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180.視力検査のこれ 答えていいの?

今回は視力検査でよく聞かれる質問に関してお話しいたします。視力検査は子供のときや、学校や職場の健康診断で何度かされてきたと思います。

視力検査は近視や遠視、乱視の程度や白内障など視力障害を起こす病気のためや、手術の必要性を検討するために欠かせない検査ですが、自覚検査なので苦手な方も多いようです。よく聞かれることとしてほとんど分からないのに答えてしまったとか、検査の人からなんとなくわかったらでいいですと言われた、いい加減な検査だなと思ってしまったとか、今回の視力はたまたまよく出てしまったからあてにしないでほしいというような事がいわれます。

けどそのだいたいで言ってしまった視力検査実はきちんとできています。また視力検査はなんとなくという感覚が重要です。それは何故なのか、今回は視力検査を行う上で知っておきたい事に関してお話しいたします。

視力検査というとどこまで遠くのものや細かなものがはっきり見えるのかというイメージもたれている方もいると思います。遠くのものがはっきりみえたら目がいいと言われることもあると思いますが、眼科で行う視力検査では最小分離閾といいますが「2点を区別する能力」を測定しています。

例えば



ある人はこの2点を区別できると思いますが、目がよくない人




には2点が1つなのか2つなのか見分けることができません。このような感じで2つの点を別々の点として見分けることができる力のことを『視力』といいます。通常の視力検査は中心視力といって網膜の中心窩というもっとも大切な部分の解像力が評価されています。

視力検査



ではこのようなアルファベットのCに似た形のもので表記されています。これ




を開発した先生の名前にちなんでランドルト環と呼ばれています。世界共通の視力検査用の記号です。

視力検査



ではこのわっかの切れた部分の両端二点を区別できるかどうかで評価されています。例えば次のように見えたとき、どうしますか。

これは【1、2秒程度あけてください】 



右ですね  これは【
1,2秒程度あけてください



左ですね  これは【
1,2秒程度あけてください



少しみにくくなってきましたが 下ですね  では【
1,2秒程度あけてください



これは?こんなん答えてしまっていいのかと思うかもしれませんが、なんとなく上が薄くなっている気がしませんか?これ上とこたえてください。

鮮明に見えなければ答えていけないわけではありません。ランドルト環はくっきり、はっきり 見えていなくても良いです。うっすら



でもぼんやりでも、薄い部分が見えているということは2つの点をきちんと識別できているということになって、眼科ではそれを見えていると判断します。

ぼんやりとでも分かれば答えるようにしてください。もちろんまったく分からないときは答えなくていいですし、適当に答えてくださいと言っているわけではありませんが、何となくわかるときは答えていただければと思います。

視力検査は最小分離閾で評価されています。最小に分離できる閾値ですね、限界点をみているということなので、識別できるぎりぎりの視標、ぼやけていても うっすら切れ目がわかれば見えていることになります。

仮にくっきりしたものしか答えていけとすると視力は充分に評価されなくなります。

なので、視力検査のときは「はっきりわからなくても大丈夫だから答えてください」とか「できるだけ頑張ってみてください」というように促されると思います。

これはなんとなく分かるのに早めに諦めてしまうと実際の視力より悪く評価されてしまうからです。

それでも適当に答えてしまってあっていたら通常よりよいと思われるかもしれないと不安に思う方もいるかもしれませんが、安心してください。

視力表は同じ段を3つ正解したときに、1.5見えている、1.2見えているというように評価しています。

偶然1つ見えただけでは視力としません。偶然にその視力だったというのは実は非常に困難です。

ランドルト環の切れ目は通常上下左右の4つです。仮に全て3つ偶然にあたるとしたら確率は、4/1×4/1×4/1×100で1.6%です。100回やって1回あたるかなぐらいの感覚です。二つ偶然あてるとしても4/1×4/1×100で6%です。【カットしてください】

確率の点からも偶然に視力を出すことは結構難しいと分かってもらえると思います。そのため視力が1.0と言われたら、1.0なんだと自信をもってください。決して偶然の視力ではありません。ちなみに2つほど見えたときは部分的に見えたという意味で、その段の視力値にp(partial)をつけます。1.0pと書いてあったら1.0弱の視力となります。

このように視力検査はなんとなくやるという感じがとても大事になりますので、できるだけリラックスして受けてください。

ただ検査を行ううえで注意点がいくつかあります。

まず1つ目、目を細めて見てはいけません。

目を細くすると、目に入る光が収束して、通常より視力をあげる効果があります。これはピンホール効果といって、小さな穴から覗き込むことでピントの合う範囲が広くなるという現象です。そのため一時的に視力が良くなりますが、それは本当の視力ではありません。

逆に、頑張りすぎて目を見開いたままの方もいますが、目はまばたきが減ると涙が蒸発して一時的に見えにくくなることがあります。まばたきをすると涙は分泌されるので、検査中はまばたきを意識的にすると良いと思います。検査中に見にくい時やだぶって見えるときは検査員に伝えるようにしてください。目の乾きや乱視が影響している可能性があります。

2つ目 顔を近づけないでください。基本となる視力検査は、「5メートルの距離をとって見る大きさ」となります。5メートル離れて見るべき指標を少し近づいて見てしまえば、検査距離が近づいた分、当然視力がよく出てしまいます。背筋伸ばしてリラックスして受けるようにしてください。

3つ目、健康診断などで行う筒を覗きこんで行う視力検査ありますよね。あれは不正確に出ることが多いです。

「健康診断で視力が下がってました」と来られる方に実際に院内で覗かずに検査してみると1.0まで見えた、あれ、健診のものか眼科での視力かどっちを信用したらいいんですかと言われる事があります。その場合は眼科で検査した視力が本当の視力と考えてください。筒を覗いて行う視力検査は結果が悪くでることがあります。

なぜ、覗くものは視力がでにくいのかというと、覗くという行為をすることでピントの調節がはたらいて近視がおきやすくなるからです。これを器械近視といっています。覗き込むという不自然な見方が原因で意図せずにピントが近くにあってしまう結果本来の視力より悪くでることがあります。健診では視力検査のスペースが充分にとれないので仕方ないところがありますが、通常視力検査は5m離れて行うものです。5m離れると調節が働かないので、正確に測定できます。健康診断での視力で問題があっても、眼科で測定して問題なければ心配しなくてよいと考えてください。

4つ目 視力検査直前にスマホをみたり本は読まないようにしてください。目のピントを調節する筋肉が緊張して視力がきちんとでない原因になります。特に子供の場合は大人よりも調節力が大きいので、視力検査に影響がでやすくなるので注意してください。大人でも体力的に疲れた日や夕方の検査では視力が変動することがあります。朝は緊張による影響があまりないので視力がでやすい事が多いです。気になる方は午前中に視力検査を行うというのもよいと思います。

5つ目視力が1.0出ていれば目に問題がないと思わないでください。目の多くの病気はある程度すすまないと視力は下がりません。代表的な病気が緑内障です。緑内障は周辺から欠けていき、中心部分にまで障害がでてきてやっと見にくさを自覚するようになりますが、それでも視力はおちません。法律で定められている検査は視力検査のみなので、視力がよければ目に問題ないんだと思われる方が多いんですが、そんなこと全くないんですね。目の病気があるかどうか眼底検査を受ける必要があります。まずは40歳を過ぎたら眼科受診するようにしてください。

このように視力検査にはポイントが色々あります。

何も異常がない眼だと、基本しっかりと視力が1.0以上出ますが、逆にどんなに眼鏡の度数を入れても1.0未満の視力だと、何か眼に病気があると疑われます。よく患者さんは裸眼視力にこだわる方が多いんですが、僕らは矯正視力の方を重視しています。裸眼視力が0.1でも眼鏡をかけて1.0以上の視力が出て他の検査で問題なければ病的とはいえません。ところが裸眼視力が0.5で眼鏡をかけても0.5しか見えなければ何か病気が隠れている可能性があります。矯正視力の方が、目の健康状態をより正確に反映しているからです。

このような事を知って頂いて今度視力検査を受ける時は気にしてもらえたらと思います。

今回の話をまとめますと

①なんとなくこっちかなと思ったら間違えてもいいので答えるようにしましょう

②視力検査は3つ正解しないとその視力となりません。

③視力検査中は目を細めたり、前のめりにならないように注意してください

④検査前にスマホをみたりや本を読まないようにしましょう

⑤健康診断の視力は問題なければ目に病気はないとは言えません。眼底検査受けるようにしてください

の5点です。

見にくくなると眼鏡をしたほうがいいのにせずできるだけ裸眼で頑張っている方もいるようです。メガネを掛けると近視が進むまたは老視が進むと聞いたことがある、だらか眼鏡をしないで頑張っているといわれる方がいますが、これは全くのウソになります

度数が進むのは、メガネを掛けることが原因ではなく、成長や加齢による変化です。

むしろ、メガネを掛けることでものがはっきり見えるようになりますし、快適な生活を送ることができます。見にくさを感じているなら我慢せずに眼科受診するようにしてください。今回は視力検査に関してお話しさせて頂きました。

(2024.10.25)