〒500-8847 岐阜県岐阜市金宝町1-11

ブログ BLOG

200.遠近コンタクトレンズ

今回は老眼を感じた際にコンタクトレンズを選ぶときのポイントに関してお話しいたします。

生きていたら誰しも経験するのが老眼です。元から目がいい人も、近視などで目が悪い人も同じように発症します。老眼鏡や遠近両用の眼鏡をされる方もいるかもしれませんが、老眼対策としてコンタクトレンズも有効な選択肢です。

今回は老眼になったときにコンタクトレンズを選ぶ上で知っておきたいポイントに関してお話しいたします。

老眼とは?

老眼とは、目の中にある「水晶体」と言うレンズの弾力性が加齢によって衰えて、手元のピント調節がうまくいかなくなる状態のことをいいます。

老眼は加齢によるもので誰にでも起こるものなので病気ではありません。多くのかたは、40歳ごろから老眼の症状を自覚し始め、45歳くらいから老眼鏡や遠近両用メガネ、遠近両用コンタクトレンズを検討されるようになると思います。

よく聞かれる誤解として遠近両用の眼鏡やコンタクトを使うと老眼が進むって聞きますが本当ですか?と聞かれますが、そのようなことはありません。老眼は加齢現象なので、老眼鏡を掛けても掛けなくても関係なく進みます。

老眼になったら歳をとったんだなと認めて頂いて無理に見ようとせず早めに対策をするということが大切ですね。

見にくいのに何も対策しないでいると、目が疲れるだけでなく、頭痛や肩こりなどの症状が出てくることがあります。また、遠近両用は眼鏡もコンタクトも慣れるまでに少し時間がかかります。使用するなら出来るだけ早く使い始めたほうが慣れやすくなります。


自分が老眼がおきているかどうかなと思われたかたは次のことをしてみください。

  1. 眼鏡やコンタクトを使って遠くがしっかり見えている状態にするその上で

➁顔の前に人差し指の腹を向ける

➂顔と指の距離を徐々に遠ざける

④指紋がくっきりと見える位置で止める

⑤顔から指までの距離を測る

この指紋がくっきりと見える最短距離を、「近点」といいます。近点の距離が30cm以上離れている場合は老眼が始まっていることが考えられ、老眼鏡を検討した方がいいとされています。

老眼対策として遠近両用の眼鏡やコンタクトレンズがあります。遠近両用メガネは、レンズの上の方で遠くを、レンズの下の方で近くを見るといったように異なった度数が1枚のレンズに入ったメガネのことです。最近は累進型めがねといいますが遠くも近くも中間点もスムーズに見ることが出来るレンズが増えているので、非常に快適に使用することができます。ただし遠近両用メガネはレンズ側面は歪みや視界の揺れが生じやすいというデメリットがあります。また、レンズ上で遠くを、レンズ下で近くを見るため、慣れるまでは視線の動かし方に戸惑うかもしれません。

眼鏡に不便さを感じている場合は今回の話のコンタクトレンズが検討となります。

老眼になるとコンタクトも遠近かな?と思う方もいるかもしれませんが、他にも色々選択肢があることを知っておくといいと思います。

まず一つ目、今使っているコンタクトの度数を落とす

 現在使用している遠方用のレンズの度数を少しずつ落とすことで、焦点を手元に寄せる方法です。

具体的にはコンタクトに書かれているPWR




に書かれている度数を見てみてください。メーカーによって「D」や「P」や「SPH」と言った表記で記載されている場合がありますがすべて同じです。

この度数は何を表しているかというと遠方をみるための度数を意味しています。

例えば今使っているコンタクトレンズをして1.2見えている、そのPWRが-3.00 Dと記載がある場合、1.2を見るために-3.0Dの度数が必要ということになります。

その値から【図10 大きく



0.25D~0.5D程度わずか下げた-2.75D~-2.5Dにします。そうなると遠方の度数が弱まるので当然遠方の視力は1.0、0.9と若干さがりますが、その分ピントが手元によるので近くが見やすくなったなということを実感すると思います。




人によっては1D程度下げることもあります。

老眼の初期段階やデスクワーク中心の作業が多い方にはおススメです。

コンタクトなどで常に視力が1.2出る状態にしないといけないわけではありません。少し弱めの度数で慣れておくと老眼対策にとても有効です。

注意点としては、度数を弱めると遠方視力が若干落ちるので、運転など遠くを見る必要がある場面は注意が必要です。またあまり老眼が進むとコンタクトレンズの度数をだいぶ下げないといけません。そうなると今度は遠くが見にくいという事に不便さを感じるようになります。コンタクトをした状態でその上から眼鏡をするといったことで調整も可能ですが、眼鏡を持ち合わせる事にわずらわしさを感じることもあると思います。そのような場合

二つ目ですが、モノビジョンを検討するのもよいです。

モノビジョンとはわざと左右の度を変え、右目は遠く、左目は近くのように意図的にズラスしてしまうことです。そんなことしてもいいの?と思う方もいるかもしれません。もちろん両目とも度がそろっていたほうがバランスが良く、違和感も少ないわけですが、老眼対策としてわざと度数をずらすようなこともあります。

一般的に、利き目を遠くに、利き目でないほうを近く合わせます。例えば遠くを見る方の目を-0.5D~-1.0D程度、だいたい遠くに合った状態に合わせておいて、近くを見る方の目を-1.5D~-2.5D程度の近視に意図的に設定します。

初めは慣れが必要ですが、次第に自然な見え方になるケースが多いです。

モノビジョン法は慣れると便利ではありますが、やはり誰にでも合う万能な方法ではありません。ズラすことで立体感や奥行きの感覚が変わることがあります。特に運転やスポーツまたは読書など、長時間遠くや近くだとか同じ距離を見続ける場合は不便に感じることがあります。また老眼が進むとそれなりに差をつけないといけなくなって適応できなくなる場合があります。

そのようなことをせずにできるだけ左右差なく遠くも近くもバランスよくみたいという方は遠近両用のコンタクトレンズとなります。それなら最初から遠近両用のコンタクトレンズでいいのではないかと思われたかもしれませんが、遠近両用コンタクトレンズは合う合わないがあります。それに若い時のように遠くも近くもくっきり見えるようになるというものでもないので過度に期待するとよくないかもしれません。

遠近両用コンタクトレンズは、1枚のレンズの中に遠方用と近用の度数が組み込まれていて、遠くと近くの像を同時に網膜に映す「同時視」という原理を利用しています。

「同時視」とは、その名前の通りですが、遠くと近くの情報が同時に目に入ってきて、脳がその中から必要な情報だけを取り出すという仕組みのことです。

普通の単焦点コンタクトレンズは、一点に焦点を合わせるので、焦点が合う部分はとてもクリアに見えます。一方で遠近両用コンタクトレンズは、遠くと近くの像が一緒に映ります。そのため例えば遠くを見ようとしても手元を見るための情報が同時に入ってくるので全体的な鮮明さは単焦点レンズよりもどうしても少し劣ってしまいます。


遠近両用のコンタクトレンズの近くを見るための度数はADD値



で記載されています。この値が大きいほど近くをみる力が強くなります。

一般的には「40代で+1.0」「50代で+2.0」「60代で+3.0」の加入度数が必要になると言われています。「+1.00」「+2.0」と数値で表記しているメーカーもあれば「LO」「MED(ミド)」「HI」と言った強さの段階で表記しているメーカーもあります。

近くが見にくいなら加入度数の数値が高い方がいいのではないかと思う方もいるかもしれません。実際そう思われてネットでご自身で買われている方もおられますが、手元の加入度数が高いほど近くの情報が多く入ってくるので遠くの見え方が悪くなる傾向にあります。

すなわち遠近両用レンズの「add値」が高すぎると、近くを見るための補正が強くなりすぎるため、遠くのものがぼやけてしまいますし、逆に、add値が低すぎると、近くを見るときの補正が足りず、文字や細かいものが見えにくくなる傾向になります。遠近のコンタクトレンズは様々種類があるので一概にそうではない場合がありますが、このあたりは色々レンズを試してみるということが重要になります。

特に暗い場所では、視界がぼやけたり、はっきり見えにくく感じることがあるので、細かい作業や車の運転はこの見え方にしっかりと慣れてから行うことが大切です。特に夜間の運転は、光がにじんだり標識が見えにくくなる可能性もあるので、十分に注意してください。

両眼に遠近両用のコンタクトレンズを装着して見え方に慣れない方の中には、片眼だけ遠近両用のコンタクトレンズ、反対の眼に通常の単焦点のコンタクトレンズを使用することで、問題が解消される場合があります。これはモノビジョンの一種で、単焦点レンズを装着した眼で遠方の視界をしっかり確保しながら、もう片眼の遠近両用レンズで近くのものを見えるようにして老眼に対応するという方法です。

また、コンタクトレンズは白内障手術後も使用可能です。手術直後はコンタクトレンズはだめですが、ある程度落ち着いたら可能になることが多いので、検討される方は担当の先生に聞いてみてください。多くの方は白内障手術後に単焦点眼内レンズというピントが合う部分が限定されるレンズになります。遠くに合わせたけど、近くでものを見るのに不便を感じるといった場合、術後に遠近両用コンタクトレンズをすると遠くも近くもピントが合うようになります。単焦点眼内レンズをいれたけど日中はできるだけ眼鏡をしたくないという方もいると思いますので、そのような方にはよいかもしれません。両目すると違和感がある場合は先ほどと同じように片目だけ遠近両用コンタクトレンズをするといったこともできます。コンタクトレンズなので合わなければやめればいいといった点もよいですね。合う合わないがありますが、眼鏡をしたくないという方には試してみるのもいいと思います。

今回の話をまとめますと

  1. 老眼を感じたら早めに対応しましょう。
  2. コンタクトレンズでの老眼対策には少し低矯正にする、またはモノビジョン、遠近両用レンズがあります。

➂   遠近両用の場合はADDの数値をきにしてみましょう。

➃ 合わなければ片目だけ遠近両用のコンタクト、もう片目は通常のコンタクトという方法もあります。

⑤白内障手術後もコンタクトレンズは可能です。

このように老眼でコンタクトレンズを選ぶ際には色々選択肢がありますのでまず試してみるというのがポイントになります。なので自分で何となくネットでコンタクトを選ぶのではなくて、色々サンプルを試して着け心地や見え方を確認してもらえたらと思います。

今回は老眼用のコンタクトレンズを選ぶ際のポイントに関してお話しいたしました。

(2025.5.14)