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4. 近視進行抑制にオルソケラトロジー

近視に対してオルソケラトロジーが有用であることが眼科医の中で話題になっています。

現在近視の抑制に大きく貢献している予防法が大きく分けて3つあります。一つは今回お話するオルソケラトロジーで二つ目は低濃度アトロピン、そして最後にバイオレットライトを含む野外活動です。オルソケラトロジーではなんと30%も抑制効果があるという報告がでております。

30%というととらえ方によってはそれだけか…と思われるかもしれませんが、そんなことありません。-7Dの近視を-5Dに抑えることができ、-5Dの近視を-3Dの近視に抑える事ができます。分かりやすくいいますと、強度近視を中等度に、中等度の近視を弱度近視にまで抑えることができます。

さてところで皆さんはオルソケラトロジーというものはご存知でしょうか。まずそこから少しお話させて頂きたいと思います。オルソケラトロジーとは簡単に言いますと特殊なコンタクトレンズで、夜間就寝中にコンタクトレンズをして朝起きて外したら裸眼視力を改善するものです。特殊な形状をした酸素透過性の高いハードコンタクトレンズをすることで、レンズが角膜を圧迫し角膜の形を矯正するものです。オルソは矯正、ケラトは角膜、ロジーは学問という由来の通りです。ナイトレンズと言われるところもありますが、オルソケラトロジーと同じです。

通常のワンデイや2Weekのようなソフトコンタクトレンズは夜間の使用は厳禁ですが、オルトケラトラトロジーで使用しますコンタクトレンズは酸素透過性の高いコンタクトレンズですので夜間の装着は可能です。就寝中に装用し角膜の形状を矯正します。朝起きて外すとなんと裸眼視力が改善しています。そのような魔法のようなコンタクトレンズで非常に便利ではあるのですが、効果は永続的なものではありません。一度使用をやめてしまうとまた元通りの角膜に戻ってしまい、視力が元通りの裸眼視力まで落ちてしまいます。効果は永続的なものでないという点はある意味、レーシックやICL(有水晶体眼内レンズ)といった屈折矯正手術と違って合わなければやめれば元通りになるといった安心感もあると思います。オルソケラトロジーは基本毎日使用して夜間に角膜を矯正する方が多いですが、中には1週間のうち2.3回の使用で済むかたや、1週間に1度の使用で済む方など使用の仕方はそれぞれです。

オルソケラトロジーを使用してからの視力の上がり方も人それぞれで若い人ほど角膜が柔らかいので矯正しやすいため人気であるという点もあります。

こういったレンズはもとは水泳やボクシングなど眼鏡やコンタクトレンズが不向きなスポーツ選手などに人気がありました。実はオルソケラトロジーの歴史は長くアメリカで1960年代に開発されたのちに改良を重ね日本では2009年に発売されました。2016年までは管理の使用の点などから未成年の子には処方されなかったのですが、2017年からは安全性が確認され未成年未満は慎重投与、すなわち医師、親の管理下なら使用して良いということになったのです。

なぜ、このオルソケラトロジーというコンタクトレンズが未成年未満はしてもいいということになったのでしょうか。ただ人気があるという点ではなく、実はこのコンタクトレンズは裸眼視力がよくなるだけでなく近視の抑制につながる非常に有能なレンズであるということが最近分かってきておりそのことで世界的に広がってきています。通常のコンタクトレンズではこの効果はあるのかとよく聞かれることがありますが、いわゆる通常のワンデイや2Weekといったコンタクトレズやハードコンタクトレンズ、これは近視抑制という点では効果がありません。

なぜオルソケラトロジーのレンズには近視抑制の効果があるのでしょうか?少しだけ難しい話になりますが、現在最も有力な説はオルソケラトロジーのレンズを使用すると遠視性デフォーカスが減少するためといわれております。遠視性デフォーカスという難しい言葉が出てきましたが、簡単に申しますと見える周辺のボケ画像のことです。実はこれが近視の進行のトリガーになっている可能性があるのですね。

中々言葉だけではつたわらないと思いますので、図を使用して説明させていただきますと

近視の目というのは眼軸長というものがおおきくなっており、このように正常の眼球は円形なのですが近視眼はラグビーボールの様に楕円形をしております。この状態で眼鏡やソフトコンタクトレンズを使用すると眼の中心部との距離は調節できますが、その他の部位(赤〇の部位)は矯正できません。これが近視が進む原因と言われているトリガーです。ここの差(赤〇の部位)を遠視性デフォーカスといいすなわち先ほどお話しましたボケ画像です。この部分を少なくすることが近視の進行を抑制に非常に重要と言われているのですね。

これを矯正するのがオルソケラトロジーというレンズです。オルソケラトロジーは角膜を矯正し、この部位を矯正することができます。

このレンズが近視の抑制効果があると初めて言われたのは2004年に香港の先生によって報告されました。実は世界の中でもアジア圏では特に近視は深刻な問題で最近は質の高い近視の研究が行われております。そしてしっかりしたエビデンスも出てきています。

近視が進む時期に適切な対応ができれば大人になってからQOLといって生活の質が維持できるだけでなく、重篤な眼疾患による失明などのリスクを軽減できると考えております。

ただし通常のコンタクトレンズと同様に誤った使用の仕方をしてしまうと問題が起きることがあります。ご両親の力が大事になりますし、当然分からないこともあると思いますので当院では私を含め当院のスタッフと気軽に相談できるようになっております。出来るだけ安心して使用していただけるように心がけておりますので、 興味が少しでもありましたらご相談ください。


(2021.1.20)