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194.緑内障習慣

今回は緑内障なら知っておきたい生活習慣に関してお話しいたします。緑内障は超慢性疾患と言われていますが、ひとたび診断を受けると目薬による治療は生涯にわたって継続することになります。患者さんからは目薬が大切なことはよく分かっていますが、普段の生活でどういったことに気を付けたらいいんでしょうかというように聞かれることがあります。今回は緑内障と生涯上手に付き合っていただくために普段から心がけておきたいことに関してお話しいたします。

緑内障とは眼圧が影響して視神経に障害を与える病気です。私達は



ものをみるとき目から入った情報は視神経を介して脳に伝わってモノをみています。モノを見るには目、視神経、脳全て正常に機能する必要がありますが、このうち視神経




に機能障害がおきるのが緑内障です。

視神経はテレビのケーブルによく例えられます。ケーブルが故障すると映像は移りませんよね。テレビのケーブルは、私達の眼では視神経にあたり、画像を映すテレビ画面は、私達の身体では脳にあたります。

その視神経を傷つける主な原因は眼圧であるので目薬やレーザー、手術といった方法を使って眼圧を下げます。目安としては点眼治療開始前の眼圧値から、20~30%下降させることが目標になります。治療前の眼圧が20ならその値から2、3割下げた14~16ぐらいといった値が一つの目安になります。

これは様々な研究から2、3割下がれば多くの方が進行がだいぶ抑制されるという報告がされているからです。

眼圧が最も重要な危険因子であることは間違いありませんが、唯一の危険因子ではありません。緑内障は加齢、血液の循環障害や酸化ストレス、ミトコンドリア機能障害など様々要因が複雑に影響します。そのためこれらのリスク要因も対処する必要があります。中でも知っておきたい7つの習慣に関してお話しします。

まず1つ目、早期発見に努める事、そして診断がついたなら定期通院をして、離脱しないことです。この動画を見て頂いている真面目な方からすると、そんな当たり前な事言われても・・・と思う方もいるかもしれませんが、非常に重要なことなのでどれだけ強調してもしすぎることはありません。なぜかというと緑内障で失明する方の多くは、①初期治療が遅れることと、②離脱率が高いことが大きく関係しているからです。国内のデータからは次のように報告されています。点眼治療



を始めてまず3カ月で3割の方が脱落します。1年後には4割脱落します。そして2年後には半分脱落しています。2年以降続けている方は半分しかいません。緑内障治療の大きな問題点となっています。緑内障は早期に分かり治療を継続すれば99%失明することはありません。このことは多くの研究で裏付けられています。

健康診断の眼圧測定で問題なければ緑内障でないとは全く言えませんので注意してください。日本人に多い緑内障は眼圧が正常値である正常眼圧緑内障だからです。まずは40歳を超えたら一度眼科を受診する。そして診断がついたら治療を継続することがとても大切なのでこのことをまず1番目にあげさせていただきました。。

2つ目タバコをやめるようにしましょう。タバコの煙が肺や心臓に与えるダメージあり健康に悪いということは誰もが知っていると思います。ですが、タバコの煙が目にも重大なダメージを与える可能性があることを知っている人はほとんどいないと思います。タバコの煙には、タールやニコチン、一酸化炭素など、目や視神経に深刻なダメージを引き起こす有害な化学物質が大量に含まれています。

喫煙は眼圧の上昇や緑内障のリスクの増加につながるだけでなく、加齢黄斑変性、ぶどう膜炎、網膜静脈閉塞症など、様々な視力を脅かす病気のリスクになります。禁煙は、眼の健康を守る上でも非常に重要なことです。

3つ目健康的でバランスの取れた食事を摂るようにしてください。

人の体の機能を正常に保つために様々な栄養素が必要ですが、目も同じように、十分な栄養と健康的なバランスのとれた食事が重要です。目はビタミンやミネラル、ルテインやポリフェノール、DHAのような脂質など様々な栄養素を必要としています。

緑内障に良い健康的な食習慣は様々報告されています。

例えば天然の硝酸塩が豊富な食品や緑の葉物野菜をたくさん食べると、 緑内障



の発症リスクが 20% 以上軽減されたと報告されています。硝酸塩は、ほうれん草やレタス、小松菜、春菊などに多く含まれている成分です。体内で一酸化窒素(NO)に変化し、血管を拡張させる働きがあります。緑内障は、視神経への血流不足が原因の一つと考えられているので、硝酸塩の摂取は、視神経への血流を改善し、障害を予防する効果が期待されています。





1日に3回以上果物を食べると、緑内障になる可能性が79%低くなるという報告もされています。果物に含まれるビタミンやポリフェノール、カロテノイドには抗酸化作用があります。例えばみかんの白い筋にはヘスペリジンというポリフェノールが含まれており、動物実験ではありますが、緑内障の原因となる視神経細胞死を抑えることができたというような報告もされています。キウイフルーツはビタミンC,Eが果物の中でも含有量が多く、ルテインも含まれています。キウイに含まれるルテインの含有量はほうれん草などと比べるとわずかではありますが、野菜由来のルテインより生体利用率が非常に高いのというのも特徴です。この時期は旬を迎える果物が多くあります。野菜や果物ジュースなどは一見健康的にみえますが、食物繊維などは失われていますし、保存料や着色料などの添加物が含まれている点で健康への影響が懸念されています。ジュースより丸ごとの果物や野菜にはより多くの繊維やその他の重要な栄養素が含まれていることを覚えておくことが大切です。

4つ目定期的に運動をしてください。運動は血液循環を改善し、緑内障にもよい影響を与えます。最近の報告だと1日5,000 歩程度ウォーキングをしたり、座りっぱなしではない時間を増やすことで、 視野欠損の進行を10%減らすと報告されています。

その他に

有酸素運動を週3回、1回あたり少なくとも30〜45分間行うと、 眼圧を 平均20%下げるという報告もされています。運動というとつい身構えてしまう方もいると思いますが、1日少し歩く距離を増やしみるということを意識されてみてはいかがでしょうか。運動によって血行が促進されると、房水の排出がスムーズになり、眼圧の上昇を抑制する効果が期待されています。

運動不足は目にも良くないです。注意点としては激しい運動や筋力トレーニングのときに力んで息こらえを行うと、胸腔内圧の上昇によって心臓に戻る血液の量が減ってしまいます。それが眼圧上昇に繋がる可能性があります。

筋トレを行う際は、息をとめずにゆっくりと息を吐き続けることが重要です。

また、ヨガで逆立ちのように頭が下になる行為を行うと眼圧が非常に上昇する 可能性があるので、習慣的に行っている方は気を付けてください

5つ目ステロイドに気を付けてください。

ステロイドは、目薬や内服、軟膏、注射などさまざまあります。即効性があり炎症を抑える効果も強いので、治療に用いられることが多い薬ですが、その一方で副作用も多いので注意が必要です。目の場合長期間ステロイドを使うと白内障や緑内障の原因になる場合があります。ステロイドが水晶体のタンパク質を変化させて白内障に変化させることがありますし、房水というお水の出口を変化させて眼圧が異常に高くなることがあります。

高くなる方は30や40mmHg程度まで上昇することもあります。これほど高くなっても通常自覚症状が出ないのが怖いところです。 長期間使用する場合は、定期的な眼科検査が欠かさないようにしてください。

6つ目 ストレスをためないようにすること、ストレス対策にマインドフルネス瞑想がおすすめです。 

ストレスは身体に良くありませんが、目にも良くないことが認識されています。

一般的に、眼圧が上がる原因として、ストレスなどで自律神経が乱れ交感神経の緊張が続くことで目の周りの血流が悪化し、房水の流れが滞ることが知られています。

人生でストレスを全くなくすことは不可能ですが、ストレス解消のために運動や睡眠など対策することが重要です。その他に効果的な方法の 1 つとして、マインドフルネス瞑想が知られています。

マインドフルネス瞑想とは「今、ここ」 に意識を集中させて、思考や感情、体の感覚などをありのままに観察する心の状態のことです。私たちは普段、過去のことや未来のことなど何らか頭の中で様々なことを考え続けています。そのような雑念を振り払って「今、この瞬間」 に意識を集中して行う瞑想法です。

毎日



45 ~ 60 分間、マインドフルネス瞑想を実践すると、ストレスレベルが下がり、眼圧が5下がったという報告がされています。瞑想が苦手な場合は、ゆっくりと5 秒息を吸って 5 秒息を吐く という深呼吸でも眼圧の軽減に役立ちます。ストレスをコントロールし、健康的な生活習慣を送ることが、緑内障の予防や進行の抑制にも期待されています。

7つ目、気になる方はサプリメントもよいです。

緑内障で眼科専売品として発売されているサプリメントにグラジェノックスというものがあります。グラジェノックスは、松樹皮エキス・ビルベリーエキスが配合されたサプリメントで抗酸化作用に加え、血流改善に対する作用や神経保護作用も認められています。 眼圧の下降効果や網膜の血流促進効果などが報告されていて、緑内障の予防や進行抑制に注目を集めています。

その他にはまだ現在治験中ではありますが、ビタミンB3のサプリメントをとってみるのも1つの手だと思います。ビタミン B3 は水溶性ビタミンで、ナイアシンやニコチンアミドと呼ばれたりしています。

ビタミンB3はミトコンドリアの機能を助けて視神経の機能をサポートし緑内障の進行を遅らせる可能性が期待されています。

2020年にオーストラリア眼科研究センターが実施した世界初の臨床試験では、高容量のため真似はしないようにてほしいのですが、ニコチンアミドを3,000mgを毎日摂取 すると 、緑内障で障害を受ける部位である視神経節細胞の機能が一部改善したと報告されました。

2021年に発表された別の試験では、治療を受けた中等度の開放隅角緑内障患者さんにニコチンアミド(1,000~3,000 mg)を2か月間服用させたところ、視野の欠損部位に一部改善がみられたことが報告 されました。

これらの研究は現在治験中であり、効果や安全性を確立するためにはさらに長期的な研究が必要ではあります。ただ、摂取することでもしかしたら緑内障の進行を抑制する効果があるとしたら興味があるという方もおられると思います。現状は眼科専売品はないので、市販のものから選ぶことになります。

サプリメントで購入する場合注意点は用法容量を必ず守ること、そしてビタミンB3はナイアシンと書かれているものとニコチンアミドと書かれているものがありますが、ナイアシンはナイアシンフラッシュといって皮膚のかゆみなど副作用を起こす場合があるのでニコチンアミド



flush freeと書かれているものを選ぶようにしてください。繰り返しますがビタミンB3は緑内障の進行抑制に期待されてはいるものの、現在のところは治験中であり補助的な位置づけではあるということをご了承ください。

緑内障治療において、眼圧のコントロールは非常に重要ですが、それ以外にもバランスの取れた食事、適度な運動、質の高い睡眠、ストレス解消、禁煙なども心がけていただけたらと思います。

今回の話をまとめますと

①早期発見に努め、自己中断だけはしないようにしましょう。

②タバコを吸っている方は禁煙しましょう。

③健康的でバランスの取れた食事を摂るようにしてください。

④定期的に運動してください

⑤ステロイドに気を付けてください

⑥ストレスをためないようにしてください

⑦サプリメントに挑戦するのもよいでしょう

の7点です。最後宣伝になりますが、このあたりを詳しく知りたい方は私の本になりますが、目に関する習慣の本が2/21発売されます。興味がある方は一度見て頂けるとうれしいです。今回は緑内障の習慣に関してお話させて頂きました。

(2025.5.7)