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186.コーヒーとナッツ 目との関係

今回はコーヒーとナッツの目への健康効果に関してお話しいたします。

コーヒーとナッツはどちらも栄養価の高い食品として知られています。

コーヒーを飲んだり、アーモンドや、クルミなどのナッツ類を食べたりすると糖尿病や心疾患、脳卒中、癌など様々な健康的なメリットがあることで知られています。

コーヒーとナッツは組み合わせがいいです。コーヒーにはポリフェノールが多く含まれていますが、ビタミンやミネラル類はほとんど含まれていません。一方でナッツには身体に必要なビタミン、ミネラル、食物繊維が多く含まれています。特に、ナッツに含まれる不飽和脂肪酸は心血管系によいとされています。ナッツを同時にとることでコーヒーに不足しがちな栄養素を補充出来ます。

そんなコーヒーとナッツですが、目の健康サポートのためにもおすすめです。

コーヒーは世界中で愛されている嗜好品です。私も毎朝1杯必ずコーヒーを飲んでいます。眠気覚ましに飲まれている方、好きで飲まれている方様々だと思います。

コーヒーはただの嗜好品に留まらず近年の研究



では、習慣的なコーヒー摂取が 健康に良い影響を与えることが分かってきました。コーヒーをよく飲んでいる人の方が全く飲まない人より、糖尿病や心血管疾患、肝硬変、いくつかの癌や認知症になりにくく死亡率も低いという報告がされています。

コーヒーが健康によいとされる有効成分は主に2つあります。1つはカフェイン、もう1つはコーヒー豆に含まれるクロロゲン酸と言われるポリフェノールです。カフェインは知っている方も多いと思います。カフェインは眠気を促す



アデノシンという物質の働きを抑えます。

覚醒作用があるので目を覚ますためであったり、集中するためであったり、運動前に取られている方もいるかもしれません。

もう一つの有効成分はコーヒー豆に特に多く含まれているポリフェノールで、クロロゲン酸というものです。

糖質の吸収を抑えたり、炎症や酸化ストレスを抑える働きがあるので糖尿病や心臓疾患や癌など、全身的にメリットがある事が多くの論文で報告されています。

コーヒーは目にも健康効果が報告されています。例えば白内障の進行を遅らせる可能性があることが研究によって示されています。2016年にClinical Ophtalmology



に掲載された大規模な研究では全世界のカフェインの摂取量に対する白内障の影響を分析してコーヒー摂取量



が少ない人と多い人で比べると摂取量が多い人ほど白内障による失明率が大幅に低かったと報告されました。

白内障



の主な原因は加齢による水晶体のタンパク質の酸化です。

加齢



が原因で水晶体の酸化が進んで行く一方で、酸化に打ち勝つ抗酸化力が年齢とともに低下していくため白内障が進行していきます。

コーヒーに含まれるポリフェノールは抗酸化作用がありますが、カフェインにも抗酸化作用があります。研究された方はカフェインによる白内障の保護効果を考えています。

ドライアイにもよいという報告があります。コーヒーは利尿作用があるので、身体の水分が失われる、乾きを促すことになるのでドライアイにはよくないと控えてこられた方もいるかもしれません。ですが、いくつかの研究からコーヒーなどに含まれるカフェインは涙の分泌量を増やすとされる報告がされています。

2023年にCornea



という雑誌からの報告によるとカフェインの摂取量が多いと涙の分泌を促進するという結果が報告されています。カフェイン抜きのコーヒーでは改善効果がみられなかったという結果で、カフェインによる影響が考えられています。日本の東京大学ではカフェインと偽薬の錠剤の摂取で涙の分泌量を調べた研究がされましたが、その結果はカフェインをとったすべての被験者に涙の量が増えたということが確認されました。以前からカフェインは、唾液や消化液の分泌を増やす事がわかっていましたが、涙の量も増やす効果があるのでドライアイに悩んでいる方にもよいかもしれません。

また緑内障の方にはよい



報告ですが、コーヒーや紅茶を飲むと黄斑という視力に重要な部分の神経線維の厚みを増やすという報告がされています。

網膜の神経線維



とは目で見た情報を脳に伝える伝導路です。この厚みが減っていくのが緑内障で、この厚みが減っているということは緑内障の進行を意味するので重要です。コーヒーや紅茶に含まれているクロロゲン酸やフラボノイドといったポリフェノールが神経によい影響を与えているのではないかと考えられています。飲めば飲むほど効果があるというわけではありませんが、1日あたりコーヒーを2~3杯、あるいはお茶を4杯以上飲むと、黄斑という視力に重要な部分の神経線維の厚みが増えたという結果でした。

コーヒーというと、眼科では緑内障の患者さんは眼圧を気にして一切避けられている方もみえます。

ですが、最近の研究



ではカフェインはそれほど関係ないのではないかとされています。日本人を対象とした研究では習慣的にコーヒーを摂取している人の方がなんと眼圧が低かったという報告もされています。コーヒーを1日3回以上飲む人は、1回未満の人と比べて眼圧が平均で約0.4mmHg、割合にすると3%程度低かった、それも飲む回数が1回、2回と増えるにつれて、眼圧が低下する傾向が認められました。1日1杯以上コーヒーを飲む人は、まったくコーヒーを飲まない人と比べて、眼圧が低い傾向にあったという結果です。海外でも
2020年にコーヒーと目の関係を調べた大規模な疫学調査が行われophtalmologyという信憑性の高い雑誌に、そこからも同様の報告がされています。こちらの対象者は日本人の10倍、約12万人、の大規模スタディです。結果は、日本の研究と同じでカフェインの多量摂取は、眼圧上昇や緑内障へのリスクと関係がないことが報告されました。緑内障の方でもコーヒー摂取は控える必要はあまりなさそうです。

このようなよい報告はされているものの、目に対する注意点もあります。カフェインは神経を興奮させる作用があるため、眼瞼ミオキミアといいますが、瞼の痙攣を悪化させる可能性があります。

眼瞼ミオキミアは、片眼のまぶたの上側または下側がピクピクと痙攣する状態です。これには疲労やストレス、睡眠不足、カフェインの過剰摂取などが原因として考えられます。瞼の痙攣が気になる方はもしかしたらコーヒーが関与しているかもしれないので注意してください。

また、当然ではありますが、コーヒーだけで必要な栄養が全て取れるわけではありません。たんぱく質や脂質、ビタミンやミネラルはほとんど含まれていないので、組み合わせの1つとしてナッツもおすすめしています。ナッツには植物性タンパク質の他、脂質やビタミン、ミネラルが含まれています。

コーヒーと同じく身体によい食品として知られています。

ナッツは「種子」なので新しい植物になるためのエネルギーが全てあの小さな1粒に詰め込まれています。そのため1粒1粒の栄養価が非常に高いです。

私自身もコーヒーとナッツを食べていますが、身体にいいだけでなく腹持ちがいいですしおすすめです。ナッツは目にもよい食材です。何故いいのかというと

  1. 身体や目にいい脂である不飽和脂肪酸が多いです。
  2. 不足しがちなビタミンやミネラルも多く含まれています。
  3. ルテインやゼアキサンチンが多く含まれているナッツもあります
  4. 食物繊維も多く含まれています。

これらは目の健康もサポートする栄養素となります。

ナッツには、アーモンド、クルミ、ピスタチオ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツなど様々ありますが、大きく栄養素は変わりません。

1粒の中に脂質が5-7割程度含まれていて、植物性のタンパク質と炭水化物が2割程度、その他ビタミンや食物繊維、亜鉛やマグネシウムといったミネラルが含まれています。

脂質が多いというと太りやすいというイメージをもたれるかもしれませんが、

肥満の原因となったり血中の悪玉コレステロールを増やして心筋梗塞などの循環器系に影響を与えるのは牛肉の脂やバターなどの「飽和脂肪酸」と呼ばれる種類の脂質です。

一方で魚の脂やナッツに含まれる不飽和脂肪酸は身体に様々なメリットがあります。

悪玉コレステロールと言われるLDLコレステロールを減らして、善玉コレステロールとのバランスを改善して血液をサラサラにする効果があります。そのため血管系によいです。また



目の後ろ側、網膜や視神経そして脳は脂がとても多い部分です。不飽和脂肪酸の1種であるDHAの含有量はだいたいどの臓器も1-5%程度とわずかですが、脳



や網膜のような神経系の組織はDHAが特に多くて50%程度も含有しています。このような脂は神経系の重要な構成成分となります。

不飽和脂肪酸は網膜の成分であるだけでなく、涙の分泌にも関わっています。

ナッツの中でもDHAやEPAといったオメガ3系の脂肪酸は、特にくるみに多く含まれています。

また不足しがちなビタミンやミネラルが多く含まれていて、ビタミンEや亜鉛も多く含まれています。ビタミンEは強い抗酸化作用を持つ脂溶性のビタミンで、体内の脂質の酸化を防ぎます。脂質が多い網膜という部分の健康に関与しています。

亜鉛というとあまり知らない方もいると思いますが、亜鉛は、目の健康に必要なミネラルで、同じく網膜に大量に含まれています。網膜の中の視細胞を保護して目の疾患のリスクを減らす効果があります。

アメリカで



行われた大規模な疫学研究ではルテインに加えてビタミンEや亜鉛を一定量とることが加齢黄斑変性の発症、進行のリスクを抑制させたと報告されています。日本での中途失明原因1位は緑内障ではありますが、米国での1位は加齢黄斑変性症です。日本
でも高齢化や食生活の欧米化などにより患者数は増加しており、現在失明原因の第4位に入っています。ナッツは不足しがちなビタミン、ミネラルが含まれているのでおすすめです。

ナッツの中でもピスタチオには今お話しした不飽和脂肪酸やビタミンE、亜鉛を含んでいるだけでなくて、ルテインという栄養素も多く含んでいます。ピスタチオの緑の皮の部分に大量に含まれています。ルテインは網膜内に大量に含まれていて、強い抗酸化作用があり天然のサングラスと言われています。

ルテインはビタミンEと同様に脂溶性なので脂質と一緒に摂ると体内への吸収効果が高まります。天然の脂質を含んでいるピスタチオはルテインの生体利用率が非常に高いというのもポイントです。

ルテインは体内でつくれないので、食事から摂取する必要があります。

ルテインの推奨量は1日あたり6mgとされていますが、成人の平均摂取量は1-2mg程度と多くの方は不足している事で知られています。

気軽にルテインを補えるピスタチオは間食にとてもよいです。

また、ナッツには食物繊維が多く含まれています。そのため腸内環境によいです。腸内環境と目って一見何も関係ないように思う方も多いと思いますが、目との関連性も少しずつ解明されてきています。腸内環境が悪化すると、腸内で慢性的な炎症が起こりやすくなります。この炎症が全身に広がると、目にも影響を起こすことが明らかにされつつあります。腸内環境



とぶどう膜炎、腸内環境と加齢黄斑変性症、緑内障との関係も報告があがっています。腸内環境が目の健康への鍵かもしれません。

このようにナッツには目に様々な効果が期待できます。ですが、どんな食品も食べ過ぎはよくありません。ナッツの場合30g程度が適量とされています。小分けにされているものがだいたい30g程度になります。無塩、無添加のものを選んでいただいて1日1パック程度とることが目安になります。ナッツは高カロリーなので、食べ過ぎには注意です。コーヒーの場合、厚生労働省によると、成人が1日に摂取できるカフェインの量は、コーヒーで約3杯までとされています。カフェインの過剰摂取は、不眠や心拍数の上昇などの副作用を引き起こす可能性がありますし、体質的に合わない方もいると思うのでその場合は飲む量に注意してください。特に問題がない方でしたらコーヒーに加えて甘いお菓子を食べるよりはナッツなどにかえてみてはいかがでしょうか。今回の話をまとめますと

  1. コーヒーに含まれるカフェインやクロロゲン酸は健康に良い効果が報告されています
  2. 白内障の抑制、ドライアイ、視神経線維の厚みを増やすという報告がされています。
  3. ナッツはコーヒーに不足しがちなビタミン、ミネラル、不飽和脂肪酸が多く含まれているため相性がよいです。
  4. 食べ過ぎないように小分けにされたものを1日1袋がおススメです。
  5. コーヒーは3杯程度までが適量です。

という5点です。目の健康を維持するために必要な栄養素を摂取することが重要であることは様々なところで報告されています。

その中で今回はコーヒーとナッツに関してお話しいたしました。

(2024.12.10)