〒500-8847 岐阜県岐阜市金宝町1-11

ブログ BLOG

182.バナナと目の関係

今回はバナナを食べると目にどのような健康効果があるのかということに関してお話いたします。バナナはビタミンやミネラル、食物繊維など豊富に栄養素を含む果物で身体に良い食材としてよく取り上げられますが、目の健康をサポートする栄養素も豊富に含まれています。

今回はバナナに含まれている栄養素はどのような点で目によいのかということに関してお話いたします。
バナナはコンビニなどで売られていますが、束でなくて1本ずつ売られているのもいいですね。私もだいたい毎日どこかのタイミングでバナナを食べています。手を汚さず手軽に食べられる、腹持ちがいいというのも大きな理由になりますが、不足しがちな栄養素が豊富に含まれているということもあります。

バナナの何がいいのかというと

①低GI食品で血糖値の変動が緩やかです。
甘いので、血糖値が上がってよくないというイメージをお持ちの方も多いですが、血糖値が上がりにくい食品です。これを低GI食品といいます。
②カリウムやマグネシウムなどのミネラルが多いです。
③エネルギー代謝に必要なビタミンB群が多いです。
④食物繊維が含まれているので腸内環境にもよいです。
⑤強い抗酸化作用があるポリフェノールも多く含まれています。
⑥リラックス効果も期待できます。

これらは身体にとっても必要な成分ですが、目にもよいです。

それぞれみていきます。

まず一つ目に、バナナは糖質も多く含まれていますが、食物繊維が多く含まれているので血糖値の変動が緩やかな食材です。食後の血糖値が急上昇と急降下を起こす状態を「血糖スパイク」といいますが、国内の臨床試験


では朝にバナナ食べる人は食べない人と比較して、血糖スパイクが有意に低いという結果が出ています。また、朝食時に2週間バナナを継続摂取することで、血糖値が下がる傾向にあったという結果も出ています。

近年健康トラブルの原因として注目されているものに糖化というものがあります。糖化とは、体の中でエネルギーとして使用されなかった余分な糖が身体中のタンパク質と結びついて細胞や組織を劣化・損傷させる現象です。私達の身体の多くの組織はたんぱく質で出来ているので糖化による影響は至る所でおきますが、特に血管や臓器に対する影響は深刻です。心筋梗塞や脳梗塞、認知症、がんとの関連も指摘されています。

このような糖の影響は糖尿病や予備軍のような方だけの問題で“私はそうではないから関係ない”と思われている方もいるかもしれませんが、糖化は病気がない健康の方にも注意しないといけないことが明らかになっています。

目も糖化による影響をうけます。




角膜、水晶体、網膜、視神経全ての部分がターゲットになるので様々な目の病気の原因になります。

白内障は水晶体を構成しているクリスタリンというタンパク質が糖化の影響を受けて濁って、白内障が進行します。糖化反応はよくパンケーキ



にたとえられます。熱すると茶色く焦げたときの、焦げとも表現されますね。

この焦げた部分が糖化で、体内で起こるとよくありません。

もともと



水晶体は水晶と名前がついているように透明ですが、糖化反応が




進むとこのようにパンケーキと同じように茶色く変性して劣化します。このように糖化は白内障進行の原因になります。

また糖化は黄斑部を栄養している血管に炎症を起こして、加齢黄斑変性症のリスクにもなります。

また緑内障との関係も報告もされています。日本の研究



では糖化の進行度を示す指標AGE値が高い人ほど緑内障の病型の中で、落屑緑内障という緑内障との関連性が高いという報告もされています。

このように糖化による目への報告は様々されていますが、リスクを避けるために低GI食品を中心に選ぶこと、そして食物繊維が多い食材を摂ることが推奨されています。

バナナは水溶性食物繊維、不溶性食物繊維が多く含まれている血糖値の上がり方が緩やかな低GI食品です。もちろん3本、4本と食べ過ぎては意味がありませんが、甘いお菓子をやめてバナナに変えてみる、朝にご飯やパンの代わりにバナナを取り入れると血糖の急上昇が起きにくくなる可能性があります。

二つ目、バナナにはカリウムやマグネシウムなどのミネラル成分が多く含まれています。

カリウムには、余分なナトリウムを排出して血圧を下げる作用があります。

高血圧を放置すると、血管が詰まったり破れたりして、脳卒中や心筋梗塞になるという危険なイメージがあると思いますが、眼にとっても血圧の管理は重要です。高血圧



を放置すると網膜静脈閉塞症や高血圧網膜症など眼底出血を起こすことがあり、ひどいと失明に至るケースもあります。目の病気は色々怖い病気がありますが、致命傷になりやすいのがこのような血管によるトラブルです。バナナは高血圧対策に役立つ果物です。

またマグネシウムも他の食材と比べて多く含まれています。

マグネシウムは必須ミネラルで、カルシウム、カリウム、ナトリウムに次いで体内で4番目に多いミネラルです。

これらのミネラルはすべて不可欠ですが、特にマグネシウムは身体の中で重要な働きをしています。

目の場合どこにマグネシウムが含まれているかというと、




角膜、前房、水晶体、硝子体、網膜に存在します。すなわち眼球のすべての部分に高濃度にマグネシウムが含まれています。

そのため欠乏すると



ドライアイや白内障、緑内障、糖尿病性網膜症などいくつかの眼疾患に影響します。

例えば、水晶体は白く混濁しないように酵素が含まれています。

還元型グルタチオンや、スーパーオキシドジスムターゼやカタラーゼという活性酸素を分解する酵素があります。

これらの酵素がうまく働かないと光刺激などによる酸化ストレスから水晶体は混濁して白内障になってしまいます。マグネシウムは酵素の働きを活性化させる重要な役割があります。

緑内障患者さんはマグネシウムが欠乏している方が多いという報告もされています。マグネシウム



を補給することで眼血流が回復して視野が少し改善したという報告もあるぐらいです。

糖尿病網膜症



がある方はマグネシウムの血中濃度が低いほど網膜症がより重症な傾向にあるいう報告がされています。マグネシウムはインスリンという血糖値を下げるホルモンの働きを活性化させますが、マグネシウムが不足しているとインスリンが充分に働きません。これが血糖コントロール不良につながってより重症な糖尿病網膜症につながる可能性が指摘されています。

多くの方はだいたい1日あたり50ー100mg程度マグネシウムが不足しているとされています。

バナナはマグネシウムの含有量が多く、1本で30mg程度含まれていて他の食材と比べて多いです。バナナ1本でだいぶ補う事ができます。

3つ目、バナナにはビタミンB群が多く含まれています。

ビタミンBは代謝に関わるビタミンで目の健康を維持するために不可欠な水溶性のビタミンです。ある研究



ではビタミンB群をしっかり取ることで加齢黄斑変性症のリスクを35-40%低下させたというような事も報告されています。これはビタミンBが十分にないと体内で悪玉アミノ酸ともいわれていますが、ホモシステインというアミノ酸が蓄積して、黄斑部に炎症を起こして、加齢黄斑変性の進行を促す可能性が考えられているからです。

ホモシステイン



はビタミンB6とB9のようなビタミンB群が調節しています。このようなビタミンB群が多いのもバナナの特徴です。

4つ目、バナナには食物繊維、オリゴ糖、レジスタントスターチといった腸によい成分が豊富に含まれています。

これらは人の消化酵素では分解されずに、そのまま大腸まで届いて、腸内にいる善玉菌のエサとなって、短鎖脂肪酸という重要なエネルギー源を作ります。短鎖脂肪酸は腸の主要なエネルギー源で腸内環境を維持するために重要ですが、全身の健康維持にも大きく関わっています。

腸内環境と糖尿病、腸内環境とアトピー性皮膚炎、腸内環境と心筋梗塞など“一見それって腸と関係あるの?”と思うような疾患との関連性が明らかにされています。これは、腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸が、血液を通じて全身に影響を与えることが分かってきたからです。その中で目への影響も関心が集まっています。

腸内環境が悪化すると、腸内で慢性的な炎症が起こりやすくなります。この炎症が全身に広がると、目にも影響



を与えて、加齢黄斑変性症などの眼疾患の発症リスクを高める可能性が指摘されています。

また腸は「第二の脳」と呼ばれるほど、免疫系と深く関わっています。腸内環境の乱れは、免疫系のバランスを崩して、アレルギー性結膜炎などのアレルギー疾患や、自己免疫疾患



であるぶどう膜炎の発症リスクを高める可能性も指摘されています。

バナナには食物繊維、レジスタントスターチ、オリゴ糖など善玉菌の餌となる栄養素をたくさん含んでいます。

5つ目は、バナナには必須アミノ酸の1つであるトリプトファンが多く含まれています。トリプトファンは幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの材料になります。セロトニンは、睡眠の質の向上、気分の安定、食欲を抑える作用もありますね。そのためバナナはダイエットにもよいと言われたりしてます。また作られたセロトニンはメラトニンいう眠りを促すホルモンも合成します。

ストレスや睡眠不足は眼精疲労から、まぶたの痙攣、ドライアイ、黄斑症、緑内障といった目の病気に影響します。ストレスをうけると自律神経が乱れて交感神経という緊張・興奮を促す神経の緊張状態が続くようになります。目の筋肉の緊張状態が続くと、瞼の痙攣をおこしたり、ピントが合わなくなって眼精疲労の原因になります。瞼が痙攣するということで受診される方多いですが、多くはストレスが原因です。またストレスによって交感神経が優位になると涙の分泌量も減るのでドライアイが悪化しやすいです。

緑内障の中でも日本人に多い正常眼圧緑内障はストレスと関係が深いとされています。

ストレスは自律神経のバランスを崩して、交感神経が優位になりますが、交感神経優位になると血管が収縮します。視神経への血流が低下して、酸素や栄養供給が低下する可能性があります。そのため寝不足、ストレスはよくない、一方で自律神経のバランスを整えるために瞑想や適度な運動習慣は緑内障にもよいことで知られています。

バナナには心を落ち着かせるホルモン、セロトニンの材料となるトリプトファンが多くその合成に必要なビタミンB6もしっかり含まれています。

このようにバナナは血糖値を抑える働きやマグネシウムやビタミンB群が多く、食物繊維、オリゴ糖、レジスタントスターチという善玉菌の餌となる物質や気分を落ち着かせるトリプトファンなど目にもよい成分を多く含んでいます。

一日に1〜2本程度(200g)のバナナの摂取は不足しがちな栄養素を摂取できるのでおすすめです。

ですが、体調や持病によっては、食べる量を制限する必要があります。

まず腎機能障害がある場合は注意してください。

バナナにはカリウムが多く含まれます。腎機能が低下している場合、尿中にカリウムの排泄ができなくなり、高カリウム血症になります。カリウムの制限がある場合は摂取を控えてください。

また糖尿病の場合は摂取量に気をつけてください。糖尿病患者さんもバナナは食べる事ができますが、食事全体に含まれる糖質の量に配慮する場合があるため主治医に相談するようにしてください。

今回の話をまとめますと

①バナナは糖質が多いですが、食物繊維が多いため低GI食品です。

➁マグネシウムは酵素の働きを活性化させます。目の健康維持に欠かせないミネラルですが不足しがちです。

➂ビタミンB群が多く、身体に必要なアミノ酸の合成を調節しています。

④食物繊維、オリゴ糖、レジスタントスターチといった、腸内環境をよくする物質も多く含んでいます。

⑤幸せホルモンと言われるセロトニンの材料であるトリプトファンを多く含んでいます

という5点です。バナナはルテインのようなカロテノイドは多く含んでいませんが、眼のために不足しがちな栄養素を多く含まれているのでおススメです。栄養の補給はサプリメントではなくできるだけ食事からの摂取が基本です。良ければ参考にしてください。

今回はバナナに含まれている栄養素に対する目への効果に関してお話させていただきました。

(2024.10.29)