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169.白内障が進んでいるサイン

今回は白内障が進んでいるサインに関してお話しいたします。

白内障を引き起こす主な原因は加齢で、80代を迎えるとほぼ全ての方に発症します。

白内障の代表的な症状はというと多くの方が視力低下、すなわち眼鏡をしても0.5とか0.4とか視力が落ちた状態を思い浮かべると思います。白内障=見にくくなる病気だというイメージがあるからだと思いますが、実は白内障の初期段階では視力が落ちる事はほとんどありません。中には初期から視力が落ちていくタイプの白内障もありますが、多くの加齢性の白内障はある程度進まないと視力は落ちません。

そのため健康診断などの視力検査で引っかからないから白内障ではないというわけではないので注意してください。白内障は視力が良くても、見にくさを感じたり、眩しさを感じたり、二重に見えたり様々な症状を引き起こして生活に影響している事があります。実際視力が1.0でもその方にとっては視力以外の症状、眩しさや何となく見にくい感じが問題で白内障手術が行われる事があります。

今回はこのような症状があれば白内障になっている可能性が高いですよということに関してお話しいたします。

白内障は水晶体というレンズが混濁していく病気です。

混濁の仕方によっていくつか白内障の種類がありますが、最も多い加齢性の白内障は皮質白内障というタイプの白内障です。皮質白内障



はレンズ全体が均一に濁っていくのではなく、周りから濁っていきます。水晶体の直径は9mm程度、黒目の大きさは3-5mmぐらいです。黒目
の部分で人は見ているので黒目まで濁れば視力は落ちますが、皮質白内障は周りから濁っていくので、視力が落ちていくまでに時間がかかります。そのため視力が落ちている段階では、すでに白内障はだいぶ進行している状態になっています。冒頭で視力検査で引っかからなかったから白内障でないとは言えないといいましたが、その理由はこのためです。初期の段階ではレンズ中央部分の濁りはほとんどないので視力は落ちません。

白内障になると視力が落ちる以外にどのような症状がでてくるかというと。

①コントラストが落ちてくる ②乱視がすすんでいる ③近視が進行して眼鏡の度数がすぐに合わなくなるといった所見です。私達眼科医は目をみるだけで白内障があるかどうかが分かりますが、このような所見も踏まえながら手術が必要かどうかを総合的に判断しています。

コントラストとは白内障の状態を評価する検査の一つで、その名の通り、コントラストを区別する能力です。

例えば



この平仮名五文字、文字の大きさが同じで、背景の色も同じですが、文字の濃さが異なります。文字が薄くなるにつれて、背景との区別がつき難くなっています。皆さんはこの五文字 全てがみえますか?(
3秒程度静止してください)これはあかさたなです 次の5文字は



どうですか?(
3秒程度とめてください) これはははまやらわでした。

簡易検査なので使用されているスマホやPCの画面の大きさ、明るさによっては見え方が異なるのであくまで目安と思ってください。

このような検査をコントラスト検査といいますが、白内障の程度を評価する上で初期の段階でよく使われます。

コントラストが低下すると、物や色の識別が難しくなります。

①昼間の明るいときはしっかり見えても、夕暮れ時や薄暗い場所ではだいぶ見にくさを感じている

➁夜間の運転がしにくい

➂はっきり色がみえなくてよく瞬きをしている

ということはないですか?

コントラスト感度が低下する代表的な疾患が、白内障です。

コントラスト感度が低下しているのに、視力がよいからといって無理していると夜の運転で事故をしてしまったり、信号の色を誤って判断してしまったり、見えにくいのに頑張ってみようとする、それが目の疲れや頭痛、肩こりの原因になる事があります。

中には見にくくて眼科受診した、そこの先生からは白内障はあるけど視力は1.0で良いから大丈夫と言われた、けどやっぱり見にくくて困っていると訴えられて来れれる患者さんもいます。

一般的に白内障手術は視力がある程度低下してから行われますが、患者さんにとっては視力は1.0でもコントラストの低下が生活に影響して手術を行う場合があります。見にくい感覚は人それぞれ違いますよね、0.3ぐらいの視力でも何も不便に感じ無い方もいますし、このように1,0でも手術をした方がよい方もいます。

コントラストの状態は大きく視機能に影響しますが、視力検査のみでは分かりません。視力はいいけど見え方に不満がある方は眼科受診してコントラストの検査をしてみたいと言ってみるのもしれません。

2つ目、乱視が強くなったという状態です。

白内障になると水晶体の内部が白く濁った部分とそうでない部分ができるので乱視がでるようになります。乱視が出てくるとどの距離においてもピントが完全に合わず常にぼやけて見えるようになります。若いときは乱視なんて言われたことがなかったのに年齢とともに乱視がでてきて不便に感じている方もいると思います。

乱視がでてくると常にピントが合わないだけでなく、物が二重、三重にみえる複視という症状がでてくることもあります。これも白内障による乱視の影響です。

乱視と聞くと詳しい方は次のように思うかもしれません。乱視が出てきたのなら乱視用のコンタクトや眼鏡で治せばいいのではないかと思うかもしれません。

しかし残念ながら白内障による乱視は矯正する事ができません。

乱視には二つの種類があります。眼鏡やコンタクトで治すことができる乱視、正乱視と治すことができない乱視、不正乱視があります。白内障はこのうち治すことができない乱視 不正乱視に入ります。そのため眼鏡やコンタクトでは矯正することができません。

コンタクトや眼鏡では治せませんが、乱視の原因が白内障なら手術をすれば治す事ができます。白内障以外に元から乱視があるかたも乱視を矯正できる眼内レンズがあるので、白内障手術は近視や遠視だけでなく乱視も治す絶好の機会になりますね。

3つ目 近視が進んでいるという症状です。近視になると遠くの見え方はぼやけますが、近くの見え方にピントが合います。そのため老眼が治ったような感覚がある方もいると思います。しかしこれも白内障の中でも水晶体の中心にある核が濁るタイプの「核白内障」に多い症状です。水晶体の中心部分が硬くなり、屈折の変化が起こることで近視化します。

これにより、手元が見やすくなり、「老眼が治った」と勘違いするケースがあります。

このような方が安易に白内障手術を行って単焦点眼内レンズで遠方に合わせると、近くが見えなくなるので問題になることがあります。せっかく老眼が治ったのに、白内障手術をしたらまた老眼になってしまったとがっかりされる方も事実みえます。白内障手術を受ける場合レンズの選び方、ピントの合わせ方はとても大切なポイントになるので注意してください。

4つ目 少しマニアックになりますが緑内障の方は視野検査から白内障の影響を捉えることができます。視野検査って色々データが書いてあって難しいですよね。一般の方によく説明するのはこのグレースケール



という部分が多いと思います。グレースケールはこの部分、色の濃淡で緑内障の進行を表しています。白なら




視野障害なし、グレーはやや感度が落ちている、真っ黒な部分は光を感知していない部分です。進行すると白→グレー→黒のように色が変わります。

白内障の影響はどこでみるのか、というとグレースケールではなく視野検査



の下の部分、トータル偏差、パターン偏差という部分です。グレースケールと違ってあまり説明を受けない部分だと思います。

この部分



を簡単に説明するとトータル偏差は緑内障だけでなく白内障などによる全体的な視野障害を表しています。視野に影響を与える要因は当然ですが、緑内障だけではないです。白内障などの状態も視野検査に影響をうけます。でも緑内障の方が視野検査で知りたいのは緑内障のみの影響はどの程度なのかということですよね。緑内障




のみの状態を表しているのがこのパターン偏差というものです。すなわちトータル偏差は緑内障や白内障を含めた全ての状態を表しています。パターン偏差は緑内障のみの状態を表したものと考えてください。

緑内障以外に病気がなければパターン偏差、トータル偏差はこのような感じで同じような結果になります。ところが



トータル偏差が悪くて、パターン偏差があまり悪くない場合がこのようにあります。この場合




緑内障以外に白内障が影響している可能性があります。視野検査をもらっている方いたら確認してみてください。

少し専門的な部分だったので難しかったかもしれません、このあたりをしっかり知りたい方は

2024/4/30発売予定である緑内障に効くたった二つの習慣読んでみてください。詳しく書いています。

このように視野検査からも白内障がどの程度影響しているかを知ることができます。

白内障の症状は視力低下だけでなく様々な症状があり、様々なデータから進行をチェックしています。なんか見にくい、けど視力が1.0だから問題ないのかなと思わず、見え方にストレスを感じているようでしたら早めに眼科受診するようにしてください。その症状が白内障で経過をみれるものならいいかもしれませんが、緑内障など他の病気が発覚すること多々あります。物が二重にみえるのも今回は白内障に関して中心にお話しましたが、頭の中に病気があって、目の神経を圧迫していたということもあります。二重にみえるという症状は片目のみの症状なのか、それとも両眼でみえるのかというのもポイントです。片目でみえるということなら目に問題があることが多いですね。両目でみえるということなら目以外に問題があるかもしれないので場合によってはMRIで頭の検査が必要になることもあります。

治療が遅れると後遺症につながることがあるので、まずは40歳を過ぎたら何も症状がなくても眼科受診するようにしてください。

今回の話をまとめますと

①加齢性の白内障は初期の段階では視力が落ちません。

➁視力がよくても白内障手術を行うことがあります。

➂白内障は視力低下以外にコントラストの低下、眩しさ、複視などの症状がでます。

④老眼が治ったというのは白内障による影響の可能性があります

⑤緑内障の視野検査からも白内障を疑う事があります。

という5点です。

このように白内障は【私は視力が落ちていないから白内障ではない】というわけではありません。白内障の症状は視力低下以外にかすむ、ぼやける、まぶしい、二重にみえるなど様々な症状を伴う事があります。

老眼だと決めつけて眼鏡屋さんにいって、頻繁に眼鏡の度数を変更して何とかしようとする方もみえますが、あまりおススメしません。本当にその症状が老眼なのか、眼科でみてもらうようにしてください。思ってもいなかった病気が見つかるきっかけになるかもしれませんね。

今回はこの症状があれば白内障かもしれないということに関してお話しいたしました。

(2024.6.10)