今回は「目に良くないサプリ」について、お話しいたします。
目に良いとされるサプリはたくさん売られていますよね。ブルーベリー、ルテイン、アスタキサンチン、DHA、ビタミンA…とにかく種類が豊富です。
「どれが本当に効くの?」「どれを選べばいいの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
実際、患者さんの中にもいろんなサプリを飲んでいる方が多くて、「これ、飲んでますが大丈夫ですか?」と相談を受けることもよくあります。
中には「そのサプリ、ちょっと注意した方がいいかもしれませんね」というケースも実際あります。
健康のために飲んでいるはずが、実は逆効果になっていた…そんなことにならないように、
今回は「科学的な根拠があるかどうか」「本当に必要かどうか」「過剰摂取のリスク」なども含めて、お話しいたします。
実際に「これ、ちょっと注意して!」っていう成分がいくつかあって1つがビタミンA、もう1つが亜鉛、そしてもう1つがご存知の方も多いと思いますがルテインを購入する際の注意点に関してです。
◆ まずはビタミンAです。
目に良いってよく聞きますよね?女性の方には美容のために摂られている方もいるかもしれません。実際、ビタミンAは目の中でとても大切な働きをしています。
具体的には、網膜にある“視細胞”が光を感じるために必要な「ロドプシン」というたんぱく質の材料になります。このロドプシンがしっかり働いてくれることで、私たちは暗いところでも物が見える、いわゆる“暗順応”ができるようになります。
つまり、ビタミンAが不足すると「暗いところで見えにくい」「夜になると視力が落ちる」といった症状が出てきます。
実際に、発展途上国ではビタミンA不足が深刻な問題となっていて、特に乳幼児 小さいお子さんの失明の主要な原因のひとつになっています。
又、慢性的な栄養失調や胃腸の手術の後では、ビタミンAの吸収障害が起きやすくなるので、網膜の機能が障害されて視覚障害を引き起こすこともあります。
大切なビタミンではありますが、その一方で問題になるのが“摂りすぎ”です。ビタミンAは脂溶性ビタミンなので、体に蓄積されやすいです。成人の場合、ビタミンAを大量に摂ると、全身にさまざまな悪影響を及ぼします。
具体的には、肝機能障害、吐き気、頭痛、関節痛、皮膚の乾燥やかゆみ、骨粗鬆症、脳神経系の異常に繋がることが報告されています。
目への影響としては、「視神経浮腫」という状態が知られています。これは頭蓋内圧の上昇といいますが、頭の中の圧力が高くなることで視神経が圧迫され押しつぶされてしまう状態になることです。その結果、ものがぼんやり見えたり、見える範囲が一部欠けたりして進行すると視力の回復が困難になるケースもあります。
特に、妊婦さんが高用量のビタミンAを摂取した場合は、胎児への催奇形性も報告されているので、注意が必要です。
通常、日本を含めた先進国では、普通の食生活をしている限りビタミンAが不足することは非常にまれです。
魚、卵、緑黄色野菜など、身近な食材にビタミンAやビタミンAの前駆体のβ-カロテンが含まれていて、 それらを毎日バランスよく食べていれば、自然と必要量はまかなえることができます。
そのため、何か医師の特別な指示がない限り、ビタミンAのサプリを何かの“予防目的”で追加する必要はほとんどありません。
◆ 次は亜鉛です。
亜鉛は目にとって、とても大切なミネラルです。亜鉛が視機能や網膜にとって重要なミネラルで明確に注目されたのは、AREDS2というアメリカで行われた大規模な研究での影響が非常に大きいです。
目の奥の網膜や脈絡膜に多く存在していて、視覚に関わる酵素の働きを助けたり、網膜の抗酸化作用にも関わっています。
また、先ほどのビタミンAを体内で活性型に変換して働かせるうえでも亜鉛は必要で、不足すると暗いところで見えづらいなどの夜盲症のリスクが高まることが知られています。重要なミネラルではありますが、摂りすぎると必須ミネラルの銅の吸収が妨げられてしまいます。
結果として、視神経に障害が出るケースも報告されています。
「目にいいから」とサプリを複数併用している方は注意してください。気づかないうちに1日の上限を超えている。そんなことが、実は少なくありません。
◆ 次はルテインに関してです。
ルテインは最近よく知られていますが、実はサプリによって“合成”と“天然”の2種類があります。
天然のルテインは、主にマリーゴールドの花から抽出されていて、体内での吸収率も比較的高いとされています。
一方で、合成ルテインは化学的に作られたもので、構造がやや異なっていて、体内での吸収率が低い可能性があると指摘されています。それだけでなく石油成分から合成される場合があり、長期的な安全性についてはまだ十分なデータがないというのが現状です。
さらに、“マリーゴールド由来”と書かれていても注意が必要です。
パッケージには「マリーゴールド抽出物」と表示されていても、実際にルテインがどのくらい含まれているのかが不明な製品もあります。
ルテインを選ぶときのポイントは
①「ルテイン○mg含有」と具体的に明記されているもの➁“フリー体”であること、“天然由来”であることがわかる製品を選ぶのがポイントです。
エステル体と書かれているものは人工ルテインなので注意してください。
➂第三者機関の認証マーク GMP認証を確認してください。GMP認証が付いている製品は、一定の品質基準を満たしている可能性が高くなります。
➃安価なサプリメントは注意です。一般的に、天然ルテインを使用したサプリメントは、合成ルテインを使用したものよりも高くなる傾向があります。
⑤ゼアキサンチンを含んでいるものがなおよいです。ルテインの量に対してゼアキサンチンが10〜20%含まれていると理想的となります。
ルテイン自体は多くの眼科医が推奨するようにおススメですが、ゼアキサンチンが入っているものがおすすめです。ルテイン
とゼアキサンチンは、視力に大切な黄斑部に存在する主なカロテノイドですが、黄斑に存在する部位がそれぞれ違います。2つを同時に摂取することで、それぞれが補い合い、黄斑の色素密度を高めて網膜をより効果的に保護することが期待されています。
実際、加齢黄斑変性症の患者さんに対してはアメリカの国立眼科研究所(NEI)が行った大規模臨床試験「AREDS2(2013年)」に基づくサプリメントの配合は、次のようになっています。
- ビタミンC:500mg
- ビタミンE:400IU
- ルテイン:10mg(AREDS2で追加)
- ゼアキサンチン:2mg(AREDS2で追加)
- 亜鉛:80mg(もしくは25mgに減量)
- 銅:2mg(亜鉛とのバランスをとるため)
加齢黄斑変性(AMD)の中期~進行期の患者さんがこの組み合わせを摂ることで、中期の加齢黄斑変性が進行して重症化するリスクを約25%減らすという結果が出ています。
製品名でいうとルタックスやプリザービジョン2というサプリメントになります。
ルテイン以外に推奨しているサプリメントは
◆ 松樹皮エキス・ビルベリーエキス が使われているサプリです。
松樹皮エキスとはフランス南西部に生えている松の樹皮から抽出される天然成分のことです。ポリフェノールが豊富に含まれていて、強い抗酸化作用と血流改善効果があるとされています。毛細血管の血流をサポートすることで網膜の健康維持によい影響を与えている可能性が示唆されています。
特に注目されているのは、緑内障との関連性です。 松樹皮エキスの一部研究では、眼圧の安定や視野進行の抑制に関する報告があり、視神経への血流改善という面でよい効果が期待されています。
また、ビルベリーエキスはアントシアニンを多く含み、ブルーベリーよりも濃度が高いのが特徴です。眼精疲労の軽減や、夜間の視機能の改善に関する研究報告もされています。
国内ではグラジェノックスという製品で販売されています。
◆ ニコチンアミド(ビタミンB3) そしてもうひとつ、緑内障に関して注目されているのが、ニコチンアミド、いわゆるビタミンB3です。
最近の研究で、ニコチンアミドが視神経のエネルギーの代謝を助けてくれる可能性があることが報告されています。
一部の研究では、進行性の緑内障患者に対して、ニコチンアミドの高用量摂取によって視野の改善傾向があったという報告もされています。
研究で使用されている用量はかなり高めなので、試してみたい場合はいきなり高容量を試すのではなく必ず用法容量を守ることが大切です。
サプリに関してはよく聞かる質問がありますので、いくつか例をあげると
Q:「サプリで老眼って治るの?」 という質問です。→ サプリでは残念ながら、治りません。ピント調節力が衰えたらという謳い文句で売られているサプリがありますが、老眼は加齢による水晶体の硬化によるもので、サプリでは改善しません。
Q:「子どもにルテインとか飲ませたほうがいい?」 という質問です。→ 基本的に不要です。食事と睡眠が大事です。それ以外に近視の進行予防という点なら屋外活動2時間以上が推奨されています。
Q:「飲み合わせは基本的に大丈夫?」 → 基本的に多くのサプリは食事に近いもので気にしなくていいものがほとんどです。しかし中には一部の薬と相性が良くない場合もあります。
例えばイチョウ葉エキスです。イチョウ葉エキスは、抗酸化作用と血流改善作用を持つサプリメントとして広く知られています。眼科領域でも色々報告があって、緑内障患者さんにはいくつかの研究で、対照群と比較して視野の進行を抑制したと報告されています。ただし、血小板の働きを抑える働きがあるので、ワーファリンやアスピリンといった血がさらさらになる薬と併用すると出血リスクが高まる可能性がありますから注意が必要です。
基礎疾患のある方は念のため、担当の先生に相談しておくと安心です。
サプリメントは気軽に摂取できますが、サプリだけに頼らないということが、当たり前ですが大切です。
目を守るためには、やはり毎日の生活習慣が一番の土台になります。目に特に病気がない方ならいきなりサプリといくよりまずは食事からの栄養を意識してください。古代ギリシア、ヒポクラテスは、「汝の食事を薬とし、汝の薬は食事とせよ」という言葉を残しています。これは毎日の食事が一番の薬だから、まず食べ物で健康を優先しなさいという意味です。
たとえば、ブロッコリーやほうれん草などの緑黄色野菜や卵に含まれるルテインや、青魚に多いDHA、ナッツ類に含まれるビタミンEなど、食べ物から摂れる栄養はバランスがよく、吸収も安定しています。
スマホやパソコン作業が多い方は、20分に1回、20秒間、20フィート6メートル先を見る「20-20-20ルール」を意識するだけで、目の緊張をやわらげることができます。
睡眠も重要です。睡眠不足になると目の回復力が落ちて、疲れが取れにくくなります。目は寝ている時以外1日中働いている臓器なので、しっかり休ませてあげる時間も必要です。
そして最後に、定期検診です。40歳を過ぎたら、何も症状がなくても年に1回は眼科を受診してください。緑内障や加齢黄斑変性などは、初期には自覚症状が出にくく、気づいたときには進行していることもあります。
こうした基本のケアを続けることが、サプリ以上に目を守る力になりますね。
今回の話をまとめますと、一見体によさそうなサプリでも、摂り方や成分によっては思わぬリスクがあります。
大切なのは「サプリありき」ではなく、生活習慣・定期検診といった基本をしっかり整えるようにしてください。
今回の話、ちょっと怖い部分もあったかもしれません。目を守るカギは、毎日の暮らしの中にあります。そして、正しい知識があれば、賢くサプリと付き合えると思います。
今回はサプリメントの注意点に関してお話しいたしました。
(2025.5.8)