか確認してみてください。
また眼鏡のオプション
としてカラーレンズを入れるのもいいと思います。白内障手術をしたあとに物を見ると、これまでよりもまぶしさを感じるようになります。
これらは水晶体をレンズに交換したことによって濁りがなくなり、目に入る光が増えたことが理由になります。白内障が進行して濁りが多かった人ほど、光をまぶしく感じる傾向にあります。
カラーレンズは光のまぶしさを緩和させることができます。今だと調光眼鏡
といって、紫外線の量によってレンズの濃さが変化するレンズがあります。紫外線の量が多い場所ではレンズが濃い色に、紫外線の量が少ない場所では普通のメガネのようなクリアな色になります。屋内用、屋外用と分けて使用する必要がなくて便利ですし、なんといってもおしゃれです。今の眼内レンズ
は着色眼内レンズといって、ある程度紫外線をカットする機能をもっているので、紫外線に対する網膜への影響はそれほど怯える必要ありませんが、紫外線はドライアイや翼状片といった目の病気の原因になります。そのため術後も通常通り紫外線に気を付ける必要があります。
このように眼鏡にはポイントが色々あります。主に白内障手術後に眼鏡が必要になる方は保険での単焦点眼内レンズを選ばれた方にはなりますが、多焦点眼内レンズを選ばれた方も眼鏡をした方がいい場合があります。多焦点眼内レンズも患者さんにとっては近くの見え方にみにくさを感じることがあるからです。無理せず、老眼鏡を使った方がいいケースもあります。
また、多焦点眼内レンズ入れたそのときはよくても年齢とともに瞳の大きさが小さくなったり乱視の影響が出ててきて見え方が変化してくることもあります。多焦点眼内レンズをいれたからには眼鏡をしたくないと言われる方もいますが、無理せず近用眼鏡を使用した方がいいこともあります。よければ参考にしてください。
今回の話をまとめますと
- 白内障手術後、1週間程度でとりあえずの眼鏡を作りましょう。(無償交換ができる眼鏡店がベターです)
- 遠近両用の眼鏡は1種類だけではなく色々グレードがあります。
- 遠近は歪みや近くの見え方に不満になる場合があるので中近と合わせてもつことがおすすめです
- まぶしさを感じる場合カラーレンズや調光眼鏡がおすすめです。
- 多焦点眼内レンズでも近用眼鏡をした方が近くの見え方が楽になること多いです。
という5点です。
白内障手術後は眼鏡が必要になるのでその眼鏡選びは、手術後の生活を快適にする上でとても重要です。今だとおしゃれな眼鏡がたくさんありますので、自分に合う眼鏡を探して頂いてよい眼鏡ライフがおくれたらいいですね。
今回は白内障手術後の眼鏡選びのポイントに関してお話しいたしました。
(2024.11.26)