今回はブロッコリーの目への健康効果にかんしてお話しいたします。
栄養が豊富で野菜の王様と言われているブロッコリーが、2026年度から農林水産省の指定野菜に追加されることになりました。指定野菜とは消費量が多く国民の生活上重要な野菜として国が指定する野菜のことです。
野菜はその年によって豊作・不作などの影響を受けて価格が上下して、特に下落した時は生産者に不利になりますが、指定野菜になると価格が下がったとしても、国が農家に補給金を出して生産量を確保するようになります。
私はブロッコリーが好きで毎朝食べていますが、今後は価格も供給も安定することが期待されるのでこの情報を知った時はとても嬉しかったです。
これまで指定野菜はキャベツ、きゅうり、さといも、だいこん、トマト、なす、にんじん、ねぎ、はくさい、ピーマン、レタス、たまねぎ、ジャガイモ、ほうれんそうと14品目定められていましたが、1974年のジャガイモ以来、約50年ぶりに追加のようです。
ブロッコリーは栄養豊富で、人気のある野菜ですが、目にも凄くよくてぜひとってほしい野菜です。今回はブロッコリーを食べるとどのような目への健康効果があるのかということに関してお話しいたします。
【何故ブロッコリー増えた?】
人口減少などの影響で多くの野菜の生産量は横ばいなのに近年の健康志向の高まりからブロッコリーの需要は増えています。30年前と比べると消費量は2倍近くになっているようです。
野菜なのにたんぱく質も多いですし、低脂質、低カロリーで筋トレされている方はよく食べられているのではないでしょうか。ビタミン、ミネラルを多く含んでいて美容・健康のために食べている方も多いと思います。
【ルテイン】
筋トレや美容によいブロッコリーですが、目にとっても欠かすことの出来ない成分がたくさん含まれています。まずルテインを多く含んでいます。ルテインとは目の中にある水晶体と網膜の黄斑部
に特に多く含まれている成分で、強力な抗酸化作用を持つ天然色素です。
ブロッコリーのような緑黄色野菜やマリーゴールドの色素に多く含まれています。
野菜のような植物は常に太陽からの紫外線を浴びていますが、紫外線から負けないようにルテインのような強力な抗酸化物質を自ら作って身を守っています。このような色素は植物だけに特別なものではありません。私達人間にも含まれていて、植物と同じように水晶体や黄斑を光刺激から守るために働いています。
目は寝ている時を除いて常に光刺激を受けています。光による刺激が活性酸素を発生させてきちんと処理されないと水晶体や網膜にダメージを与えるのですが、ルテインはこういった有害な物質から目を守る作用があります。
アメリカで行われた大規模な疫学研究
でルテインなどを一定量とることが黄斑変性の発症、進行のリスクを抑制させたと報告されています。
ルテインは目にとっても必要な物質なのですが、植物と違って人を含めた動物は合成することができませんし、40歳以降年齢と共に減っていくので積極的に摂取する必要があります。
ブロッコリーは100gあたりに約1.9mgのルテインが含まれています。最も多い野菜のケールは100gあたり20mg程度,ほうれん草だと10mgとそれらと比べると少ないですが、ルテインを補える貴重な野菜です。
1日あたりの推奨量は6mg以上とする研究結果が多いですが、ブロッコリーを100gとると1日に必要量の1/3とることができます。
ブロッコリーはルテインを補う事ができます。
【ビタミンCが多い】
2つ目、ブロッコリーには抗酸化作用の高いビタミンCが多いです。1日に必要なビタミンCは100mg程度ですが、ブロッコリー100gに含まれているビタミンCの量は140mg含まれています、ビタミンCというとレモンを思い浮かべる方が多いと思いますが、含有量はレモンより多いです。ビタミンCは酸化防止のために常に大量に目の中で消費されています。目の中
には房水という絶えず循環しているお水があります。目の角膜や水晶体という部分には血液がありません。例えば白内障手術の時は水晶体を超音波で細かく砕くんですが、全く出血しません。それは水晶体には血液が流れていないからです。通常臓器は血液から栄養をもらって機能を維持していますが、角膜や水晶体のように目には血液が流れていない部分があります。
ではどこから栄養をもらっているのかというと、房水というお水から栄養をもらっています。その
お水に含まれるビタミンCは血液中の20倍も多く含まれています。紫外線などからの酸化ストレスから水晶体の透明性を維持するために大量のビタミンCが消費されています。目にとっても大切なビタミンですが、加齢に伴って
房水のビタミンCの濃度は減少して、この減少が高齢者の白内障形成に関与している可能性が指摘されています。
毎日ブロッコリー100g摂れば一日に必要なビタミンCを充分確保することができます。
【スルフォラファンに関して】
3つ目、ぶろっこりーにはスルフォラファンが含まれています。スルフォラファンとは、ブロッコリーに微量に含まれる、植物由来の化学成分です。いわゆる辛み成分で虫に食べられそうになった時に自身の体を守ろうと辛みを出し、防御するというもので栄養素の1つです。
キャベツ、ケール、ブロッコリー、カリフラワーなど、さまざまなアブラナ科の野菜から摂取できますが、スルフォラファンの主な供給源はブロッコリーです。ブロッコリー由来のスルフォラファンに、様々な健康上の利点があることが報告されています。1990年代
に、ブロッコリーを含む緑黄色野菜の食事摂取が特定のがんのリスクを軽減できる可能性があると報告されました。乳癌、卵巣がん、前立腺がん、結腸癌、肺がん、胃癌などいくつかの癌に対する効果が報告されています。
特にブロッコリーの新芽、新芽をスプラウトといいますが、スプラウトに多く含まれていて、アメリカではブロッコリースプラウトのブームが起きたぐらいです。
抗ガン作用があるスルフォラファンですが、国内の報告
ではAGE濃度を低減する作用が報告されています。AGEとはタンパク質と糖が結びつき、熱によって変性した毒性の強い物質のことです。過剰な糖が血管、皮膚、臓器のような色々なタンパク質と結合して糖化反応という老化現象を引きおこします。
このAGEですが目は蓄積されやすいことで知られています。通常身体のほとんどの組織は新陳代謝が活発なので、少々AGEが蓄積されてもすぐに新しい細胞に入れ替わるのであまり蓄積されません。ところが水晶体
という部分は少し特殊で、新陳代謝が行われません。なので他の組織と比べてAGEが蓄積されやすい特徴があって、一度AGEによる糖化反応で水晶体が濁ると不可逆的な変化が起きます。
すわなち元の透明な状態に戻る事が不可能になります。逆に網膜
は代謝が非常に活発ですが、AGEの蓄積が代謝の異常をおこして加齢黄斑変性症のような網膜疾患の発症と関連しています。
そのためAGEによる糖化の影響を出来るだけ避けるようにしなければなりません。運動することや高血糖食を避けることも大切ですが、スルフォラファンにはAGEを抑えて糖化反応を抑える効果が報告されていて、目のためにも積極的に食べたい栄養素です。
【I3cに関して】
4つ目少しマニアックになりますが、インドール3カルビノールという成分が含まれています。これもブロッコリーのようなアブラナ科の野菜に含まれる成分で、強力な抗酸化作用があります。マウスによる動物実験
ではありますが、インドール3カルビノールがAhRという網膜内毒素を取り除く受容体を活性化することで、網膜の炎症を抑制させたと報告されています。
この研究は動物実験ではありますが、ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜が網膜によい影響を与える可能性があるかもしれません。
このようにブロッコリーには目にもよい栄養素をたくさん含んでいるんですが、ブロッコリーを食べるときのポイントとして
①よく噛んでください。スルフォラファンはグルコラファニンという前駆体からミロシナーゼという酵素によってスルフォラファンに変換されます。ミロシナーゼという酵素はブロッコリーを咀嚼などによって損傷を与えることによって放出されます。そのため、ミロシナーゼを充分に放出してスルフォラファンにたくさん変換させるためにブロッコリーを切ったり、刻んだり、噛んだりする必要があります。
②スルフォラファンはミロシナーゼという酵素が機能しないと活性化しません。そのため加熱しすぎると酵素が減ってしまうので加熱し過ぎない方がよいです。文献的
には電子レンジや茹でるより5分程度蒸すのが最もよいようです。
ブロッコリースプラウトを食べる場合は生に近い状態がよいですね。
③ルテインやスルフォラファンは親油性といって脂になじみやすいので、脂質と一緒にとるとよいです。ブロッコリーに卵、魚と一緒に食べると、卵にはルテインが多く含まれていますし、ルテインの吸収率をあげます。卵と一緒に摂ることで葉物野菜のルテインの吸収力を3-8倍上昇させたという報告もあるのでおススメです。
スルフォラファンのサプリもあるんですがをサプリでとるよりこういった色々な成分が含んでいるのでできるだけ食事からブロッコリーをとった方がいいと思います。
注意点としてはブロッコリーはビタミンKが多くふくまれているので、抗凝固薬のような循環器系の薬を内服している方は担当の先生に念のため確認するようにしてください。
今回の話をまとめますと
①ブロッコリーはルテインを100gあたり約2g含んでいます。
②100gで1日に必要なビタミンCを摂取できます。ビタミンCは目の中で大量に消費されています
③スルフォラファンは抗ガン作用があり、抗糖化作用があります。目は糖化反応に弱いです。
④インドール3カルビノールは黄斑変性症に効果があるかもしれないと報告されています
⑤よく噛むこと、加熱しすぎない事、ルテインやスルフォラファンは親油性なので脂と一緒にとってください
という5点です。ブロッコリーはこのように色々な栄養素を含んでいるので、目にとってもよい食材です。
よく患者さんから何食べたらいいですかというように聞かれる事があって、その時にお話するのがこのブロッコリーです。目だけにいいだけでなく、身体にとってもいいからです。可能なら毎日100g程度食べる習慣を作ってみてはいかがでしょうか。
今回はブロッコリーの目への健康効果に関してお話いたしました。
(2024.3.28)